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友人との出会い

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すみません(汗)
大事な名前を間違えてました(^_^;)
ご指摘くださった方ありがとうございます!!


  *   *   *


<sideエヴァン>

『エヴァン、私たちはどこで待っていればいいんだ?』

『あの大きな体育館だよ。アマネもジュールも一緒に行こう』

先月末に私とユヅルはジュールとの三人で日本での生活を始めた。
一足早く大学生活が始まる私にユヅルがついてきてくれたのだ。

そして、ユヅルの入学式のためにアメリカでの演奏会の日程を調整して、プライベートジェットで日本にやってきたニコラとアマネは昨日、二週間ぶりの親子対面を果たし、今日のこの日を迎えた。

ロレーヌ家の一員として恥ずかしくないように私とニコラはロレーヌ一族の正装に身を包み、ジュールは伝統的なバトラー服を着て、アマネは淡い水色の訪問着と呼ばれる美しい着物を着ている。

長い髪を纏めた着物姿のアマネがあまりにも美しすぎて目立ちすぎるのではないかとニコラが心配していたが、ここでは半分ほどの母親が色とりどりの美しい着物を着用していて驚いた。

フランスにも伝統衣装と呼ばれるものがあるが、このようなフォーマルな場で着用するものではないから、改めて日本の伝統衣装の美しさに感心してしまう。

体育館に到着し、そのまま中に入ろうとして

『ああ、そういえば日本では土足は厳禁だったわ。体育館に入るにはpantoufleスリッパが必要なの。ニコラ、ごめんなさい』

とアマネが困ったように言い出した。

『いや、アマネのせいではないよ。私も気づかなかった。仕方がない。裸足で入るとしようか』

世界の大富豪ロレーヌ一族が人前で裸足になるなどあってはならないことだが、ここは日本。
土足が厳禁だというのならそれに従うしかない。
ユヅルに迷惑をかけるようなことがあってはならないのだからな。

裸足で入ろうというニコラの提案に乗ろうとしかけたその時、

『失礼ですが、何かお困りですか?』

突然、年上だと思われる男性にフランス語で話しかけられ、驚きつつも

『はい。土足厳禁だというのを失念しておりまして裸足になるしかないと話をしていたところです』

と正直に話をした。

『ああ、それはお困りでしょう。よろしければこちらをお使いください』

そう言って渡されたのはシンプルな黒の履き物三足と、小さめのクリーム色の履き物一足。

『えっ? ですが、それではあなた方が困るのではありませんか?』

『いえ、これは私たちの持っていた予備の分ですから、お気になさらずお使いください』

笑顔でそう言われて、私たちはありがたく、その履き物を借りることにした。

『本当に助かりました。ありがとうございます』

『いえ、困った時はお互い様ですよ』

『私はエヴァン・ロレーヌ。あなたのお名前を教えていただけますか?』

『ええ。私は貴船征哉です。もしかして、ロレーヌさんはフランスの?』

『はい。そうです。私もあなたの名前は聞いたことがありますよ。確か貴船コンツェルンの……』

『はい。あちらに父もおります』

そう言って彼が振り返った先には、美しい着物姿の奥方と並ぶトウヤ・キフネの姿があった。
彼は確か、父が話していた、日本での屈指の大企業の会長だ。
確か後継である息子は現在25歳だったか。
私よりも少し年上だが、やはり日本人は若く見える。

『隣の彼は?』

私よりも年下に見えるが、弟ではないだろう。
友人だろうか?

『彼は観月凌也くん。桜城大学の学生で将来は弁護士を希望しているそうです』

『おお、桜城大学生か。それなら私と同じだ。私も四月から医学部に編入した』

『医学部ですか。医学部には友人がいますよ』

『それは心強いな。今度紹介してほしい』

『ええ。喜んで』

そんな会話をしているうちにニコラたちはキフネの両親たちに案内されて体育館に入ったようだ。

『そろそろ私たちも行きましょうか』

ミヅキの声掛けに私たちも中に入った。

広々とした体育館の入り口にある受付でユヅルのクラスを教えてもらい奥に進むと、体育館内にはたくさんの椅子が並べられ、保護者席と入学生の席に別れていた。

『ロレーヌは何組でしたか?』

『一組だそうだ』

『ああ、なら私たちみんな同じですよ』

確かこの小学校のクラスは成績順で分けられていると言っていたから、彼らが見にきた子も皆、ユヅルと同じくらいの成績だということか。
いい友人になれそうだ。

並んで保護者席に座り、入学式が始まるのを待っていると、

「観月!」

と声をかけてきた青年がいた。

「えっ? 悠木? なんでここに?」

「ふふっ。実は、俺の家も養子を迎えたんだよ。その子がどうやら理央くんと同じクラスらしい」

「ええーっ!! 何も聞いてないぞ!!」

「ああ、お前を驚かせようと思って内緒にしていたんだ。ははっ。やっぱり驚いたな」

「当たり前だろう!」

先ほどまでのミヅキの様子とは全く違うな。
かなり深い友人のようだ。

もしかしたら、この目の前の彼がさっき話していた医学部の友人なのかもしれないな。 
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