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甘やかな声 〜ランハートside
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ヒジリと手を繋ぎ、焼き菓子の店へと向かう。
外まで漂ってくる甘い香りにヒジリは嬉しそうに笑っている。
やはり菓子の店を開きたいというだけあって、菓子が好きなのだな。
無邪気な顔で微笑む姿のなんと美しいことか。
店に入ると、やはりというか当然とでもいうのか、女性たちの姿しか見えないがヒジリはそんなことは気にならないようだ。
我々の姿を見て急に騒々しくなった店内の奥から店主が駆け寄ってきて、私とヒジリを奥の席へと案内してくれた。
ここならヒジリもゆっくりと菓子を堪能できることだろう。
私はヒジリのためにこの店に置いてある全ての焼き菓子を注文したが、食が細いヒジリには全部食べ切ることは難しいだろう。
私自身甘いものは苦手ではないが、そこまでたくさんの焼き菓子を一度に食することはまずない。
しかし、ヒジリが齧ったものならばどれだけでも食べられる自信がある。
だから安心して残してくれて良いのだぞ。
すぐに焼き菓子が運ばれ、目を輝かせたヒジリは少しずつ味わうようにモグモグと食べ始めた。
ふふっ。なんと愛らしいことだろう。
途中ヒジリの食が止まったのが気になり、声をかけると『美味しくて驚いただけ』と話し、その上で私に味の感想を聞かせてくれないかと言い出した。
なるほど、自分の感想と私の感想とが一致するのかを知りたいのだろうか?
じゃあ、どれを頂こうか。
できることならヒジリの食べかけがいいのだがな……と悩んでいると、突然ヒジリが目の前にあった焼き菓子の一つをとり、小さく切って私に『あーん』と差し出してきたではないか。
まるで恋人のようなその仕草に思わずドキッとしてしまう。
なぜなら、自分の使っていたカトラリーで食事を食べさせるのはもうその2人の間に交わりがあったという証なのだ。
店内にいる客たちにも私たちのそんな光景が見えてしまったのか、先ほどよりも店内が騒ついている。
ヒジリが視線を向けると静かになったようだが、もうそんなことはどうでもいい。
私は他の客たちからヒジリが見えないようにそっと身体を動かし、ヒジリの手ずから焼き菓子を食べさせてもらった。
ああ、この菓子はこんな美味なものであったか?
いや、きっとヒジリが美味しくさせているのだ。
「美味しい?」
『く――っ! ヒジリが食べたいっ』
下から覗き込むようにそう尋ねられ私は思わずそう答えそうになったのを必死に押さえつけ、声を上擦らせなから『美味しい』と答えた。
食べさせてもらったのだから私もヒジリに食べさせてもいいだろう?
グレイグが見たら怒りそうな気もするが、まぁ知られることはないだろう。
カトラリーに焼き菓子を小さく切って乗せ、ヒジリに向けるとヒジリは目を瞑ったまま
『あーん』と小さな唇を開いてみせた。
その隙間から赤く小さな舌が見えている。
ああ、唇を重ねその赤く小さな舌に吸い付いて、絡み合わせてそして首筋にも口付けを――
そんな妄想が頭をよぎる。
「んんっ、早くぅ……」
口を開けているのが辛かったのだろうが、その甘やかな声にグッと中心が熱くなった。
こんな声が外で聴けるとは思いもしなかったな。
私は慌ててヒジリの口に菓子を入れてやり、そして何食わぬ顔でそのカトラリーで目の前にある小さな菓子を取り自分の口に入れた。
やはりヒジリが口に含んだカトラリーで食せば、なんでも美味しく感じるのだな。
『んんっ、早くぅ……』
さっきのヒジリの甘やかな声は耳にしっかりと記憶したから、詰所に戻ってから何度も繰り返し思い出すとしよう。
ああ……今日はゆっくり眠れそうだ。
いや、気が昂って逆に眠れないかもしれないな。
まぁそれはそれで幸せなことだろう。
外まで漂ってくる甘い香りにヒジリは嬉しそうに笑っている。
やはり菓子の店を開きたいというだけあって、菓子が好きなのだな。
無邪気な顔で微笑む姿のなんと美しいことか。
店に入ると、やはりというか当然とでもいうのか、女性たちの姿しか見えないがヒジリはそんなことは気にならないようだ。
我々の姿を見て急に騒々しくなった店内の奥から店主が駆け寄ってきて、私とヒジリを奥の席へと案内してくれた。
ここならヒジリもゆっくりと菓子を堪能できることだろう。
私はヒジリのためにこの店に置いてある全ての焼き菓子を注文したが、食が細いヒジリには全部食べ切ることは難しいだろう。
私自身甘いものは苦手ではないが、そこまでたくさんの焼き菓子を一度に食することはまずない。
しかし、ヒジリが齧ったものならばどれだけでも食べられる自信がある。
だから安心して残してくれて良いのだぞ。
すぐに焼き菓子が運ばれ、目を輝かせたヒジリは少しずつ味わうようにモグモグと食べ始めた。
ふふっ。なんと愛らしいことだろう。
途中ヒジリの食が止まったのが気になり、声をかけると『美味しくて驚いただけ』と話し、その上で私に味の感想を聞かせてくれないかと言い出した。
なるほど、自分の感想と私の感想とが一致するのかを知りたいのだろうか?
じゃあ、どれを頂こうか。
できることならヒジリの食べかけがいいのだがな……と悩んでいると、突然ヒジリが目の前にあった焼き菓子の一つをとり、小さく切って私に『あーん』と差し出してきたではないか。
まるで恋人のようなその仕草に思わずドキッとしてしまう。
なぜなら、自分の使っていたカトラリーで食事を食べさせるのはもうその2人の間に交わりがあったという証なのだ。
店内にいる客たちにも私たちのそんな光景が見えてしまったのか、先ほどよりも店内が騒ついている。
ヒジリが視線を向けると静かになったようだが、もうそんなことはどうでもいい。
私は他の客たちからヒジリが見えないようにそっと身体を動かし、ヒジリの手ずから焼き菓子を食べさせてもらった。
ああ、この菓子はこんな美味なものであったか?
いや、きっとヒジリが美味しくさせているのだ。
「美味しい?」
『く――っ! ヒジリが食べたいっ』
下から覗き込むようにそう尋ねられ私は思わずそう答えそうになったのを必死に押さえつけ、声を上擦らせなから『美味しい』と答えた。
食べさせてもらったのだから私もヒジリに食べさせてもいいだろう?
グレイグが見たら怒りそうな気もするが、まぁ知られることはないだろう。
カトラリーに焼き菓子を小さく切って乗せ、ヒジリに向けるとヒジリは目を瞑ったまま
『あーん』と小さな唇を開いてみせた。
その隙間から赤く小さな舌が見えている。
ああ、唇を重ねその赤く小さな舌に吸い付いて、絡み合わせてそして首筋にも口付けを――
そんな妄想が頭をよぎる。
「んんっ、早くぅ……」
口を開けているのが辛かったのだろうが、その甘やかな声にグッと中心が熱くなった。
こんな声が外で聴けるとは思いもしなかったな。
私は慌ててヒジリの口に菓子を入れてやり、そして何食わぬ顔でそのカトラリーで目の前にある小さな菓子を取り自分の口に入れた。
やはりヒジリが口に含んだカトラリーで食せば、なんでも美味しく感じるのだな。
『んんっ、早くぅ……』
さっきのヒジリの甘やかな声は耳にしっかりと記憶したから、詰所に戻ってから何度も繰り返し思い出すとしよう。
ああ……今日はゆっくり眠れそうだ。
いや、気が昂って逆に眠れないかもしれないな。
まぁそれはそれで幸せなことだろう。
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