上 下
34 / 35

みんなへの無茶振り

しおりを挟む
「見てみてー! キリンさんだよー!」

一花の声にみんな駆け寄ってくる。

「わぁー、本当に首長ーい!!」

「あ、子どものキリンくんがいるよー」

「あの子、ハルヒくんっていうんだって~!」

柵の前に書かれた案内板を見て、真守くんがみんなに教えてあげている。

「えー、かわいいっ!!」

「みんなで名前呼んでみようか?」

「うん!」

嬉しそうに顔を見合わせると、一花の

「せぇーの!」

の掛け声に続いて

「「「「「ハルヒく~~んっ!!」」」」」

可愛い声が響く。

その声が聞こえたのか、母親のそばから離れなかった小さなキリンが一花たちの元に駆け寄ってくる。

「わぁー! ハルヒくんが、きてくれたー!!」

「僕たちの言葉がわかったのかな」

「きっとそうだよ!!」

可愛いキリンとの交流で、一花たちがはしゃいでいるのが可愛い。
周りで我々保護者はその様子をすっかりとスマホで撮影していた。

もちろん、志摩くんもしっかりとカメラマンに徹してくれていた。

一花はともかく知らない子ばかりの中に駆り出されて正直面倒だと思われても仕方がないのだが、仕事だと割り切っているのか、それとも一花たちの可愛い姿に癒されたのか、ずっと笑顔で写真を撮ってくれていた。

「一花、それにみんなにもここでクイズを出そう」

「えー、クイズ? なになに、楽しそう!!」

ふと思いついたクイズを出してみようと試みて声をあげてみると思いの外、子どもたちが食いついてくれて嬉しい。

「キリンの鳴き声はなんだと思う? 知っている子はいるかな?」

「えー、キリンの鳴き声? なんだろう? 弓弦くん、知ってる?」

「うーん、わからないな。真守くん知ってる?」

真守くんも知らないようで難しそうな表情をしながら首を横に振った。
ちょっと難しすぎたかと思ったとその時、

「僕、わかる!! キリンは牛さんと同じで『モー』って鳴くんだよ!!」

自信満々な大きな声が聞こえて視線を向けると、まさかの理央くん。
その声に観月くんも驚いていた。

「正解だ! よく知ってたね」

「少し前にりょうちゃんがくれた本に載ってたから……」

「そうか、偉いな」

私が褒めると一花たちも次々に理央くんに声をかける。

「理央くん、すっごーい!」

「ほんと、動物博士だね!」

みんなからも褒められてほんのり頬を赤らめながら理央くんは観月くんの元に向かった。
観月くんから頭を優しく撫でられてこの上なく嬉しそうな表情を見せていた。

ああ、観月くんも嬉しいだろうな、あれは。

「せいくん! 動物さんのクイズ、とっても面白いから他にもいっぱい出してー!」

「じゃあ、次の動物のところに行ったら、ここにいる保護者の誰かが出してくれるよ。なぁ、みんな」

私がエヴァンたちに視線を向けると、みんなは最初こそ

「えっ……」

と戸惑いの表情を見せていたが、子どもたちに期待いっぱいの目で見つめられて断ることもできず、みんな笑顔で頷いた。

「わぁーい!! じゃあ、次のところ行こう!」

子どもたちは嬉しそうに隣の場所に移動していく。
エヴァンたちに無茶振りをしてしまったが、みんな優秀な者たちだから小学一年生でもわかるくらいの動物クイズなど必ず出せるはずだ。
その期待通り、動物たちのところにつくたびに誰かがクイズを出していく。
その度に盛り上がり、一花たちは大満足のまま前半の動物エリアの見学を終えた。

そして、一花が楽しみにしていたあのゾーンがやってきた。

「ふ、れ、あ、い、ひろば。一花ちゃん、ここって何するの?」

「ここは、可愛いウサギちゃんを抱っこできるんだよー!」

「えー! 抱っこしたい! 抱っこしたい!!」

「みんなで行こー!」

一花の呼びかけにみんなやる気になっているが、空良くんだけは少し怖がっている様子。
こっそり悠木くんに聞いてみると、どうやら昔、猫に引っ掻かれたことがあるらしく、小さな動物が苦手になってしまったようだ。

「どうしたの? 空良くん」

「僕、ちょっと怖い……」

「怖い?」

「うん。一花ちゃんは怖くない?」

「大丈夫。ここのウサギちゃん、とっても可愛くて人懐っこいんだよ。ちょっとだけ一緒に行ってみる?」

「……うん、ちょっとだけ……」

空良くんはまだ少し不安げだったが、一花と手を繋ぎゆっくりとふれあい広場に入って行った。
その様子を悠木くんは静かに見守っているようだった。
しおりを挟む
感想 100

あなたにおすすめの小説

【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ  前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。  悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。  逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位 2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位 2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位 2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位 2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位 2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位 2024/08/14……連載開始

帰宅

papiko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...