溺愛されまくりの会長令息が財閥イケメンスパダリ御曹司に見初められました

可愛い挨拶

「おはよう、弓弦くん！」

「一花ちゃん、おはよう。準備できた？」

「うん！　もうバッチリだよ！！　遠足楽しみだね！！」

可愛らしい子猫が戯れ合うのをみながら、私はエヴァンに声をかけた。

「おはよう、エヴァン。彼らが遠足についてきてくれる人たちか？」

「ええ。そうです。こちらがジョルジュ。今日の運転を担当します。そして、こちらがリュカ。ユヅルを含め子どもたちのお世話をします。二人とも日本語が堪能なのでご安心ください」

「そうか。ジョルジュ、リュカ。今日はよろしく頼むよ」

「はい。私どもにお任せください」

二人とも優しい笑顔を浮かべているが、かなりの使い手だというのは溢れ出ているな。さすがロレーヌ家専属警備隊の若手の中でも飛び抜けて優秀な二人だとエヴァンが言っていただけのことはある。

「弓弦くん、この人たちが一緒に動物園に行ってくれる人？」

「うん。ジョルジュもリュカも動物さん大好きなんだよ」

「わぁー、そうなんだ。じゃあ、一緒に楽しめるね。ジョルジュさん、リュカさん。えっと……ぼんじゅーる、じゅ、しぃ、イチカ。あんしゃんて！」

「「――っ！！」」

一花が拙いながらもフランス語で挨拶をし、ちょこんとお辞儀をすると、彼らは驚きのあまり、言葉を失ったようだ。

まさかフランス語で丁寧に挨拶をしてくれるとは思ってもみなかったのだろう。
隣にいたエヴァンも驚いていたし、私も正直驚いた。一花はいつの間にフランス語を勉強していたのだろう？

私たちが驚いたまま一花を見つめていると、顔を上げた一花がどんどん悲しげな表情になっていく。

「ゆ、づるくん……いちかの、あいさつ、どこか、へんだった？」

不安そうに弓弦くんを見ると、弓弦くんは慌てて一花の手を取った。

「全然変じゃないよ！　一花ちゃんがあんまり上手にフランス語を喋ったからびっくりしちゃったんだよ！　ねぇ、エヴァン。そうだよね？　ジョルジュとリュカもちゃんとお返事して！」

弓弦くんが一花を守るように声を上げると、エヴァンも彼らもハッと我に返った。

「イチカ、素晴らしい挨拶で驚いたよ。なぁ、ジョルジュ、リュカ」

「は、はい。とても可愛らしい挨拶で驚きました。フランス語がとても上手ですね」

「イチカさん。リュカと申します。素晴らしい挨拶をありがとうございます。今日は一緒に動物園を楽しみましょうね」

エヴァンとジョルジュ、リュカの言葉を受け、不安げだった一花の表情に笑顔が戻る。

「うん！　日本の動物園を一花が教えてあげるー！」

一花は数年前に家族で動物園に行ったことがあるそうで、初めて行く弓弦くんや理央くんに教えてあげるんだと遠足が決まってからずっと話していた。

「弓弦くん、お弁当とお菓子持ってきた？」

「うん。フランスのお菓子をリュカから持ってきてもらったんだ。だから交換して食べよう」

「わぁー、フランスのお菓子楽しみー！！」

一花はすっかり機嫌を直して弓弦くんと嬉しそうに話し始めた。

「セイヤ。イチカを不安にさせて申し訳ないです」

「いや、気にしないでいいよ。私も正直驚いたんだ。一花はきっと、わざわざフランスから来てくれた彼らに感謝を伝えたくて練習したんだろうな」

「セイヤのイチカは本当に素晴らしい子ですね」

「ははっ。ありがとう。私もそう思っているよ。さぁ、そろそろ観月くんのところに迎えに行かないと。理央くんが一花たちが来るのを待ち侘びているよ」

「そうですね。ジョルジュ、運転を頼むぞ」

「はい！」

リュックを背負い手を繋いで車に向かう一花と弓弦くんを、私たちと、そして櫻葉会長と麻友子さんも一緒に微笑ましく思いながら、駐車場に向かった。

「わぁー、おっきな車。これならみんなで乗れるね」

「うん！　車の中でもいっぱいおしゃべりしようね」

「さぁ、ユヅル、イチカさん。頭をぶつけないようにお入りください」

「ありがとう！」

リュカに声をかけられながら二人が乗り込むのを確認して、私とエヴァン、最後にリュカが乗り込んだ。

「パパー、ママー。行ってきまーす！」

「ええ。楽しんでいらっしゃい」

「一花、気をつけるんだぞ。征哉くん、一花を頼む」

「はい。お任せください」

窓越しに挨拶を交わし、車は駐車場をゆっくりと出て行った。

次の目的地は観月くんの家。エヴァンたちが早くきてくれたおかげで今のところ予定通りの出発だ。

彼らももう準備は万端だろうな。可愛い子猫の戯れが増えていくと思うと楽しみでたまらないな。