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友人への相談事
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「そういえば、俺……お前に相談したいことがあったんだ」
「磯山が、俺に相談? 何だよ、いよいよ気味悪いな」
「おい、失礼だな」
「ははっ。ごめん、ごめん。それで相談ってなんなんだ?」
口調は悪いが、ちゃんと話は聞いてくれるのがこの村山のいいところなんだ。
「ほら、前に、俺のオンライン友達の話しただろ?」
「ああー、ドイツの子だっけ。元々は向こうで知り合った子だったよな」
「そうそう、カフェで偶然知り合った子だよ」
たまたま入ったカフェですぐ近くの席に座っていた時に、時々日本語が聞こえると思って興味本位で日本語で話しかけてみたら、目を輝かせてくれて話をしてくれたのが、カールと知り合ったきっかけだったんだ。
身長もまぁ高い方だったし、大人びた顔立ちで最初は年上かと思ったけれど、話をしていると年下のように思えてきたのが印象的だった。
年齢を聞いたら同じ歳だったんだけど話をしている様子はなんとも可愛くて……まぁ、直純くんとは全く違った感情だから、今思えば弟みたいに感じていたのかもしれない。
一緒の席に座らせてもらっていろいろ話を聞いたら、以前短期で日本人のホストファミリーをしていたらしくて、その時に三歳年上の日本人――学年的には四歳年上らしい――に日本語を少し習ったと教えてくれた。
――その時に、いつか読めるようになるといいなって言って、帰る時にこの本をくれたんだ。
そう言って、大切そうにカバンから取り出したのは、森鴎外の【うたかたの記】。
日本人でも読んだことのない人が多いだろう昔の文豪の本。
多分、カールがこの本を最後まで読んで中身を理解するのはかなり年月を要しそうだ。
けれど、舞台がドイツだからきっと理解できたら楽しい本になることだろう。
「よかったら、俺が日本に帰ってもお互いに勉強し合わないか?」
気づけばそんな誘いを口にしていた。
俺もドイツ語を忘れたくなかったし、彼も日本語を習うには同じ年齢の俺は適任だろうと思った。
いつか本当にその本を読むことができたら……そんな手伝いができたらいいと思った。
それに賛同してくれた彼とそれから数年経った今でもオンラインで教え合っている。
そのおかげで日常生活には支障のないほどに日本語が上達したカールは、長期休みに入ったら一度日本に遊びに行きたいと話していた。
その時はまさか父さんの海外赴任がこんなに早く決まるとは思ってなかったから、喜んで迎えるよと言っていたのだが、俺も今や下宿の身。
しかも直純くんのいる伯父さんの家にカールを泊まらせるわけにはいかない。
だから、俺は村山に相談しようと思っていたんだ。
次のオンラインで会話する日までに受け入れる場所が見つからなかったら、ホテルを探すか今回は諦めてもらうかをカールに話そうと思っていた。
「――それで、村山の家でカールを泊まらせることはできないかなって相談なんだけど……」
「ああー、そういうことか。それなら、多分、うちは構わないと思うぞ。前にも何人かホストファミリーを引き受けてるし。その話だと短期ってことだろ?」
「ああ、多分二週間くらいかな」
「なら、問題ないよ。一応両親には話しておくけど、磯山の知り合いなら反対はないんじゃないかな。お前、俺の両親にめっちゃ気に入られてるし」
「ははっ。それはありがたいな」
「今度そのオンラインで話す時に俺も一緒に話させてくれよ。こっちに来る前に一度話しておいた方がいいだろ? 相手も俺と合わないと思うかもしれないし、こっちにきてからそれに気づいても最悪だぞ」
「ああ、確かに。わかった。じゃあ、その時誘うよ」
そう言いながらも、どこでやろうかと考えていた。
伯父さん家だと、直純くんがいるからな。
村山と会わせてもいいか伯父さんに相談しとかないとな。
ドキドキしながら、伯父さんから借りている鍵を手に扉を開ける。
ガチャっと扉をあけ、できるだけ冷静を装いながら
「ただいまー」
と声をかけると、少し離れた場所からかけてくる足音が聞こえたと思ったら、
「昇さん! お帰りなさい!!」
と少し頬を染めた直純くんが出迎えてくれた。
「――っ!!!」
可愛いっ! 可愛すぎる!!
まるで新婚家庭のような出迎えに、俺の頭の中では
――ご飯にする? お風呂にする? それとも……僕を食べる?
なんて、俺を誘ってくる直純くんが浮かんでくる。
ぐはーっ!! やばいっ!!
こんな想像だめだ!! 耐えられなくなる。
「あ、ああ。ただいま。出迎えてくれて、嬉しいよ」
必死に言葉を紡ぐと、
「昇さんが帰ってくるの、ずっと楽しみにしてました」
と可愛い笑顔が帰ってくる。
「――っ!!!」
ああ、本当に可愛すぎる。
<好きな相手と一つ屋根の下で暮らすのは鍛錬が必要だぞ。頑張れよ>
早々に、伯父さんの言葉を身をもって体験することになり、俺は必死に身を引き締めた。
* * *
作中出てくるカールくんは、
『俺の天使に触れないで ~アルと理玖の物語~』という作品の
[彼と出会った日 <前編>]
という作品に出てきます。
もしよかったらご覧ください♡
「磯山が、俺に相談? 何だよ、いよいよ気味悪いな」
「おい、失礼だな」
「ははっ。ごめん、ごめん。それで相談ってなんなんだ?」
口調は悪いが、ちゃんと話は聞いてくれるのがこの村山のいいところなんだ。
「ほら、前に、俺のオンライン友達の話しただろ?」
「ああー、ドイツの子だっけ。元々は向こうで知り合った子だったよな」
「そうそう、カフェで偶然知り合った子だよ」
たまたま入ったカフェですぐ近くの席に座っていた時に、時々日本語が聞こえると思って興味本位で日本語で話しかけてみたら、目を輝かせてくれて話をしてくれたのが、カールと知り合ったきっかけだったんだ。
身長もまぁ高い方だったし、大人びた顔立ちで最初は年上かと思ったけれど、話をしていると年下のように思えてきたのが印象的だった。
年齢を聞いたら同じ歳だったんだけど話をしている様子はなんとも可愛くて……まぁ、直純くんとは全く違った感情だから、今思えば弟みたいに感じていたのかもしれない。
一緒の席に座らせてもらっていろいろ話を聞いたら、以前短期で日本人のホストファミリーをしていたらしくて、その時に三歳年上の日本人――学年的には四歳年上らしい――に日本語を少し習ったと教えてくれた。
――その時に、いつか読めるようになるといいなって言って、帰る時にこの本をくれたんだ。
そう言って、大切そうにカバンから取り出したのは、森鴎外の【うたかたの記】。
日本人でも読んだことのない人が多いだろう昔の文豪の本。
多分、カールがこの本を最後まで読んで中身を理解するのはかなり年月を要しそうだ。
けれど、舞台がドイツだからきっと理解できたら楽しい本になることだろう。
「よかったら、俺が日本に帰ってもお互いに勉強し合わないか?」
気づけばそんな誘いを口にしていた。
俺もドイツ語を忘れたくなかったし、彼も日本語を習うには同じ年齢の俺は適任だろうと思った。
いつか本当にその本を読むことができたら……そんな手伝いができたらいいと思った。
それに賛同してくれた彼とそれから数年経った今でもオンラインで教え合っている。
そのおかげで日常生活には支障のないほどに日本語が上達したカールは、長期休みに入ったら一度日本に遊びに行きたいと話していた。
その時はまさか父さんの海外赴任がこんなに早く決まるとは思ってなかったから、喜んで迎えるよと言っていたのだが、俺も今や下宿の身。
しかも直純くんのいる伯父さんの家にカールを泊まらせるわけにはいかない。
だから、俺は村山に相談しようと思っていたんだ。
次のオンラインで会話する日までに受け入れる場所が見つからなかったら、ホテルを探すか今回は諦めてもらうかをカールに話そうと思っていた。
「――それで、村山の家でカールを泊まらせることはできないかなって相談なんだけど……」
「ああー、そういうことか。それなら、多分、うちは構わないと思うぞ。前にも何人かホストファミリーを引き受けてるし。その話だと短期ってことだろ?」
「ああ、多分二週間くらいかな」
「なら、問題ないよ。一応両親には話しておくけど、磯山の知り合いなら反対はないんじゃないかな。お前、俺の両親にめっちゃ気に入られてるし」
「ははっ。それはありがたいな」
「今度そのオンラインで話す時に俺も一緒に話させてくれよ。こっちに来る前に一度話しておいた方がいいだろ? 相手も俺と合わないと思うかもしれないし、こっちにきてからそれに気づいても最悪だぞ」
「ああ、確かに。わかった。じゃあ、その時誘うよ」
そう言いながらも、どこでやろうかと考えていた。
伯父さん家だと、直純くんがいるからな。
村山と会わせてもいいか伯父さんに相談しとかないとな。
ドキドキしながら、伯父さんから借りている鍵を手に扉を開ける。
ガチャっと扉をあけ、できるだけ冷静を装いながら
「ただいまー」
と声をかけると、少し離れた場所からかけてくる足音が聞こえたと思ったら、
「昇さん! お帰りなさい!!」
と少し頬を染めた直純くんが出迎えてくれた。
「――っ!!!」
可愛いっ! 可愛すぎる!!
まるで新婚家庭のような出迎えに、俺の頭の中では
――ご飯にする? お風呂にする? それとも……僕を食べる?
なんて、俺を誘ってくる直純くんが浮かんでくる。
ぐはーっ!! やばいっ!!
こんな想像だめだ!! 耐えられなくなる。
「あ、ああ。ただいま。出迎えてくれて、嬉しいよ」
必死に言葉を紡ぐと、
「昇さんが帰ってくるの、ずっと楽しみにしてました」
と可愛い笑顔が帰ってくる。
「――っ!!!」
ああ、本当に可愛すぎる。
<好きな相手と一つ屋根の下で暮らすのは鍛錬が必要だぞ。頑張れよ>
早々に、伯父さんの言葉を身をもって体験することになり、俺は必死に身を引き締めた。
* * *
作中出てくるカールくんは、
『俺の天使に触れないで ~アルと理玖の物語~』という作品の
[彼と出会った日 <前編>]
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もしよかったらご覧ください♡
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