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番外編
神との約束
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第一章と第二章の狭間。
命を絶ったエリクと神さまとのお話です。
* * *
<ハドリー・エリク・ウェインライト>
――エリク、起きなさい。私の声が聞こえたら、目を覚ますのです……。
セシルへの永遠の愛を誓って自ら命を絶ったはずの私に、突然声が聞こえてきた。その声に抗うこともできず目を覚ました私は、自分が何もない、真っ白な空間に浮かんでいることに気づいた。
「な、なんだ? ここは、一体どこだ?」
――ようやく私の声が届いたようですね、エリク……
「先ほどから私の頭の中に話しかけてくるあなたは何者ですか?」
――私は、全ての世界をおさめる神です。
「えっ!! 神、さま……っ。し、失礼いたしました! 知らなかったとはいえ、とんだご無礼をいたしました。申し訳ございません」
私を目覚めさせた声の正体に衝撃を受けながら、慌ててその場にひれ伏した。
――ここは下界ではありませんからそのような謝罪は要りません。それよりもあなたがどうして私の前に呼ばれたか、わかりますか?
「それは……セシルを守りきれなかった罪を償うためでしょうか?」
――セシルが命を落としたのは自分に非があると?
「はい。私がもっと早くセシルを連れて逃げればあのようなことにはならなかったと悔いております」
――だから、あなたは自分で命を絶ったのですか?
「はい。セシルのいない世界など、生きている価値もありません。私の命はセシルと共にあると誓ったのです」
――そうでしたね。私は、あなたのその気持ちに心を動かされました。
「えっ……それはどういうことでございますか?」
――セシルとの約束を守るために自分の命が消えるのも厭わず、永遠の愛を貫こうとした。その気持ちは素晴らしいと想っています。
「ありがとうございます」
――ですが、神として自分で命を断つことを認めたわけではありません。
確かにそうだ。私たちの命は神によって与えられたもの。それはいかなる理由があっても自ら断つなど許されるべきことではない。
「申し訳、ございません……。私は地獄にでもどこにでも落としてください。その代わりどうかあの心の綺麗なセシルはどうか神さまの元に……」
――それほどセシルを想っているのですね。
「はい。心からセシルを愛しています」
――それならば、あなたに一度だけチャンスをあげましょう。
「チャンス?」
――あなたが最後に誓った言葉を覚えていますか?
最後に誓った言葉……それはもちろん覚えている。いや、忘れるはずがない。命と引き換えに魂に刻み込んだのだから。
「はい。生まれ変わっても絶対にセシルを見つけ出して見せると言いました」
――それを証明してもらいましょうか。
「証明、ですか?」
ーこれからそれぞれ別の地に時をずらして生まれ変わらせます。あなたにはエリクとしての記憶を残してあげますが、セシルはあなたとの記憶を全て忘れた状態です。それでもセシルを見つけ出し、無事に思いが叶ったら二人が寿命を全うし命が尽きる時まで幸せを保証しましょう。
思いがけない神さまの言葉に私はもう喜びしかなかった。セシルが私との記憶がなくても私にあれば問題ない。絶対に見つけ出して見せる!!
「神さまっ!! ありがとうございます!!」
――お礼を言っていますが決して容易い道ではありませんよ。
「どんな厳しい道でも構いません。またセシルに会い、愛し合えるのなら……どんなことをしてでも見つけ出してみせます!!」
――エリク。頑張りなさい。あなたの心意気を買って、生まれ変わったセシルにもあなたに繋がるヒントを残しておいてあげましょう。
「神さまっ! ありがとうございます!!」
――いや、あなたとセシルの生まれる時代と場所を間違えてしまった私のせめてもの贖罪です。私はあなたが無事に生まれ変わったセシルを見つけ出してくれると信じています。
そうか……神さまの手違いだったか。それでもいい。愛しい人に二度一目惚れできるなんて、嬉しいだけだ。
セシル……どうか待っていてくれ。絶対に私が探し出して見せるから。
愛しているよ、セシル。
命を絶ったエリクと神さまとのお話です。
* * *
<ハドリー・エリク・ウェインライト>
――エリク、起きなさい。私の声が聞こえたら、目を覚ますのです……。
セシルへの永遠の愛を誓って自ら命を絶ったはずの私に、突然声が聞こえてきた。その声に抗うこともできず目を覚ました私は、自分が何もない、真っ白な空間に浮かんでいることに気づいた。
「な、なんだ? ここは、一体どこだ?」
――ようやく私の声が届いたようですね、エリク……
「先ほどから私の頭の中に話しかけてくるあなたは何者ですか?」
――私は、全ての世界をおさめる神です。
「えっ!! 神、さま……っ。し、失礼いたしました! 知らなかったとはいえ、とんだご無礼をいたしました。申し訳ございません」
私を目覚めさせた声の正体に衝撃を受けながら、慌ててその場にひれ伏した。
――ここは下界ではありませんからそのような謝罪は要りません。それよりもあなたがどうして私の前に呼ばれたか、わかりますか?
「それは……セシルを守りきれなかった罪を償うためでしょうか?」
――セシルが命を落としたのは自分に非があると?
「はい。私がもっと早くセシルを連れて逃げればあのようなことにはならなかったと悔いております」
――だから、あなたは自分で命を絶ったのですか?
「はい。セシルのいない世界など、生きている価値もありません。私の命はセシルと共にあると誓ったのです」
――そうでしたね。私は、あなたのその気持ちに心を動かされました。
「えっ……それはどういうことでございますか?」
――セシルとの約束を守るために自分の命が消えるのも厭わず、永遠の愛を貫こうとした。その気持ちは素晴らしいと想っています。
「ありがとうございます」
――ですが、神として自分で命を断つことを認めたわけではありません。
確かにそうだ。私たちの命は神によって与えられたもの。それはいかなる理由があっても自ら断つなど許されるべきことではない。
「申し訳、ございません……。私は地獄にでもどこにでも落としてください。その代わりどうかあの心の綺麗なセシルはどうか神さまの元に……」
――それほどセシルを想っているのですね。
「はい。心からセシルを愛しています」
――それならば、あなたに一度だけチャンスをあげましょう。
「チャンス?」
――あなたが最後に誓った言葉を覚えていますか?
最後に誓った言葉……それはもちろん覚えている。いや、忘れるはずがない。命と引き換えに魂に刻み込んだのだから。
「はい。生まれ変わっても絶対にセシルを見つけ出して見せると言いました」
――それを証明してもらいましょうか。
「証明、ですか?」
ーこれからそれぞれ別の地に時をずらして生まれ変わらせます。あなたにはエリクとしての記憶を残してあげますが、セシルはあなたとの記憶を全て忘れた状態です。それでもセシルを見つけ出し、無事に思いが叶ったら二人が寿命を全うし命が尽きる時まで幸せを保証しましょう。
思いがけない神さまの言葉に私はもう喜びしかなかった。セシルが私との記憶がなくても私にあれば問題ない。絶対に見つけ出して見せる!!
「神さまっ!! ありがとうございます!!」
――お礼を言っていますが決して容易い道ではありませんよ。
「どんな厳しい道でも構いません。またセシルに会い、愛し合えるのなら……どんなことをしてでも見つけ出してみせます!!」
――エリク。頑張りなさい。あなたの心意気を買って、生まれ変わったセシルにもあなたに繋がるヒントを残しておいてあげましょう。
「神さまっ! ありがとうございます!!」
――いや、あなたとセシルの生まれる時代と場所を間違えてしまった私のせめてもの贖罪です。私はあなたが無事に生まれ変わったセシルを見つけ出してくれると信じています。
そうか……神さまの手違いだったか。それでもいい。愛しい人に二度一目惚れできるなんて、嬉しいだけだ。
セシル……どうか待っていてくれ。絶対に私が探し出して見せるから。
愛しているよ、セシル。
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