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望んでくれるなら……
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「さぁ、ヒジリ。私たちの家に帰ろうか」
「僕たちの家って……お店?」
「ふふっ。違うよ。ヒジリは正式に私の伴侶となったのだから、我がシェーベリーの屋敷が私たちの家だよ」
「は、伴侶…………わぁーっ」
そう改まって言われると、恥ずかしくなる。
カァーッと顔が赤くなるのを感じながら頬を抑えて俯くと、
「ヒジリ、そんな可愛らしい顔を私以外に見せてはならん」
と焦ったようなランハートの言葉が聞こえて、ぎゅっとランハートの胸に隠されるように抱き込まれた。
「ああ、本当に初々しく可愛らしいな、其方の伴侶は」
「ヴァージル、ヒジリを見るなっ!」
「はっはっは。こんな狭量なやつだが、婚約者どの、いや、シェーベリー夫人。私の大事な従兄弟、ランハートを頼むぞ」
揶揄い混じりのその言葉にランハートと国王さまが本当に仲が良いんだとわかって、僕はランハートに抱きしめられながらも『はい』と小さく返した。
僕の返事に喜んだランハートは『ヴァージル、今日はこれで失礼する』と僕を抱きかかえたままさっさと立ち上がり部屋を出ようとすると
「体格差を考えろよっ!!」
と国王さまの声が背中越しに聞こえていた。
けれどランハートは聞こえなかったのかなにも言わずにそのまま部屋を出て待たせていた馬車に乗り込んだ。
馬車がゆっくりと動き始めても僕を抱きしめたまま微動だにせず話そうともしないランハートに『あの……』と声をかけると、
「ヒジリ、怒っているか?」
と小さな声で尋ねられた。
怒っている……?
いや、怒るという気持ちは全くない。
ただびっくりしただけで。
そう驚いたんだ、僕は。
ランハートにキスされて好きだって気づいてから、まだ一日しか経っていないのにもう夫夫として認められたなんて、あまりの急展開に頭がついていけてないだけ。
急に僕とランハートが夫夫になったんだと言われても実感が持てないというか、なんだか夢みたいで。
だけど、考えてみたらランハートは僕が運命の相手だって初めから気づいていたわけで……それからずっと僕を支えて助けてくれて、いつでもそばにいてくれた。
襲われそうになった時もいち早く飛び込んできて助けてくれて……。
グレイグさんの存在も大きかったけれど、でもランハートがいなかったら僕はきっとこんなにもこの世界に馴染むことなんてできなかったはずだ。
僕がここにきて3ヶ月余り……。
僕がここの世界の人間ならばきっともっと早く思いが通じ合っていたのかもしれない。
だけど、僕が異世界からきて、しかも男同士だから、ランハートはきっといろいろ悩んだに違いない。
大体、僕自身、誰とも付き合ったことはないけどなんとなく女性が恋愛対象だと思っていたから、多分出会ってすぐに運命の人だと告げられても僕は今みたいな気持ちは持てなかったはず。
異世界から来た僕に合わせてランハートが気持ちを抑えてくれていたから、僕は自分の気持ちが芽生えるのをゆっくりと待つことができたんだ。
生涯にただ1人だけ心から愛する運命の人に出会ってここまで待ってくれる人、多分ランハート以外にはいないんじゃないかな。
うん、多分そうだ。
だったら、今度は僕がランハートの気持ちに報いる時だ。
今日だろうが、明日だろうがいつかは必ずランハートと結ばれるなら、ランハートが望んでくれる日に結ばれたい。
それが僕の今のはっきりした気持ちだ。
僕が怒っているのかもと少しビクビクしているように見えるランハートの表情が可愛くて『ふふっ』と笑顔を見せると、ランハートは『ヒジリ?』と不思議そうに僕を見つめた。
「あのね、ランハート……僕、初めてなんだ……」
「えっ? ヒジリ、それは……」
「ふふっ。だから、優しくしてね、『旦那さま』」
そう言って、ランハートの胸に寄りかかるとランハートはカッと目を見開いて、御者へと通じる窓を開け
「急げっ!! 急いで屋敷に戻るんだっ!!」
と指示を出した。
行く時のスピードの数倍ものスピードで流れていく景色をみながら、僕はランハートの腕の中に包まれたままあっという間に屋敷へと戻った。
「僕たちの家って……お店?」
「ふふっ。違うよ。ヒジリは正式に私の伴侶となったのだから、我がシェーベリーの屋敷が私たちの家だよ」
「は、伴侶…………わぁーっ」
そう改まって言われると、恥ずかしくなる。
カァーッと顔が赤くなるのを感じながら頬を抑えて俯くと、
「ヒジリ、そんな可愛らしい顔を私以外に見せてはならん」
と焦ったようなランハートの言葉が聞こえて、ぎゅっとランハートの胸に隠されるように抱き込まれた。
「ああ、本当に初々しく可愛らしいな、其方の伴侶は」
「ヴァージル、ヒジリを見るなっ!」
「はっはっは。こんな狭量なやつだが、婚約者どの、いや、シェーベリー夫人。私の大事な従兄弟、ランハートを頼むぞ」
揶揄い混じりのその言葉にランハートと国王さまが本当に仲が良いんだとわかって、僕はランハートに抱きしめられながらも『はい』と小さく返した。
僕の返事に喜んだランハートは『ヴァージル、今日はこれで失礼する』と僕を抱きかかえたままさっさと立ち上がり部屋を出ようとすると
「体格差を考えろよっ!!」
と国王さまの声が背中越しに聞こえていた。
けれどランハートは聞こえなかったのかなにも言わずにそのまま部屋を出て待たせていた馬車に乗り込んだ。
馬車がゆっくりと動き始めても僕を抱きしめたまま微動だにせず話そうともしないランハートに『あの……』と声をかけると、
「ヒジリ、怒っているか?」
と小さな声で尋ねられた。
怒っている……?
いや、怒るという気持ちは全くない。
ただびっくりしただけで。
そう驚いたんだ、僕は。
ランハートにキスされて好きだって気づいてから、まだ一日しか経っていないのにもう夫夫として認められたなんて、あまりの急展開に頭がついていけてないだけ。
急に僕とランハートが夫夫になったんだと言われても実感が持てないというか、なんだか夢みたいで。
だけど、考えてみたらランハートは僕が運命の相手だって初めから気づいていたわけで……それからずっと僕を支えて助けてくれて、いつでもそばにいてくれた。
襲われそうになった時もいち早く飛び込んできて助けてくれて……。
グレイグさんの存在も大きかったけれど、でもランハートがいなかったら僕はきっとこんなにもこの世界に馴染むことなんてできなかったはずだ。
僕がここにきて3ヶ月余り……。
僕がここの世界の人間ならばきっともっと早く思いが通じ合っていたのかもしれない。
だけど、僕が異世界からきて、しかも男同士だから、ランハートはきっといろいろ悩んだに違いない。
大体、僕自身、誰とも付き合ったことはないけどなんとなく女性が恋愛対象だと思っていたから、多分出会ってすぐに運命の人だと告げられても僕は今みたいな気持ちは持てなかったはず。
異世界から来た僕に合わせてランハートが気持ちを抑えてくれていたから、僕は自分の気持ちが芽生えるのをゆっくりと待つことができたんだ。
生涯にただ1人だけ心から愛する運命の人に出会ってここまで待ってくれる人、多分ランハート以外にはいないんじゃないかな。
うん、多分そうだ。
だったら、今度は僕がランハートの気持ちに報いる時だ。
今日だろうが、明日だろうがいつかは必ずランハートと結ばれるなら、ランハートが望んでくれる日に結ばれたい。
それが僕の今のはっきりした気持ちだ。
僕が怒っているのかもと少しビクビクしているように見えるランハートの表情が可愛くて『ふふっ』と笑顔を見せると、ランハートは『ヒジリ?』と不思議そうに僕を見つめた。
「あのね、ランハート……僕、初めてなんだ……」
「えっ? ヒジリ、それは……」
「ふふっ。だから、優しくしてね、『旦那さま』」
そう言って、ランハートの胸に寄りかかるとランハートはカッと目を見開いて、御者へと通じる窓を開け
「急げっ!! 急いで屋敷に戻るんだっ!!」
と指示を出した。
行く時のスピードの数倍ものスピードで流れていく景色をみながら、僕はランハートの腕の中に包まれたままあっという間に屋敷へと戻った。
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