独占欲全開のくま耳の侯爵令息は黒豹騎士を囲い込んで逃がさない

波木真帆

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運命の相手と汗の匂い

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ヴェルナーのことを寝ている間も思い続けていたせいか、朝5時前には目を覚ました。
昨夜、ヴェルナーの可愛い声をおかずにたっぷりと欲望の蜜を放出したが、目覚めた時にはガチガチに硬く聳り立っていた。
やはり運命の相手が同じ建物内にいると思うと、欲望はとどまる事を知らないようだ。

朝からシャワーを浴び、昨夜から何度目かになる蜜を吐き出し身支度を整えた。

ようやく愚息も少し落ち着きを取り戻したところで、ヴェルナーの朝食作りだ。

メレンゲを泡立てパンケーキの生地に混ぜ込む。
弱火でじっくりと時間をかけて焼き上げれば、分厚くて柔らかなパンケーキが焼きあがる。
試食がてらそのパンケーキを食べてみたが、これならヴェルナーにも喜んでもらえるだろう。
かなりの出来に嬉しくなりながら、ヴェルナーのパンケーキを焼いていく。

そして、大切なあの蜂蜜も忘れずに準備しておく。
これは、精製の際に私のフェロモンをたっぷり詰め込んだヴェルナーだけの特別で最高の蜂蜜だ。
パンケーキにたっぷりとかけて食べて貰えば私の匂いを無意識に覚え、私の匂いを嗅ぐたびに発情するようになる。
これは運命の相手にだけ効果がある。

ヴェルナーがこれを食べて私の匂いに反応するようになれば、それは間違いないくヴェルナーが私の運命の相手である事を示している。
まぁ示されなくても私は疾うの昔にヴェルナーが運命の相手だとわかっているのだが。

ミィヨゾティスの花紅茶も忘れずに準備してヴェルナーの部屋に向かうと、私の突然の訪問に驚きつつも私が悲しげな声で見つめればすぐに中に入れてくれた。

私にはその対応で構わないが、他の騎士たちが訪ねてきても決して中に入れてはいけないことを伝えておかなくてはな。

昨日からの無防備なヴェルナーの様子に少し心配になってくる。

美味しそうな匂いを漂わせるパンケーキに笑顔を見せてくれるヴェルナーを見てにやけながら、あの花紅茶を淹れる。
ふわっと優しくもほのかに甘い香りに、これがヴェルナーが懐かしく思うヴェルナーの母との思い出の香りかと思うと実に感慨深い。

ミィヨゾティスの花紅茶の香りが漂うとすぐにヴェルナーが反応を見せる。
大喜びしてくれるところまでは想定内だったが、まさか涙を潤ませるほど喜んでくれるとは思わなかった。

手に入れるのは大変だったが、ヴェルナーのこの笑顔を見せてもらえただけで、これまでの苦労が報われていく気がする。

フェロモン入りの特別な蜂蜜をたっぷりとかけたパンケーキを一口食べて目を丸くするヴェルナーが可愛らしくてたまらない。
それでもヴェルナーの感想を聞くまではドキドキが止まらなかった。

「ああ……こんなに美味しいパンケーキを食べたら、他のものは食べられなくなりそうだな」

恍惚とした目でそんなことを言われて一気に愚息が滾る。
あれほど蜜を出したというのに、本当に堪え性のないやつだ。
必死にそれを抑えながらこれから毎日朝食を作ると伝えると、さすがに驚いていたが冗談で終わらせるつもりはない。

ヴェルナーの性格も全て私の頭の中にある。
どうすればヴェルナーが受け入れてくれるかなんて何度もシミュレーション済みだ。

ヴェルナーに特別な蜂蜜をかけた特製のパンケーキを食べてもらうという第二関門をクリアしたのだ。
ここはもう第三関門を突破するまで突き進むしかない。

朝食を残らず完食してもらってから、午前の訓練に入る。

私の汗を嗅がせれば、さっき食べたフェロモン入りの蜂蜜の効果で私の存在を気にせずにはいられなくなるはずだ。

ヴェルナーは訓練中にチラチラと私を見ている。
ふふっ。
これだけ離れていても反応するようだ。

休憩に入ると、急いでヴェルナーに駆け寄りタオルと水を渡す。
最初こそ遠慮していたが、

「迷惑ですか?」

と悲しげに訴えて見せれば、すぐにフォローしてくれるのはわかっている。

「いや、そんなことはないが……」

と言質を取ればこっちのもの。
私が手渡したタオルでたっぷりと汗を拭えば、今日の私のおかずの出来上がりだ。
それを他の匂いが移らないように特別な加工が施された袋に保管しておく。
ああ、今夜が楽しみだ。

夕食を多く作りすぎたと言って、ヴェルナーの部屋に上がり込み夕食を共にする。
これにも砂糖の代わりにあの蜂蜜を入れている。
それをたっぷりと食べてもらった後で、夕食を食べてもらったお礼だといって肩揉みをする。
服越しでもヴェルナーに触れるだけで気持ちがいい。
肩や背中以外に触れられないことは拷問でもあるが、これは私の手や指の感触を覚えさせるために必要なことだ。

服の下でギンギンに昂っている愚息を必死に抑えながら肩揉みを終え、自室に戻った。
部屋に戻ってすぐに昼間の戦利品を取り出し、先ほどの感触とヴェルナーの匂いを嗅ぎながら愚息を慰める。
昨日と今日でどれほど蜜を放ったのかもう見当もつかないが、やはり運命の相手の魅力は凄まじい。

愚息よ、直にヴェルナーに触れられるその日までもう少し我慢してくれ!
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