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知らない感情
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<side村山>
俺は朝から楽しみにしていた。
もちろんメインは俺の家にホームスティ予定のカールと話すためだけど、なんと言っても今日は磯山の例のあの子に会えるんだから。
父さんたちが友人同士ということもあって、当然のように俺たちも友人になったけれど、磯山は文武両道を地でいくようなやつで、スポーツは何をさせても軽くこなすし、成績も全ての教科において満遍なくいい。
最初は何をやっても一歩先を行く磯山の存在が疎ましく思った時期もあったけれど、磯山の存在が俺の負けず嫌いなところを引き出してくれて、今ではお互いにいいライバルになったと思っている。
そんな磯山だからこそ、女子の人気はすこぶる良かったけれど、女子から好意を寄せられることをあまり良くは思っていないようだった。
磯山の周りには男同士で結婚しているような関係の人も多く、その影響で磯山もそっちかと思っていたが、男子にも特別な感情を持っていないのがわかって、こいつは誰にも興味がないのだと気づいた。
俺自身も特に好きな相手ができたこともなかったけれど、結婚して今でも仲良さそうな両親を見ていると、いつかは俺にもそんな相手ができるんだろうと勝手に思っていた。
それまでは友人同士でつるんでいればいい。
その相手には磯山がいればいいと思っていた。
そんな磯山の態度が急激に変わったのは、直純くんという存在だった。
事件がらみで磯山の伯父さんの家にやってきた彼と磯山が出会って、どうやら運命を感じたらしい。
彼と出会ってからの磯山はまるで人が変わったように甘々な笑顔を見せるようになった。
けれどそれは彼に対してだけ。
関係ない相手には今まで以上に興味を持たなくなったから、本当に彼が特別なんだろう。
ひとつ屋根の下で一緒に生活しながらも手を出さないのも、彼を大切に思っているが故のことだ。
そんな彼がどんな人なのか、気になるのも仕方がないだろう。
しかも、磯山の伯父さんと絢斗さんまでメロメロになって溺愛しているというんだから。
玄関で当然のようにただいまーと声をかける磯山の元に嬉しそうに駆けてくる可愛い子。
その時の磯山の蕩けるような甘い表情に驚きが隠せなかった。
磯山がこんな顔をするなんてな……。
ちょっと意地悪をしてみたくて、彼の顔を覗き込んで挨拶をすると、彼は顔を真っ赤にしながら新しくなったばかりの自分の名前を告げた。
それが妙に父性本能をくすぐられるというか……磯山やおじさんたちがメロメロになってしまうのがわかる気がした。
砂糖菓子のような甘々な二人に案内されて、磯山の部屋に入る。
その間もずっと磯山は彼をピッタリと寄り添わせたまま、離れようとしなかった。
「そんなに警戒しなくてもいいだろう」
「いいからお前、ちょっと離れとけ」
「わかったって」
少し離れた場所にあるソファーに腰を下ろすと、磯山はようやく落ち着いたようにビデオチャットの準備を始めた。
「すぐカールが入ってくると思うから」
そういうと俺の座っていたソファーの前にあるテーブルにパソコンを置いた。
「飲み物とってくるから、悪いけどカールが入ってきたら先に喋っててくれ。日本語でもドイツ語でもいいぞ」
「ああ、わかった」
当然のように彼も連れて部屋から出ていった。
ふふっ。まぁ俺と二人で部屋にはいさせないよな。
かといって彼に飲み物を運ばせるはずもないしな。
磯山の考えが手に取るようにわかって思わず笑ってしまう。
「あいつがな……本当に変わったよな」
つい独り言を溢していると、
ーhallo! ノボル!
と画面から声が聞こえた。
その可愛い声に何故だかドキッとしてしまった。
画面の彼を怖がらせてはいけないという気持ちが込み上げてきて、できるだけ優しく声をかけた。
ーHi.カール。ごめん、今、磯山は席を外しているんだ。俺は磯山の友人の村山だよ。
ーム、ララマ?
ーああ、ごめん。発音しにくいよな。龍弥でいいよ。リューヤ。
その言葉にカールの表情が一気に輝きを増した。
うわっ、なんて可愛いんだろう。
さっきの直純くんをみた時に思ったのとは全く違う感情が溢れてくる。
なんだ、これ。
ーリューヤ。ありがとう。あの、もしかして…リューヤは僕を引き受けてくれるっていうノボルの友達?
ーそう! 俺の方はオッケーだからカールが気にしないならうちに来てくれよ。
なんて話をしていると、トレイを持った磯山と直純くんが部屋に入ってきた。
「ああ、ごめん。もう始まってたか?」
「ああ、今、ちょうど自己紹介したところだよ」
ーカール、磯山と直純くんがきたよ。
そう声をかけると、カールは少しホッとしたように見えた。
俺は朝から楽しみにしていた。
もちろんメインは俺の家にホームスティ予定のカールと話すためだけど、なんと言っても今日は磯山の例のあの子に会えるんだから。
父さんたちが友人同士ということもあって、当然のように俺たちも友人になったけれど、磯山は文武両道を地でいくようなやつで、スポーツは何をさせても軽くこなすし、成績も全ての教科において満遍なくいい。
最初は何をやっても一歩先を行く磯山の存在が疎ましく思った時期もあったけれど、磯山の存在が俺の負けず嫌いなところを引き出してくれて、今ではお互いにいいライバルになったと思っている。
そんな磯山だからこそ、女子の人気はすこぶる良かったけれど、女子から好意を寄せられることをあまり良くは思っていないようだった。
磯山の周りには男同士で結婚しているような関係の人も多く、その影響で磯山もそっちかと思っていたが、男子にも特別な感情を持っていないのがわかって、こいつは誰にも興味がないのだと気づいた。
俺自身も特に好きな相手ができたこともなかったけれど、結婚して今でも仲良さそうな両親を見ていると、いつかは俺にもそんな相手ができるんだろうと勝手に思っていた。
それまでは友人同士でつるんでいればいい。
その相手には磯山がいればいいと思っていた。
そんな磯山の態度が急激に変わったのは、直純くんという存在だった。
事件がらみで磯山の伯父さんの家にやってきた彼と磯山が出会って、どうやら運命を感じたらしい。
彼と出会ってからの磯山はまるで人が変わったように甘々な笑顔を見せるようになった。
けれどそれは彼に対してだけ。
関係ない相手には今まで以上に興味を持たなくなったから、本当に彼が特別なんだろう。
ひとつ屋根の下で一緒に生活しながらも手を出さないのも、彼を大切に思っているが故のことだ。
そんな彼がどんな人なのか、気になるのも仕方がないだろう。
しかも、磯山の伯父さんと絢斗さんまでメロメロになって溺愛しているというんだから。
玄関で当然のようにただいまーと声をかける磯山の元に嬉しそうに駆けてくる可愛い子。
その時の磯山の蕩けるような甘い表情に驚きが隠せなかった。
磯山がこんな顔をするなんてな……。
ちょっと意地悪をしてみたくて、彼の顔を覗き込んで挨拶をすると、彼は顔を真っ赤にしながら新しくなったばかりの自分の名前を告げた。
それが妙に父性本能をくすぐられるというか……磯山やおじさんたちがメロメロになってしまうのがわかる気がした。
砂糖菓子のような甘々な二人に案内されて、磯山の部屋に入る。
その間もずっと磯山は彼をピッタリと寄り添わせたまま、離れようとしなかった。
「そんなに警戒しなくてもいいだろう」
「いいからお前、ちょっと離れとけ」
「わかったって」
少し離れた場所にあるソファーに腰を下ろすと、磯山はようやく落ち着いたようにビデオチャットの準備を始めた。
「すぐカールが入ってくると思うから」
そういうと俺の座っていたソファーの前にあるテーブルにパソコンを置いた。
「飲み物とってくるから、悪いけどカールが入ってきたら先に喋っててくれ。日本語でもドイツ語でもいいぞ」
「ああ、わかった」
当然のように彼も連れて部屋から出ていった。
ふふっ。まぁ俺と二人で部屋にはいさせないよな。
かといって彼に飲み物を運ばせるはずもないしな。
磯山の考えが手に取るようにわかって思わず笑ってしまう。
「あいつがな……本当に変わったよな」
つい独り言を溢していると、
ーhallo! ノボル!
と画面から声が聞こえた。
その可愛い声に何故だかドキッとしてしまった。
画面の彼を怖がらせてはいけないという気持ちが込み上げてきて、できるだけ優しく声をかけた。
ーHi.カール。ごめん、今、磯山は席を外しているんだ。俺は磯山の友人の村山だよ。
ーム、ララマ?
ーああ、ごめん。発音しにくいよな。龍弥でいいよ。リューヤ。
その言葉にカールの表情が一気に輝きを増した。
うわっ、なんて可愛いんだろう。
さっきの直純くんをみた時に思ったのとは全く違う感情が溢れてくる。
なんだ、これ。
ーリューヤ。ありがとう。あの、もしかして…リューヤは僕を引き受けてくれるっていうノボルの友達?
ーそう! 俺の方はオッケーだからカールが気にしないならうちに来てくれよ。
なんて話をしていると、トレイを持った磯山と直純くんが部屋に入ってきた。
「ああ、ごめん。もう始まってたか?」
「ああ、今、ちょうど自己紹介したところだよ」
ーカール、磯山と直純くんがきたよ。
そう声をかけると、カールは少しホッとしたように見えた。
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