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騎士団長ヴェルナーの誕生
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別の方が読みやすいかも……というご意見をいただきましたので独立させてみました。
これで心置きなく長く書けます(笑)
ということで予定より長くなりそうですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです♡
* * *
私、ヴェルナー・レオパルトは伯爵家の長男として生まれた。
厳格な父だったけれど、優しい母がいてくれたおかげで幸せな毎日を過ごしていた。
けれど、私が2歳の頃に母が亡くなり、悲しみに暮れる私とは対照的に父はすぐに若い後妻を娶りすぐに弟が生まれた。
継母は我が家に嫁いできた当初から、実母によく似て可愛いと評判だった私を疎んでいたけれど、弟が生まれてからは堂々と私を無視するようになった。
継母は弟だけがこの家の子どもだと言って可愛がり、そして父もまた家庭でのいざこざを嫌って私よりも弟に愛情を注いでいたのは、幼い私から見てもよくわかった。
そして終いには父も継母も弟を嫡男のように扱い、私が12歳を迎えた頃、正式に弟を後継者として教育すると宣言されてしまったのだ。
それは成人を迎えたら私に家から出ていけと通告しているのと同義だった。
まだ12歳の子どもだった私にはそれは冷たい現実で、6年後に自分がどうなっているのかも想像がつかなかった。
そんな時、私は騎士団の存在を知った。
騎士団に入りさえすれば、とりあえず住むところには困らず、食事も与えてもらえる
そして、自分の力が国のためになるならば、これ以上の場所はない。
けれど、私はそれまで剣術も武術もしたことはなかった。
それでもそれしか生きる道がないと分かればやる気も出るもので、私はそれから必死に独学で訓練を続け、翌年騎士団の入団テストを受けた。
騎士団のテストは誰が受けたのかなんてことを知られることもないし、その情報が漏れることもない。
だから父にも継母にも知られずに受けることができた。
もちろん最初のテストは不合格。
それでも、幼い私が入団テストを受けにきている事情を知った当時の騎士団長・オスカーが私につきっきりで剣術と武術を教えてくれて、翌年過去最年少で合格を果たした。
合格が決まったその足で自宅に戻り、父と継母の前で騎士団に入団するから家を出ていくこと、もう二度とここには戻らないことを宣言して立ち去った。
継母は今までに見たことがないくらいの満面の笑みで私を送り出し、父からは一言、身体に気をつけろとだけ言われたがその言葉に返事はしなかった。
その時に私はレオパルトという名前を捨て、ただの騎士ヴェルナーとして生きていくことを決めた。
それからは毎日激しい訓練に明け暮れていたけれど、自宅で重苦しい雰囲気の中、存在を否定された状態で生きるよりは、日々の訓練で自分が強くなっていくのを少しずつ感じられ、何よりオスカーに褒められるのも嬉しくて充実した日々を過ごせる騎士団での生活は快適以外のなにものもなかった。
騎士団に入団した者は女性との付き合い、並びに婚姻は禁止という決まりは入団した後で知ったのだけど、母が亡くなった後すぐに若い女性と再婚した父の姿を見て、愛というものの存在を信じられなくなっていた私には特に問題ではなかった。
それよりも騎士団にいれば、結婚を強要されない安心感の方が強かったのだ。
けれど、騎士団には男性しかいない。
しかも血気盛んな若い男性たち。
女性との付き合いも、婚姻も認められていないとなれば、必然的に国から認められた性風俗の店で有り余る欲望を発散するか、もしくは男の恋人を作るかの二択になる。
騎士団内での恋愛は、訓練に私情を挟まない限りは認められている。
入団当初、まだ幼く女性のように見える可愛らしい顔立ちをしていた私は、騎士たちからよく夜の相手をしないかと声をかけられていた。
そのことを知った騎士団長のオスカーが私が成人するまでは決して手出ししてはいけない、手を出したものは騎士団を即刻追放し、その上死ぬよりきつい罰を与えるとはっきり言ってくれたおかげで、私を誘う者はいなくなった。
成人を迎えるまでに必死で訓練をしたおかげで、オスカーに次ぐ剣術と武力を身につけ、18歳で副団長に就任した。
若さと瞬発力ではオスカーを大きく超える力を手に入れた私にはもう誰も声をかけてこなくなった。
鬱陶しく声をかけてくるものもいないし、快適でいい。
もちろん、私も男だから無性に欲望を発散したくなる日はある。
けれど、それも自分で慰めればすぐに事足りる。
誰かを相手に求めずとも、自己完結できるのなら煩わしいことをしなくてもいい。
日々の訓練と自室の往復の日々を過ごし続けること数年。
オスカーが騎士団を辞めることになり、私が陛下より騎士団長の職を賜った。
とはいえ、ルーディー王太子殿下が騎士団に入団されるまでの間、騎士団を預かるだけだ。
私に託された仕事は将来ルーディー王太子殿下が入団された時の右腕となれる者を育てること。
これに尽きる。
そして、オスカーが辞めて初めての騎士団入団テストの日がやってきた。
今年の入団テストは受験者が少ない。
それはあの男のせいだろう。
マクシミリアン・ベーレンドルフ。
熊族である侯爵家の次男に生まれ、恵まれた体格を持つだけでなく、剣術と武術は申し分なく、しかも祖父は王太子殿下の世話役という何もかも兼ね備えた彼がいれば、他の受験者はただの引き立て役になってしまう上に、合格する可能性は低くなる。
彼とライバルとして戦うのを他の受験者たちが嫌がり、今年の受験生は少なくなってしまったというわけだ。
入団テストには私も騎士団長として、見せてもらったが彼の実力は前評判以上に素晴らしかった。
彼なら、将来王太子殿下の右腕となれるかもしれない。
満場一致で合格したマクシミリアンだったが、私は翌日から彼を合格させたことを後悔することになった。
これで心置きなく長く書けます(笑)
ということで予定より長くなりそうですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです♡
* * *
私、ヴェルナー・レオパルトは伯爵家の長男として生まれた。
厳格な父だったけれど、優しい母がいてくれたおかげで幸せな毎日を過ごしていた。
けれど、私が2歳の頃に母が亡くなり、悲しみに暮れる私とは対照的に父はすぐに若い後妻を娶りすぐに弟が生まれた。
継母は我が家に嫁いできた当初から、実母によく似て可愛いと評判だった私を疎んでいたけれど、弟が生まれてからは堂々と私を無視するようになった。
継母は弟だけがこの家の子どもだと言って可愛がり、そして父もまた家庭でのいざこざを嫌って私よりも弟に愛情を注いでいたのは、幼い私から見てもよくわかった。
そして終いには父も継母も弟を嫡男のように扱い、私が12歳を迎えた頃、正式に弟を後継者として教育すると宣言されてしまったのだ。
それは成人を迎えたら私に家から出ていけと通告しているのと同義だった。
まだ12歳の子どもだった私にはそれは冷たい現実で、6年後に自分がどうなっているのかも想像がつかなかった。
そんな時、私は騎士団の存在を知った。
騎士団に入りさえすれば、とりあえず住むところには困らず、食事も与えてもらえる
そして、自分の力が国のためになるならば、これ以上の場所はない。
けれど、私はそれまで剣術も武術もしたことはなかった。
それでもそれしか生きる道がないと分かればやる気も出るもので、私はそれから必死に独学で訓練を続け、翌年騎士団の入団テストを受けた。
騎士団のテストは誰が受けたのかなんてことを知られることもないし、その情報が漏れることもない。
だから父にも継母にも知られずに受けることができた。
もちろん最初のテストは不合格。
それでも、幼い私が入団テストを受けにきている事情を知った当時の騎士団長・オスカーが私につきっきりで剣術と武術を教えてくれて、翌年過去最年少で合格を果たした。
合格が決まったその足で自宅に戻り、父と継母の前で騎士団に入団するから家を出ていくこと、もう二度とここには戻らないことを宣言して立ち去った。
継母は今までに見たことがないくらいの満面の笑みで私を送り出し、父からは一言、身体に気をつけろとだけ言われたがその言葉に返事はしなかった。
その時に私はレオパルトという名前を捨て、ただの騎士ヴェルナーとして生きていくことを決めた。
それからは毎日激しい訓練に明け暮れていたけれど、自宅で重苦しい雰囲気の中、存在を否定された状態で生きるよりは、日々の訓練で自分が強くなっていくのを少しずつ感じられ、何よりオスカーに褒められるのも嬉しくて充実した日々を過ごせる騎士団での生活は快適以外のなにものもなかった。
騎士団に入団した者は女性との付き合い、並びに婚姻は禁止という決まりは入団した後で知ったのだけど、母が亡くなった後すぐに若い女性と再婚した父の姿を見て、愛というものの存在を信じられなくなっていた私には特に問題ではなかった。
それよりも騎士団にいれば、結婚を強要されない安心感の方が強かったのだ。
けれど、騎士団には男性しかいない。
しかも血気盛んな若い男性たち。
女性との付き合いも、婚姻も認められていないとなれば、必然的に国から認められた性風俗の店で有り余る欲望を発散するか、もしくは男の恋人を作るかの二択になる。
騎士団内での恋愛は、訓練に私情を挟まない限りは認められている。
入団当初、まだ幼く女性のように見える可愛らしい顔立ちをしていた私は、騎士たちからよく夜の相手をしないかと声をかけられていた。
そのことを知った騎士団長のオスカーが私が成人するまでは決して手出ししてはいけない、手を出したものは騎士団を即刻追放し、その上死ぬよりきつい罰を与えるとはっきり言ってくれたおかげで、私を誘う者はいなくなった。
成人を迎えるまでに必死で訓練をしたおかげで、オスカーに次ぐ剣術と武力を身につけ、18歳で副団長に就任した。
若さと瞬発力ではオスカーを大きく超える力を手に入れた私にはもう誰も声をかけてこなくなった。
鬱陶しく声をかけてくるものもいないし、快適でいい。
もちろん、私も男だから無性に欲望を発散したくなる日はある。
けれど、それも自分で慰めればすぐに事足りる。
誰かを相手に求めずとも、自己完結できるのなら煩わしいことをしなくてもいい。
日々の訓練と自室の往復の日々を過ごし続けること数年。
オスカーが騎士団を辞めることになり、私が陛下より騎士団長の職を賜った。
とはいえ、ルーディー王太子殿下が騎士団に入団されるまでの間、騎士団を預かるだけだ。
私に託された仕事は将来ルーディー王太子殿下が入団された時の右腕となれる者を育てること。
これに尽きる。
そして、オスカーが辞めて初めての騎士団入団テストの日がやってきた。
今年の入団テストは受験者が少ない。
それはあの男のせいだろう。
マクシミリアン・ベーレンドルフ。
熊族である侯爵家の次男に生まれ、恵まれた体格を持つだけでなく、剣術と武術は申し分なく、しかも祖父は王太子殿下の世話役という何もかも兼ね備えた彼がいれば、他の受験者はただの引き立て役になってしまう上に、合格する可能性は低くなる。
彼とライバルとして戦うのを他の受験者たちが嫌がり、今年の受験生は少なくなってしまったというわけだ。
入団テストには私も騎士団長として、見せてもらったが彼の実力は前評判以上に素晴らしかった。
彼なら、将来王太子殿下の右腕となれるかもしれない。
満場一致で合格したマクシミリアンだったが、私は翌日から彼を合格させたことを後悔することになった。
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