ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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そっくりな笑顔

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<side直純>

僕がパパとあやちゃんの子どもになりたいと言ったから、今夜パーティーをしてくれることに決まった。
僕にとっては生まれて初めてのパーティー。

クラスメイトが誕生日だとか、クリスマスだとかにパーティーをした話を聞いて、どんなものか気になっていた。
図書館にある本でパーティーでは豪華な食事やケーキなどを食べるというのを知って、夢の世界だと思っていた。
いつかパーティーというものに参加できたらいいなんて思っていたけれど、まさか誕生日でもクリスマスでもない日にパーティーがあるなんて思っても見なかった。

あやちゃんは授業の合間の休憩で僕のところに来てくれるたびに、

「ふふっ。今日のパーティー、卓さんが美味しい料理をいっぱい作ってくれてるから楽しみにしててね」

とウキウキした声をかけてくれて、僕も楽しみでたまらなかった。

夕方、パパは大きな荷物をたくさん下げていつもよりもずっと早く家に帰ってきた。

「お帰りなさい!!」

「ああ、直くん。ただいま。絢斗、おいで」

パパは僕に挨拶をしてからあやちゃんを呼び、

「お帰りなさい」

と声をかけたあやちゃんの唇にちゅっと重ねて優しい笑顔を向ける。

「ああ、ただいま。今からパーティーの料理を作るから、楽しみにしていてくれ」

そう言って大きな荷物をキッチンに置き、一度部屋で着替えてからすぐに戻ってきた。
エプロンをつけて料理モードに入ったパパはものすごくかっこいい。

あやちゃんとしばらく、料理をするパパを眺めているとガチャっと扉が開く音が聞こえた。

「ただいまー」

「あっ、昇さんだ!」

帰ってきてくれたのが嬉しくて、急いで玄関に向かうと、僕の目に飛び込んできたのは大きなぬいぐるみを抱えている昇さんの姿。

約束のぬいぐるみだと言って、大きな大きなクマさんを僕に抱っこさせてくれた。

初めてのぬいぐるみに震えてしまう。
だって、ずっと欲しかったから。

震える手で抱っこしたそのクマさんはふわふわとしてものすごく可愛かった。
そのふわふわに我慢できずに顔を埋めると、心地いい感触に包まれる。

可愛すぎてたまらない。

昇さんはさらに、

「こっちもあるよ」

と胸に抱いていた小さなクマさんを抱っこさせてくれた。
さっきより一回り小さいクマさんもふわふわで可愛い。

まさか二体ももらえるなんて思ってなかった。

その上、

「後でプレゼントもあるからね」

と言われて驚いてしまう。

僕の人生でこんなにもプレゼントをもらうなんてこと、初めてだからどうしていいかわからない。
あまりの感動に僕はお礼を言うことしかできなかった。

「今日、うちの両親もパーティーに呼んでるからちょっと連れてくるから待っててね」

中に入るのかと思ったら、昇さんはそう言ってまた玄関を開けて出て行ってしまった。

昇さんの、両親?
その人たちがわざわざ僕のために?

てっきり四人でパーティーをするのかと思っていたから、びっくりしてしまう。

「あれ? 昇くんは?」

玄関で待っていると、あやちゃんとパパが来てくれた。

「あ、今ご両親を呼びに……」

「ああ、そうか。一緒にきたんだな」

「パパは知ってたんですか?」

「ああ、みんなで直くんのパーティーがしたかったからね」

「ふふっ。大勢でお祝いする方が楽しいもんね」

「パパ……あやちゃん……」

僕がこの家にこんなにも受け入れてもらえているのが嬉しくて涙が出そうになる。

必死に堪えていると、玄関が開き昇さんとご両親が入ってきた。
昇さんは

「伯父さん、俺これを運ぶから父さんたちをよろしく」

というと大きな箱を掲げて、キッチンへと入っていった。

昇さんがいなくなって、目の前にご両親がいて緊張してしまうけれど、綺麗なお母さんが僕の目の高さに屈んでくれて、

「あなたが直くんね?」

「は、はい」

「――っ、可愛いわ! ねぇ、絢斗さん。早く中に行きましょう!」

「ふふっ。二葉さんも直くんはすぐに気にいると思ったんだよね。行こう、行こう!」

あっという間にあやちゃんと昇さんのお母さんの間に挟まれてリビングに連れて行かれると、そのままソファーに座ることになった。

僕はどうしていいかわからなくて、昇さんからもらったクマを抱きしめ続けていると

「母さんっ、絢斗さんも! 直くんを怖がらせないでくれ!」

と言う声がしたと思ったら、昇さんが駆け寄ってきてくれた。

「あら、怖がらせるなんて失礼ね。ねぇ、直くん。怖くないわよね?」

「は、はい。すごく、笑顔が昇さんにそっくりで安心します」

正直にそう答えると、昇さんのお母さんはとっても嬉しそうに見えた。
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