異世界でイケメン騎士団長さんに優しく見守られながらケーキ屋さんやってます

波木真帆

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全ては神の思し召し 〜グレイグside

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「それで、お前はどう思う?」

「はい。あのお方に関しましてはまだわからないことが多く、お話を聞いてみてからでもよろしいかと存じます。
突然この公爵家に現れました経緯も含めまして、おそらくはこの世界のお方ではないのではないかと……」

古来、この国にはたまに異世界から突然現れるものがいることは広く知れ渡っている。
この公爵家の運命の人はいずれもこの世界のお方であったが、運命の相手が異世界のお方ではないという確証はどこにもない。
全ては神の思し召し。

あのお方がどのような人物なのか分かってから、公爵家の運命の人について話しても良いのではないかと思ったのだ。

「ふむ、そうだな。異世界では男性同士の婚姻に否定的なところもあるという。
急に私が運命だと言っても拒否反応を起こすかもしれぬな。
それに公爵家という家柄に囚われずに私のことを知ってもらう良い機会かもしれぬ。
ならば、グレイグ。私のことは騎士団長とだけ知らせることにしよう。
ここの公爵と私は別人だということにしておけば、あの彼の本当の気持ちを知れるのではないか?」

確かに旦那さまが公爵家の人間だと知れば、人間は欲が出るものだ。
打算的な部分も出るかも知れない。

「畏まりました。ではその通りにいたします」

「よし。ならばすぐに医師の診察を」

待たせておいた公爵家かかりつけの医師が客間の寝室に呼ばれ、旦那さまの立ち会いのもと診察が行われた。
とはいえ、あのお方に触れることは旦那さまが一切禁じられたので、実際の診察は旦那さまがされたようなものだが、とにかく疲労により意識を失っているということだった。

ゆっくり休養すれば目を覚ますだろうとのことで医師は帰られた。

「グレイグ、私も騎士団に帰る。彼にここの主人だと知られないように当分は騎士団で寝起きすることにする。
何かあればすぐに連絡を寄越すように」

「畏まりました」

旦那さまをお見送りし、あのお方の部屋の前でずっと様子を窺っていたがよほど身体が疲れていたのだろう。
あのお方が目を覚ましたのは、それから数時間が経った後だった。

枕元に飲み物でも用意しておこうと部屋に入ると、驚いた声とともに、あの麗しい人と目があった。
どうやら私が飲み物を取りに行っている間に目を覚まされたようだ。

小動物のように怯えた表情をされている彼にできるだけ優しく声をかけると、彼のお腹から可愛らしい音が鳴り響いた。

すぐに食事を用意すると感謝の言葉を述べられ、それはそれは美味しそうにお召し上がりになった。

食事の後、彼にお話を伺うと、彼は信じてもらえないかも知れないが……と言いながら、自身のことを話してくださった。
やはりこのお方は異世界から来られたお方だったのだ。
ヒジリさまと仰るこのお方のその言葉の全てが真実で私を欺こうなどとする気持ちは全く感じられなかった。

私には、いえ、正確には私たち一族には昔から話をしている人物が真実を話しているのかそれとも欺いているのかを感じ取ることができるという能力を持っている。

ヒジリさまの周りにはまるで神の祝福のようにキラキラとしたものが輝いているのがはっきりと見えた。
やはりこのお方は神のご意志でこの世界に連れてこられたのだと確信した。

このお方が旦那さまと心から添い遂げてくださったら、このシェーベリー公爵家は未来永劫繁栄するに違いない。

そのためにはやはり旦那さまのおっしゃっていたように、旦那さまの為人を知っていただく必要がある。
このまましばらくは騎士団の団長さまということでヒジリさまのおそばにいていただくことにいたしましょう。

そう考えていると、ヒジリさまが働きたいと仰った。
異世界に来られたばかりだというのに戸惑う素振りも見せずに働きたいだなんて、なんて心のお強い方なのでしょう。

それはそうと、ヒジリさまは一体おいくつなのだろう。
気になってお伺いすると、なんと22歳と仰る。

数の数え方が異世界と異なるのかと思えばどうやらそうではないらしい。
どうみても15歳やそこらに見えるというのに……異世界のお方は皆が皆こんなにもお若く見えるのだろうか……。

とりあえず、旦那さまにご報告しようと思い、ヒジリさまにもそう伝えると安心されたように笑顔をお見せになった。

ああ、私がヒジリさまのお美しい笑顔を一番最初に見たと知られれば旦那さまがどれだけ拗ねられるか……想像するだけでも恐ろしい。
これは内緒にしておかなければ。

話を終え、部屋を出た私はすぐに旦那さまのおられる騎士団へ早馬を飛ばした。
返事は明日かと思っていると、すぐに返事が来たことに驚いてしまった。

やはり運命の人。
別れているのが気になって仕方がないのだろう。

私は早速きた旦那さまからのお返事をヒジリさまにするのを楽しみに朝を迎えた。
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