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自分にだけ

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「それで、俺に相談したいことがあるらしいって秀吾からは聞いていたんだけど……合ってる?」

運転しながら、俺に話しかけてくれる声はなんとも優しげで頼もしい。
やっぱり伯父さんが相談相手に声をかけてくれるだけあるなとホッとする。

「はい。あの……周防さんとその、恋人さんは幼馴染だって聞いて……ずっと一緒に過ごしていたんですよね?」

「ああ、そうだね。初めて会ったのは1歳になった頃だったか。両親曰く、その時から俺は秀吾が好きで離れようとしなかったようだよ」

「へぇ、そうなんですか。それはすごいですね」

「幼稚園から大学まで同じ学校に通って、家も近かったから放課後もほとんど一緒に過ごしていたし、朝は起こしに行ったりもしていたよ。もちろん、一緒の部屋に泊まることもあったかな」

家が別々だったとはいえ、学校も同じで泊まりもしていたなら、ある意味俺より長い時間を一緒に過ごしていたんだろう。

「あの……そんなに長い時間一緒で、その……我慢できたんですか?」

「ああ、なるほど。そういう相談か……。ははっ。やっぱり高校生だな。我慢できなくなってきた?」

「その……彼と出会うまでは、そんな欲を感じたこともほぼなかったし、普通に溜まったら処理すればいいくらいの感じだったんですけど、今、毎日一緒に寝てるんで興奮するっていうか……」

「まぁ好きな相手と一緒に寝てて興奮しない方がおかしいな。それでどうしてるんだ?」

「風呂場で欲を出して、寝ている間は必死に抑えて、朝、彼が起きる前に処理してます。それでも興奮しますけど……。俺自分がこんなにエロいって思わなくて……」

「ははっ。それが普通だよ。むしろそれで我慢できてるだけ偉いと思うよ」

「そう、なんですか?」

「ああ、俺も同じようなものだったよ。秀吾は本当に何も知らないから、普通に夢精を病気だと思っていたからね」

「えっ!!」

周防さんの言葉に驚きつつも、直くんも同じようなものかもしれないと思ってしまった。
なんせ、そういう系のことは何も知らないのだから。

「それで、どうしたんですか?」

「ずっと悩んでいたみたいだったから話を聞いたら夢精だってことがわかって、説明するのに苦労したけど、問題はその後だったな」

「何があったんですか?」

「なんとかやり方を教えたけど、自分じゃできないっていい出して……俺にやり方を教えてって言ってきたんだ」

「――っ!!! それは……っ!!」

想像するだけで鼻血が出そうだ。

「一度手伝ってやったら本人は満足したみたいでね、でもこっちはその可愛い姿を忘れられるわけがないから余計に興奮しまくって大変だったよ」

「ですよね……俺も、我慢できる気しないです……」

「でも、逆を言えば、自分しかその可愛い姿は見られないんだよ」

「えっ……」

「だってそうだろう? 秀吾は俺だからその姿を見せてくれたんだ。君の愛しい子もそうじゃないか? その優越感だけで数年くらいは我慢できるはずだよ。その子は今いくつ?」

「14歳、です……」

「なら、あと4年もないな。たっぷりと愛情をかけて初めての日が最高の日になるようにしてやったらいい。今思えば、手を出せなかった時期もそれはそれで幸せだったよ。我慢との戦いになるけど、それはそれで今しかできないことだからね」

「そう、ですね……確かに、そうかも」

「今度、秀吾を連れて会いに来るから、君の可愛い子に会わせてくれ。きっと秀吾と仲良くなれると思うよ」

「はい! ぜひ、会いにきてください!」

「じゃあ、決まりだな」

そう言って周防さんはにっこりと笑顔を見せた。

「いつでもなんでも相談してくれていいから」

事務所前で車を降りる俺に、そう声をかけて周防さんは車で去っていった。
ああ、いいタイミングでいい人に出会えて良かったな。

心が穏やかになるのを感じながら伯父さんの事務所の扉を開くと、村山の楽しげな声が聞こえてきた。

<side磯山卓>

「こんにちはー」

「ああ、いらっしゃい。あれ? 昇は一緒じゃないのか?」

「磯山は買い物があるっていうんで、掃除当番を代わってやってからこっちにきたんですけど、その様子だと磯山はまだですか?」

「ああ。まだ帰ってきてないよ。君なら先に家に入って待っていてもいいよ」

「いえ、ここで待たせてもらいます。流石に俺だけで家に上がるのはちょっと……」

絢斗と直くんだけの家に入るのは気まずいか。
きっと私と昇の気持ちを理解してくれているのだろうな。
さすが村山くんの家はしっかりと教育されている。

「ははっ。じゃあ、飲み物を出そう。中谷なかたにくん、何かお菓子はあったか?」

「はい。すぐに用意しますね」

そういうが早いが、中谷くんはすぐにアイスコーヒーとクッキーを持ってきた。

「ミルクとシロップは必要かな?」

「あ、大丈夫です。ありがとうございます」

やっぱりブラックか。だろうな。

彼はアイスコーヒーに口をつけると喉が渇いていたのかあっという間に半分以上を飲み切った。

「おかわりもあるから、声をかけてくれ」

そう言って仕事を始めると、彼は興味津々に私たちを見ていた。

「どうかした?」

「あ、いえ。弁護士ってかなり興味があって……」

「そうか、じゃあ法学部を?」

「一応そのつもりです」

「てっきりお父さんと同じ経済に行くのかと思っていたよ」

「俺はサラリーマンには向いてないかなって思ってて……」

「確かに、君は弁護士には向いているだろうね。人当たりもいいし、依頼人も話しやすいかもしれないな。ねぇ、中谷くん」

「ええ。そうですね。優秀な弁護士になってくれたらうちにきてもらえますよ」

「ははっ。そうなればいいがな」

そういうと、村山くんは嬉しそうに笑顔を見せていた。
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