74 / 305
自分にだけ
しおりを挟む
「それで、俺に相談したいことがあるらしいって秀吾からは聞いていたんだけど……合ってる?」
運転しながら、俺に話しかけてくれる声はなんとも優しげで頼もしい。
やっぱり伯父さんが相談相手に声をかけてくれるだけあるなとホッとする。
「はい。あの……周防さんとその、恋人さんは幼馴染だって聞いて……ずっと一緒に過ごしていたんですよね?」
「ああ、そうだね。初めて会ったのは1歳になった頃だったか。両親曰く、その時から俺は秀吾が好きで離れようとしなかったようだよ」
「へぇ、そうなんですか。それはすごいですね」
「幼稚園から大学まで同じ学校に通って、家も近かったから放課後もほとんど一緒に過ごしていたし、朝は起こしに行ったりもしていたよ。もちろん、一緒の部屋に泊まることもあったかな」
家が別々だったとはいえ、学校も同じで泊まりもしていたなら、ある意味俺より長い時間を一緒に過ごしていたんだろう。
「あの……そんなに長い時間一緒で、その……我慢できたんですか?」
「ああ、なるほど。そういう相談か……。ははっ。やっぱり高校生だな。我慢できなくなってきた?」
「その……彼と出会うまでは、そんな欲を感じたこともほぼなかったし、普通に溜まったら処理すればいいくらいの感じだったんですけど、今、毎日一緒に寝てるんで興奮するっていうか……」
「まぁ好きな相手と一緒に寝てて興奮しない方がおかしいな。それでどうしてるんだ?」
「風呂場で欲を出して、寝ている間は必死に抑えて、朝、彼が起きる前に処理してます。それでも興奮しますけど……。俺自分がこんなにエロいって思わなくて……」
「ははっ。それが普通だよ。むしろそれで我慢できてるだけ偉いと思うよ」
「そう、なんですか?」
「ああ、俺も同じようなものだったよ。秀吾は本当に何も知らないから、普通に夢精を病気だと思っていたからね」
「えっ!!」
周防さんの言葉に驚きつつも、直くんも同じようなものかもしれないと思ってしまった。
なんせ、そういう系のことは何も知らないのだから。
「それで、どうしたんですか?」
「ずっと悩んでいたみたいだったから話を聞いたら夢精だってことがわかって、説明するのに苦労したけど、問題はその後だったな」
「何があったんですか?」
「なんとかやり方を教えたけど、自分じゃできないっていい出して……俺にやり方を教えてって言ってきたんだ」
「――っ!!! それは……っ!!」
想像するだけで鼻血が出そうだ。
「一度手伝ってやったら本人は満足したみたいでね、でもこっちはその可愛い姿を忘れられるわけがないから余計に興奮しまくって大変だったよ」
「ですよね……俺も、我慢できる気しないです……」
「でも、逆を言えば、自分しかその可愛い姿は見られないんだよ」
「えっ……」
「だってそうだろう? 秀吾は俺だからその姿を見せてくれたんだ。君の愛しい子もそうじゃないか? その優越感だけで数年くらいは我慢できるはずだよ。その子は今いくつ?」
「14歳、です……」
「なら、あと4年もないな。たっぷりと愛情をかけて初めての日が最高の日になるようにしてやったらいい。今思えば、手を出せなかった時期もそれはそれで幸せだったよ。我慢との戦いになるけど、それはそれで今しかできないことだからね」
「そう、ですね……確かに、そうかも」
「今度、秀吾を連れて会いに来るから、君の可愛い子に会わせてくれ。きっと秀吾と仲良くなれると思うよ」
「はい! ぜひ、会いにきてください!」
「じゃあ、決まりだな」
そう言って周防さんはにっこりと笑顔を見せた。
「いつでもなんでも相談してくれていいから」
事務所前で車を降りる俺に、そう声をかけて周防さんは車で去っていった。
ああ、いいタイミングでいい人に出会えて良かったな。
心が穏やかになるのを感じながら伯父さんの事務所の扉を開くと、村山の楽しげな声が聞こえてきた。
<side磯山卓>
「こんにちはー」
「ああ、いらっしゃい。あれ? 昇は一緒じゃないのか?」
「磯山は買い物があるっていうんで、掃除当番を代わってやってからこっちにきたんですけど、その様子だと磯山はまだですか?」
「ああ。まだ帰ってきてないよ。君なら先に家に入って待っていてもいいよ」
「いえ、ここで待たせてもらいます。流石に俺だけで家に上がるのはちょっと……」
絢斗と直くんだけの家に入るのは気まずいか。
きっと私と昇の気持ちを理解してくれているのだろうな。
さすが村山くんの家はしっかりと教育されている。
「ははっ。じゃあ、飲み物を出そう。中谷くん、何かお菓子はあったか?」
「はい。すぐに用意しますね」
そういうが早いが、中谷くんはすぐにアイスコーヒーとクッキーを持ってきた。
「ミルクとシロップは必要かな?」
「あ、大丈夫です。ありがとうございます」
やっぱりブラックか。だろうな。
彼はアイスコーヒーに口をつけると喉が渇いていたのかあっという間に半分以上を飲み切った。
「おかわりもあるから、声をかけてくれ」
そう言って仕事を始めると、彼は興味津々に私たちを見ていた。
「どうかした?」
「あ、いえ。弁護士ってかなり興味があって……」
「そうか、じゃあ法学部を?」
「一応そのつもりです」
「てっきりお父さんと同じ経済に行くのかと思っていたよ」
「俺はサラリーマンには向いてないかなって思ってて……」
「確かに、君は弁護士には向いているだろうね。人当たりもいいし、依頼人も話しやすいかもしれないな。ねぇ、中谷くん」
「ええ。そうですね。優秀な弁護士になってくれたらうちにきてもらえますよ」
「ははっ。そうなればいいがな」
そういうと、村山くんは嬉しそうに笑顔を見せていた。
運転しながら、俺に話しかけてくれる声はなんとも優しげで頼もしい。
やっぱり伯父さんが相談相手に声をかけてくれるだけあるなとホッとする。
「はい。あの……周防さんとその、恋人さんは幼馴染だって聞いて……ずっと一緒に過ごしていたんですよね?」
「ああ、そうだね。初めて会ったのは1歳になった頃だったか。両親曰く、その時から俺は秀吾が好きで離れようとしなかったようだよ」
「へぇ、そうなんですか。それはすごいですね」
「幼稚園から大学まで同じ学校に通って、家も近かったから放課後もほとんど一緒に過ごしていたし、朝は起こしに行ったりもしていたよ。もちろん、一緒の部屋に泊まることもあったかな」
家が別々だったとはいえ、学校も同じで泊まりもしていたなら、ある意味俺より長い時間を一緒に過ごしていたんだろう。
「あの……そんなに長い時間一緒で、その……我慢できたんですか?」
「ああ、なるほど。そういう相談か……。ははっ。やっぱり高校生だな。我慢できなくなってきた?」
「その……彼と出会うまでは、そんな欲を感じたこともほぼなかったし、普通に溜まったら処理すればいいくらいの感じだったんですけど、今、毎日一緒に寝てるんで興奮するっていうか……」
「まぁ好きな相手と一緒に寝てて興奮しない方がおかしいな。それでどうしてるんだ?」
「風呂場で欲を出して、寝ている間は必死に抑えて、朝、彼が起きる前に処理してます。それでも興奮しますけど……。俺自分がこんなにエロいって思わなくて……」
「ははっ。それが普通だよ。むしろそれで我慢できてるだけ偉いと思うよ」
「そう、なんですか?」
「ああ、俺も同じようなものだったよ。秀吾は本当に何も知らないから、普通に夢精を病気だと思っていたからね」
「えっ!!」
周防さんの言葉に驚きつつも、直くんも同じようなものかもしれないと思ってしまった。
なんせ、そういう系のことは何も知らないのだから。
「それで、どうしたんですか?」
「ずっと悩んでいたみたいだったから話を聞いたら夢精だってことがわかって、説明するのに苦労したけど、問題はその後だったな」
「何があったんですか?」
「なんとかやり方を教えたけど、自分じゃできないっていい出して……俺にやり方を教えてって言ってきたんだ」
「――っ!!! それは……っ!!」
想像するだけで鼻血が出そうだ。
「一度手伝ってやったら本人は満足したみたいでね、でもこっちはその可愛い姿を忘れられるわけがないから余計に興奮しまくって大変だったよ」
「ですよね……俺も、我慢できる気しないです……」
「でも、逆を言えば、自分しかその可愛い姿は見られないんだよ」
「えっ……」
「だってそうだろう? 秀吾は俺だからその姿を見せてくれたんだ。君の愛しい子もそうじゃないか? その優越感だけで数年くらいは我慢できるはずだよ。その子は今いくつ?」
「14歳、です……」
「なら、あと4年もないな。たっぷりと愛情をかけて初めての日が最高の日になるようにしてやったらいい。今思えば、手を出せなかった時期もそれはそれで幸せだったよ。我慢との戦いになるけど、それはそれで今しかできないことだからね」
「そう、ですね……確かに、そうかも」
「今度、秀吾を連れて会いに来るから、君の可愛い子に会わせてくれ。きっと秀吾と仲良くなれると思うよ」
「はい! ぜひ、会いにきてください!」
「じゃあ、決まりだな」
そう言って周防さんはにっこりと笑顔を見せた。
「いつでもなんでも相談してくれていいから」
事務所前で車を降りる俺に、そう声をかけて周防さんは車で去っていった。
ああ、いいタイミングでいい人に出会えて良かったな。
心が穏やかになるのを感じながら伯父さんの事務所の扉を開くと、村山の楽しげな声が聞こえてきた。
<side磯山卓>
「こんにちはー」
「ああ、いらっしゃい。あれ? 昇は一緒じゃないのか?」
「磯山は買い物があるっていうんで、掃除当番を代わってやってからこっちにきたんですけど、その様子だと磯山はまだですか?」
「ああ。まだ帰ってきてないよ。君なら先に家に入って待っていてもいいよ」
「いえ、ここで待たせてもらいます。流石に俺だけで家に上がるのはちょっと……」
絢斗と直くんだけの家に入るのは気まずいか。
きっと私と昇の気持ちを理解してくれているのだろうな。
さすが村山くんの家はしっかりと教育されている。
「ははっ。じゃあ、飲み物を出そう。中谷くん、何かお菓子はあったか?」
「はい。すぐに用意しますね」
そういうが早いが、中谷くんはすぐにアイスコーヒーとクッキーを持ってきた。
「ミルクとシロップは必要かな?」
「あ、大丈夫です。ありがとうございます」
やっぱりブラックか。だろうな。
彼はアイスコーヒーに口をつけると喉が渇いていたのかあっという間に半分以上を飲み切った。
「おかわりもあるから、声をかけてくれ」
そう言って仕事を始めると、彼は興味津々に私たちを見ていた。
「どうかした?」
「あ、いえ。弁護士ってかなり興味があって……」
「そうか、じゃあ法学部を?」
「一応そのつもりです」
「てっきりお父さんと同じ経済に行くのかと思っていたよ」
「俺はサラリーマンには向いてないかなって思ってて……」
「確かに、君は弁護士には向いているだろうね。人当たりもいいし、依頼人も話しやすいかもしれないな。ねぇ、中谷くん」
「ええ。そうですね。優秀な弁護士になってくれたらうちにきてもらえますよ」
「ははっ。そうなればいいがな」
そういうと、村山くんは嬉しそうに笑顔を見せていた。
1,757
お気に入りに追加
2,165
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる