22 / 80
ヒジリへの想い 〜ランハートside
しおりを挟む
ヒジリはいつも私を戸惑わせる。
人前にも関わらず自分のカトラリーで食べさせることも、
嬉しいことがあると抱きついてくれることも、
躊躇いもなく額に口付けをしてくれることも、
いつも笑顔で嬉しそうにしてくれるのだ。
しかも、私だけに……。
だが、まだヒジリには私に対して愛欲というものが見当たらない。
そう、ヒジリにとっては私に対するどの行為も単なる戯れにすぎないのだろう。
もしかしたらヒジリのいた世界ではこの行為のどれもが特別な意味などなかったのかもしれない。
しかし、我々のいるこの世界・ランジュルス王国では特別な意味しか持たないのだ。
ヒジリが嬉しそうに食べさせてくれるたびに、幸せそうに抱きついてくれるたびに、そして笑顔で額に口付けをしてくれるたびに私はヒジリを抱き上げて、そのまま全てを奪ってしまいたい衝動に駆られる。
あの時見たヒジリの吸い付くような綺麗な肌に舌を這わせて、白肌に赤い所有の証を刻み込んで、そして、ヒジリの最奥に私の欲を弾けさせたい……。
ここのところヒジリに会うたびに私がそんな妄想をしているなど、隣で無邪気な笑顔を見せているヒジリは一ミリも気づいていないだろうな。
ヒジリへの思いがどんどん膨らんで我慢も限界に近づいているが、ヒジリから離れるのはもっと辛い。
だから、どんなにヒジリに戸惑わされても私はヒジリから離れることなどはしない。
そう、ヒジリの瞳が私を見つめてくれる限り……私はいつでも傍に居よう。
ヒジリを住まわせたあの家の改修工事が始まり、徐々にヒジリの店が完成に近づいていく中、先に準備を整えた厨房でヒジリが店に出すケーキとやらを1人で作っているとグレイグから報告があり、私は仕事を早々に終わらせヒジリのいる厨房へと向かった。
そっと厨房を覗き見ると、私が選んでやったエプロンを身につけている。
ああ、やはりヒジリによく似合うな。
それにしても頭に巻いているのはなんだ?
ああ、もしかしたらコック帽の代わりか?
いつもは髪に隠されている額が露わになって実に可愛らしい。
そこに口付けられるのが今は私だけだという事実も私の興奮を高めてくれる。
ヒジリに口付けをするものされるのも私だけだと説明したグレイグには感謝しかないな。
額にほんのりと汗をかきながら必死に腕を動かしているヒジリを微笑ましく思いながらも、なんとなくうまくいっていない様子が気になって、あたかも今来たかのように声をかけると、ヒジリの綺麗な瞳が私をとらえた。
その美しい瞳に魅入られドキリとしてしまう。
ヒジリは目の前の仕事の手を止め、私に笑顔で話しかけてくれる。
こうやっていつでも私を優先してくれるところが私をつけ上がらせることにヒジリは気づいていないのだろう。
ヒジリが悪戦苦闘していたボウルの中身が気になって『何をしているのだ?』と声をかけると、このトロトロとした物体が白っぽくもったりと形づくまで泡立てないといけないのだという。
意味はわからないがとにかくかき混ぜればいいのだろう?
ヒジリの細腕が痛みを感じるのは忍びない。
そんなことなら私が代わってやろう。
ヒジリからボウルを受け取り、かき混ぜるとボウルの中の物体はあっという間に形を変え、ヒジリの言ったような白くもったりと形づいた。
おおっ、なんだ、これは。
すごいな……。
そう思いつつも何食わぬ顔でヒジリにボウルを返すと、ヒジリは何度も目を瞬かせ私とボウルとを見つめていた。
何か手順が違ったのかと焦ったが、
「ランハートさんってすごいなって……力、強いんですね。さすが騎士団長さん! 格好いいです!! いやぁーっ、もう凄すぎですっ!!!」
と手放しで褒めてくれて、あまりの喜びようにこちらが照れてしまうほどだ。
「こっちもお願いしてもいいですか?」
と可愛らしく何度も上目遣いに頼まれて、その度に私の中がどんどん昂っていくのを感じつつ、必死にそれを押し殺しながら手伝いを続けた。
厨房の中に漂う甘ったるい匂いが全く気にならないほど、私はヒジリのことだけをひたすらに思い続けていた。
人前にも関わらず自分のカトラリーで食べさせることも、
嬉しいことがあると抱きついてくれることも、
躊躇いもなく額に口付けをしてくれることも、
いつも笑顔で嬉しそうにしてくれるのだ。
しかも、私だけに……。
だが、まだヒジリには私に対して愛欲というものが見当たらない。
そう、ヒジリにとっては私に対するどの行為も単なる戯れにすぎないのだろう。
もしかしたらヒジリのいた世界ではこの行為のどれもが特別な意味などなかったのかもしれない。
しかし、我々のいるこの世界・ランジュルス王国では特別な意味しか持たないのだ。
ヒジリが嬉しそうに食べさせてくれるたびに、幸せそうに抱きついてくれるたびに、そして笑顔で額に口付けをしてくれるたびに私はヒジリを抱き上げて、そのまま全てを奪ってしまいたい衝動に駆られる。
あの時見たヒジリの吸い付くような綺麗な肌に舌を這わせて、白肌に赤い所有の証を刻み込んで、そして、ヒジリの最奥に私の欲を弾けさせたい……。
ここのところヒジリに会うたびに私がそんな妄想をしているなど、隣で無邪気な笑顔を見せているヒジリは一ミリも気づいていないだろうな。
ヒジリへの思いがどんどん膨らんで我慢も限界に近づいているが、ヒジリから離れるのはもっと辛い。
だから、どんなにヒジリに戸惑わされても私はヒジリから離れることなどはしない。
そう、ヒジリの瞳が私を見つめてくれる限り……私はいつでも傍に居よう。
ヒジリを住まわせたあの家の改修工事が始まり、徐々にヒジリの店が完成に近づいていく中、先に準備を整えた厨房でヒジリが店に出すケーキとやらを1人で作っているとグレイグから報告があり、私は仕事を早々に終わらせヒジリのいる厨房へと向かった。
そっと厨房を覗き見ると、私が選んでやったエプロンを身につけている。
ああ、やはりヒジリによく似合うな。
それにしても頭に巻いているのはなんだ?
ああ、もしかしたらコック帽の代わりか?
いつもは髪に隠されている額が露わになって実に可愛らしい。
そこに口付けられるのが今は私だけだという事実も私の興奮を高めてくれる。
ヒジリに口付けをするものされるのも私だけだと説明したグレイグには感謝しかないな。
額にほんのりと汗をかきながら必死に腕を動かしているヒジリを微笑ましく思いながらも、なんとなくうまくいっていない様子が気になって、あたかも今来たかのように声をかけると、ヒジリの綺麗な瞳が私をとらえた。
その美しい瞳に魅入られドキリとしてしまう。
ヒジリは目の前の仕事の手を止め、私に笑顔で話しかけてくれる。
こうやっていつでも私を優先してくれるところが私をつけ上がらせることにヒジリは気づいていないのだろう。
ヒジリが悪戦苦闘していたボウルの中身が気になって『何をしているのだ?』と声をかけると、このトロトロとした物体が白っぽくもったりと形づくまで泡立てないといけないのだという。
意味はわからないがとにかくかき混ぜればいいのだろう?
ヒジリの細腕が痛みを感じるのは忍びない。
そんなことなら私が代わってやろう。
ヒジリからボウルを受け取り、かき混ぜるとボウルの中の物体はあっという間に形を変え、ヒジリの言ったような白くもったりと形づいた。
おおっ、なんだ、これは。
すごいな……。
そう思いつつも何食わぬ顔でヒジリにボウルを返すと、ヒジリは何度も目を瞬かせ私とボウルとを見つめていた。
何か手順が違ったのかと焦ったが、
「ランハートさんってすごいなって……力、強いんですね。さすが騎士団長さん! 格好いいです!! いやぁーっ、もう凄すぎですっ!!!」
と手放しで褒めてくれて、あまりの喜びようにこちらが照れてしまうほどだ。
「こっちもお願いしてもいいですか?」
と可愛らしく何度も上目遣いに頼まれて、その度に私の中がどんどん昂っていくのを感じつつ、必死にそれを押し殺しながら手伝いを続けた。
厨房の中に漂う甘ったるい匂いが全く気にならないほど、私はヒジリのことだけをひたすらに思い続けていた。
375
お気に入りに追加
4,351
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる