9 / 80
心まで麗しい人 〜ランハートside
しおりを挟む
翌朝、彼が朝食を終えたであろう時間を見計らって屋敷へと戻った。
途中でレニーの店に寄り、昨日見た彼の身体を思い出しながらそのサイズに合う服を選んだ。
彼に早く会いたくてとりあえず選んだものだったが、まぁいい。
レニーには後で大切な人を連れてもう一度服を買いにくることを伝え、その彼の前では私を『ランハート』と呼ぶようにと指示して急いで屋敷へと向かった。
昨夜は眠ったままの姿だったが、初めて歩いている姿を見て心がときめくのがわかった。
ああ、やはり彼は私の運命の人……。
その美しい運命の人はヒジリと名乗った。
22歳だというのはどうにも信じられない思いだったが、ヒジリがそういうのなら確かなのだろう。
私が昨夜着替えさせたままの夜着を身につけているヒジリに、私がさっき買ってきた服をグレイグがここの主人が昔着ていた服だと言って手渡した。
なぜ私がヒジリのために買ったものだと言わないのだと一瞬怒りを覚えたが、グレイグのことだ。
何か考えがあるのだろう。
その場ではグッと気持ちを押し殺し、着替えのためにヒジリが寝室に入るのを待ってグレイグに話しかけた。
「なぜ私が買ったものだと言って渡さなかったんだ?」
「恐れながら、ヒジリさまは人から無償でいただくことをお気になさるようでございます。
ですので、旦那さまがお買いになったものだとお伝えすれば遠慮されます。
新品ではないとお分かりになれば、しかもそれがここの旦那さまがお召しになっていた物だとお伝えすればヒジリさまもお受け取りになると考えたのでございます」
「なるほど。そうか。さすがだな、グレイグ」
「いいえ、滅相もございません」
グレイグの深い考えに大いに納得していると、着替え終わったヒジリが声をかけてきた。
その声に振り向くと、なんということだろう。
この世のものとは思えないほど可愛らしく、そしてよく似合っていた。
ヒジリはもしかしたら彼のいた世界では上流階級の人間だったのかもしれないとさえ思わせるほど美しく着こなしていた。
あまりにもよく似合っていて私は思わずヒジリを抱きしめてしまった。
その身体のなんと気持ちの良いことだろう。
運命の相手だと証明するかのように私にピッタリと寄り添うその感覚。
ああ、早くヒジリにも私が運命の相手だと告げたいくらいだ。
だが、ここで話をして私のことを怖がり逃げられでもしたら大変だ。
もう少し待たなければ。
私は必死に自分の欲望を抑えながらヒジリの身体を離した。
ヒジリに合う服を揃えてやるためにレニーの店へと連れて行くことにしていたが、足を怪我していることだし、私が抱きかかえて連れて行くつもりでわざと靴は買ってこなかった。
さっとヒジリを抱き上げるとヒジリは最初こそ驚いていたものの、理由を告げると大人しくなり私の腕に抱かれた。
そうやって身体を委ねてくれることを私がどれほど幸せに感じているかわかっていないのだろうな。
私はヒジリの柔らかな身体と心地良い匂いに満ち足りた気分で抱きかかえながらレニーの店へと連れていった。
レニーには先ほど私のことは『ランハート』と呼ぶようにと伝えておいた。
いつもなら私のことを『シェーベリー公爵さま』とよぶレニーはかなり言いにくそうにしていたがそれでいい。
レニーは私の運命の人であるヒジリに心を惹かれている様子だったが、思いっきり念を押すとようやく自分の立場を理解したようで急いでヒジリのサイズを測っていた。
ヒジリのサイズに合う服をいくつか揃え、それとは別に上着から下着まで全てを揃えた。
ヒジリはこんなにたくさんと恐縮しているようだったが、こんな服どれだけ買ってもわがシェーベリー家にとっては痛くも痒くもない。
皆、隙あらば私から買ってもらおうとするものばかりだというのにヒジリには驚かされる。
私が選んだ服に身を包み試着室から出てきたヒジリはあまりにも美しく、誰にも見せたくないとまで思ってしまった。
それと同時にこんなに麗しい人が私の運命の人なのかと幸せに浸らずにはいられなかった。
レニーの店で靴まで買ってしまったのは失敗だった。
ヒジリが私の腕から下りて、自分で歩くと言い出したからだ。
まだ踵の傷も治っていないというのに。
痛くなったらすぐに言うように! と念を押して、ヒジリに紹介する家へと向かった。
読んでいただきありがとうございます!
たくさんの方に読んでいただけて喜びで震えております!!
早く続きを読んでいただきたくて推敲が終わるごとにちまちまと更新しておりますので読みにくいかもしれませんが楽しんでいただけれると嬉しいです♡
途中でレニーの店に寄り、昨日見た彼の身体を思い出しながらそのサイズに合う服を選んだ。
彼に早く会いたくてとりあえず選んだものだったが、まぁいい。
レニーには後で大切な人を連れてもう一度服を買いにくることを伝え、その彼の前では私を『ランハート』と呼ぶようにと指示して急いで屋敷へと向かった。
昨夜は眠ったままの姿だったが、初めて歩いている姿を見て心がときめくのがわかった。
ああ、やはり彼は私の運命の人……。
その美しい運命の人はヒジリと名乗った。
22歳だというのはどうにも信じられない思いだったが、ヒジリがそういうのなら確かなのだろう。
私が昨夜着替えさせたままの夜着を身につけているヒジリに、私がさっき買ってきた服をグレイグがここの主人が昔着ていた服だと言って手渡した。
なぜ私がヒジリのために買ったものだと言わないのだと一瞬怒りを覚えたが、グレイグのことだ。
何か考えがあるのだろう。
その場ではグッと気持ちを押し殺し、着替えのためにヒジリが寝室に入るのを待ってグレイグに話しかけた。
「なぜ私が買ったものだと言って渡さなかったんだ?」
「恐れながら、ヒジリさまは人から無償でいただくことをお気になさるようでございます。
ですので、旦那さまがお買いになったものだとお伝えすれば遠慮されます。
新品ではないとお分かりになれば、しかもそれがここの旦那さまがお召しになっていた物だとお伝えすればヒジリさまもお受け取りになると考えたのでございます」
「なるほど。そうか。さすがだな、グレイグ」
「いいえ、滅相もございません」
グレイグの深い考えに大いに納得していると、着替え終わったヒジリが声をかけてきた。
その声に振り向くと、なんということだろう。
この世のものとは思えないほど可愛らしく、そしてよく似合っていた。
ヒジリはもしかしたら彼のいた世界では上流階級の人間だったのかもしれないとさえ思わせるほど美しく着こなしていた。
あまりにもよく似合っていて私は思わずヒジリを抱きしめてしまった。
その身体のなんと気持ちの良いことだろう。
運命の相手だと証明するかのように私にピッタリと寄り添うその感覚。
ああ、早くヒジリにも私が運命の相手だと告げたいくらいだ。
だが、ここで話をして私のことを怖がり逃げられでもしたら大変だ。
もう少し待たなければ。
私は必死に自分の欲望を抑えながらヒジリの身体を離した。
ヒジリに合う服を揃えてやるためにレニーの店へと連れて行くことにしていたが、足を怪我していることだし、私が抱きかかえて連れて行くつもりでわざと靴は買ってこなかった。
さっとヒジリを抱き上げるとヒジリは最初こそ驚いていたものの、理由を告げると大人しくなり私の腕に抱かれた。
そうやって身体を委ねてくれることを私がどれほど幸せに感じているかわかっていないのだろうな。
私はヒジリの柔らかな身体と心地良い匂いに満ち足りた気分で抱きかかえながらレニーの店へと連れていった。
レニーには先ほど私のことは『ランハート』と呼ぶようにと伝えておいた。
いつもなら私のことを『シェーベリー公爵さま』とよぶレニーはかなり言いにくそうにしていたがそれでいい。
レニーは私の運命の人であるヒジリに心を惹かれている様子だったが、思いっきり念を押すとようやく自分の立場を理解したようで急いでヒジリのサイズを測っていた。
ヒジリのサイズに合う服をいくつか揃え、それとは別に上着から下着まで全てを揃えた。
ヒジリはこんなにたくさんと恐縮しているようだったが、こんな服どれだけ買ってもわがシェーベリー家にとっては痛くも痒くもない。
皆、隙あらば私から買ってもらおうとするものばかりだというのにヒジリには驚かされる。
私が選んだ服に身を包み試着室から出てきたヒジリはあまりにも美しく、誰にも見せたくないとまで思ってしまった。
それと同時にこんなに麗しい人が私の運命の人なのかと幸せに浸らずにはいられなかった。
レニーの店で靴まで買ってしまったのは失敗だった。
ヒジリが私の腕から下りて、自分で歩くと言い出したからだ。
まだ踵の傷も治っていないというのに。
痛くなったらすぐに言うように! と念を押して、ヒジリに紹介する家へと向かった。
読んでいただきありがとうございます!
たくさんの方に読んでいただけて喜びで震えております!!
早く続きを読んでいただきたくて推敲が終わるごとにちまちまと更新しておりますので読みにくいかもしれませんが楽しんでいただけれると嬉しいです♡
595
お気に入りに追加
4,385
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる