74 / 80
番外編
グレイグへの報告
しおりを挟むいつも読んでいただきありがとうございます。
短いですが、グレイグとの小話を書きましたので楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
「ヒジリ、無理しないで今日は寝ていたほうがいい」
「んっ、でも……」
「大丈夫、テオのことなら私に任せてくれ」
「ランハート、ありがとう」
「ふふっ。お礼などいらないよ。私たちは夫夫なのだから助け合うのが当然だ」
「うん。ねぇ、ランハート。こっちきて……」
「どうした? 何か欲しいのがあるか?」
ベッドに横たわるヒジリに顔を近づけると、
「ランハート、だいすき……」
という言葉と共に頬にチュッと唇が当てられた。
ああ、ヒジリは幾つになっても可愛らしくて困る。
そのまま愛し合いたい気持ちをグッと抑えて、
「私もヒジリが大好きだよ」
と頬に口づけをして部屋を出た。
すぐにグレイグを呼び、ヒジリが部屋で眠っていることを伝え、出かけている間くれぐれも気にかけていて欲しいと頼むとグレイグは目を丸くして驚いていた。
「旦那さまがおそばについていて差し上げなくてよろしいのですか?」
「私もそうしたいが、今日はテオが騎士団の訓練を見に行くのを楽しみにしていただろう? ヒジリがテオの楽しみを奪いたくないというのでな」
「そういうことでございますか……。本当にヒジリさまはお優しい。お医者さまをお呼びいたしますか?」
「いや、必要なら外出から戻ってきてから呼ぶことにしよう」
医師とはいえ、私のいない寝室でヒジリに触れさせるわけにはいかないからな。
「承知いたしました」
「それから、グレイグ……大事な話がある」
「どうなさったのでございますか?」
「実は……ヒジリに子ができたのだ」
「は……っ? い、いまなんと仰ったのですか? ヒジリさまに、おこ、がどうとか? 私の聞き間違いでございますか?」
「ははっ。驚くのも無理はないな。ヒジリに子ができたのだ。間違いではないぞ。一昨日、ヒジリが神さまにそのように教えていただいたそうだ」
「なんと――っ! まさか、お二人目もお授かりになろうとは!! 私、幸せにございます」
「そうだろう? 私も思いがけないことに驚いたのだよ」
「――っ、ですが、昨夜はヒジリさまとの夜を過ごされたのでは? かなり激しかったように思われますが……」
「ああ、そうなんだ――」
「そうなんだではございません!! 妊娠初期の大事な時期に旦那さまの化け物のような体力でヒジリさまを激しく愛されてお腹の御子に何かあったらどうするつもりなのですか!!」
「――っ!!」
グレイグのあまりの剣幕に、意識を失うまで激しくされたかったとヒジリの方から誘われたなどとは言えるはずもなく、
「申し訳ない。私が悪かった。これからはヒジリの体調に留意するから怒りを鎮めてはくれぬか?」
と誠心誠意頭を下げると、
「これからは十分おきをつけください」
とようやく落ち着いてくれた。
「それで今は、本当にお医者さまはお呼びしなくてもよろしいのですか?」
「ああ、ただ寝不足なだけだから問題ないと言っていた。ただでさえ、身籠ると眠くなるのだそうだ。今はゆっくり寝かせるのが一番の薬だ」
「承知いたしました。このグレイグが責任を持ってヒジリさまの睡眠をお守りいたします!」
俄然張り切ったグレイグにヒジリを任せ、私はその場を離れた。
それにしても喜んでくれるだろうとは思ったが、あれほどまでとはな。
グレイグはまだまだ老いとは無縁だな。
それはそれで嬉しいことであるが……。
久しぶりに真剣にグレイグに叱られたのをなんとなく嬉しく思いながら、テオの部屋に向かった。
* * *
続きも予定していますが、間が空きそうなのでとりあえず完結表記にしています。
363
お気に入りに追加
4,378
あなたにおすすめの小説

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる