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ちかいの言葉
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幼稚園にいたときにすでに初等部への一番の入学が決まっていた一花は、この代表挨拶について幼稚園の先生たちの前で練習をしていたと言っていたし、私に挨拶を見にきて欲しいと言っていたのだから自信はあるのだろう。
私も一花と同じように大勢の前で挨拶をした経験があるし、大して緊張もしなかった覚えがあるが、いざ一花がその立場に立ったと思うと見ているこちらの方が緊張してくる。
だが、壇上に向かう一花の表情には笑顔も見える。
私に可愛らしく甘えてくる一花とは別人のようだ。
まだ私の知らない一花の姿があったのだなと思うと嬉しくなる。
『セイヤのイチカは物怖じもせず、あの凛とした様子も何もかもが素晴らしいですね』
『私もここまでとは知りませんでしたよ。うまくできるかと緊張していましたが、あの表情を見る限り大丈夫そうですね』
『ええ、さすがユヅルの親友ですね』
私たちがこうして話している間にも一花は壇上に上がり、マイクの前に立った。
そして、みんなに見えるように笑顔を浮かべると、ゆっくりと口を開いた。
「私たちは、今日から、桜守初等部の、一年生です。これから、たくさんのお友達と、勉強も、運動も、一生けんめい、頑張ります! 新入生代表、一年一組。櫻葉一花」
一花がマイクから少し下がり、ぺこっと頭を下げると同時に、しんと静まり返っていた体育館が大きな拍手に包まれた。
簡潔ながらも、しっかりと大きな声で元気よく誓いの言葉を述べた一花への割れんばかりの拍手に一花は驚いていたけれど、そこで怯むこともなく、私たちを見てニコッと天使のような笑顔を見せると、私に小さく手を振ってくれた。
ああ、もう本当に一花は肝が据わっているな。
一花の素晴らしさにここにいる保護者たちが感動したのか、壇上から下り、一花が自分の席に戻る間もずっと拍手が鳴り止むことはなかった。
大盛況のうちに入学式は無事に終わり、一花たちは先に教室へと戻っていった。
<side理央>
入学式で一人一人名前を呼ばれた時、僕はドキドキが止まらなかった。
でも、一花ちゃんも真守くんもみんなおっきな声でお返事していたから、僕、いっぱい頑張って大きな声を出したんだ。
一花ちゃんより小さかったけど、ちゃんと聞こえたかな?
ドキドキしながら、りょうちゃんを見たら笑顔だったから、多分大丈夫だったはず!
よかった、りょうちゃんにもパパとママにも頑張っているところ見せられた!
これも一花ちゃんや他のお友達のおかげだな。
これからもみんなと一緒に頑張らなきゃ! と思っていたら、新入生のちかいの言葉っていうのに、一花ちゃんの名前が呼ばれてびっくりした。
たった一人で大きな声を出して立ち上がってお返事した後、前に向かって歩いていく。
どこにいくんだろう?
そう思ったけれど、周りがシーンとしていて、誰にも聞けそうにない。
ドキドキしながら見守っていると、一花ちゃんがあの高いところに現れた。
そして、大きな声で元気いっぱいあいさつしているのを見て、僕は一花ちゃんが眩しく見えた。
「かっこいい……」
僕も、一花ちゃんみたいになれるかな?
ううん、なりたい! なるんだ!!
いつか絶対に!!
そう思いながら、僕はいっぱい、いっぱい拍手した。
入学式が終わって教室に戻ってすぐに僕は一花ちゃんの元に走った。
「一花ちゃん! ごあいさつ、すっごくかっこよかった!」
「ありがとう! みんなのことを思って、ごあいさつしたんだ!」
「本当にかっこよかったよ!!」
「うん、本当にすごかった!!」
「大人もみんな拍手してたもんね!」
「ほんとほんと! すごいよ!!」
「ふふっ。そんなに褒められると照れちゃうな」
真守くんも弓弦くんも空良くんもみんなみんな、僕と同じ気持ちだったみたい。
やっぱりそうだよね。
本当にかっこよかったもん。
僕、一花ちゃんのお友だちになれてよかったな。
<side一花>
みんなに褒められて、ちょっと恥ずかしいけど嬉しい。
せいくんにも見てもらえたし、パパもママも二階堂さんも喜んでくれていた。
それに貴船のおじちゃまと、牧田さんもいっぱい拍手してくれているのが見えた。
僕、頑張ったよね?
この頑張ったご褒美、せいくんにねだっちゃおう。
うん、ご褒美に一緒に桜の下で写真撮ってってお願いしてみようっと!!
いっぱい並んでいるかもだけど、せいくん、お願い聞いてくれたら嬉しいな。
私も一花と同じように大勢の前で挨拶をした経験があるし、大して緊張もしなかった覚えがあるが、いざ一花がその立場に立ったと思うと見ているこちらの方が緊張してくる。
だが、壇上に向かう一花の表情には笑顔も見える。
私に可愛らしく甘えてくる一花とは別人のようだ。
まだ私の知らない一花の姿があったのだなと思うと嬉しくなる。
『セイヤのイチカは物怖じもせず、あの凛とした様子も何もかもが素晴らしいですね』
『私もここまでとは知りませんでしたよ。うまくできるかと緊張していましたが、あの表情を見る限り大丈夫そうですね』
『ええ、さすがユヅルの親友ですね』
私たちがこうして話している間にも一花は壇上に上がり、マイクの前に立った。
そして、みんなに見えるように笑顔を浮かべると、ゆっくりと口を開いた。
「私たちは、今日から、桜守初等部の、一年生です。これから、たくさんのお友達と、勉強も、運動も、一生けんめい、頑張ります! 新入生代表、一年一組。櫻葉一花」
一花がマイクから少し下がり、ぺこっと頭を下げると同時に、しんと静まり返っていた体育館が大きな拍手に包まれた。
簡潔ながらも、しっかりと大きな声で元気よく誓いの言葉を述べた一花への割れんばかりの拍手に一花は驚いていたけれど、そこで怯むこともなく、私たちを見てニコッと天使のような笑顔を見せると、私に小さく手を振ってくれた。
ああ、もう本当に一花は肝が据わっているな。
一花の素晴らしさにここにいる保護者たちが感動したのか、壇上から下り、一花が自分の席に戻る間もずっと拍手が鳴り止むことはなかった。
大盛況のうちに入学式は無事に終わり、一花たちは先に教室へと戻っていった。
<side理央>
入学式で一人一人名前を呼ばれた時、僕はドキドキが止まらなかった。
でも、一花ちゃんも真守くんもみんなおっきな声でお返事していたから、僕、いっぱい頑張って大きな声を出したんだ。
一花ちゃんより小さかったけど、ちゃんと聞こえたかな?
ドキドキしながら、りょうちゃんを見たら笑顔だったから、多分大丈夫だったはず!
よかった、りょうちゃんにもパパとママにも頑張っているところ見せられた!
これも一花ちゃんや他のお友達のおかげだな。
これからもみんなと一緒に頑張らなきゃ! と思っていたら、新入生のちかいの言葉っていうのに、一花ちゃんの名前が呼ばれてびっくりした。
たった一人で大きな声を出して立ち上がってお返事した後、前に向かって歩いていく。
どこにいくんだろう?
そう思ったけれど、周りがシーンとしていて、誰にも聞けそうにない。
ドキドキしながら見守っていると、一花ちゃんがあの高いところに現れた。
そして、大きな声で元気いっぱいあいさつしているのを見て、僕は一花ちゃんが眩しく見えた。
「かっこいい……」
僕も、一花ちゃんみたいになれるかな?
ううん、なりたい! なるんだ!!
いつか絶対に!!
そう思いながら、僕はいっぱい、いっぱい拍手した。
入学式が終わって教室に戻ってすぐに僕は一花ちゃんの元に走った。
「一花ちゃん! ごあいさつ、すっごくかっこよかった!」
「ありがとう! みんなのことを思って、ごあいさつしたんだ!」
「本当にかっこよかったよ!!」
「うん、本当にすごかった!!」
「大人もみんな拍手してたもんね!」
「ほんとほんと! すごいよ!!」
「ふふっ。そんなに褒められると照れちゃうな」
真守くんも弓弦くんも空良くんもみんなみんな、僕と同じ気持ちだったみたい。
やっぱりそうだよね。
本当にかっこよかったもん。
僕、一花ちゃんのお友だちになれてよかったな。
<side一花>
みんなに褒められて、ちょっと恥ずかしいけど嬉しい。
せいくんにも見てもらえたし、パパもママも二階堂さんも喜んでくれていた。
それに貴船のおじちゃまと、牧田さんもいっぱい拍手してくれているのが見えた。
僕、頑張ったよね?
この頑張ったご褒美、せいくんにねだっちゃおう。
うん、ご褒美に一緒に桜の下で写真撮ってってお願いしてみようっと!!
いっぱい並んでいるかもだけど、せいくん、お願い聞いてくれたら嬉しいな。
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