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可愛いクマと可愛い直くん

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<side昇>

「村山のところに先に送ってくれる?」

「ああ、任せておきなさい。龍弥くん、昇の買い物に付き合ってくれてありがとう」

「いえ、俺もいいものが買えたんでよかったです」

「ははっ。龍弥くんもぬいぐるみ好きだとは知らなかったな。お母さんの影響かな?」

「違うんです、俺もちょっとプレゼントしようかと……」

そう言って口篭った村山の表情に何かを察したらしく、父さんは

「そうか、気に入ってくれるといいな」

とそれ以上突っ込んだことは聞いてこなかった。

「それよりケーキは?」

「バッチリ用意できてるわよ」

「よかった。母さんがそういうなら安心だよ」

そんな話をしているうちに、車は村山の家の前に到着した。

「おじさん、ありがとう。磯山、また明日な」

「ああ、今日はありがとうな」

村山は俺たちの車が見えなくなるまでしばらく見送ってくれていた。

「それで、そのぬいぐるみ……何で二体も買ったんだ?」

「えっ? いや、別にいいだろ。多い方が喜ぶと思ったんだよ」

「ふふっ。そうか」

なんとなく理由をいうのは憚られて隠してみたけれど、父さんのその表情は何かを感じている気はした。
本当に父さんも伯父さんもなんでも察しが良すぎて時々困ってしまう。

まぁ、俺は直くんが喜んでくれればそれでいいんだ。

伯父さんの家の駐車場に車を止め、自宅にあがりながら

「父さんたちはここで待っててくれ。先にこれ渡して喜ばせたいから」

というと、

「ええー、私も直純くんが喜ぶところ見たいわ」

と言われてしまった。

「母さんたちが来ると、その驚きでぬいぐるみの喜びが出せないかもしれないだろ」

「わかったわよ。でもすぐに呼んでね。ここで待ってるから」

「わかった、わかった」

なんとか納得してくれた父さんと母さんをその場に残し、俺は一人で……いや、ぬいぐるみ二体と一緒に玄関の扉を開けた。

「昇さんっ!! お帰りなさ――えっ?」

「ふふっ。約束のクマのぬいぐるみだよ」

「――っ!!! ほ、本当に……?」

「ああ、抱っこしてあげて」

もちろん抱っこさせる方は俺に似た方のデカいクマ。
感動して震えている直くんの手をとって抱っこさせると

「――っ、ふわふわ……っ、可愛いっ!!」

嬉しそうにクマに顔を埋める。
それを可愛いと思う一方で、俺に似たクマを羨ましく思ってしまう。
ぬいぐるみに嫉妬するなんてかなり狭量すぎて誰にも言えない。
でもこんなに喜んでくれてるのなら、いいと思うことにしよう。

「こっちもあるよ」

そう言って小さなクマも抱っこさせようとするけれど、直くんの小さな腕には二体を抱っこするのは難しそうだ。

一度大きなクマを受け取って、小さなクマを抱っこさせると、

「こっちもふわふわ。可愛いです」

と目を細めて喜んでくれた。

「後でプレゼントもあるからね」

「えっ、でもクマさんももらったのに……」

「これは前からの約束だから関係ないよ。プレゼントは今日のお祝いのプレゼントなんだから」

「昇さん……ありがとうございます」

「今日、うちの両親もパーティーに呼んでるからちょっと連れてくるから待っててね」

「えっ……」

驚く直くんをその場に残し、俺は大きなクマを抱えたまま一度玄関を出て父さんたちを迎えに行った。

「遅いわよ、昇」

「ごめん、ごめん」

「ぬいぐるみ、喜んでくれた?」

「ああ。とっても。今、小さい方のクマを抱っこしてるよ」

「それならよかったわ。じゃあ、毅さん。いきましょう」

「父さん。持とうか?」

「そうだな。後で見せて喜ばせたいから、先に冷蔵庫に入れておいてくれ」

箱を預かって一緒に玄関に向かうと、

「いらっしゃい!」

玄関には絢斗さんと伯父さんの姿もあった。
どうやら俺が直くんを待たせている間に出てきてくれたみたいだ。

「伯父さん、俺これを運ぶから父さんたちをよろしく」

「ああ。わかった」

さっとみんなが集まった玄関をすり抜けて冷蔵庫に行き、ケーキを箱ごと入れる。
大きな冷蔵庫で助かったな。

あっ、直くんを一人にして緊張しているかもしれない。

それに気づいて急いでリビングに戻ると、絢斗さんと母さんの間に挟まれて座る小さなクマを抱っこしたままの直くんの姿が見えた。
緊張して縮こまっているように見えて、俺は急いで駆け寄った。
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