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番外編

お守り

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『真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です』の番外編
<お披露目会までもう少し>のヴェル視点のお話。
楽しんでいただけると嬉しいです♡



  *   *   *



ロルフさまとルルさまの一歳のお誕生日当日は、お二人のお披露目会の日でもある。
その日のためにアズールさまは半年以上前から当日お二人がお召しになる衣装を考えておられた。

ご自分の一歳のお誕生日にルーディーさまに作っていただいたお披露目の衣装がとても嬉しかったそうで、ロルフさまとルルさまにも同じように喜んでもらいたい一心で妊娠中の辛い体調でも必死に頑張っておられたのだ。

アズールさまは寝室からほとんど出られないため、私とアリーシャさまが話を伺い、それをマティアス殿に伝え、それを私たちがまたアズールさまにお伝えするという、なんとも手間も時間もかかるものだったけれど、最後にはアズールさまもマティアス殿も双方が納得されるものになったと思う。

今はその衣装の完成の連絡を待つだけだ。

お披露目会まで一週間。
当初の予定ではそろそろ連絡が来る頃だと思うが、どうだろう。

アズールさまはご出産も近づいて、そちらのご心配もあるだろうから、少しでもいい知らせをお伝えして気分をあげていただきたい。

今日はアズールさまは朝からずっと眠っていらっしゃるということで、ルーディーさまがつきっきりでいらっしゃるため、私もティオもお屋敷全体の警備に務めているが、頭の片隅にはずっと御衣装のことがある。

すると、突然持っていた通信機が震えた。
相手はマクシミリアン。

もしや! 

いい連絡に違いないと急いで通信機をオンにすると

ーヴェルナー、今よろしいですか?

ーああ、構わない。どうした?

ーはい。ただいま、マティアス工房よりロルフさまとルルさまの御衣装が完成したと連絡がありました。

ーおお、そうか! よかった。早速私が受け取りに……

ーいえ。私がすぐに工房に寄って受け取って参ります。そのままそちらにお届けに上がりますので、ヴェルナーはロルフさまとルルさまに荷物が届くことを気づかれないようにしていただけますか?

ーああ、そうか。アズールさまはお二人には当日まで内緒にして驚かせたいと仰っていたな。

ーはい。アズールさまもルーディーさまに同じように当日驚かされて喜んでおられたそうなので、きっとそれをなさりたいのでしょう。

ーそうか、わかった。じゃあ、どれくらいでこちらに来られる?

ー15分ほどで到着するかと。それからお部屋に御衣装を届けてからそっと出ますので、今から30分ほどお二人がお部屋から出ないようにお願いいたします。

ーわかった。任せておけ。任務を終えて、マクシミリアンが部屋を出たら、一瞬でいい。連絡を入れてくれ。

ー承知しました。


そこから、私はすぐにティオにも状況を話し、ロルフさまとルルさまのお部屋に向かった。

アズールさまのご出産が近いから、無事に赤ちゃんが誕生するようにお守りを作りましょうと提案すると、素直なロルフさまとルルさまはすぐにその話に乗ってくれた。

アズールさまから以前作り方を習っておいた折り紙で花を作ることにして綺麗な紙を持っていくと、お互い競い合うように作り始めた。

競いながらもお互いにわからないことは教え合う。
そんな兄妹の仲睦まじい様子に私もティオも癒された。

ルーディーさまとアズールさまが二人が遊んでいる様子も見られるようにしたいと仰ったので、マクシミリアンがその様子を映像として残せる機械を作ったため、ティオはもっぱら撮影係。
あまりにも愛くるしいお二人を撮影しているティオはいつも幸せそうだ。

綺麗に作れるようになるまで頑張る!!

と仰っていただけたおかげで、この間にマクシミリアンは全ての任務を遂行できたようだ。

れきたできたー!!!」

ううルルもれきたーっ!!」

お二人の小さな手には可愛らしいお花がある。

まんまママわたちゅーわたす!」

「わかりました。ですが、アズールさまはお昼寝中かもしれませんので、私が様子を見てきますね」

お花のことは内緒だよ! と何度も念を押されて、アズールさまの元に向かうと、御衣装ももうすでにクローゼットの奥にしまわれたご様子。

お二人をお連れしてもよろしいか尋ねると、アズールさまもルーディーさまも快く了承してくださった。

すぐに部屋に戻り、お二人をお連れしてアズールさまの元に戻ると、アズールさまはルーディーさまに支えられて座っていらっしゃった。

「これー、おまもりー、つくっちゃのー!」

お二人から差し出されたお花を嬉しそうに受け取られたアズールさまは、

「ロルフとルルの優しい気持ちを受け取ったから、元気な赤ちゃん産むから楽しみにしていてね」

と笑顔をお見せになった。

ロルフさまとルルさまがお作りになったその時のお花のお守りはいつまでもお二人の寝室で輝きを放っていた。
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