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甘えるって難しい
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夜中に飲ませてもらったカモミールティーのおかげかぐっすりと熟睡した僕は、すっきりとした目覚めで朝を迎えた。
こんなに熟睡したのっていつぶりだろう。
グレイグさんのハーブティーの効果すごいな。
ベッドから起きて寝室を出ると、部屋の外からランハートさんとグレイグさんの声が微かに聞こえる。
うわっ、もうランハートさん来ちゃってるっ!
まだどうやって甘えるか考えてなかったのに……。
えーっ、甘えるって大体どうしたらいいんだろう?
『甘える』と『わがまま』は違うよね?
あの時、グレイグさんなんて言ってたっけ?
確か――
旦那さまはヒジリさまのお世話をされる時が一番お幸せそうでいらっしゃいますから
って、そう言ってた。
お世話……かぁ。
お世話って自分でもできることをやって貰えばいいんだよね。
それで本当にランハートさんが喜んでくれるかわかんないけど、とりあえずグレイグさんのいうことを試してみよう。
よしっ!
僕は意を決して、部屋の扉を開いた。
カチャリと扉の開く音に反応して、ランハートさんもグレイグさんもすぐに僕の元に近づいてきてくれた。
「ヒジリ、おはよう。もう起きたのか? もっとゆっくり眠っていてよかったんだぞ」
「あ、あの……すごくよく眠れたので大丈夫です。それで、その……」
どうしよう、ドキドキするっ!
でも、試してみないと!
ええいっ! 僕も男だっ!
「んっ? ヒジリ、どうした?」
顔を近づけてくるランハートさんの頬にチュッとキスをして早速甘えてみる。
「ら、ランハートさん。おはようございます。
あの、ランハートさんに今日着る服を、選んで欲しいなって……思って、その、ダメ、ですか……?」
「くっ――!」
ランハートさんは突然その場に崩れ落ち胸を抑えたまま片膝をついていた。
えーっ、僕なんか間違えちゃった?
甘えるってこういうことじゃなかったのかな?
慌てて僕もランハートさんの前にしゃがみ込んで、
「あ、あの……ごめんなさい、わがまま言っちゃいました……」
と謝ると、ランハートさんは勢いよく僕に目を向け、
「違うんだっ! ヒジリがあまりにも可愛かっただけだ」
と言って僕を抱きしめた。
可愛い? かどうかはわからないけど、ランハートさんにそう思ってもらえるならそれは嬉しい。
ランハートさんは僕を立ち上がらせると、真剣な眼差しで頼んできた。
「私からももう一度、きちんと朝の挨拶をさせてもらえないだろうか?」
「あ、はい……どうぞ」
「ありがとう、ヒジリ……おはよう。今日も麗しいな」
「――っ!」
そう言って満面の笑みで僕の頬にキスをしてくれたランハートさん。
もうイケメンの笑顔ってなんでこんなにドキドキするんだろう。
なんかずるいなぁ……キュンキュンしすぎておかしくなりそうだよ。
「服を選ぶのだったな。よし、じゃあ寝室に行こうか。私がヒジリに一番似合う服を選ぼう」
さっと手を引かれ寝室へと連れていかれそうになるのを、ランハートさんの袖を引っ張って止めた。
「どうした、ヒジリ?」
「あの、抱っこ、して……連れてって、ください……」
ランハートさんの前で両手を広げてそうお願いすると、『ぐふっ――!』と口を手で抑えながら必死に耐えているように見えた。
ランハートさんってなんか僕がお願いするたびに苦しそうなんだけど、これで本当に合ってるのかなあ?
心配になってランハートさんの後ろにいたグレイグさんに目を向けてみたけれど、目を細めて笑っているように見えるので、おそらく間違いではないんだろう。
「ねぇ、抱っこして……」
もう一度頼むとランハートさんは『ああ』と真っ赤な顔で僕を抱き上げてくれた。
抱きかかえてもらうと、ランハートさんの顔が近くなるのがいいんだよね。
キュッと首に腕を回して、首筋に顔をもたれさせると僕の身体を包むランハートさんの力が少し強くなった気がした。
きっと僕が怖くて縋りついたと思ったんだろう。
大丈夫、ランハートさんが僕を落とすだなんて全然思ってない。
だって、さすが騎士団長さんだけあって身体はすごく鍛えられてるし、僕みたいな小柄で非力な男なんか軽々なんだろう。
僕が怖がってなんかいないってわかってもらおうと、ランハートさんの耳元で
「好きなんです、ランハートさんに抱っこされるの……」
って囁いたら、さらにキュッと抱きしめる力が強くなってすぐに寝室へと連れていかれた。
宝物でも扱うかのようにゆっくりと僕をベッドに下ろし、ランハートさんは『ふぅ』と小さく息を吐いた。
あれ? 疲れさせちゃったかな?
そう思ったけれど、ランハートさんは嬉しそうにクローゼットの中の服を探し始めて、ようやくランハートさんのお眼鏡に適ったらしい一揃えの服を取り出した。
「ヒジリ、今日の服はこれだ」
服を手渡してくるランハートさんに、
「着替えさせてください」
とお願いすると、『んっ? えっ、あ、ああ……そ、そうだな……』と少し吃りながらも
「じゃ、じゃあ着替えを手伝おう」
と僕の服に手をかけた。
真剣な表情で僕の上着のボタンを外していくランハートさんの手が少し震えている気がする。
あっ、もしかしたら――
公爵さまって自分では着替えたりしないんものなんじゃない?
ほら、テレビとかで王さまとか見たことあるけど、お付きの人たちが服着せたりしてあげてるよね?
ランハートさんもいつもなら着替えさせてもらってる立場だから、ボタンを外したりしないとか?
それを無理やりしてもらって悪かったかな……。
僕がそう反省している間に僕の上着のボタンは全部外された。
『ふぅ』と息を吐いているのを見て、やっぱりそうだったかも……と思ってしまった。
さっさと自分で脱いだ方がいいよね。
僕はランハートさんが外してくれた上着をランハートさんの目の前で僕がさっと上着を脱ぎ捨てると、ランハートさんはひどく驚いた表情でそれを見ていた。
こんなに熟睡したのっていつぶりだろう。
グレイグさんのハーブティーの効果すごいな。
ベッドから起きて寝室を出ると、部屋の外からランハートさんとグレイグさんの声が微かに聞こえる。
うわっ、もうランハートさん来ちゃってるっ!
まだどうやって甘えるか考えてなかったのに……。
えーっ、甘えるって大体どうしたらいいんだろう?
『甘える』と『わがまま』は違うよね?
あの時、グレイグさんなんて言ってたっけ?
確か――
旦那さまはヒジリさまのお世話をされる時が一番お幸せそうでいらっしゃいますから
って、そう言ってた。
お世話……かぁ。
お世話って自分でもできることをやって貰えばいいんだよね。
それで本当にランハートさんが喜んでくれるかわかんないけど、とりあえずグレイグさんのいうことを試してみよう。
よしっ!
僕は意を決して、部屋の扉を開いた。
カチャリと扉の開く音に反応して、ランハートさんもグレイグさんもすぐに僕の元に近づいてきてくれた。
「ヒジリ、おはよう。もう起きたのか? もっとゆっくり眠っていてよかったんだぞ」
「あ、あの……すごくよく眠れたので大丈夫です。それで、その……」
どうしよう、ドキドキするっ!
でも、試してみないと!
ええいっ! 僕も男だっ!
「んっ? ヒジリ、どうした?」
顔を近づけてくるランハートさんの頬にチュッとキスをして早速甘えてみる。
「ら、ランハートさん。おはようございます。
あの、ランハートさんに今日着る服を、選んで欲しいなって……思って、その、ダメ、ですか……?」
「くっ――!」
ランハートさんは突然その場に崩れ落ち胸を抑えたまま片膝をついていた。
えーっ、僕なんか間違えちゃった?
甘えるってこういうことじゃなかったのかな?
慌てて僕もランハートさんの前にしゃがみ込んで、
「あ、あの……ごめんなさい、わがまま言っちゃいました……」
と謝ると、ランハートさんは勢いよく僕に目を向け、
「違うんだっ! ヒジリがあまりにも可愛かっただけだ」
と言って僕を抱きしめた。
可愛い? かどうかはわからないけど、ランハートさんにそう思ってもらえるならそれは嬉しい。
ランハートさんは僕を立ち上がらせると、真剣な眼差しで頼んできた。
「私からももう一度、きちんと朝の挨拶をさせてもらえないだろうか?」
「あ、はい……どうぞ」
「ありがとう、ヒジリ……おはよう。今日も麗しいな」
「――っ!」
そう言って満面の笑みで僕の頬にキスをしてくれたランハートさん。
もうイケメンの笑顔ってなんでこんなにドキドキするんだろう。
なんかずるいなぁ……キュンキュンしすぎておかしくなりそうだよ。
「服を選ぶのだったな。よし、じゃあ寝室に行こうか。私がヒジリに一番似合う服を選ぼう」
さっと手を引かれ寝室へと連れていかれそうになるのを、ランハートさんの袖を引っ張って止めた。
「どうした、ヒジリ?」
「あの、抱っこ、して……連れてって、ください……」
ランハートさんの前で両手を広げてそうお願いすると、『ぐふっ――!』と口を手で抑えながら必死に耐えているように見えた。
ランハートさんってなんか僕がお願いするたびに苦しそうなんだけど、これで本当に合ってるのかなあ?
心配になってランハートさんの後ろにいたグレイグさんに目を向けてみたけれど、目を細めて笑っているように見えるので、おそらく間違いではないんだろう。
「ねぇ、抱っこして……」
もう一度頼むとランハートさんは『ああ』と真っ赤な顔で僕を抱き上げてくれた。
抱きかかえてもらうと、ランハートさんの顔が近くなるのがいいんだよね。
キュッと首に腕を回して、首筋に顔をもたれさせると僕の身体を包むランハートさんの力が少し強くなった気がした。
きっと僕が怖くて縋りついたと思ったんだろう。
大丈夫、ランハートさんが僕を落とすだなんて全然思ってない。
だって、さすが騎士団長さんだけあって身体はすごく鍛えられてるし、僕みたいな小柄で非力な男なんか軽々なんだろう。
僕が怖がってなんかいないってわかってもらおうと、ランハートさんの耳元で
「好きなんです、ランハートさんに抱っこされるの……」
って囁いたら、さらにキュッと抱きしめる力が強くなってすぐに寝室へと連れていかれた。
宝物でも扱うかのようにゆっくりと僕をベッドに下ろし、ランハートさんは『ふぅ』と小さく息を吐いた。
あれ? 疲れさせちゃったかな?
そう思ったけれど、ランハートさんは嬉しそうにクローゼットの中の服を探し始めて、ようやくランハートさんのお眼鏡に適ったらしい一揃えの服を取り出した。
「ヒジリ、今日の服はこれだ」
服を手渡してくるランハートさんに、
「着替えさせてください」
とお願いすると、『んっ? えっ、あ、ああ……そ、そうだな……』と少し吃りながらも
「じゃ、じゃあ着替えを手伝おう」
と僕の服に手をかけた。
真剣な表情で僕の上着のボタンを外していくランハートさんの手が少し震えている気がする。
あっ、もしかしたら――
公爵さまって自分では着替えたりしないんものなんじゃない?
ほら、テレビとかで王さまとか見たことあるけど、お付きの人たちが服着せたりしてあげてるよね?
ランハートさんもいつもなら着替えさせてもらってる立場だから、ボタンを外したりしないとか?
それを無理やりしてもらって悪かったかな……。
僕がそう反省している間に僕の上着のボタンは全部外された。
『ふぅ』と息を吐いているのを見て、やっぱりそうだったかも……と思ってしまった。
さっさと自分で脱いだ方がいいよね。
僕はランハートさんが外してくれた上着をランハートさんの目の前で僕がさっと上着を脱ぎ捨てると、ランハートさんはひどく驚いた表情でそれを見ていた。
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