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褒められるって嬉しい!
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<side直純>
今日の朝、昇さんを見送ってすぐから、帰って来てくれるのが待ち遠しくてたまらなかった。
この前見送った時は、いつ帰って来てくれるのかわからなかったから、不安でたまらなかったけど、今日は帰って来てくることがわかっていたからこんなにもワクワクできたんだと思う。
「絢斗、直純くん。行ってくるよ」
昇さんを見送ってしばらくして、磯山先生も仕事に向かった。
といっても、磯山先生の場合は仕事場が下の階だから、お昼ご飯も戻って来てくれる。
すぐに会えるのはとても嬉しい。
「卓さん、行ってらっしゃい」
「ああ、絢斗。愛してるよ」
いつもそうやって絢斗さんが玄関で磯山先生を見送り、磯山先生も嬉しそうに挨拶を返す。
それが大事な挨拶だと気づいた。
うちでは僕や父さんが出かける時、母さんはわざわざ玄関まで出て来たりはしなかった。
部屋の中から、
「学校終わったら急いで帰ってくるのよ!」
と大きな声が飛んできて見送られるのが普通だったから、これもうちとは違うんだなと思った。
どこの家にもやり方があるんだろうけど、絢斗さんに見送られる磯山先生がすごく嬉しそうに見えたから、僕はそれを真似することにしたんだ。
「磯山先生、行ってらっしゃい」
「ああ、ありがとう。お昼に一度帰ってくるからね」
そういって、笑顔で扉を閉めていく。
絢斗さんと二人っきりになって、
「直純くん。私はこれからオンラインで授業があるから、十時半まで好きに過ごしていていいよ」
と告げられる。
「わかりました」
絢斗さんの部屋の扉が閉まってから、僕は自分の部屋に戻る。
何にしようかなと考えていたけれど、目に入ったのは、この前昇さんが読んでくれたドイツ語の童話集。
あの後ドイツ語の辞書も貸してもらえたし、勉強がてら読んでみたくなった。
「よし! やってみよう」
ノートと辞書を広げ、単語を書き留めて意味を調べながら、隣のページに日本語訳を書いていく。
うまく訳ができなくても、前後の意味を考えながら自分で考えるのはすごく楽しい作業だ。
英語に似た単語もあるし、見慣れたらもっと早く訳ができるようになるのかもしれないななんて思いながら、ひたすらに本を読み進めていると、
「直純くん」
と突然声をかけられた。
「わっ!!」
「あっ、ごめん。驚かせちゃったかな? ノックしたんだけど応答がなかったから気になって……」
「すみません、本が楽しくて聞こえてなかったのかもしれないです」
「もしかして、ずっとやってた?」
「えっ? ずっとってまだそんなには……」
そう返しながら時計を見るともう十時半をとっくに過ぎている。
「えっ? もうこんなに?」
「きっと集中してたんだね。ちょっと休憩しよう」
「はい。すみません」
「ううん、いいよ。集中できるって楽しいことだし」
「あの、これ……合ってるか、ちょっとみてもらってもいいですか?」
僕はずっと書いていたノートを絢斗さんに見せた。
左のページに本の通りに書いた文章に調べた単語の意味を書いて、右のページには日本語に訳した物語を書いていったノート。
「どれどれ?」
絢斗さんはそれを手に取ると、静かにそれを読み始めた。
しばらく読み続けてから、
「うん、よくできてるよ。というか、直純くんの訳の方が数段面白いね」
と言ってくれた。
「それって、間違えてるわけじゃないですか?」
「うん。大丈夫。直純くんの訳の方が主人公の感情とか背景がよく現れてて楽しさが増してるよ。直純くん、翻訳とか得意そうだね」
「えっ、そんな……」
「本当だよ、こういうのって才能なんだよ。すごいよ!」
絢斗さんに手放しで褒められるとすごく嬉しくなる。
「出来上がったら、卓さんや昇くんにも見せてみるといいよ。ふふっ。きっと驚くと思うな」
「はい。なんだかやる気が出て来ました」
「じゃあ、ちょっと休憩しよう。おいで」
一緒にリビングに行くと、飲み物と一緒にお菓子が用意してあった。
「あっ、もう用意してくださったんですか?」
「うん。用意ができたから呼びに行ったんだ。このお菓子はね、卓さんが私たちの休憩用にって用意してくれていたものだよ。マカロンって言ってね、最近気にいってるんだ」
ころんとした可愛いお菓子。
色とりどりで食べるのが勿体無いくらい。
それでも食べたい欲に負けて、口に入れると食べたことのない美味しさで驚いてしまう。
「美味しいっ!」
「ふふっ。直純くんも気に入ったみたいでよかった」
楽しい休憩を挟んで、またお互いに部屋に戻る。
お昼ご飯に磯山先生が戻って来てくれて、楽しく昼食をとって、そのあとは絢斗さんと一緒にリース作り。
楽しい時間を過ごしていると、
「ただいまー」
と昇さんの声が聞こえる。
「あっ、直純くん。私は片付けをしておくから昇くんをお出迎えしてあげて」
そう言われて、急いで玄関に向かい、
「昇さん! お帰りなさい!!」
というと、笑顔を見せてくれた。
ああ、昇さんが帰ってきた。
やっぱり帰って来てくれるのってすっごく嬉しいな。
「昇さんが帰ってくるの、ずっと楽しみにしてました」
嬉しさが溢れてそういうと、
「俺も直純くんに会えるのが楽しみだったよ。今日何して過ごしていたのか、後でゆっくり聞かせて」
と笑って着替えに向かう昇さんを、僕は笑顔で見送った。
今日の朝、昇さんを見送ってすぐから、帰って来てくれるのが待ち遠しくてたまらなかった。
この前見送った時は、いつ帰って来てくれるのかわからなかったから、不安でたまらなかったけど、今日は帰って来てくることがわかっていたからこんなにもワクワクできたんだと思う。
「絢斗、直純くん。行ってくるよ」
昇さんを見送ってしばらくして、磯山先生も仕事に向かった。
といっても、磯山先生の場合は仕事場が下の階だから、お昼ご飯も戻って来てくれる。
すぐに会えるのはとても嬉しい。
「卓さん、行ってらっしゃい」
「ああ、絢斗。愛してるよ」
いつもそうやって絢斗さんが玄関で磯山先生を見送り、磯山先生も嬉しそうに挨拶を返す。
それが大事な挨拶だと気づいた。
うちでは僕や父さんが出かける時、母さんはわざわざ玄関まで出て来たりはしなかった。
部屋の中から、
「学校終わったら急いで帰ってくるのよ!」
と大きな声が飛んできて見送られるのが普通だったから、これもうちとは違うんだなと思った。
どこの家にもやり方があるんだろうけど、絢斗さんに見送られる磯山先生がすごく嬉しそうに見えたから、僕はそれを真似することにしたんだ。
「磯山先生、行ってらっしゃい」
「ああ、ありがとう。お昼に一度帰ってくるからね」
そういって、笑顔で扉を閉めていく。
絢斗さんと二人っきりになって、
「直純くん。私はこれからオンラインで授業があるから、十時半まで好きに過ごしていていいよ」
と告げられる。
「わかりました」
絢斗さんの部屋の扉が閉まってから、僕は自分の部屋に戻る。
何にしようかなと考えていたけれど、目に入ったのは、この前昇さんが読んでくれたドイツ語の童話集。
あの後ドイツ語の辞書も貸してもらえたし、勉強がてら読んでみたくなった。
「よし! やってみよう」
ノートと辞書を広げ、単語を書き留めて意味を調べながら、隣のページに日本語訳を書いていく。
うまく訳ができなくても、前後の意味を考えながら自分で考えるのはすごく楽しい作業だ。
英語に似た単語もあるし、見慣れたらもっと早く訳ができるようになるのかもしれないななんて思いながら、ひたすらに本を読み進めていると、
「直純くん」
と突然声をかけられた。
「わっ!!」
「あっ、ごめん。驚かせちゃったかな? ノックしたんだけど応答がなかったから気になって……」
「すみません、本が楽しくて聞こえてなかったのかもしれないです」
「もしかして、ずっとやってた?」
「えっ? ずっとってまだそんなには……」
そう返しながら時計を見るともう十時半をとっくに過ぎている。
「えっ? もうこんなに?」
「きっと集中してたんだね。ちょっと休憩しよう」
「はい。すみません」
「ううん、いいよ。集中できるって楽しいことだし」
「あの、これ……合ってるか、ちょっとみてもらってもいいですか?」
僕はずっと書いていたノートを絢斗さんに見せた。
左のページに本の通りに書いた文章に調べた単語の意味を書いて、右のページには日本語に訳した物語を書いていったノート。
「どれどれ?」
絢斗さんはそれを手に取ると、静かにそれを読み始めた。
しばらく読み続けてから、
「うん、よくできてるよ。というか、直純くんの訳の方が数段面白いね」
と言ってくれた。
「それって、間違えてるわけじゃないですか?」
「うん。大丈夫。直純くんの訳の方が主人公の感情とか背景がよく現れてて楽しさが増してるよ。直純くん、翻訳とか得意そうだね」
「えっ、そんな……」
「本当だよ、こういうのって才能なんだよ。すごいよ!」
絢斗さんに手放しで褒められるとすごく嬉しくなる。
「出来上がったら、卓さんや昇くんにも見せてみるといいよ。ふふっ。きっと驚くと思うな」
「はい。なんだかやる気が出て来ました」
「じゃあ、ちょっと休憩しよう。おいで」
一緒にリビングに行くと、飲み物と一緒にお菓子が用意してあった。
「あっ、もう用意してくださったんですか?」
「うん。用意ができたから呼びに行ったんだ。このお菓子はね、卓さんが私たちの休憩用にって用意してくれていたものだよ。マカロンって言ってね、最近気にいってるんだ」
ころんとした可愛いお菓子。
色とりどりで食べるのが勿体無いくらい。
それでも食べたい欲に負けて、口に入れると食べたことのない美味しさで驚いてしまう。
「美味しいっ!」
「ふふっ。直純くんも気に入ったみたいでよかった」
楽しい休憩を挟んで、またお互いに部屋に戻る。
お昼ご飯に磯山先生が戻って来てくれて、楽しく昼食をとって、そのあとは絢斗さんと一緒にリース作り。
楽しい時間を過ごしていると、
「ただいまー」
と昇さんの声が聞こえる。
「あっ、直純くん。私は片付けをしておくから昇くんをお出迎えしてあげて」
そう言われて、急いで玄関に向かい、
「昇さん! お帰りなさい!!」
というと、笑顔を見せてくれた。
ああ、昇さんが帰ってきた。
やっぱり帰って来てくれるのってすっごく嬉しいな。
「昇さんが帰ってくるの、ずっと楽しみにしてました」
嬉しさが溢れてそういうと、
「俺も直純くんに会えるのが楽しみだったよ。今日何して過ごしていたのか、後でゆっくり聞かせて」
と笑って着替えに向かう昇さんを、僕は笑顔で見送った。
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