最強の黒豹騎士団長は新人熊騎士にロックオンされちゃいました

波木真帆

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自分で自分がわからない

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――私には特別な愛を与えてほしい……

マクシミリアンの言葉がずっと頭の中から離れていかない。

でも、愛情を受けられずに育ってきたから、愛の与え方も何もわからない。
そもそも私がマクシミリアンをパートナーになんて選べる立場でもないのに。

年上で可愛げがあるわけでもない私のことをマクシミリアンはどうしてそんなにも思ってくれるんだろうか……。

答えがわからないまま、休憩時間が終わり午後の訓練に入る。

騎士たちに指導しながらも、うまく集中できずにいたのはやはりさっきのマクシミリアンの言葉だ。
今までどんなに悩むことがあったとしても、訓練に入ればそのことだけを考えていられたのに。
今日の私は雑念だらけだ。

気をつけないと!
自分で自分に言い聞かせた途端、

「団長! 危ないっ!」

訓練中の騎士が持っていた木剣が勢い余って手からすっぽり抜け、私の方に向かってくる。

訓練中にこんなことは日常茶飯事だから、いつもなら声をかけられる前に対処するのだが、今日は考え事をしていたせいで、反応が遅れてしまった。

「――っつう!」

勢いよく飛んできた木剣はそのまま私の右腕と背中を直撃し、私はその場に蹲った。

「団長!! 大丈夫ですか!!」

木剣を飛ばしてしまった騎士も、周りにいた騎士たちも皆駆け寄ってくるが、

「団長に触れるな!!」

そう言いながら、マクシミリアンが誰よりも早く駆け寄ってきてそのまま私を抱き上げた。
周りの騎士たちはマクシミリアンのあまりの勢いに私たちのそばから一気に離れていく。

いくら体格差があるとはいえ、仮にも団長という立場にいる私がまだ新人の騎士に軽々と抱き上げられて恥ずかしくないわけがない。

「マクシミリアン! 離せっ!」

「いいえ、離しません。すぐに医務室に行きますよ!」

「――っ!!」

その迫力にもはや何もいえなくなる。
そのままマクシミリアンに医務室に連れていかれて、医師の診断を受けると骨には異常はないが三日間は絶対に動かしてはいけないと何度も念を押されてしまった。

今までにも何度も医師の言うことを聞かずに無理をして回復が遅くなったのを覚えられているようだ。

「先生、大丈夫です。私が責任持って団長を安静にしますから」

「ははっ。ヴェルナーくん。頼りになる部下ができたようだな」

「えっ、いや……」

「じゃあ、君に薬も渡しておこう。こちらが飲み薬。これからしばらく腫れるだろうから痛み止めだ。そしてこっちが塗り薬。一日に三回。腫れているところを重点的に塗ってあげてくれ。怪我をしたのが利き腕だから、かなり不便になるだろうが君が彼の手の代わりになってあげてくれ」

「はい! お任せください!」

「ちょ――っ」

私が言葉を発する前に医師とマクシミリアンの間でどんどん話が進んでしまっている。

「では、団長。三日間は自室で安静ですからね」

「だが訓練は……」

「大丈夫ですそのことも任せてください」

マクシミリアンはそう言って、私をまた抱きかかえ自室へと連れて行ってくれた。

「団長。ベッドで休む前に着替えをしましょう。薬も塗らないといけないですから、服を脱がしますね」

「えっ、ちょ――っ。着替えくらい自分でできる」

「動かさないように安静にと言われたばかりですよね? それに薬を塗るには手が届かない場所ですよ」

「くっ――!」

マクシミリアンから何も言われていない昨日までの私なら、何も考えずに頼んだかもしれない。

だが、今は違う。

――私には特別な愛を与えてほしい……

そんなことを言われた後で、裸になって、世話をしてもらうなんてそんなこと……。

「もしかして、私のことを意識してくれていますか?」

「――っ、そ、そんなこと……っ」

「なら、私が着替えをさせても、団長の肌に触れても気にならないでしょう? 私も今はパートナーにしたいと言う気持ちは封印して、お世話に集中しますから気にしないでください。それとも世話をしてほしい騎士がいるのですか? その人を呼んできましょうか?」

「な――っ、そんな相手いるわけないだろう!」

「なら、私がお世話をしていいですよね?」

そう言われたらこれ以上断ることもできなかった。

仕方がない。
自分ではできないのだから。

そう言い聞かせて、マクシミリアンに服を脱がせてもらうと、

「――っ!!!」

マクシミリアンの指が肌に直に触れただけで身体がピクッと反応してしまう。

「団長? どうかしましたか?」

「な、なんでもない」

今まで傷の手当てで手足に触れられたことだってあるのに、なんでマクシミリアンだとこんなに緊張して身体が震えるんだ?
ただ薬を塗ってもらっているだけなのに、どうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう……。
ああ、もう本当に自分がわからない。
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