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特別なケーキを
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<side二葉>
「お義兄さん、なんだって?」
「ああ、ほら。家で預かっていた、昇が好意を寄せている子だけど……」
「うん、直純くん」
「そう、その直純くんを兄さんの養子にすることにしたって」
「えっ? 本当に?」
絢斗さんの話ではゆくゆくはそうなるかもと聞いていたけれど、それにしても急すぎてびっくりしてしまう。
「ああ、もちろん絢斗さんも賛成しているらしい。それで今夜、兄さんの家でお祝いをするから来て欲しいって誘ってくれたんだ。どうする?」
「もちろんいくわ!! 昇が好きになった子にも会いたいし、それに絢斗さんが喜ぶ顔が見たいわ! もう、昇も早く教えてくれたら良かったのに、サプライズのつもりだったのかしら?」
「いや、かなり急に決まったようだから、昇も連絡をし損ねてたって兄さんが話していたよ。今日会った時に、詳細は教えてくれるって言っていたし」
「そう。とにかくお祝いなら昇と話をしておかなくちゃ!。まだ授業は始まってないわね」
私はすぐに昇のスマホに電話をかけた。
何度か連絡をしたけれど取る気配がない。
とりあえずお義兄さんから連絡が来たことと、今夜のことで話がしたいから時間ができたら連絡して欲しいことをメッセージで送っておいた。
それからしばらくして昇から電話がかかってきた。
ーごめん、今学校着いた。10分くらいしか話せないけど。とりあえず、伝えたいことだけ話させて。
ーわかったわ。
ー伯父さんから電話が来たってことは今日のお祝いのことも聞いたと思うんだけど、母さんに美味しいケーキ屋を教えてもらいたいんだ。
ーケーキ? お祝いのケーキってこと?
ーそう。直くんは今まで多分一度もお祝いをしてもらったことがないんだ。
ーえっ……
ーだから、豪華なデコレーションケーキでお祝いしてやりたくて、母さんのおすすめのケーキ屋に買いに行きたいんだよ。
ーそう……それならケーキは私に任せて。パティシエさんにお願いして、特別なケーキを用意してもらうわ。
ーそんなのできるのか?
ーふふっ。任せて! じゃあ、昇は学校終わったらこっちに帰ってきなさい。一緒にケーキを受け取りに行くから。
ーあ、でも俺……直くんにプレゼントを買いに行きたくて……
ープレゼント? もう何を買うか決めてるの?
ーああ。前から大きなクマのぬいぐるみをあげる約束をしてて、まだ渡せてないから探しに行くつもりなんだ。
ーそれは探してあげないとね。わかったわ、じゃあケーキは私と毅さんで取りにいってくるから。
ー頼むよ。特にアレルギーはないみたいだから。
ーわかったわ。
ーああ、ごめん。もう教室に行かないといけないから。
そういうと電話は切れた。
「昇、なんだって?」
「お祝いに来る時にケーキを買ってきて欲しいって」
「そうか。他にうちからも何か料理を持って行くか?」
「そうねぇ。でもお義兄さんが腕を振るうんじゃないかしら。大事な息子くんのためでしょ」
「そうだな、じゃあ特別豪勢なケーキを買って行こうか」
「ええ。だから私、今から連絡してみるわ」
それからすぐに行きつけのケーキ屋さんに連絡を入れ、オーナー兼パティシエの久保田さんに相談してみることにした。
初めてのお祝いケーキが欲しいというと彼はなんとなく事情を察してくれたのか、
「そんな素敵なお祝いに私のケーキを思い出してくださって嬉しいです。ひとめ見ただけで大喜びしてくれるケーキを作りますから、楽しみしていてください」
と言ってくれた。
「ふふっ。久保田さんに相談して良かったわ。夕方5時ごろ取りに行くからお願いね」
「はい。任せてください!」
力強いその言葉に、今から完成が待ち遠しくてたまらなくなっていた。
<side昇>
母さんとの電話を終えて、急いで教室に戻ると
「よっ。磯山。どこにいってたんだ? 荷物があるのにいないから探したよ」
と村山が声をかけてきた。
「ああ、ごめん。ごめん。ちょっと親に連絡することがあってさ」
「なんかあったのか?」
「いや、悪いことじゃないから気にしないでいいよ。それよりホームスティをお願いするカールのことなんだけど、明日うちでビデオチャットするんだけど、来れそう?」
「ああ、明日なら問題ないよ。カールには俺のことをもう話してくれてるんだろう?」
「村山と家族が迷惑じゃないならありがたいとは言ってたよ」
「そうか。なら、明日話してみてからだな。俺は割とどんなタイプでも仲良くできるから問題ないけど、カールの方が俺を気に入ってくれるか、それがみたいだけだから」
「カールも割とそういうタイプだから村山とは仲良くなれそうだけどな。まぁ、ビデオチャットでお互いに気になるところは話したらいいよ」
「ありがとう。お前とあの子も一緒なんだろ?」
「ああ、カールも直くんを気に入ってるみたいだからな」
「直くん? この前まで直純くんって言ってなかったか?」
「まぁな。ちょっと距離が縮まったんだよ」
「へぇ……」
村山の意味深な視線には気づいていたけれど、家に来た時に話せばいいだろう。
俺の頭の中は今夜のパーティーでいっぱいになっていた。
「お義兄さん、なんだって?」
「ああ、ほら。家で預かっていた、昇が好意を寄せている子だけど……」
「うん、直純くん」
「そう、その直純くんを兄さんの養子にすることにしたって」
「えっ? 本当に?」
絢斗さんの話ではゆくゆくはそうなるかもと聞いていたけれど、それにしても急すぎてびっくりしてしまう。
「ああ、もちろん絢斗さんも賛成しているらしい。それで今夜、兄さんの家でお祝いをするから来て欲しいって誘ってくれたんだ。どうする?」
「もちろんいくわ!! 昇が好きになった子にも会いたいし、それに絢斗さんが喜ぶ顔が見たいわ! もう、昇も早く教えてくれたら良かったのに、サプライズのつもりだったのかしら?」
「いや、かなり急に決まったようだから、昇も連絡をし損ねてたって兄さんが話していたよ。今日会った時に、詳細は教えてくれるって言っていたし」
「そう。とにかくお祝いなら昇と話をしておかなくちゃ!。まだ授業は始まってないわね」
私はすぐに昇のスマホに電話をかけた。
何度か連絡をしたけれど取る気配がない。
とりあえずお義兄さんから連絡が来たことと、今夜のことで話がしたいから時間ができたら連絡して欲しいことをメッセージで送っておいた。
それからしばらくして昇から電話がかかってきた。
ーごめん、今学校着いた。10分くらいしか話せないけど。とりあえず、伝えたいことだけ話させて。
ーわかったわ。
ー伯父さんから電話が来たってことは今日のお祝いのことも聞いたと思うんだけど、母さんに美味しいケーキ屋を教えてもらいたいんだ。
ーケーキ? お祝いのケーキってこと?
ーそう。直くんは今まで多分一度もお祝いをしてもらったことがないんだ。
ーえっ……
ーだから、豪華なデコレーションケーキでお祝いしてやりたくて、母さんのおすすめのケーキ屋に買いに行きたいんだよ。
ーそう……それならケーキは私に任せて。パティシエさんにお願いして、特別なケーキを用意してもらうわ。
ーそんなのできるのか?
ーふふっ。任せて! じゃあ、昇は学校終わったらこっちに帰ってきなさい。一緒にケーキを受け取りに行くから。
ーあ、でも俺……直くんにプレゼントを買いに行きたくて……
ープレゼント? もう何を買うか決めてるの?
ーああ。前から大きなクマのぬいぐるみをあげる約束をしてて、まだ渡せてないから探しに行くつもりなんだ。
ーそれは探してあげないとね。わかったわ、じゃあケーキは私と毅さんで取りにいってくるから。
ー頼むよ。特にアレルギーはないみたいだから。
ーわかったわ。
ーああ、ごめん。もう教室に行かないといけないから。
そういうと電話は切れた。
「昇、なんだって?」
「お祝いに来る時にケーキを買ってきて欲しいって」
「そうか。他にうちからも何か料理を持って行くか?」
「そうねぇ。でもお義兄さんが腕を振るうんじゃないかしら。大事な息子くんのためでしょ」
「そうだな、じゃあ特別豪勢なケーキを買って行こうか」
「ええ。だから私、今から連絡してみるわ」
それからすぐに行きつけのケーキ屋さんに連絡を入れ、オーナー兼パティシエの久保田さんに相談してみることにした。
初めてのお祝いケーキが欲しいというと彼はなんとなく事情を察してくれたのか、
「そんな素敵なお祝いに私のケーキを思い出してくださって嬉しいです。ひとめ見ただけで大喜びしてくれるケーキを作りますから、楽しみしていてください」
と言ってくれた。
「ふふっ。久保田さんに相談して良かったわ。夕方5時ごろ取りに行くからお願いね」
「はい。任せてください!」
力強いその言葉に、今から完成が待ち遠しくてたまらなくなっていた。
<side昇>
母さんとの電話を終えて、急いで教室に戻ると
「よっ。磯山。どこにいってたんだ? 荷物があるのにいないから探したよ」
と村山が声をかけてきた。
「ああ、ごめん。ごめん。ちょっと親に連絡することがあってさ」
「なんかあったのか?」
「いや、悪いことじゃないから気にしないでいいよ。それよりホームスティをお願いするカールのことなんだけど、明日うちでビデオチャットするんだけど、来れそう?」
「ああ、明日なら問題ないよ。カールには俺のことをもう話してくれてるんだろう?」
「村山と家族が迷惑じゃないならありがたいとは言ってたよ」
「そうか。なら、明日話してみてからだな。俺は割とどんなタイプでも仲良くできるから問題ないけど、カールの方が俺を気に入ってくれるか、それがみたいだけだから」
「カールも割とそういうタイプだから村山とは仲良くなれそうだけどな。まぁ、ビデオチャットでお互いに気になるところは話したらいいよ」
「ありがとう。お前とあの子も一緒なんだろ?」
「ああ、カールも直くんを気に入ってるみたいだからな」
「直くん? この前まで直純くんって言ってなかったか?」
「まぁな。ちょっと距離が縮まったんだよ」
「へぇ……」
村山の意味深な視線には気づいていたけれど、家に来た時に話せばいいだろう。
俺の頭の中は今夜のパーティーでいっぱいになっていた。
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