ロイヤルウエディング 〜スイーツな恋に落ちました

波木真帆

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とっておきの場所

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『トール? どうしたんだ? アイスが溶けてきているぞ』

『ああっ、ごめんなさいっ!』

半分溶けてしまったアイスを少し冷めてしまったアップルパイに乗せ、僕はジェリーさんへの思いを隠すように黙々とアップルパイを食べ勧めた。

かなりのボリュームがあったけれど、まだ昼食は食べていなかったから助かったな。
なんとか完食できてホッとした。

『最高だったな、やはり食べに来られて良かったよ。トールのおかげだ。ありがとう』

『いえ、そんな。僕も観光マップにも載っていない穴場なお店を教えてもらって嬉しかったです』

ここの食事が終わったら、もうジェリーさんとお別れなんだな。

初めて好きになった相手だけど、観光先で出会っただけの人だし……これ以上どうにかなるなんてできるわけもないし。
一緒にアップルパイを食べるっていう思い出ができただけも幸せか。

『素敵な思い出をありがとうございました。あの、僕……そろそろ失礼します』

ずっと一緒にいると別れるのも辛くなるしな。
これ以上好きになる前に離れていた方がいいんだ。

僕はさっと席を立ち、伝票を持っていこうとすると

「わっ!!」

突然、ジェリーさんに腕を掴まれてしまった。

『トール、急にそんなに慌てて帰らなくてもいいだろう? それとも何か用事でも?』

『えっ、いえ、そうじゃないですけど……そろそろ、ジェリーさんも予定がおありだと思って……』

『それなら気にしないでいい。私は今日は何も予定がないんだ。もし良かったら、お礼に観光案内でもさせてもらえないか?』

『お礼って……でも、これは、お詫びのつもりで……』

『服も買ってもらって、1人で入りにくい店にもついてきてもらった。ジェラートなんかとっくに弁償してもらっているよ。逆に多すぎるくらいだ。なっ、私ともう少し付き合ってもらえないか?』

そんなに真剣な表情で頼まれたら断るなんてできないじゃないか。
だって、僕だって本心はジェリーさんと一緒にいたいんだから。

でも……。

結局悩みに悩んで、僕は頷いてしまっていた。

『じゃあ、時間ももったいないし早速いこうか』

そういうと、僕の手からスッと伝票をとりカードと一緒に店員さんに渡してしまった。

『あっ、僕が……』

『ついてきてくれただけで十分なのだから払わせてくれ』

そう言われたらこれ以上反対するわけにもいかない。

『あの……ごちそうさまでした』

頭を下げてお礼をいうと、ジェリーさんはにっこりと微笑み返した。


ジェリーさんに主要な観光スポットを案内してもらって、最後に連れられてきたのはこのロサラン王国の王宮。
やっぱり宝石マネーで潤っている国の象徴となるものだけあって、すごく豪華でとっても綺麗だ。

『このお城にも観光できる場所があるんですか?』

『ああ、とっておきの場所があるんだ』

お城の中に入れるなんてあのマップには何も書かれてなかった気がする。
もしかして、国民しか入れない場所があるのかもしれない。

ロサラン王国好きなあの先生でさえも入れていない場所かもしれないな。
そう思ったらすごく楽しみになった。

門の前に立っている警備兵にジェリーさんがロサラン語で何かを話しかけると、すぐに扉が開かれ中へと入れてくれた。
誰にも止められることもなく、僕たちはスタスタと広い庭園を抜け、たどり着いたのは大きな噴水の前。

噴水の水飛沫がキラキラと宝石のように見える。

『わぁーっ! とっても綺麗ですね』

『ああ、私の一番大好きな場所なんだ』

ジェリーさんの好きな場所を共有できるなんて……僕、この思い出だけでずっと幸せでいられる気がする。

『今日はトールに会えて最高の1日だったよ。あのジェラートのおかげだな』

『僕もジェリーさんと出会えて幸せでした。しかも最後にこんな素敵な場所に連れてきてもらえて……嬉しいです』

『最後……。あの、トール……君は……私のことをどう思ってる?』

『えっ? どう、って……』

『悪い、ずるい聞き方をしたな。正直にいうよ。私は君に惹かれてる。トールの屈託のない笑顔も嘘偽りのない言葉も全く裏表のない優しさも全てに心惹かれてるんだ』

『そんなこと……』

それって僕のことが好きってこと?
でも僕は明後日には帰らないといけないのに……。

『トール……私は本気だ。トールが好きなんだ。もうここから帰したくない!』

僕より一回りくらい大きなジェリーさんに覆われるようにギュッと抱きしめられる。
優しくて安心する匂いと共にジェリーさんの早い鼓動が伝わってくる。
ああ、この温もりから離れたくない……。

でも、僕……。

『ジェリーさん……僕も、そのジェリーさんのこと、好きです。でも……』

『トール、本当か?? なら――』
『でも僕……明後日には日本に帰らないと!』

『そんな……トール! 嫌だ! 私は絶対に離さない!!』

「んんっ!!」

突然、ジェリーさんの顔が近づいてきたと思ったら、唇が重なり合っていた。
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