ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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愛しい人のために

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<side昇>

絢斗さんと伯父さんの挨拶も終わり、再び画面には俺と直くんだけが映った。

ーじゃあ、俺の友達とのビデオチャットはいつにする? カールの都合がいい日に合わせるよ。

ーそうだな……じゃあ、明後日はどう? 時間は今くらいの時間ならありがたいけど。

ー大丈夫だよ。俺もそっちの方がいい。

ーじゃあ、明後日。その時はナオズミも一緒?

ーなんだ? 一緒がいいのか? 

ーノボルの友人に会うんだ。せっかくならナオズミも一緒がいいだろう。

直くんだけ一人ぼっちになるのではないかとカールなりに気を遣ってくれているのかもしれない。

「直くん、いい?」

「はい。嬉しいです」

一応直くんに了承を取ると笑顔を見せてくれる。
その表情に困った様子が見えないことを確認して、俺はカールにOKを告げた。

ーじゃあ、明後日な。

ーうん。わかったよ。じゃあ、ナオズミ……またね。

嬉しそうに手を振り続けるカールに直くんも手を振りかえしているのをみながら、ビデオチャットは終了した。

「元気なやつだから、疲れてない?」

「はい。大丈夫です。すごく楽しかったですよ」

「それならよかった。じゃあ、俺村山に今のこと連絡するから」

そう言って、スマホを取り出し電話をかけようかと思ったけれど、もしかしたら夕飯時かもしれないと思ってメッセージにしておいた。

<今、カールと話したんだけど明後日今くらいの時間でビデオチャットすることになったから、学校帰りにそのまま伯父さん家に行くってことでいいかな? 詳細はまた明日話すよ>


よし、これでいい。
と思った途端、すぐに既読がついて驚いてしまう。
ちょうどスマホを手にしていたのかもしれない。

すぐに返信が来て、

<さっき親にも話したんだけど、部屋も空いてるし、昇からの話だからホームスティOKだって。あとはそのカールくんが俺を気にいるかどうかだな。とりあえず日本に来てくれるなら、最大限サポートはするよ。任せておいてくれ。また明日話を聞かせてくれ>

と書かれていた。

「どうした?」

あまりにもスムーズな返信に思わず笑っていると、伯父さんから声をかけられた。

「いや、村山の両親も受け入れオッケーって言ってくれたみたいで、カールさえ良ければ来てもらっていいって。というか、もう受け入れる気満々だから、嬉しくなっちゃって……」

「そうか、ありがたいな。じゃあ、ご飯にしようか」

そういうと、伯父さんはそのままキッチンに向かった。

「あっ、俺も手伝います。パソコンを部屋に戻したらすぐに来ますね」

「ああ、手伝ってくれるのは嬉しいが、勉強は大丈夫か?」

「夜に集中して進めた方が効率いいんで大丈夫ですよ」

「それならいい。今日はメンチカツにするつもりだから頼むよ」

「はい。すぐに来ますね」

伯父さんとそんなやりとりをして、俺がテーブルの上を片付けていると、

「僕がお部屋に戻してきますよ」

と直くんが声をかけてくれた。

重いものは持たせたくないが、せっかく直くんが声をかけてくれたしな。
パソコンなら大丈夫だろう。

「ありがとう、頼むよ」

「はい!」

俺の返事に直くんは嬉しそうな笑顔を見せた。

直くんに部屋に入られても困るようなものは一切置いていないから問題ない。
もう今の俺は、直くん以外では興奮もしないからな。

ああ、もう本当に可愛すぎる。

トコトコと部屋に俺の部屋に入っていく直くんを見送りながら、俺はキッチンに行き、伯父さんの手伝いを始めた。

「揚げ物って伯父さんにしては珍しい気がしますね」

「ああ、確かにそうかもしれないな。だが、お前も直くんもまだまだ育ち盛りだから油物も必要だろう。特に直くんは揚げ物は食べたことがないようだから、急に脂っこいものを与えるのは胃がびっくりしそうだから控えていたんだ。だが、いろんな食事を与えてきたからそろそろ揚げ物もいいだろうと思ったんだよ」

「そうなんですね。揚げ物も食べてないだなんて……」

あの細い身体を見れば、どれだけひどい食生活をさせられてきたかがわかる。
しかも絢斗さんや伯父さんがいうには最初はもっと酷かったというのだから、あれでも健康になってきたんだろうな。

「メンチカツ、作り方教えてください」

「ああ、肉だけでもいいんだが、キャベツを入れたレシピの方を教えよう。直くんのように揚げ物に慣れていない子にはこちらの方が食べやすいと思う」

「へぇー、そうなんですね」

肉にキャベツのみじん切りを混ぜるのは知らなかった。
あとはハンバーグを作る要領でタネを作り、バッター液とパン粉につければあとは揚げるだけでメンチカツの完成だ。

覚えてしまえば結構簡単かもしれない。

付け合わせのキャベツとトマトを皿に盛り付けて揚げたてのメンチカツを並べるとちょうどいいタイミングでご飯が炊き上がった。

俺がメンチカツを作っている間に伯父さんが作ってくれていた味噌汁を装い、あっという間に夕食が完成した。

ああ、メンチカツのいい匂いが食欲をそそる。

直くんは初めてのメンチカツ、喜んでくれるだろうか。

「ふふっ。愛しい人に料理を作る幸せを昇もわかったようだな」

「はい。これほど嬉しいことはないですね」

「ああ、そうだろう。だから、私も絢斗の食事を作るのが幸せなんだ」

照れもせずそう言い放つ伯父さんの笑顔に、絢斗さんへの想いが伝わってきた。
俺もいつか直くんとこんな夫夫になれたらいい。
そう願わずにはいられなかった。
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