異世界でイケメン騎士団長さんに優しく見守られながらケーキ屋さんやってます

波木真帆

文字の大きさ
上 下
18 / 80

僕……頑張ります!

しおりを挟む
部屋に戻った僕は、今日見せてもらった材料でケーキのレシピをいくつか考えてそれを作るのに必要な型や道具をリストアップしていった。

翌日の午後、グレイグさんに連れられてお店にする予定のあのお家に行くと、もうすでに工事が始まっていて驚いた。
なにっ? すごっ、早っ!
さすがランハートさん、仕事が早いな。

「ヒジリさま。裏から入りましょう」

家の入り口には大きな機械を搬入しようとしている人たちがたくさんいて邪魔になりそうだもんね。
グレイグさんに案内してもらって裏口から中に入った。

グレイグさんと一緒にリビングから厨房にする予定のキッチンに向かうと、もうすでに大きなオーブンと大きな冷蔵庫が搬入されていた。

「わぁーっ、大きいオーブンと冷蔵庫!! すごく綺麗!」

これが美味しいケーキを焼きたいという僕の夢を叶えてくれるオーブンかと思ったら心がウキウキしてくる。
冷蔵庫もこれだけ大きかったら材料もたくさん揃えられそう。

「ヒジリ、来たのか」

オーブンと冷蔵庫に見入っているとランハートさんの声が聞こえて、振り向くとすぐに僕のそばに来てくれた。

「はい。もう工事が始まっていると思わなくてびっくりしました」

「ヒジリが厨房から先に設備を整えたいと話していただろう?
あの店の主人から店を出すのに必要な設備は聞いておいたからな、忘れないうちにすぐに手配したのだ。
すぐに用意できたようで助かったな。とりあえず、他の必要な機材も今日中には搬入できるそうだ。
ヒジリが必要だと言っていた菓子を作る材料は卸業者に発注しておいたから、明日には全て揃えられるだろう」

「わぁっ! ありがとうございます! 嬉しいっ!」

「――っ! ヒ、ヒジリ」

僕は喜びのあまり、ランハートさんに抱きついてしまった。
ランハートさんはものすごく驚いた声をあげていたけれど、嫌がらずに僕を抱きとめてくれたのはとても嬉しかった。

「ランハートさん、僕……頑張ります!」

「ああ、私も応援しているよ」

「はい。ありがとうございます」

ランハートさんのおでこにチュッとお礼のキスを送って笑顔で離れようとしたけれど、顔を赤くしたランハートさんに同じようにおでこにキスを返されて、笑顔を向けられた。

ふふっ。なんだろう。すごく嬉しい。
応援してくれているランハートさんのためにも、この家を貸してくださった公爵さまのためにも僕は絶対にこの店を成功させなくちゃ!!

「ん゛っ、んっ」

突然聞こえた咳払いの音に僕は驚いてランハートさんから離れた。

「ランハートさま、工事の方がお待ちでございます」

『チッ』
グレイグさんの声にランハートさんは少し嫌そうな表情に見えたけど、

「ああ、すぐ行く」

と答えた時はいつものランハートさんだったから、きっと僕の見間違いだったんだろう。

「ちょっと行ってくるが、ヒジリはグレイグから離れないようにな」

「あ、はい。わかりました」

ランハートさんは僕の言葉に納得したように入り口にいた工事の人たちの元へと走っていった。
僕がこんなふうにしたいって話したのをすぐに形にしてくれて……本当、ランハートさんってすごい人だな。
きっと僕だけじゃいつまで経ってもお店なんかできなかったかもしれない。

「ヒジリさま。ヒジリさまがお話ししておられましたケーキの型とやらを鍛冶屋に作らせますので、どのような形がいいか絵を描いていただくことはできますか?」

「はい。絵は得意なんで大丈夫です! 任せてください!」

「ではあちらでゆっくり描いて頂くことにいたしましょう」

リビングに戻り、テーブルに紙とペンが用意されていて、それに絵を描いていく。
ガトーショコラやスポンジケーキを焼くための一般的な丸型のもの
タルト生地を作るための側面が波型をした丸い形のもので、できれば取りやすいようにそこが抜けるタイプ
大人数で切って食べられるように四角い形のもの

できればどれも大きさ違いで3台ずつは欲しいな。

パウンドケーキやマフィンとかはあの店でも売られてたからマフィン型、パウンド型はあるだろうし、ボウルとかお菓子作りに必要なアイテムも問題はないだろうし、とりあえずはこんなものかな。

これが全部揃ったら、まずは一度ケーキを焼いてみたいな。
そして、ランハートさんとグレイグさんに試食してもらおうっと。
ふふっ、楽しみだな~。
しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

処理中です...