71 / 360
ずっと一緒だよ
しおりを挟む
風呂から出てきた直くんと入れ代わりに風呂に入ろうとして、直くんに呼び止められた。
「あの……僕、お父さんに手紙を書きたいんですけど……」
「ああ、そうか。ちょっと待ってて」
直くんの言おうとしていることに気づき、俺は実家から運び込んだ荷物の中から封筒と便箋のセットを取り出した。
「これ、前にカールに手紙を書いて残ったやつだけどよかったら使って」
「いいんですか?」
「うん、直くんに使って欲しいんだ」
「昇さん……わぁ、綺麗な和柄ですね」
袋から取り出した直くんは素直な感想を伝えてくれる。
それがとても嬉しい。
「ああ、カールが折り紙が好きでね。こういうので送ると喜ぶんだよ」
「こんな素敵な便箋と封筒で送られてきたら僕も嬉しいです」
「ふふっ。直くんのお父さんにもそう思ってもらえたら嬉しいよ。じゃあ、この机使っていいから、ゆっくり書いてて。俺はお風呂に入ってくるよ」
「はい。行ってらっしゃい」
直くんに見送られ、俺は風呂に向かった。
少し時間をかけたほうがいいか。
邪魔はしたくない。
直くんが入った後の風呂に入ると、ほのかに直くんの匂いを感じられて一気に興奮してくる。
さっきあれだけ欲望の蜜を出したのに、もう滾ってしまっている。
直くんの邪魔をしないように少し時間を……なんて思っていたけれど、無理やり時間を伸ばさなくてもこの分なら時間がかかりそうだ。
可愛い直くんの姿を思い出しながら、何度か蜜を吐き出し、直くんに気づかれないように念入りに身体を洗い流し、風呂を出た。
念の為、扉をノックして開けたけれど、まだ直くんは机に向かったままだった。
「うっ……ぐすっ……」
えっ? 泣いてる?
「直くん、大丈夫?」
心配になって急いで駆け寄ると数枚の便箋いっぱいに文章が書かれていた。
お父さんへの思いが溢れたんだろうな……。
その手紙は視界に入れないようにして、直くんを抱きしめると、
「の、ぼるさん……」
と涙声で俺に抱きついてきた。
「少し休もうか?」
そういうと直くんは首を横に振って、ちょうど書き終わったところだと教えてくれた。
「お父さんが僕と会わないと思っても、僕はずっと会いたいと願ってるって。幸せな姿をお父さんに見てほしいって……そう書いたんです」
「そうか……それが直くんの気持ちなんだな。すごくいいと思うよ」
抱きしめながら頭を撫でると、
「昇さんがそばにいてくれて嬉しいです……」
と言ってくれた。
「ふふっ。俺も直くんのそばにいられて嬉しいよ。メッセージでも書いただろう? これからずっと一緒だって。だから安心して」
「はい。ありがとうございます」
しばらく抱きしめていると、落ち着きを取り戻した直くんは書き終わった手紙を封筒に入れて糊付けをした。
「これ、パパに渡してきてもいいですか?」
「えっ? あ、いや。もう寝ているかもしれなから、明日の朝渡せばいいよ」
「はい。そうします」
さっきのあれでもう来ないと思っているかもしれないし、流石にこの時間から直くんを伯父さんたちの部屋には行かせられないからな。
「直くんはもう寝たほうがいいよ。俺も少ししたら寝るから」
「はい。おやすみなさい」
ベッドに直くんを寝かせて、俺は机に戻った。
ふと直くんに視線を向けると、二体のクマに囲まれて幸せそうに眠っているのが見える。
俺がいない間だけだからなと嫉妬めいた感情をクマにぶつけながら、集中して勉強をした後で、俺もベッドに潜り込んだ。
ふわりと漂ってくる直くんの甘い香りに理性が飛びそうになりながらも、必死に押し留めながら眠りについた。
翌朝、直くんが起きるよりも早く起きて、処理を済ませてから直くんを起こす。
どれだけ大変でも、直くんと一緒に寝る権利も、直くんの寝顔を見る権利も、朝一番に俺を見てくれる権利も逃すわけにはいかないんだ。
少し寝起きの悪い直くんのぽやぽやとした姿を見つめられる幸せを感じながら、俺の今日の一日は始まった。
「あの、パパ……これ、お父さんへの手紙です」
「わかった。必ずお父さんに届けるから安心してくれ」
「はい。お願いします」
直くんが伯父さんに手紙を渡すのを見届けてから、学校に向かう。
「直くん、今日は友達連れて帰ってくるから。でも気さくでいいやつだから心配しないでいいよ」
「はい。今日またカールさんとお話しできるんですよね。楽しみにしてます」
「ああ、そうだ! 休み時間にスマホ見られるから、メッセージとか送ってくれると嬉しい」
「いいんですか? 昼間に昇さんとやりとりできるなんて僕も嬉しいです」
「じゃあ、行ってくるよ」
直くんに作ってもらったおにぎりを鞄に入れて、声をかけると、
「はい。行ってらっしゃい!」
と満面の笑みで手を振ってくれる。
これ……ほぼほぼ新婚家庭みたいだな。
にやけ顔を制御できないまま、可愛い直くんに見送られ俺は学校に向かった。
「あの……僕、お父さんに手紙を書きたいんですけど……」
「ああ、そうか。ちょっと待ってて」
直くんの言おうとしていることに気づき、俺は実家から運び込んだ荷物の中から封筒と便箋のセットを取り出した。
「これ、前にカールに手紙を書いて残ったやつだけどよかったら使って」
「いいんですか?」
「うん、直くんに使って欲しいんだ」
「昇さん……わぁ、綺麗な和柄ですね」
袋から取り出した直くんは素直な感想を伝えてくれる。
それがとても嬉しい。
「ああ、カールが折り紙が好きでね。こういうので送ると喜ぶんだよ」
「こんな素敵な便箋と封筒で送られてきたら僕も嬉しいです」
「ふふっ。直くんのお父さんにもそう思ってもらえたら嬉しいよ。じゃあ、この机使っていいから、ゆっくり書いてて。俺はお風呂に入ってくるよ」
「はい。行ってらっしゃい」
直くんに見送られ、俺は風呂に向かった。
少し時間をかけたほうがいいか。
邪魔はしたくない。
直くんが入った後の風呂に入ると、ほのかに直くんの匂いを感じられて一気に興奮してくる。
さっきあれだけ欲望の蜜を出したのに、もう滾ってしまっている。
直くんの邪魔をしないように少し時間を……なんて思っていたけれど、無理やり時間を伸ばさなくてもこの分なら時間がかかりそうだ。
可愛い直くんの姿を思い出しながら、何度か蜜を吐き出し、直くんに気づかれないように念入りに身体を洗い流し、風呂を出た。
念の為、扉をノックして開けたけれど、まだ直くんは机に向かったままだった。
「うっ……ぐすっ……」
えっ? 泣いてる?
「直くん、大丈夫?」
心配になって急いで駆け寄ると数枚の便箋いっぱいに文章が書かれていた。
お父さんへの思いが溢れたんだろうな……。
その手紙は視界に入れないようにして、直くんを抱きしめると、
「の、ぼるさん……」
と涙声で俺に抱きついてきた。
「少し休もうか?」
そういうと直くんは首を横に振って、ちょうど書き終わったところだと教えてくれた。
「お父さんが僕と会わないと思っても、僕はずっと会いたいと願ってるって。幸せな姿をお父さんに見てほしいって……そう書いたんです」
「そうか……それが直くんの気持ちなんだな。すごくいいと思うよ」
抱きしめながら頭を撫でると、
「昇さんがそばにいてくれて嬉しいです……」
と言ってくれた。
「ふふっ。俺も直くんのそばにいられて嬉しいよ。メッセージでも書いただろう? これからずっと一緒だって。だから安心して」
「はい。ありがとうございます」
しばらく抱きしめていると、落ち着きを取り戻した直くんは書き終わった手紙を封筒に入れて糊付けをした。
「これ、パパに渡してきてもいいですか?」
「えっ? あ、いや。もう寝ているかもしれなから、明日の朝渡せばいいよ」
「はい。そうします」
さっきのあれでもう来ないと思っているかもしれないし、流石にこの時間から直くんを伯父さんたちの部屋には行かせられないからな。
「直くんはもう寝たほうがいいよ。俺も少ししたら寝るから」
「はい。おやすみなさい」
ベッドに直くんを寝かせて、俺は机に戻った。
ふと直くんに視線を向けると、二体のクマに囲まれて幸せそうに眠っているのが見える。
俺がいない間だけだからなと嫉妬めいた感情をクマにぶつけながら、集中して勉強をした後で、俺もベッドに潜り込んだ。
ふわりと漂ってくる直くんの甘い香りに理性が飛びそうになりながらも、必死に押し留めながら眠りについた。
翌朝、直くんが起きるよりも早く起きて、処理を済ませてから直くんを起こす。
どれだけ大変でも、直くんと一緒に寝る権利も、直くんの寝顔を見る権利も、朝一番に俺を見てくれる権利も逃すわけにはいかないんだ。
少し寝起きの悪い直くんのぽやぽやとした姿を見つめられる幸せを感じながら、俺の今日の一日は始まった。
「あの、パパ……これ、お父さんへの手紙です」
「わかった。必ずお父さんに届けるから安心してくれ」
「はい。お願いします」
直くんが伯父さんに手紙を渡すのを見届けてから、学校に向かう。
「直くん、今日は友達連れて帰ってくるから。でも気さくでいいやつだから心配しないでいいよ」
「はい。今日またカールさんとお話しできるんですよね。楽しみにしてます」
「ああ、そうだ! 休み時間にスマホ見られるから、メッセージとか送ってくれると嬉しい」
「いいんですか? 昼間に昇さんとやりとりできるなんて僕も嬉しいです」
「じゃあ、行ってくるよ」
直くんに作ってもらったおにぎりを鞄に入れて、声をかけると、
「はい。行ってらっしゃい!」
と満面の笑みで手を振ってくれる。
これ……ほぼほぼ新婚家庭みたいだな。
にやけ顔を制御できないまま、可愛い直くんに見送られ俺は学校に向かった。
1,909
お気に入りに追加
2,256
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです
柚木ゆず
ファンタジー
優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。
ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。
ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。


愛する人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」
応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。
三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。
『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる