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僕……頑張ります!
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部屋に戻った僕は、今日見せてもらった材料でケーキのレシピをいくつか考えてそれを作るのに必要な型や道具をリストアップしていった。
翌日の午後、グレイグさんに連れられてお店にする予定のあのお家に行くと、もうすでに工事が始まっていて驚いた。
なにっ? すごっ、早っ!
さすがランハートさん、仕事が早いな。
「ヒジリさま。裏から入りましょう」
家の入り口には大きな機械を搬入しようとしている人たちがたくさんいて邪魔になりそうだもんね。
グレイグさんに案内してもらって裏口から中に入った。
グレイグさんと一緒にリビングから厨房にする予定のキッチンに向かうと、もうすでに大きなオーブンと大きな冷蔵庫が搬入されていた。
「わぁーっ、大きいオーブンと冷蔵庫!! すごく綺麗!」
これが美味しいケーキを焼きたいという僕の夢を叶えてくれるオーブンかと思ったら心がウキウキしてくる。
冷蔵庫もこれだけ大きかったら材料もたくさん揃えられそう。
「ヒジリ、来たのか」
オーブンと冷蔵庫に見入っているとランハートさんの声が聞こえて、振り向くとすぐに僕のそばに来てくれた。
「はい。もう工事が始まっていると思わなくてびっくりしました」
「ヒジリが厨房から先に設備を整えたいと話していただろう?
あの店の主人から店を出すのに必要な設備は聞いておいたからな、忘れないうちにすぐに手配したのだ。
すぐに用意できたようで助かったな。とりあえず、他の必要な機材も今日中には搬入できるそうだ。
ヒジリが必要だと言っていた菓子を作る材料は卸業者に発注しておいたから、明日には全て揃えられるだろう」
「わぁっ! ありがとうございます! 嬉しいっ!」
「――っ! ヒ、ヒジリ」
僕は喜びのあまり、ランハートさんに抱きついてしまった。
ランハートさんはものすごく驚いた声をあげていたけれど、嫌がらずに僕を抱きとめてくれたのはとても嬉しかった。
「ランハートさん、僕……頑張ります!」
「ああ、私も応援しているよ」
「はい。ありがとうございます」
ランハートさんのおでこにチュッとお礼のキスを送って笑顔で離れようとしたけれど、顔を赤くしたランハートさんに同じようにおでこにキスを返されて、笑顔を向けられた。
ふふっ。なんだろう。すごく嬉しい。
応援してくれているランハートさんのためにも、この家を貸してくださった公爵さまのためにも僕は絶対にこの店を成功させなくちゃ!!
「ん゛っ、んっ」
突然聞こえた咳払いの音に僕は驚いてランハートさんから離れた。
「ランハートさま、工事の方がお待ちでございます」
『チッ』
グレイグさんの声にランハートさんは少し嫌そうな表情に見えたけど、
「ああ、すぐ行く」
と答えた時はいつものランハートさんだったから、きっと僕の見間違いだったんだろう。
「ちょっと行ってくるが、ヒジリはグレイグから離れないようにな」
「あ、はい。わかりました」
ランハートさんは僕の言葉に納得したように入り口にいた工事の人たちの元へと走っていった。
僕がこんなふうにしたいって話したのをすぐに形にしてくれて……本当、ランハートさんってすごい人だな。
きっと僕だけじゃいつまで経ってもお店なんかできなかったかもしれない。
「ヒジリさま。ヒジリさまがお話ししておられましたケーキの型とやらを鍛冶屋に作らせますので、どのような形がいいか絵を描いていただくことはできますか?」
「はい。絵は得意なんで大丈夫です! 任せてください!」
「ではあちらでゆっくり描いて頂くことにいたしましょう」
リビングに戻り、テーブルに紙とペンが用意されていて、それに絵を描いていく。
ガトーショコラやスポンジケーキを焼くための一般的な丸型のもの
タルト生地を作るための側面が波型をした丸い形のもので、できれば取りやすいようにそこが抜けるタイプ
大人数で切って食べられるように四角い形のもの
できればどれも大きさ違いで3台ずつは欲しいな。
パウンドケーキやマフィンとかはあの店でも売られてたからマフィン型、パウンド型はあるだろうし、ボウルとかお菓子作りに必要なアイテムも問題はないだろうし、とりあえずはこんなものかな。
これが全部揃ったら、まずは一度ケーキを焼いてみたいな。
そして、ランハートさんとグレイグさんに試食してもらおうっと。
ふふっ、楽しみだな~。
翌日の午後、グレイグさんに連れられてお店にする予定のあのお家に行くと、もうすでに工事が始まっていて驚いた。
なにっ? すごっ、早っ!
さすがランハートさん、仕事が早いな。
「ヒジリさま。裏から入りましょう」
家の入り口には大きな機械を搬入しようとしている人たちがたくさんいて邪魔になりそうだもんね。
グレイグさんに案内してもらって裏口から中に入った。
グレイグさんと一緒にリビングから厨房にする予定のキッチンに向かうと、もうすでに大きなオーブンと大きな冷蔵庫が搬入されていた。
「わぁーっ、大きいオーブンと冷蔵庫!! すごく綺麗!」
これが美味しいケーキを焼きたいという僕の夢を叶えてくれるオーブンかと思ったら心がウキウキしてくる。
冷蔵庫もこれだけ大きかったら材料もたくさん揃えられそう。
「ヒジリ、来たのか」
オーブンと冷蔵庫に見入っているとランハートさんの声が聞こえて、振り向くとすぐに僕のそばに来てくれた。
「はい。もう工事が始まっていると思わなくてびっくりしました」
「ヒジリが厨房から先に設備を整えたいと話していただろう?
あの店の主人から店を出すのに必要な設備は聞いておいたからな、忘れないうちにすぐに手配したのだ。
すぐに用意できたようで助かったな。とりあえず、他の必要な機材も今日中には搬入できるそうだ。
ヒジリが必要だと言っていた菓子を作る材料は卸業者に発注しておいたから、明日には全て揃えられるだろう」
「わぁっ! ありがとうございます! 嬉しいっ!」
「――っ! ヒ、ヒジリ」
僕は喜びのあまり、ランハートさんに抱きついてしまった。
ランハートさんはものすごく驚いた声をあげていたけれど、嫌がらずに僕を抱きとめてくれたのはとても嬉しかった。
「ランハートさん、僕……頑張ります!」
「ああ、私も応援しているよ」
「はい。ありがとうございます」
ランハートさんのおでこにチュッとお礼のキスを送って笑顔で離れようとしたけれど、顔を赤くしたランハートさんに同じようにおでこにキスを返されて、笑顔を向けられた。
ふふっ。なんだろう。すごく嬉しい。
応援してくれているランハートさんのためにも、この家を貸してくださった公爵さまのためにも僕は絶対にこの店を成功させなくちゃ!!
「ん゛っ、んっ」
突然聞こえた咳払いの音に僕は驚いてランハートさんから離れた。
「ランハートさま、工事の方がお待ちでございます」
『チッ』
グレイグさんの声にランハートさんは少し嫌そうな表情に見えたけど、
「ああ、すぐ行く」
と答えた時はいつものランハートさんだったから、きっと僕の見間違いだったんだろう。
「ちょっと行ってくるが、ヒジリはグレイグから離れないようにな」
「あ、はい。わかりました」
ランハートさんは僕の言葉に納得したように入り口にいた工事の人たちの元へと走っていった。
僕がこんなふうにしたいって話したのをすぐに形にしてくれて……本当、ランハートさんってすごい人だな。
きっと僕だけじゃいつまで経ってもお店なんかできなかったかもしれない。
「ヒジリさま。ヒジリさまがお話ししておられましたケーキの型とやらを鍛冶屋に作らせますので、どのような形がいいか絵を描いていただくことはできますか?」
「はい。絵は得意なんで大丈夫です! 任せてください!」
「ではあちらでゆっくり描いて頂くことにいたしましょう」
リビングに戻り、テーブルに紙とペンが用意されていて、それに絵を描いていく。
ガトーショコラやスポンジケーキを焼くための一般的な丸型のもの
タルト生地を作るための側面が波型をした丸い形のもので、できれば取りやすいようにそこが抜けるタイプ
大人数で切って食べられるように四角い形のもの
できればどれも大きさ違いで3台ずつは欲しいな。
パウンドケーキやマフィンとかはあの店でも売られてたからマフィン型、パウンド型はあるだろうし、ボウルとかお菓子作りに必要なアイテムも問題はないだろうし、とりあえずはこんなものかな。
これが全部揃ったら、まずは一度ケーキを焼いてみたいな。
そして、ランハートさんとグレイグさんに試食してもらおうっと。
ふふっ、楽しみだな~。
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