溺愛されまくりの会長令息が財閥イケメンスパダリ御曹司に見初められました

波木真帆

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嬉しいジンクス

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「おお、綺麗だな」

中庭の主のような大きな千年桜が見事な桜を咲かせている。桜城大学にももちろん美しい桜が咲き誇っていたが、ここまでのものはなかったな。いや、東京中を探してもこれほど美しい桜は見つからないだろう。桜守の名にふさわしく、ここに通う子らを守っているのだろうな。

「でしょう? 一花、小学生になったらここでお写真撮るの楽しみにしてたんだぁ」

「そうか。それなら一花の心ゆくまで写真を撮るとしよう」

まずはやはり家族写真がいいだろう。
一花を下ろすと、櫻葉会長と麻友子さんの元に駆けて行った。

うちの牧田と二階堂さんが専属カメラマンのように写真を撮っていく。私の両親とも嬉しそうに写真を撮り終えると、

「せいくーん!!」

と笑顔で私の名前を呼んでくれる。ピンク色の制服を着た桜の妖精のような一花の元に駆け寄り、抱きかかえて二人の写真を撮る。

「ねぇ、せいくん。ちゃんとカメラ見ててね」

「ああ。わかったよ」

生まれてからずっと櫻葉会長たちにたくさんの写真を撮られている一花は、カメラに慣れていて恥ずかしがることはない。だからこそ、Clef deクレ ド Coeurクールの広告モデルを務めることができたのだ。とびっきりの笑顔で写真に映る一花を腕に抱きながら幸せのひと時を過ごしていると、

「せいくん、大好き!」

という一花の声が聞こえて、頬に柔らかな感触があたる。

「――っ、一花っ」

「ふふっ。桜の下でチューしちゃった」

「何かジンクスのようなものがあるのか?」

「ジンクス?」

「あ、いや……一花が私にここでキスをしたい理由があったのか?」

「うん。この桜の下でちゅーしたらずーっと一緒にいられるんだって。一花、せいくんとずっと一緒にいたいからここでちゅーしたかったの」

「一花……」

一花にここまで愛してもらえるなんて……。私は本当に幸せものだな。

そんな私たちの様子を見ていたエヴァンたちが同じように桜の下でキスをしたのはいうまでもない。ただ、唇ではなかったのは、ニコラ・ロレーヌを意識したのだろうな。


次々と写真を撮りに新入生と家族がやってくる。写真を撮り終えた私たちは邪魔にならないようにその場から移動した。
一花と弓弦くんが二人で手を繋いで歩いていくすぐ後ろを私とエヴァンがついていく。
ああ、後ろ姿だけでも一花の可愛さが際立っているな。まぁ、同じようにエヴァンも弓弦くんが可愛いと思っているのだろう。

「ねぇねぇ、一花ちゃんたちはこの後どうするの?」

「みんなでご飯食べにいくんだって。入学のお祝いだよ」

「わぁー、そっか。僕もみんなでご飯食べにいくんだよ。パパとママと美味しい和食食べるんだぁ」

「そっか、それは楽しみだね」

一花と弓弦くんが話をしている間、私もエヴァンと話をしていた。

『素晴らしい話を聞けてよかったです。おかげでユヅルと桜の下でキスできました』

『私も桜守にこんなジンクスがあるとは知らなかったよ。お互いにラッキーだったね』

『はい。セイヤ、これからも連絡していいですか?』

『もちろん! いつでも構わないよ』

私の後輩だということはもちろん、一花の大事な親友の相手でもあるエヴァンと仲良くしない理由がない。
お互いに固く握手をして、それぞれの大事な人の元に戻った。

一花を連れて駐車場に戻ると、すでに双方の両親は車に乗っていた。

一花を櫻葉家の車に連れて行き乗せようとすると、

「一花、せいくんと一緒に車に乗るー!!」

と言い出した。

「櫻葉会長……よろしいですか?」

「今日は一花が主役だからな。いう通りにしてやろう」

「わぁー、パパ! 大好きっ!!」

一花は車の中にいた櫻葉会長に抱きつくと

「じゃあ、パパ。ママ。後でね」

と言って私の元に戻ってきた。本当に一花には誰も敵わないな。

二台の車で店に向かう。その間、一花は私たちの車の中でひたすらに喋り続けていた。
よほど入学式が楽しかったのだろうな。そんな一花の様子を父も母も相好を崩しながら見つめていた。

「せいくん、どこか駐車場に入っていくよ!」

「ああ。お店に着いたみたいだな」

「ここ? 一花、初めてー!」

「そうか、それならきっと楽しいと思うぞ」

「楽しい? 何?」

「それは中に入ってのお楽しみだ」

少し思わせぶりにしたから、一花はワクワクを隠しきれない様子で外に出た。

すると、

「あっ、一花ちゃんだ!!」

と可愛らしい声が聞こえてきた。
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