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ヒジリは私のものだ 〜ランハートside
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焼き上がったスポンジとやらに私が泡立てを手伝った生クリームとやらを神業のように綺麗に塗り上げていくヒジリを見て
『おおっ』と感嘆の声しか上げることができない。
こんなに美しい菓子は初めて見たな。
美しいヒジリが作る美しい菓子……これはきっとこの王都で流行ることだろう。
あっという間に3台もの菓子を完成させたヒジリは
「あの……これなんですけど、騎士団の皆さんに召し上がっていただいて感想を聞かせていただきたいんですけど、ランハートさん……お願いしてもいいですか?」
と言い出した。
「くぅ――っ!」
可愛いっ。
可愛すぎるっ。
私との身長差からかヒジリが私を見るといつでも見上げる格好になるのだが、ヒジリの潤んだ瞳にドキドキしてしまうのだ。
ヒジリの初めて作ったものをあいつらに食べさせるのはもったいない気しかしないが、ヒジリの願いは叶えてやりたい。
それにあいつらにヒジリを見せびらかす絶好の機会でもある。
私はすぐにグレイグを呼び、3台の『ケーキ』を騎士団の詰所に運ぶように指示をした。
ヒジリも1台運ぶつもりだったようだが、私がそんなことをさせるわけがないだろう。
大体ヒジリのその細腕にはこのケーキは重すぎる。
出来上がりの重さもそうだが、さっきケーキを作る時も思ったが、ヒジリにはかなりの重労働だ。
店に私がいられない時間は、店には必ずグレイグを置いておくようにしたほうがいいな。
グレイグに1台持たせ、私が2台持ちヒジリを私とグレイグの間に挟むように騎士団の詰所へと連れていった。
この時間なら騎士たちは皆、食堂に集まっているだろうと食堂へ一直線に突き進み、
「お前たち、素晴らしい差し入れだぞ!」
と声をかけると、私が来ないと緩み切っていた騎士たちが一斉に壁際に並んだ。
お前たち、そんなに怯えたような表情を見せると、ヒジリに私が怖いという印象を与えてしまうだろうが。
あまり長い時間ここに居させることは得策でない。
さっさと試食させてすぐにヒジリを連れて帰ろうと、副団長のフィンにヒジリが作ったケーキを差し入れに持ってきたことを話し、ナイフを持ってくるように指示した。
フィンは何がなんだかわからない様子のまま、ナイフを急いで持ってきた。
そっとテーブルにナイフを置いたフィンと目があったヒジリが笑顔を見せると、フィンはみるみるうちに顔を真っ赤にして『あ、あの……団長……こ、このお方は?』と尋ねてきた。
よし、よくぞ聞いてくれた。
せっかくだから教えてやろう。しっかり聞いていろ。
「この詰所の隣に住むことになったヒジリだ。意味はわかってるな?」
私が運命の人のために詰所の隣に家を建てたのは周知の事実。
そこに住むことになったと聞けば、彼がどういう存在なのかわからないわけがない。
こんなに美しい人が私の運命の人だということにフィンと周りの騎士たちは驚きと共にガッカリしているのは、ヒジリに一目惚れしたからかもしれない。
だが、ヒジリはもう私のものだ。
お前たちが一目惚れしたとしても無駄だからな。
私は騎士たちに『ヒジリの作ったケーキを試食して感想を聞かせてくれ』と指示をすると、皆グレイグの切ったケーキに群がりながら食べ始めた。
ヒジリが作ったものだ。
美味しくないわけがない。
もし、否定的な感想をするものがいたら、後で仕置きをしてやろうと騎士たちの表情を見張っていると、
「ランハートさん、『あ~ん』して」
突然ヒジリが私にケーキを掬ってカトラリーを差し出した。
ヒジリのその言葉に、食堂にいたものたち全員の動きが止まり、我々2人に視線が集まる。
ヒジリはそんな視線など気にならないかのように笑顔で差し出してくる。
それがとてつもなく嬉しくて口を開けると、ヒジリは嬉しそうに食べさせてくれた。
焼き菓子とは比べようもないほど甘いケーキに普段なら胸焼けしそうになるが、今の私には美味しいとしか感じられない。
胸の中に込み上げる幸福感に幸せを噛み締めながら、今度はヒジリに食べさせる。
なんの躊躇いもなく嬉しそうに口を開けるヒジリを見てさらに幸せを増大させながらお互いに見つめあって食べさせ合うと、フィンと周りの騎士たちは膝から崩れ落ちていた。
まぁ、そうだろうな。
私たちがもう深い関係にあって、この美しいヒジリが私の前で淫らな姿を晒していると想像すれば独身男たちには我慢できるはずがない。
もうこれ以上ヒジリをこの場に置いておくことは危険だ。
こいつらには後で仕置きをするとして、ヒジリをここから遠ざけたほうがよさそうだ。
そう判断し、その場をグレイグに任せて私は急いでヒジリを隣の家に連れ帰った。
『おおっ』と感嘆の声しか上げることができない。
こんなに美しい菓子は初めて見たな。
美しいヒジリが作る美しい菓子……これはきっとこの王都で流行ることだろう。
あっという間に3台もの菓子を完成させたヒジリは
「あの……これなんですけど、騎士団の皆さんに召し上がっていただいて感想を聞かせていただきたいんですけど、ランハートさん……お願いしてもいいですか?」
と言い出した。
「くぅ――っ!」
可愛いっ。
可愛すぎるっ。
私との身長差からかヒジリが私を見るといつでも見上げる格好になるのだが、ヒジリの潤んだ瞳にドキドキしてしまうのだ。
ヒジリの初めて作ったものをあいつらに食べさせるのはもったいない気しかしないが、ヒジリの願いは叶えてやりたい。
それにあいつらにヒジリを見せびらかす絶好の機会でもある。
私はすぐにグレイグを呼び、3台の『ケーキ』を騎士団の詰所に運ぶように指示をした。
ヒジリも1台運ぶつもりだったようだが、私がそんなことをさせるわけがないだろう。
大体ヒジリのその細腕にはこのケーキは重すぎる。
出来上がりの重さもそうだが、さっきケーキを作る時も思ったが、ヒジリにはかなりの重労働だ。
店に私がいられない時間は、店には必ずグレイグを置いておくようにしたほうがいいな。
グレイグに1台持たせ、私が2台持ちヒジリを私とグレイグの間に挟むように騎士団の詰所へと連れていった。
この時間なら騎士たちは皆、食堂に集まっているだろうと食堂へ一直線に突き進み、
「お前たち、素晴らしい差し入れだぞ!」
と声をかけると、私が来ないと緩み切っていた騎士たちが一斉に壁際に並んだ。
お前たち、そんなに怯えたような表情を見せると、ヒジリに私が怖いという印象を与えてしまうだろうが。
あまり長い時間ここに居させることは得策でない。
さっさと試食させてすぐにヒジリを連れて帰ろうと、副団長のフィンにヒジリが作ったケーキを差し入れに持ってきたことを話し、ナイフを持ってくるように指示した。
フィンは何がなんだかわからない様子のまま、ナイフを急いで持ってきた。
そっとテーブルにナイフを置いたフィンと目があったヒジリが笑顔を見せると、フィンはみるみるうちに顔を真っ赤にして『あ、あの……団長……こ、このお方は?』と尋ねてきた。
よし、よくぞ聞いてくれた。
せっかくだから教えてやろう。しっかり聞いていろ。
「この詰所の隣に住むことになったヒジリだ。意味はわかってるな?」
私が運命の人のために詰所の隣に家を建てたのは周知の事実。
そこに住むことになったと聞けば、彼がどういう存在なのかわからないわけがない。
こんなに美しい人が私の運命の人だということにフィンと周りの騎士たちは驚きと共にガッカリしているのは、ヒジリに一目惚れしたからかもしれない。
だが、ヒジリはもう私のものだ。
お前たちが一目惚れしたとしても無駄だからな。
私は騎士たちに『ヒジリの作ったケーキを試食して感想を聞かせてくれ』と指示をすると、皆グレイグの切ったケーキに群がりながら食べ始めた。
ヒジリが作ったものだ。
美味しくないわけがない。
もし、否定的な感想をするものがいたら、後で仕置きをしてやろうと騎士たちの表情を見張っていると、
「ランハートさん、『あ~ん』して」
突然ヒジリが私にケーキを掬ってカトラリーを差し出した。
ヒジリのその言葉に、食堂にいたものたち全員の動きが止まり、我々2人に視線が集まる。
ヒジリはそんな視線など気にならないかのように笑顔で差し出してくる。
それがとてつもなく嬉しくて口を開けると、ヒジリは嬉しそうに食べさせてくれた。
焼き菓子とは比べようもないほど甘いケーキに普段なら胸焼けしそうになるが、今の私には美味しいとしか感じられない。
胸の中に込み上げる幸福感に幸せを噛み締めながら、今度はヒジリに食べさせる。
なんの躊躇いもなく嬉しそうに口を開けるヒジリを見てさらに幸せを増大させながらお互いに見つめあって食べさせ合うと、フィンと周りの騎士たちは膝から崩れ落ちていた。
まぁ、そうだろうな。
私たちがもう深い関係にあって、この美しいヒジリが私の前で淫らな姿を晒していると想像すれば独身男たちには我慢できるはずがない。
もうこれ以上ヒジリをこの場に置いておくことは危険だ。
こいつらには後で仕置きをするとして、ヒジリをここから遠ざけたほうがよさそうだ。
そう判断し、その場をグレイグに任せて私は急いでヒジリを隣の家に連れ帰った。
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