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従兄弟の運命の相手 ヴァージルside <前編>
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私の名はヴァージル。
本当は長ったらしい名前があるのだが、ここは割愛しておこう。
歴史あるランジュルス王国の国王となってしばらく経つ。
我が国は100年ほど前までは周りの国とも戦争などをしていたが、我が国の軍事力があまりにも強大となり我が国に戦争を仕掛けるものはいなくなった。
おかげでそれからは平和な時を過ごしている。
我が国が平和を保つことができるのは王国騎士団の力も大きいだろう。
現在の王国騎士団は長い歴史の中で一二を争うほどの戦闘力を持っている。
それはなぜか。
それはこの騎士団を統率しているランハート騎士団団長の存在が大きい。
ランハートの母親は私の父の妹……簡単に言えば、私とランハートは従兄弟にあたるが、同じ時期に生まれた私たちは、ほとんど兄弟のように育てられた。
王子として、人に傅かれる毎日の中でランハートだけは私を対等に扱ってくれたのだ。
大きくなり、公の場では私を王子として扱いはしたが2人になればいつも通りの関係で私はランハートと過ごす時間を心地よく思っていた。
成人が近くなり、私の元へは毎日とんでもない量の縁談話が舞い込んでくる。
国内の高位貴族はもちろん、外国の姫たちの釣書と日々格闘していたのだが、
「ヴァージル、大変そうだな」
とランハートはどこ吹く風といった様子だ。
本来ならば公爵家の嫡男であるランハートには私と同量の縁談話が来てもおかしくはないのだが、ランハートにはまだ来ない。
いや、これから先10年は来ないだろう。
なぜなら公爵家当主には運命の人との出会いがあると言われているからだ。
出会った瞬間にすぐに運命だとわかり、生涯その人としか愛せない。
もし公爵家当主が運命の人以外のものと婚姻したら、公爵家は廃れると言われている。
公爵家が没落することはすなわちそれはランジュルス王国の滅亡を意味する。
それほどまでに我が王家とシェーベリー公爵家との結びつきは強い。
だからこそ、ランハートには縁談話は来ないのだ。
だが、運命の人はどこにいるかはわからない。
先先代の場合は随分と歳の離れた隣国の貧しい町の娘だった。
ランジュルスに足を踏み入れたこともなければ運命の人の存在も知らない。
だが、運命は一瞬にして動き出した。
先先代に運命の人が現れないことに痺れを切らした当時の家令が先先代の当主が成人から10年経過したのを区切りに、国内外の妙齢の女性を屋敷に招いたのだ。
その時、隣国の高位貴族の女性の付き添いとして屋敷にやってきたのがその彼女だったのだ。
先先代はたくさんいる女性の中からすぐに彼女を見つけ出し、彼女はすぐに公爵夫人として迎え入れられた。
ランハートの父の場合は、運命が私の父の妹であったこともあって、幼少期からすぐに婚約者として愛を育み、成人を迎えたと同時に婚姻した。
そんな経緯があるからこそ、ランハートの場合も成人から10年経つまでは縁談話が舞い込むことはない。
10年もあれば、おそらくその間に運命が現れるとランハートも私も思っていた。
まさか15年経っても見つからぬとは誰が思っていただろう。
先先代に見習って25を過ぎてからランハートの下には縁談話がくるようになったが数十名と一度会った瞬間、『違う』と一言告げ、帰っていく。
そんな対応に女性たちは諦めてしまったのだ。
その結果30を迎えた今、ランハートの元には縁談話も来なくなった。
ランハートにいつ運命が現れるのか……日々それだけを心配していたある日、ランハートが血相を変えて私の元へとやってきた。
騎士団長になってからは必ず約束を取り付けてから訪れていたというのに、昔のような振る舞いにいささか驚きを隠せなかった。
「ヴァージルっ!!!」
「うわぁっ、どうしたんだ一体!!」
「運命がっ、私の運命が現れたんだ!!!」
いつもの冷静沈着なランハートはどこに行ったんだ? と思うほど、興奮してはしゃいでいるランハートの姿に面食らってしまう。
「ちょ――っ、落ち着け! 詳しく話せ」
肩をぽんぽんと叩き落ち着かせてからランハートの話を聞いた。
ランハートの運命の人はどうやら異世界人らしい。
異世界人はランジュルス王国の歴史の中でも数人現れているから驚くことではないが、異世界人がランハートの運命だったとは驚きだ。
しかも大層美しいらしい。
まぁランハートのいうことだからあまり信用はならないが……。
なぜなら公爵家当主にとって運命の相手は最上級の美人であるが、こちらから見ればそこまでではないと思ってしまう。
父の妹であるランハートの母も一応美人の類ではあったが、この世のものとは思えないほどの美人と称するランハートの父の言葉には『ん?』と思ってしまうのだ。
まぁそんなことは絶対に言えないが……。
ランハートはその異世界人の運命の相手に自分を偽っているのだという。
なぜそのようなことをと思ったが、聞けば運命の相手は男性らしい。
我が国で同性同士での婚姻は珍しくはないが、なんと言っても彼は異世界人。
同性同士の婚姻に嫌悪感を示すかもしれないと恐れているのだ。
だからランハートは自分をただの騎士団長として彼のそばで彼の心が自分に向くまで見守り続けるというのだ。
なんといじらしいことだろう。
ランハートにそんな心があったことに驚くが、それが運命の相手の為せる力なのか。
この年まで運命の相手に操を立ててきたランハートのためにも、運命の彼には早くランハートの心を知ってもらいたいと思わずにはいられなかった。
本当は長ったらしい名前があるのだが、ここは割愛しておこう。
歴史あるランジュルス王国の国王となってしばらく経つ。
我が国は100年ほど前までは周りの国とも戦争などをしていたが、我が国の軍事力があまりにも強大となり我が国に戦争を仕掛けるものはいなくなった。
おかげでそれからは平和な時を過ごしている。
我が国が平和を保つことができるのは王国騎士団の力も大きいだろう。
現在の王国騎士団は長い歴史の中で一二を争うほどの戦闘力を持っている。
それはなぜか。
それはこの騎士団を統率しているランハート騎士団団長の存在が大きい。
ランハートの母親は私の父の妹……簡単に言えば、私とランハートは従兄弟にあたるが、同じ時期に生まれた私たちは、ほとんど兄弟のように育てられた。
王子として、人に傅かれる毎日の中でランハートだけは私を対等に扱ってくれたのだ。
大きくなり、公の場では私を王子として扱いはしたが2人になればいつも通りの関係で私はランハートと過ごす時間を心地よく思っていた。
成人が近くなり、私の元へは毎日とんでもない量の縁談話が舞い込んでくる。
国内の高位貴族はもちろん、外国の姫たちの釣書と日々格闘していたのだが、
「ヴァージル、大変そうだな」
とランハートはどこ吹く風といった様子だ。
本来ならば公爵家の嫡男であるランハートには私と同量の縁談話が来てもおかしくはないのだが、ランハートにはまだ来ない。
いや、これから先10年は来ないだろう。
なぜなら公爵家当主には運命の人との出会いがあると言われているからだ。
出会った瞬間にすぐに運命だとわかり、生涯その人としか愛せない。
もし公爵家当主が運命の人以外のものと婚姻したら、公爵家は廃れると言われている。
公爵家が没落することはすなわちそれはランジュルス王国の滅亡を意味する。
それほどまでに我が王家とシェーベリー公爵家との結びつきは強い。
だからこそ、ランハートには縁談話は来ないのだ。
だが、運命の人はどこにいるかはわからない。
先先代の場合は随分と歳の離れた隣国の貧しい町の娘だった。
ランジュルスに足を踏み入れたこともなければ運命の人の存在も知らない。
だが、運命は一瞬にして動き出した。
先先代に運命の人が現れないことに痺れを切らした当時の家令が先先代の当主が成人から10年経過したのを区切りに、国内外の妙齢の女性を屋敷に招いたのだ。
その時、隣国の高位貴族の女性の付き添いとして屋敷にやってきたのがその彼女だったのだ。
先先代はたくさんいる女性の中からすぐに彼女を見つけ出し、彼女はすぐに公爵夫人として迎え入れられた。
ランハートの父の場合は、運命が私の父の妹であったこともあって、幼少期からすぐに婚約者として愛を育み、成人を迎えたと同時に婚姻した。
そんな経緯があるからこそ、ランハートの場合も成人から10年経つまでは縁談話が舞い込むことはない。
10年もあれば、おそらくその間に運命が現れるとランハートも私も思っていた。
まさか15年経っても見つからぬとは誰が思っていただろう。
先先代に見習って25を過ぎてからランハートの下には縁談話がくるようになったが数十名と一度会った瞬間、『違う』と一言告げ、帰っていく。
そんな対応に女性たちは諦めてしまったのだ。
その結果30を迎えた今、ランハートの元には縁談話も来なくなった。
ランハートにいつ運命が現れるのか……日々それだけを心配していたある日、ランハートが血相を変えて私の元へとやってきた。
騎士団長になってからは必ず約束を取り付けてから訪れていたというのに、昔のような振る舞いにいささか驚きを隠せなかった。
「ヴァージルっ!!!」
「うわぁっ、どうしたんだ一体!!」
「運命がっ、私の運命が現れたんだ!!!」
いつもの冷静沈着なランハートはどこに行ったんだ? と思うほど、興奮してはしゃいでいるランハートの姿に面食らってしまう。
「ちょ――っ、落ち着け! 詳しく話せ」
肩をぽんぽんと叩き落ち着かせてからランハートの話を聞いた。
ランハートの運命の人はどうやら異世界人らしい。
異世界人はランジュルス王国の歴史の中でも数人現れているから驚くことではないが、異世界人がランハートの運命だったとは驚きだ。
しかも大層美しいらしい。
まぁランハートのいうことだからあまり信用はならないが……。
なぜなら公爵家当主にとって運命の相手は最上級の美人であるが、こちらから見ればそこまでではないと思ってしまう。
父の妹であるランハートの母も一応美人の類ではあったが、この世のものとは思えないほどの美人と称するランハートの父の言葉には『ん?』と思ってしまうのだ。
まぁそんなことは絶対に言えないが……。
ランハートはその異世界人の運命の相手に自分を偽っているのだという。
なぜそのようなことをと思ったが、聞けば運命の相手は男性らしい。
我が国で同性同士での婚姻は珍しくはないが、なんと言っても彼は異世界人。
同性同士の婚姻に嫌悪感を示すかもしれないと恐れているのだ。
だからランハートは自分をただの騎士団長として彼のそばで彼の心が自分に向くまで見守り続けるというのだ。
なんといじらしいことだろう。
ランハートにそんな心があったことに驚くが、それが運命の相手の為せる力なのか。
この年まで運命の相手に操を立ててきたランハートのためにも、運命の彼には早くランハートの心を知ってもらいたいと思わずにはいられなかった。
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