55 / 359
特別なケーキを
しおりを挟む
<side二葉>
「お義兄さん、なんだって?」
「ああ、ほら。家で預かっていた、昇が好意を寄せている子だけど……」
「うん、直純くん」
「そう、その直純くんを兄さんの養子にすることにしたって」
「えっ? 本当に?」
絢斗さんの話ではゆくゆくはそうなるかもと聞いていたけれど、それにしても急すぎてびっくりしてしまう。
「ああ、もちろん絢斗さんも賛成しているらしい。それで今夜、兄さんの家でお祝いをするから来て欲しいって誘ってくれたんだ。どうする?」
「もちろんいくわ!! 昇が好きになった子にも会いたいし、それに絢斗さんが喜ぶ顔が見たいわ! もう、昇も早く教えてくれたら良かったのに、サプライズのつもりだったのかしら?」
「いや、かなり急に決まったようだから、昇も連絡をし損ねてたって兄さんが話していたよ。今日会った時に、詳細は教えてくれるって言っていたし」
「そう。とにかくお祝いなら昇と話をしておかなくちゃ!。まだ授業は始まってないわね」
私はすぐに昇のスマホに電話をかけた。
何度か連絡をしたけれど取る気配がない。
とりあえずお義兄さんから連絡が来たことと、今夜のことで話がしたいから時間ができたら連絡して欲しいことをメッセージで送っておいた。
それからしばらくして昇から電話がかかってきた。
ーごめん、今学校着いた。10分くらいしか話せないけど。とりあえず、伝えたいことだけ話させて。
ーわかったわ。
ー伯父さんから電話が来たってことは今日のお祝いのことも聞いたと思うんだけど、母さんに美味しいケーキ屋を教えてもらいたいんだ。
ーケーキ? お祝いのケーキってこと?
ーそう。直くんは今まで多分一度もお祝いをしてもらったことがないんだ。
ーえっ……
ーだから、豪華なデコレーションケーキでお祝いしてやりたくて、母さんのおすすめのケーキ屋に買いに行きたいんだよ。
ーそう……それならケーキは私に任せて。パティシエさんにお願いして、特別なケーキを用意してもらうわ。
ーそんなのできるのか?
ーふふっ。任せて! じゃあ、昇は学校終わったらこっちに帰ってきなさい。一緒にケーキを受け取りに行くから。
ーあ、でも俺……直くんにプレゼントを買いに行きたくて……
ープレゼント? もう何を買うか決めてるの?
ーああ。前から大きなクマのぬいぐるみをあげる約束をしてて、まだ渡せてないから探しに行くつもりなんだ。
ーそれは探してあげないとね。わかったわ、じゃあケーキは私と毅さんで取りにいってくるから。
ー頼むよ。特にアレルギーはないみたいだから。
ーわかったわ。
ーああ、ごめん。もう教室に行かないといけないから。
そういうと電話は切れた。
「昇、なんだって?」
「お祝いに来る時にケーキを買ってきて欲しいって」
「そうか。他にうちからも何か料理を持って行くか?」
「そうねぇ。でもお義兄さんが腕を振るうんじゃないかしら。大事な息子くんのためでしょ」
「そうだな、じゃあ特別豪勢なケーキを買って行こうか」
「ええ。だから私、今から連絡してみるわ」
それからすぐに行きつけのケーキ屋さんに連絡を入れ、オーナー兼パティシエの久保田さんに相談してみることにした。
初めてのお祝いケーキが欲しいというと彼はなんとなく事情を察してくれたのか、
「そんな素敵なお祝いに私のケーキを思い出してくださって嬉しいです。ひとめ見ただけで大喜びしてくれるケーキを作りますから、楽しみしていてください」
と言ってくれた。
「ふふっ。久保田さんに相談して良かったわ。夕方5時ごろ取りに行くからお願いね」
「はい。任せてください!」
力強いその言葉に、今から完成が待ち遠しくてたまらなくなっていた。
<side昇>
母さんとの電話を終えて、急いで教室に戻ると
「よっ。磯山。どこにいってたんだ? 荷物があるのにいないから探したよ」
と村山が声をかけてきた。
「ああ、ごめん。ごめん。ちょっと親に連絡することがあってさ」
「なんかあったのか?」
「いや、悪いことじゃないから気にしないでいいよ。それよりホームスティをお願いするカールのことなんだけど、明日うちでビデオチャットするんだけど、来れそう?」
「ああ、明日なら問題ないよ。カールには俺のことをもう話してくれてるんだろう?」
「村山と家族が迷惑じゃないならありがたいとは言ってたよ」
「そうか。なら、明日話してみてからだな。俺は割とどんなタイプでも仲良くできるから問題ないけど、カールの方が俺を気に入ってくれるか、それがみたいだけだから」
「カールも割とそういうタイプだから村山とは仲良くなれそうだけどな。まぁ、ビデオチャットでお互いに気になるところは話したらいいよ」
「ありがとう。お前とあの子も一緒なんだろ?」
「ああ、カールも直くんを気に入ってるみたいだからな」
「直くん? この前まで直純くんって言ってなかったか?」
「まぁな。ちょっと距離が縮まったんだよ」
「へぇ……」
村山の意味深な視線には気づいていたけれど、家に来た時に話せばいいだろう。
俺の頭の中は今夜のパーティーでいっぱいになっていた。
「お義兄さん、なんだって?」
「ああ、ほら。家で預かっていた、昇が好意を寄せている子だけど……」
「うん、直純くん」
「そう、その直純くんを兄さんの養子にすることにしたって」
「えっ? 本当に?」
絢斗さんの話ではゆくゆくはそうなるかもと聞いていたけれど、それにしても急すぎてびっくりしてしまう。
「ああ、もちろん絢斗さんも賛成しているらしい。それで今夜、兄さんの家でお祝いをするから来て欲しいって誘ってくれたんだ。どうする?」
「もちろんいくわ!! 昇が好きになった子にも会いたいし、それに絢斗さんが喜ぶ顔が見たいわ! もう、昇も早く教えてくれたら良かったのに、サプライズのつもりだったのかしら?」
「いや、かなり急に決まったようだから、昇も連絡をし損ねてたって兄さんが話していたよ。今日会った時に、詳細は教えてくれるって言っていたし」
「そう。とにかくお祝いなら昇と話をしておかなくちゃ!。まだ授業は始まってないわね」
私はすぐに昇のスマホに電話をかけた。
何度か連絡をしたけれど取る気配がない。
とりあえずお義兄さんから連絡が来たことと、今夜のことで話がしたいから時間ができたら連絡して欲しいことをメッセージで送っておいた。
それからしばらくして昇から電話がかかってきた。
ーごめん、今学校着いた。10分くらいしか話せないけど。とりあえず、伝えたいことだけ話させて。
ーわかったわ。
ー伯父さんから電話が来たってことは今日のお祝いのことも聞いたと思うんだけど、母さんに美味しいケーキ屋を教えてもらいたいんだ。
ーケーキ? お祝いのケーキってこと?
ーそう。直くんは今まで多分一度もお祝いをしてもらったことがないんだ。
ーえっ……
ーだから、豪華なデコレーションケーキでお祝いしてやりたくて、母さんのおすすめのケーキ屋に買いに行きたいんだよ。
ーそう……それならケーキは私に任せて。パティシエさんにお願いして、特別なケーキを用意してもらうわ。
ーそんなのできるのか?
ーふふっ。任せて! じゃあ、昇は学校終わったらこっちに帰ってきなさい。一緒にケーキを受け取りに行くから。
ーあ、でも俺……直くんにプレゼントを買いに行きたくて……
ープレゼント? もう何を買うか決めてるの?
ーああ。前から大きなクマのぬいぐるみをあげる約束をしてて、まだ渡せてないから探しに行くつもりなんだ。
ーそれは探してあげないとね。わかったわ、じゃあケーキは私と毅さんで取りにいってくるから。
ー頼むよ。特にアレルギーはないみたいだから。
ーわかったわ。
ーああ、ごめん。もう教室に行かないといけないから。
そういうと電話は切れた。
「昇、なんだって?」
「お祝いに来る時にケーキを買ってきて欲しいって」
「そうか。他にうちからも何か料理を持って行くか?」
「そうねぇ。でもお義兄さんが腕を振るうんじゃないかしら。大事な息子くんのためでしょ」
「そうだな、じゃあ特別豪勢なケーキを買って行こうか」
「ええ。だから私、今から連絡してみるわ」
それからすぐに行きつけのケーキ屋さんに連絡を入れ、オーナー兼パティシエの久保田さんに相談してみることにした。
初めてのお祝いケーキが欲しいというと彼はなんとなく事情を察してくれたのか、
「そんな素敵なお祝いに私のケーキを思い出してくださって嬉しいです。ひとめ見ただけで大喜びしてくれるケーキを作りますから、楽しみしていてください」
と言ってくれた。
「ふふっ。久保田さんに相談して良かったわ。夕方5時ごろ取りに行くからお願いね」
「はい。任せてください!」
力強いその言葉に、今から完成が待ち遠しくてたまらなくなっていた。
<side昇>
母さんとの電話を終えて、急いで教室に戻ると
「よっ。磯山。どこにいってたんだ? 荷物があるのにいないから探したよ」
と村山が声をかけてきた。
「ああ、ごめん。ごめん。ちょっと親に連絡することがあってさ」
「なんかあったのか?」
「いや、悪いことじゃないから気にしないでいいよ。それよりホームスティをお願いするカールのことなんだけど、明日うちでビデオチャットするんだけど、来れそう?」
「ああ、明日なら問題ないよ。カールには俺のことをもう話してくれてるんだろう?」
「村山と家族が迷惑じゃないならありがたいとは言ってたよ」
「そうか。なら、明日話してみてからだな。俺は割とどんなタイプでも仲良くできるから問題ないけど、カールの方が俺を気に入ってくれるか、それがみたいだけだから」
「カールも割とそういうタイプだから村山とは仲良くなれそうだけどな。まぁ、ビデオチャットでお互いに気になるところは話したらいいよ」
「ありがとう。お前とあの子も一緒なんだろ?」
「ああ、カールも直くんを気に入ってるみたいだからな」
「直くん? この前まで直純くんって言ってなかったか?」
「まぁな。ちょっと距離が縮まったんだよ」
「へぇ……」
村山の意味深な視線には気づいていたけれど、家に来た時に話せばいいだろう。
俺の頭の中は今夜のパーティーでいっぱいになっていた。
912
お気に入りに追加
2,255
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
今日も、俺の彼氏がかっこいい。
春音優月
BL
中野良典《なかのよしのり》は、可もなく不可もない、どこにでもいる普通の男子高校生。特技もないし、部活もやってないし、夢中になれるものも特にない。
そんな自分と退屈な日常を変えたくて、良典はカースト上位で学年で一番の美人に告白することを決意する。
しかし、良典は告白する相手を間違えてしまい、これまたカースト上位でクラスの人気者のさわやかイケメンに告白してしまう。
あっさりフラれるかと思いきや、告白をOKされてしまって……。良典も今さら間違えて告白したとは言い出しづらくなり、そのまま付き合うことに。
どうやって別れようか悩んでいた良典だけど、彼氏(?)の圧倒的顔の良さとさわやかさと性格の良さにきゅんとする毎日。男同士だけど、楽しいし幸せだしあいつのこと大好きだし、まあいっか……なちょろくてゆるい感じで付き合っているうちに、どんどん相手のことが大好きになっていく。
間違いから始まった二人のほのぼの平和な胸キュンお付き合いライフ。
2021.07.15〜2021.07.16
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる