溺愛されまくりの会長令息が財閥イケメンスパダリ御曹司に見初められました

波木真帆

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笑顔の理由

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<side征哉>

まさかこんなことになるとはな……。

腕の中でぐっすりと眠る一花の頬を撫でながら、今日の怒涛の一日を思い出していた。

まだ幼い一花と出会ってしまったことで、私の運命は大きく変わったが出会わなければよかったとは微塵も思っていない。
一花が成人するまでひたすら理性と戦い続けることは必須だが、一花のこれからの人生全てに私が関われることは喜びでしかない。

一花と目があった瞬間にその運命が決まったのだから、私は自分の気持ちに素直になるだけだ。

一花が深い眠りに落ちたようだな。
櫻葉会長に一花がここにいることを伝えておかなくては心配しているかもしれない。

そっとベッドから出ようとすると、

「んっ……せ、いくん……っ」

一花の声が漏れる。

これほど私を思ってくれることに幸せを感じながら、私はそっと上着を脱いだ。

私の匂いがついているから少しの時間なら大丈夫だろう。

脱いだ上着を一花に近づけると嬉しそうな表情を浮かべながら抱きついていた。

ああ、もう本当に可愛い。

静かにベッドを下りガウンを羽織って寝室をでた。
部屋の扉を開けるとちょうど櫻葉会長が客間に入るところだった。

「櫻葉会長」

「あっ、征哉くん。まだ起きていたのか?」

「ええ。櫻葉会長はどちらにいらっしゃったのですか?」

「貴船さんに誘われて少し呑んでいたんだよ」

「なるほど……。実は一花が目を覚ましたら会長がいらっしゃらなかったので一人でトイレを探して彷徨っていたんですよ」

「えっ、それで一花は今どこに?」

「また戻っても会長がいらっしゃらないかもしれないから怖いと言って……今、私のベッドで寝ています」

「そうか……。一花を怖がらせてしまったのだな……。じゃあ、一花を迎えにいこう」

「いえ、今起こしては可哀想ですから、今日はこのまま私のベッドで寝かせます」

「だが……」

会長が心配するのも無理はないが、そこは安心してほしい。

「大丈夫です。私は大人ですから、幼い一花に手を出すようなことはしませんよ」

「それはわかっているが……ただ、私が寂しいだけなのだよ」

「今夜だけですからご安心ください」

「……わかった。そうしよう」

一花を起こすのも忍びないとわかってくれたのだろう。
会長は寂しそうにしながらも一人で部屋に入っていった。

それを見送って私も一花の元に戻った。

一花の隣に身体を滑り込ませて、一花が抱きついていた上着を取り戻し、着替えを済ませて眠りにつくと、私の存在に気づいた一花が無意識のままに私の胸元に擦り寄ってくる。

そうして、胸元にすっぽりと入り込むとそのまままた深い眠りに落ちていった。

一花の甘やかな香りを感じながら、私もようやく眠りについた。

「せいくん。起きて」

「んっ?」

「ふふっ。おはよう、せいくん」

「一花……早起きだな」

「せいくんはお寝坊さんなの?」

そんなことはないはずだが、多分昨夜は一花が動くたびに気になって目を覚ましていたからだろう。

「大丈夫、もう起きたよ」

「今日はね、ママが帰ってくるんだよ」

「ああ、そうか。なら、私の母も帰ってくるな」

「うん、ママね、美味しいお土産かってきてくれるって言ったんだよ。未知子ちゃんもせいくんに言ってた?」

「いや、それは言ってなかったな……」

「じゃあ、ママからもらったお土産。せいくんにも分けてあげる! 一花と半分こね」

「一花と、半分こ……そうか、ありがとう」

「ふふっ。せいくん、顔洗いに行こう!」

「そうだな」

「一花、もう場所覚えたよー!」

そう言ってベッドに立ちあがろうとした一花が柔らかなマットレスに足を取られて私の身体に倒れ込んできた。

「わぁっ!!」

「一花っ!」

慌てて抱き止めようとしたが、間に合わずそのまま私の身体に倒れてしまった。

「一花、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。あれ?」

「どうした?」

「なんか、布団の中に硬いのがあるー」

「――っ!!!」

「なんだろう?」

「な、何もないよ! 気のせいじゃないか? ほら、先に顔を洗っておいで」

一花が布団を捲ろうとしたのを必死に止めながら、一花を抱きかかえてベッドから下ろした。

「はーい」

一花は気にする様子もなく、そのまま洗面所に駆けて行った。

ふぅーーっ。
危なかった……。

まさか倒れ込んだ一花の手がちょうどソコに当たるとは思わなかったな。
でも見られなくてよかった。

朝立ちなのか、一花の匂いと温もりに興奮したのかわからないが、一花が洗面所にいる間に急いでトイレに飛び込み、なんとか落ち着かせることに成功した。

「ママー! お帰りなさい!!」

一花と櫻葉会長が我が家にいるとわかって、母と麻友子さんは旅行先から直接我が家に帰ってきた。

「一花っ、ただいま! 元気にしてた?」

「うん。せいくんがすっごく優しかったの」

「そう、よかったわ」

「ねぇ、ママ。一花に美味しいお土産買ってきてくれた?」

「ええ。とっても美味しいお饅頭とクッキーとロールケーキも買ってきたわ」

「わぁーっ! ママ大好き!!」

「ふふっ。そんなに嬉しかった?」

「うん。美味しいお土産、せいくんにも半分分けてあげるって約束したの! だから食べていい?」

「あら、そうなの。ふふっ。いいわよ」

「わぁーっ、せいくん。よかったね。一花と一緒に食べられるよ」

そう言われて恥ずかしくなるが、一花は私のために言ってくれているのだ。

「一花のおかげだな。ありがとう」

一花にお礼を言ってから、

「ありがとうございます」

と麻友子さんにもお礼を言うと、母も麻友子さんも目を丸くして驚いていた。

「えっ? 何か……?」

「征哉、自分でわかってないの?」

「何が?」

「そんな優しい笑顔、初めて見たわ。本当に一花ちゃんが好きなのね」

「――っ!!!」

そんなふうに母から真正面から言われるとは思わなかった。
でも一花に対してはそうなってしまうのだから仕方がない。

「ああ、好きだよ」

「一花もせいくん、好きー!!」

そんな嬉しそうな声が響いて、私はまた笑顔になった。
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