ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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仲間でいられるために

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「よかった! じゃあ、行ってもいいんですか?」

さすが伯父さん!
やっぱり直くんのためなら、許してくれるんだ!
そう思ったのに、俺に向けて笑顔のままに

「まぁ、とりあえずそこは置いておいて、もし許可を出したとして、お前はどうやって直くんを空港まで連れて行く気だ?」

と尋ねられた。

「えっ? 電車……は、流石にだめだから、タクシー、とか?」

「タクシー、か……まぁ、この前の口ぶりだと金の心配はないだろうが、タクシーはどこのを使う予定だ?」

「どこのって……普通に、その辺のを……」

伯父さんの質問の意図をまだ掴めずにいた俺は、とりあえず思いつくままに返したけれど、伯父さんは

「なるほどな。中谷くん、どう思う?」

と中谷さんに回答を求めた。

「そうですね。まぁ、まだ高校生ですから」

「何? どういうこと? 伯父さんの質問の意味がわからないんだけど」

伯父さんの言いたいことを中谷さんだけが理解できていることに焦って尋ねると、伯父さんは

「昇、これから直くんを守っていきたいというのなら、私のいうことをしっかり聞きなさい」

と真剣な表情で俺を見つめた。

その気迫に押されるように俺は頷くことしかできなかった。

「電車を選択しなかったことはまぁ、当然のことだな。これで合格はもちろんやれない。次にタクシーだが、昇は今、どうして直くんが外に出られないかわかっているだろう?」

「それはもちろん! 直くんが事件のことで追われたりすることがないようにするためですよね」

「そうだ。流しのタクシーの運転手がもし、そういう奴らと手を組んで直くんが出てくるのを待っていたらどうする?」

「えっ……そ、れは……」

「私の持ちうるすべての人脈を使って、直くんに手を出させないようにしているが、悪い奴らはそういうのを掻い潜っても情報を掴もうとするものだ。たとえほんの少しの可能性であっても、何かしらの情報を手に入れることができたら奴らが手にする利益は大きい。それを狙って手を出してこないとは限らないだろう?」

「――っ!! 」

確かに伯父さんの言う通りだ。
被害者があの櫻葉グループの御曹司だったことで、かなり大きな事件に発展したのだから。

「じゃあ、やっぱり直くんを連れて行くのは諦めた方がいいってこと?」

「そうだな、お前と二人で・・・行くのは諦めた方がいいな」

「えっ? それって……」

「忘れたのか? お前の両親は私の弟夫婦でもあるんだぞ。元々、見送りに行く気だったよ」

「あっ、そうか……」

「ふふっ。だから、お前としっかり打ち合わせをしておこうと思っていたんだ」

「打ち合わせ?」

「ああ、絢斗と直くんを連れて行くんだ。普通にしていたら完全に目立つぞ」

そういえば、前に伊織さんと悠真さんと出かけた時にピリピリしたオーラ出しまくってたっけ。
父さんも母さんと出かける時は、かなり気を遣ってたな。
あれってそういうことだったのか……。

「それに、村山家からも話をもらってたんだぞ」

「えっ? 村山の両親からってこと?」

「ああ、友人夫婦が海外に栄転するんだ。お祝いがてら見送りに行くのも不思議はないだろう? その日にカールくんがくるなら尚のことだ」

「でも村山も一人で出迎えに行く気満々だったよ」

「まぁ、あの子も両親の話を聞いていないのかもしれないな」

確かに村山もカールに夢中だったからな。
出迎えに行くことで頭がいっぱいになっていたのかもしれない。

「その日は私が車で連れて行くから心配しないでいい。せっかくだから外食もして帰ろう。村山家とカールくんも一緒に行くかどうかは話をしてみてからになるがな」

「あ、でもお店は? さっきの話を考えるなら、お店もちゃんと調べておかないといけないんじゃ……」

「ははっ。ちゃんと学習したようだな。だが、こういう時のために、安心して連れて行ける店の情報を志良堂や榊くんたちと共有しているんだ。だから、お前にもその情報を共有できるように彼らに話を通しておこう」

「それって、すごい人たちの集まりなんですか?」

「そうだな、あの倉橋くんを筆頭に錚々たるメンバーが揃っているぞ」

「えっ……いいんですか? 俺なんかが入っても……」

「まぁ、まだ入れるかはわからんが、これからの期待値込みで入れてもらえるだろう。その分、お前はしっかりと勉強しないといけないぞ」

その錚々たるメンバーに名を連ねていられるかは自分の頑張り次第ってことか……。

「伯父さん、俺……頑張るよ!」

「ああ、頼むぞ」

いつまでも直くんの笑顔を守る。
自分に言い聞かせるように心に誓った。
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