20 / 35
お祝いの席
しおりを挟む
「あっ、理央くん!」
一花が振り向くと、観月くんに抱きかかえられた理央くんと、その後ろにご両親がいた。
「理央くんたちもここでお食事なの?」
「うん。そうなんだって! 僕、ここで食べるの初めてだけど、りょうちゃんがすっごく楽しいことがあるよって教えてくれたから楽しみなんだ」
「わっ、僕もだよ!! 中に入ってからのお楽しみなんだって!」
「ふふっ。楽しみだね」
一花と理央くんが楽しそうに話をしていたからだろう。観月くんはそっと腕から理央くんを下ろした。
一瞬寂しそうな表情を見せた理央くんだったが、
「一花くんと手を繋ぐといい」
と言われて嬉しそうに一花の隣にやってきた。
「理央も一花くんと会えて嬉しそうですし、よければご一緒しませんか?」
観月くんの父が、私の父たちに声をかける。家族でのお祝いもいいが、こんなに楽しそうにしている二人を愛でたいという気持ちもあるのだろう。
「ええ。そうしましょう。ねぇ、櫻葉さん」
「はい。一花の可愛いお友だちとそのご家族と仲良くできるなら嬉しいですよ」
「じゃあ、広い部屋に変えてもらうように声をかけてきますね」
観月くんの父が店に先に行って声をかける。どうやら父たちと同じく、ここの常連のようだ。
しばらく店先で待っていたが、その間も一花と理央くんは飽きることなく楽しそうに話をしている。そこに私の母と麻友子さん、それに観月くんの母君も加わって楽しそうだ。
本当に母は一花と会うたびに可愛い、可愛いと話しているし、実の息子である私よりも可愛がっているのはわかる。別にそれに嫉妬するなんて感情は全くなく、一花のことを可愛がってくれるのは嬉しい以外の何ものでもない。ただ、一花が私のものだということだけは理解していて欲しいものだ。
「母が一緒だといつも理央を取られて困っていたんですが、貴船先輩のところも同じような感じですね」
「ああ。私の母もあの通り、一花にメロメロだからな。一花を可愛がってくれるのは嬉しいが、なかなか戻ってこないから取り返しに行くのが大変だよ」
「ははっ。貴船先輩も同じなんですね。ものすごく親近感が湧きます」
やはり同じか。まぁ、もう少し大きくなるまではみんなで可愛がって育てていく今の現状が一番いいのだろうな。
そんな話をしていると観月くんの父が店員と一緒に出てきた。
「お部屋のご準備が整いました。どうぞお入りください」
その呼びかけに一花と理央くんはすぐに反応して、私と観月くんの元に駆け寄ってきた。
「せいくん、一緒に入ろう」 「ああ、行こうか」
「りょうちゃん、行こう!」 「よし、行こう」
可愛い姫たちを抱きあげると、私たちの後ろから
「あらあら、やっぱり征哉がいいのね」
「本当、凌也に取られちゃったわ」
という母と観月くんの母君の声が聞こえる。
私と観月くんはお互いに顔を見合わせながら、店の中に入った。
店の中は暗く落ち着いた照明で、一花は少し怖かったのか、私にギュッと抱きついてきた。
「せいくん、怖くない?」
「大丈夫だよ。さぁ、部屋に行こう」
同じように少し怖がっているらしい理央くんに優しい声をかけている観月くんの様子を微笑ましく思いながら、案内された部屋に入ると、部屋に入った途端、
「わぁーっ!! すごいっ!! きれいっ!!」
という嬉しそうな一花の声が響いた。
「わぁーっ、本当だ! きれいーっ!!」
理央くんも気に入ったみたいだな。ここはアクアリウムレストラン。
個室の壁に水槽が埋め込まれ、色鮮やかな熱帯魚が泳いでいて見ていて癒される。
「ねぇねぇ、せいくん。このお魚さん、本物?」
「ああ、そうだよ。沖縄や南の島に住んでいる魚たちだよ」
「すごーい!!」
「ほら、一花と理央くんは主役だから、水槽から一番近い場所に座るといい」
「わぁー、パパ。ありがとう! 大好きっ!!」
一花が嬉しそうに声をあげると、櫻葉会長はこの上なく幸せそうな表情を見せていた。
私たち四人が座る向かいに、私の母と麻友子さん、そして観月くんの母君が並んで座り、父と櫻葉会長、そして観月くんの父は三人でかたまって座っていた。これが一番しっくりくる座り方なのだろう。
いや、本当は私と観月くんも父たちの方に入るべきだが、最初くらいは一花のそばにいさせてもらおうか。
父と櫻葉会長がすでに料理を頼んでいたように観月家も料理は頼んでいたようで、次々に料理が運ばれてくる。
「わぁ、一花の可愛いお子様ランチだ! あっ、理央くんのもお揃いだね!」
「一花ちゃんとお揃い!! 嬉しい!!」
「このお子様ランチには食後にプリンかバニラアイスのどちらかがデザートに選べるのよ」
そんな母の言葉に一花が困った顔で理央くんに尋ねる。
「ええー、理央くん。どっちにする?」
「うーん、難しいね」
「ねぇ、じゃあどっちも頼んで、半分ずっこしようか?」
「半分ずっこ?」
「うん。プリンも半分、アイスも半分」
「わぁ、それ楽しそう!!」
理央くんは一花の提案に嬉しそうに目を輝かせた。
「理央くんは半分は初めてなのか?」
「いえ、きっと半分ずっこという言い方を初めて聞いたからかもしれません」
「ああ、なるほど。そういうことか。一花は昔間違えて覚えたままなんだ。可愛いからそのままにしておいたんだが」
「そのままでいいと思いますよ。間違いではないですし」
「そうか。それならそうしよう」
私と観月くんが話している間もずっと一花と理央くんは嬉しそうに目の前のお子様ランチについておしゃべりが止まらない様子だった。
一花が振り向くと、観月くんに抱きかかえられた理央くんと、その後ろにご両親がいた。
「理央くんたちもここでお食事なの?」
「うん。そうなんだって! 僕、ここで食べるの初めてだけど、りょうちゃんがすっごく楽しいことがあるよって教えてくれたから楽しみなんだ」
「わっ、僕もだよ!! 中に入ってからのお楽しみなんだって!」
「ふふっ。楽しみだね」
一花と理央くんが楽しそうに話をしていたからだろう。観月くんはそっと腕から理央くんを下ろした。
一瞬寂しそうな表情を見せた理央くんだったが、
「一花くんと手を繋ぐといい」
と言われて嬉しそうに一花の隣にやってきた。
「理央も一花くんと会えて嬉しそうですし、よければご一緒しませんか?」
観月くんの父が、私の父たちに声をかける。家族でのお祝いもいいが、こんなに楽しそうにしている二人を愛でたいという気持ちもあるのだろう。
「ええ。そうしましょう。ねぇ、櫻葉さん」
「はい。一花の可愛いお友だちとそのご家族と仲良くできるなら嬉しいですよ」
「じゃあ、広い部屋に変えてもらうように声をかけてきますね」
観月くんの父が店に先に行って声をかける。どうやら父たちと同じく、ここの常連のようだ。
しばらく店先で待っていたが、その間も一花と理央くんは飽きることなく楽しそうに話をしている。そこに私の母と麻友子さん、それに観月くんの母君も加わって楽しそうだ。
本当に母は一花と会うたびに可愛い、可愛いと話しているし、実の息子である私よりも可愛がっているのはわかる。別にそれに嫉妬するなんて感情は全くなく、一花のことを可愛がってくれるのは嬉しい以外の何ものでもない。ただ、一花が私のものだということだけは理解していて欲しいものだ。
「母が一緒だといつも理央を取られて困っていたんですが、貴船先輩のところも同じような感じですね」
「ああ。私の母もあの通り、一花にメロメロだからな。一花を可愛がってくれるのは嬉しいが、なかなか戻ってこないから取り返しに行くのが大変だよ」
「ははっ。貴船先輩も同じなんですね。ものすごく親近感が湧きます」
やはり同じか。まぁ、もう少し大きくなるまではみんなで可愛がって育てていく今の現状が一番いいのだろうな。
そんな話をしていると観月くんの父が店員と一緒に出てきた。
「お部屋のご準備が整いました。どうぞお入りください」
その呼びかけに一花と理央くんはすぐに反応して、私と観月くんの元に駆け寄ってきた。
「せいくん、一緒に入ろう」 「ああ、行こうか」
「りょうちゃん、行こう!」 「よし、行こう」
可愛い姫たちを抱きあげると、私たちの後ろから
「あらあら、やっぱり征哉がいいのね」
「本当、凌也に取られちゃったわ」
という母と観月くんの母君の声が聞こえる。
私と観月くんはお互いに顔を見合わせながら、店の中に入った。
店の中は暗く落ち着いた照明で、一花は少し怖かったのか、私にギュッと抱きついてきた。
「せいくん、怖くない?」
「大丈夫だよ。さぁ、部屋に行こう」
同じように少し怖がっているらしい理央くんに優しい声をかけている観月くんの様子を微笑ましく思いながら、案内された部屋に入ると、部屋に入った途端、
「わぁーっ!! すごいっ!! きれいっ!!」
という嬉しそうな一花の声が響いた。
「わぁーっ、本当だ! きれいーっ!!」
理央くんも気に入ったみたいだな。ここはアクアリウムレストラン。
個室の壁に水槽が埋め込まれ、色鮮やかな熱帯魚が泳いでいて見ていて癒される。
「ねぇねぇ、せいくん。このお魚さん、本物?」
「ああ、そうだよ。沖縄や南の島に住んでいる魚たちだよ」
「すごーい!!」
「ほら、一花と理央くんは主役だから、水槽から一番近い場所に座るといい」
「わぁー、パパ。ありがとう! 大好きっ!!」
一花が嬉しそうに声をあげると、櫻葉会長はこの上なく幸せそうな表情を見せていた。
私たち四人が座る向かいに、私の母と麻友子さん、そして観月くんの母君が並んで座り、父と櫻葉会長、そして観月くんの父は三人でかたまって座っていた。これが一番しっくりくる座り方なのだろう。
いや、本当は私と観月くんも父たちの方に入るべきだが、最初くらいは一花のそばにいさせてもらおうか。
父と櫻葉会長がすでに料理を頼んでいたように観月家も料理は頼んでいたようで、次々に料理が運ばれてくる。
「わぁ、一花の可愛いお子様ランチだ! あっ、理央くんのもお揃いだね!」
「一花ちゃんとお揃い!! 嬉しい!!」
「このお子様ランチには食後にプリンかバニラアイスのどちらかがデザートに選べるのよ」
そんな母の言葉に一花が困った顔で理央くんに尋ねる。
「ええー、理央くん。どっちにする?」
「うーん、難しいね」
「ねぇ、じゃあどっちも頼んで、半分ずっこしようか?」
「半分ずっこ?」
「うん。プリンも半分、アイスも半分」
「わぁ、それ楽しそう!!」
理央くんは一花の提案に嬉しそうに目を輝かせた。
「理央くんは半分は初めてなのか?」
「いえ、きっと半分ずっこという言い方を初めて聞いたからかもしれません」
「ああ、なるほど。そういうことか。一花は昔間違えて覚えたままなんだ。可愛いからそのままにしておいたんだが」
「そのままでいいと思いますよ。間違いではないですし」
「そうか。それならそうしよう」
私と観月くんが話している間もずっと一花と理央くんは嬉しそうに目の前のお子様ランチについておしゃべりが止まらない様子だった。
1,195
お気に入りに追加
1,312
あなたにおすすめの小説
【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。
悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。
逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位
2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位
2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位
2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位
2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位
2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位
2024/08/14……連載開始
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる