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グレイグさんからの助言
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ふわふわした気持ちでベッドに横になった僕は、頭が興奮して眠れず今日あったことを思い返していた。
ランハートさんが公爵さまだったなんて全然気づかなかったな。
まさか騎士団長みたいな忙しそうな仕事を公爵さまが兼任してるとは思わなかったし。
でも考えてみたらいくら公爵さまが忙しいと言っても、ここ3ヶ月一度も姿を見ないなんておかしいよね。
うん、多分僕が鈍感なだけだったんだな。
ランハートさんにキスされてから急にいろんなことが起こりすぎてわけわかんないけど、でもわかっていることは僕とランハートさんが両思いでプロポーズされたってこと。
ってことは、もう婚約者ってことだよね。
そういえば、公爵さまの婚約者とか奥さん?
いや、それはおかしいか。でも旦那はやっぱりランハートさんの方っぽいし。
なんていうんだろうな、僕のことは。
と、それはともかく、この世界で婚約者って何か決まりとか約束事とかあるのかな。
ランハートさんが恥ずかしくないように婚約者としての振る舞いとか必要だよね。
ほら、他の人に『あ~ん』しちゃいけないとかあったし。
そういうのってランハートさんから教えてもらうのかな?
それとも詳しそうなグレイグさんとか?
ゔーっ、なんか恥ずかしいな。
チリン
うわっ、手をバタバタさせてたら枕元のベルを鳴らしちゃった。
慌てて手で押さえたけど、流石にこんなちっちゃい音なら聞こえてないよね?
そーっとベルをベッド脇の棚に置こうとすると、部屋の扉がトントントンと叩かれる音が聞こえた。
えっ? まさか……。
「グレイグでございます。ヒジリさま、どうかなさいましたか?」
うそーっ!! なんでこれが聞こえるわけ?
っていうか、グレイグさんっていつ寝てるの?
そういえばなんかすごい能力持ってたけど、耳がすごく良いのもそれだったりするとか?
僕は驚きながら慌てて駆けつけて、扉を開いた。
「グレイグさん、ごめんなさい。手が当たって音を鳴らしちゃっただけなんです」
「そうでございましたか。いいえ、お気になさらず。それよりも、ヒジリさま。
眠れないのではございませんか?」
「うっ、そうなんです。なんだか頭の中がぐるぐるしちゃって……興奮してるのかな」
「無理もございません。急にいろいろなことがございましたからね。
よろしければ、安眠効果のあるハーブティーをお淹れいたしましょうか」
優しいグレイグさんの言葉に僕はホッとした。
「はい。お願いします」
グレイグさんはにっこりと笑うと、部屋の中に入りキッチン向かった。
僕はトコトコと後をついていくと、グレイグさんは小さな観音扉の棚をパカっと開いた。
すると中には小さなケースに入った色々な種類のハーブが並べられている。
どうやら効能別に並べられているようだ。
グレイグさんはその中から一つ取り出した。
「こちらのハーブは心を落ち着かせてくれるのですよ」
グレイグさんの手に乗せられたハーブを嗅ぐとほんのりリンゴのような香りがした。
多分これはカモミールかな。
匂いだけで落ち着く気がする。
『すぅ』と深呼吸した僕をみて『ふふっ』と笑ってそのハーブにトプトプとお湯を注ぎハーブティーを出してくれた。
「真夜中なのにごめんなさい。ありがとうございます」
とお礼を言うと、
「よろしいのですよ。私はヒジリさまが心安らかにお眠りいただけるお手伝いができるだけで幸せなのですから」
と笑顔でそう言ってくれた。
「あの、グレイグさんはいつからこのお屋敷にいらっしゃるのですか?」
「はい。私は先代の当主さま……旦那さまのお父上が公爵さまをお継ぎになられた時からですから、もう50年近くなるでしょうか。旦那さまがお生まれになられた時からお傍につかせていただいているのですよ」
「ええーっ、生まれた時から。すごいっ! あの、ランハートさんってどんな子どもでしたか?」
「旦那さまはそれはそれは賢いお子さまでいらっしゃいましたよ。お勉強も剣術も率先してしていらっしゃましたし、いつも同年代のお子さまを引っ張っていかれるようなお方でしたよ」
「へぇー、やっぱすごいんですね。ランハートさん」
「ふふっ。それは全てヒジリさまのためでいらっしゃいますよ」
「えっ? 僕のため? どういうことですか?」
「運命のお方と出逢われたときに幻滅されないように、そして運命のお方をいつでもお守りできるようにと頑張っていらっしゃいましたから」
そんなに小さな時から僕が現れるのを待っていてくれたんだ……。
えっ? じゃあ……。
「あ、あの……ランハートさんは、今までも恋人、とかって……」
「ふふっ。1人もいらっしゃいませんよ。いずれ出逢うであろう運命のお方に不義理なことはしてはならないとおっしゃっておいでしたから」
そうなんだ……びっくりだ。
てっきり今までに恋人の1人や2人、いやもっと多くても不思議はないと思ってたのに。
僕と同じだったなんて……。
僕もそこそこモテてたけど、なんとなく付き合う気にはなれなかった。
もしかしたらランハートさんと出逢うのを待っていたのかもしれないな。
なんかすごく嬉しい。
この喜びをどうやってランハートさんに伝えたら良いんだろう。
「あの、僕……ランハートさんに喜んで欲しくて……せっかく婚約者になれたんだし、あの……ランハートさんに何をしてあげたら喜んでくれると思いますか?」
僕の言葉にグレイグさんは驚いていたけれど、
「ヒジリさまが旦那さまに甘えられることが一番喜ばれると存じます。
旦那さまはヒジリさまのお世話をされる時が一番お幸せそうでいらっしゃいますから……」
と笑顔で教えてくれた。
「甘える……か。わかりました! グレイグさん、ありがとうございます」
「お力になれまして嬉しゅうございます。それではそろそろおやすみください。
あっ、明日はお店はお休みにするとのことでございましたので、朝はごゆっくりとお過ごしください」
「わかりました。ハーブティーもご馳走様でした。おやすみなさい」
僕がグレイグさんにお礼を言って寝室へと戻った。
甘える……。
よし、恥ずかしがることはないよね。
だってもう婚約者なんだもん。
僕のことをずっと待っていてくれたランハートさんに応えたい、その一心で僕は眠りについた。
ランハートさんが公爵さまだったなんて全然気づかなかったな。
まさか騎士団長みたいな忙しそうな仕事を公爵さまが兼任してるとは思わなかったし。
でも考えてみたらいくら公爵さまが忙しいと言っても、ここ3ヶ月一度も姿を見ないなんておかしいよね。
うん、多分僕が鈍感なだけだったんだな。
ランハートさんにキスされてから急にいろんなことが起こりすぎてわけわかんないけど、でもわかっていることは僕とランハートさんが両思いでプロポーズされたってこと。
ってことは、もう婚約者ってことだよね。
そういえば、公爵さまの婚約者とか奥さん?
いや、それはおかしいか。でも旦那はやっぱりランハートさんの方っぽいし。
なんていうんだろうな、僕のことは。
と、それはともかく、この世界で婚約者って何か決まりとか約束事とかあるのかな。
ランハートさんが恥ずかしくないように婚約者としての振る舞いとか必要だよね。
ほら、他の人に『あ~ん』しちゃいけないとかあったし。
そういうのってランハートさんから教えてもらうのかな?
それとも詳しそうなグレイグさんとか?
ゔーっ、なんか恥ずかしいな。
チリン
うわっ、手をバタバタさせてたら枕元のベルを鳴らしちゃった。
慌てて手で押さえたけど、流石にこんなちっちゃい音なら聞こえてないよね?
そーっとベルをベッド脇の棚に置こうとすると、部屋の扉がトントントンと叩かれる音が聞こえた。
えっ? まさか……。
「グレイグでございます。ヒジリさま、どうかなさいましたか?」
うそーっ!! なんでこれが聞こえるわけ?
っていうか、グレイグさんっていつ寝てるの?
そういえばなんかすごい能力持ってたけど、耳がすごく良いのもそれだったりするとか?
僕は驚きながら慌てて駆けつけて、扉を開いた。
「グレイグさん、ごめんなさい。手が当たって音を鳴らしちゃっただけなんです」
「そうでございましたか。いいえ、お気になさらず。それよりも、ヒジリさま。
眠れないのではございませんか?」
「うっ、そうなんです。なんだか頭の中がぐるぐるしちゃって……興奮してるのかな」
「無理もございません。急にいろいろなことがございましたからね。
よろしければ、安眠効果のあるハーブティーをお淹れいたしましょうか」
優しいグレイグさんの言葉に僕はホッとした。
「はい。お願いします」
グレイグさんはにっこりと笑うと、部屋の中に入りキッチン向かった。
僕はトコトコと後をついていくと、グレイグさんは小さな観音扉の棚をパカっと開いた。
すると中には小さなケースに入った色々な種類のハーブが並べられている。
どうやら効能別に並べられているようだ。
グレイグさんはその中から一つ取り出した。
「こちらのハーブは心を落ち着かせてくれるのですよ」
グレイグさんの手に乗せられたハーブを嗅ぐとほんのりリンゴのような香りがした。
多分これはカモミールかな。
匂いだけで落ち着く気がする。
『すぅ』と深呼吸した僕をみて『ふふっ』と笑ってそのハーブにトプトプとお湯を注ぎハーブティーを出してくれた。
「真夜中なのにごめんなさい。ありがとうございます」
とお礼を言うと、
「よろしいのですよ。私はヒジリさまが心安らかにお眠りいただけるお手伝いができるだけで幸せなのですから」
と笑顔でそう言ってくれた。
「あの、グレイグさんはいつからこのお屋敷にいらっしゃるのですか?」
「はい。私は先代の当主さま……旦那さまのお父上が公爵さまをお継ぎになられた時からですから、もう50年近くなるでしょうか。旦那さまがお生まれになられた時からお傍につかせていただいているのですよ」
「ええーっ、生まれた時から。すごいっ! あの、ランハートさんってどんな子どもでしたか?」
「旦那さまはそれはそれは賢いお子さまでいらっしゃいましたよ。お勉強も剣術も率先してしていらっしゃましたし、いつも同年代のお子さまを引っ張っていかれるようなお方でしたよ」
「へぇー、やっぱすごいんですね。ランハートさん」
「ふふっ。それは全てヒジリさまのためでいらっしゃいますよ」
「えっ? 僕のため? どういうことですか?」
「運命のお方と出逢われたときに幻滅されないように、そして運命のお方をいつでもお守りできるようにと頑張っていらっしゃいましたから」
そんなに小さな時から僕が現れるのを待っていてくれたんだ……。
えっ? じゃあ……。
「あ、あの……ランハートさんは、今までも恋人、とかって……」
「ふふっ。1人もいらっしゃいませんよ。いずれ出逢うであろう運命のお方に不義理なことはしてはならないとおっしゃっておいでしたから」
そうなんだ……びっくりだ。
てっきり今までに恋人の1人や2人、いやもっと多くても不思議はないと思ってたのに。
僕と同じだったなんて……。
僕もそこそこモテてたけど、なんとなく付き合う気にはなれなかった。
もしかしたらランハートさんと出逢うのを待っていたのかもしれないな。
なんかすごく嬉しい。
この喜びをどうやってランハートさんに伝えたら良いんだろう。
「あの、僕……ランハートさんに喜んで欲しくて……せっかく婚約者になれたんだし、あの……ランハートさんに何をしてあげたら喜んでくれると思いますか?」
僕の言葉にグレイグさんは驚いていたけれど、
「ヒジリさまが旦那さまに甘えられることが一番喜ばれると存じます。
旦那さまはヒジリさまのお世話をされる時が一番お幸せそうでいらっしゃいますから……」
と笑顔で教えてくれた。
「甘える……か。わかりました! グレイグさん、ありがとうございます」
「お力になれまして嬉しゅうございます。それではそろそろおやすみください。
あっ、明日はお店はお休みにするとのことでございましたので、朝はごゆっくりとお過ごしください」
「わかりました。ハーブティーもご馳走様でした。おやすみなさい」
僕がグレイグさんにお礼を言って寝室へと戻った。
甘える……。
よし、恥ずかしがることはないよね。
だってもう婚約者なんだもん。
僕のことをずっと待っていてくれたランハートさんに応えたい、その一心で僕は眠りについた。
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