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爽やかカップル <side晴>
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「うん、良さそうだわ。2人ともこっちに来て」
奥の部屋に連れていかれると、いくつかの衣装が並べておいてあった。
その中から、彼女はランダムにハンガーを手に取り、僕と理玖に手渡した。
「さぁ、これに着替えて」
「えっ? これ……ですか?」
「ええ、そうよ。着方はわかるでしょ?」
「多分……わかると思いますけど……」
「なら、大丈夫ね。あっちに試着室があるから着替えてきて」
そう言って背中を押され、僕はカーテンがひかれた試着室に1人佇んでいた。
これ、本当に着るの?
僕の知っているCMの衣装と全く違うんだけど……。
全く同じではないことはわかっているけど、でもここまで違うとは思っても見なかった。
これ着てCMに出て、僕だってわかったらものすごく恥ずかしいんだけど……。
いくらメイクするって言ってもこの服だとメイクしても薄すぎてすぐにバレそうだけど、本当に大丈夫なのかなぁ……。
理玖が身バレしたら……なんて心配してたけど、僕の方の心配をした方が良かったかも。
どうなるんだろう……大丈夫かな、僕。
そんなことをウダウダと考えながら、このまま着ないわけにもいかないし……と、棚橋さんに手渡された衣装にようやく袖を通した。
着替え終わって、目の前にある鏡に映った自分の姿に目をやると、途端に心配になってきた。
やっぱりこれ、ダメかも……。
「あの……この衣装、僕やっぱり似合わないかも」
試着室のカーテンを開けながら、声をかけると理玖はもう着替えをとっくに済ませていたみたいで棚橋さんとおしゃべりをしているのが見えた。
僕の声に理玖と棚橋さんが振り向いた瞬間……試着室の時が止まった気がした。
僕を見たまま微動だにしない2人が心配になって
「あの、理玖? 棚橋さん? やっぱり似合わないですよね?」
と声をかけると、2人は
「わぁーーーーっ!!!!」
とスタジオまで聞こえてしまいそうなほど大きな声で叫び、僕に近づいてきた。
「お前、本当に香月か? めちゃくちゃ似合うじゃん!!! 似合わないとか何言ってるんだよ!!!」
「本当に想像以上に似合ってて驚いたわ!! やっぱりこれを選んで正解だったわね! 私の目に狂いはなかったわ!」
めちゃくちゃテンションが高い理玖と、満足そうな表情で僕を見る棚橋さんの勢いに飲まれそうになりながらやっとのことで口から漏れたのは
「そ、そうですか? なら、いいんですけど……」
という言葉だった。
本当に似合ってるのかなあ?
僕、もう22なんだけど……。
似合ってないって言われるのもショックなんだけど、似合ってるなんて言われるとそれはそれで複雑というか……だってそもそもこれ女性物だし。
似合っていると言われるのもちょっと違う気がするんだけど……。
理玖はいいよね。
僕と違ってものすごく似合ってるし、こういう爽やかなイケメンっていそうだし。
うん、多分隆之さんはきっとこんな感じだったんだろうなって想像しちゃうな。
「今日の撮影はバッチリうまくいくわよ!!」
棚橋さんにお墨付きをもらって、僕は理玖と2人でメイクルームに向かった。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
と声をかけながらメイクルームの扉を開けると、すこには男女のメイクさんが1人ずつ立っていた。
2人は僕たちを見て、
「わぁーっ、君が香月くんね! 聞いていた通り可愛いっ!」
「君が戸川くんだね! イメージ通り爽やかで良い青年だな!」
とテンション高く近づいてくる。
本当にここのスタッフの人はなんだかとても元気がいい。
それにしてもこの2人……
「あ、あのご兄妹ですか?」
気になって尋ねてみると、
「あれっ? よくわかったね」
と今度は驚いた表情を見せてくれた。
「笑った時の顔がすごく似ていたので、そうかなって思っただけです」
「俺たち、双子なんだ。二卵性だから似ていないってよく言われるんだけど、そっか。似ているところあったんだ。なんか嬉しいな。なぁ」
「うん。香月くん、教えてくれてありがとう」
「さぁ、こっちにきて座って。俺が戸川くんを担当する翔生だよ、よろしく」
「戸川理玖です。よろしくお願いします」
彼の屈託のない笑顔に理玖はホッとしているように見えた。
うん、良い人そうでよかった。
「さぁ、香月くんはこっち。私が香月くんを担当します丘野結衣です。よろしくね」
「はい、香月晴です。よろしくお願いします」
まずは衣装が汚れないように美容院で掛けられるような大きなメイク用のケープを付けられた。
これは前も撮影の時にしたから覚えてた。
そのあと、ウイッグネットをかぶり、自分の髪が見えないようにまとめていった。
よかった、今日もウイッグを被るならバレなさそう。
この衣装だし、身バレしたら恥ずかしすぎるもんね。
とはいえ、今日の衣装とのバランスを考えるとフルメイクは多分無理だ。
それで僕だってバレないようにしてくれるかな?
「あ、あの……ナチュラルメイクでも僕だってわからないようにできますか?」
「ええーっ? どうして? こんなに可愛いのにっ!」
「いや、僕……男だし、こういう格好してるのあまり知られたくないっていうか……」
少し離れた場所で軽くメイクしている理玖に聞かれるのが恥ずかしくてボソボソ話していると、
「ああ、なるほど。でも、バレても大丈夫だと思うよ」
「えっ? それって、どういう――」
「ふふっ。それは完成してからのお楽しみ!、さぁ、続けるよ」
結局、丘野さんが言っていることはよくわからなかったけれど、ここで止めるわけにもいかないし、僕はそのままメイクを続けてもらうことになった。
前の撮影でも使ったファンデーションやらよくわからないけどいろんなものを次々に魔法のように使っていって、最後にショートボブの可愛いウイッグを付けてから
「はい、これで完成。香月くん、どう?」
という声に鏡をみると、目の前には綺麗な女の子がいた。
前のリュウールの時とはまた違う今度はキリッとした綺麗系な女の子。
うわっ、メイクと髪型でこんなにも印象って変わるものなんだな。
ほとんどメイクしているように見えないけど、目の印象と髪型でこんなにも変わるんだ。
これなら僕だってわからないかも。
「すごいです!! 丘野さん、さすがですね!!」
「ふふっ。香月くんの土台がいいからだよ。戸川く~ん! 香月くんの準備終わったよ」
少し前に準備の終わった理玖は翔生さんとお茶を飲んでいたらしい。
「香月、お疲れ~――って、お前、本当に香月??」
「うん、どう似合う?」
「いや、マジで可愛いじゃん。香月だってわかってても惚れそう」
「ふふっ。理玖もそんな冗談言うんだね。でも理玖もその格好よく似合ってるよ。高校時代の理玖そっくり」
「だろ? これ、俺ってすぐバレそうな感じするんだけど……」
「髪型が違うから気付きにくいとは思うけど、どうかな」
僕たちは鏡に並んで自分たちの姿を見ていたけど、見れば見るほど自分が女の子に見えてきて不思議な気持ちになってしまった。
「さぁ、皆さん待ってるからスタジオの方に向かって」
「あ、はい」
翔生さんと丘野さんに言われて、急いでスタジオに戻ると僕たちの姿を見た途端、今まで騒がしかったスタジオがしんと静まり返った。
「えっ? なにっ? どうしちゃったの?」
「わからない。どうしたんだろう……」
僕も理玖も何が起こったのかわからず、その場に立ち尽くしてしまった。
そんな中、いち早く僕たちのもとに駆けつけてきてくれたのは隆之さんとオーナーだった。
「晴っ! 驚いたよ、こんなに可愛い女子高生姿なんて!」
「リク! 高校生の君を見られるなんて、なんて今日は素晴らしい日なんだ!!」
2人ともかなり興奮してしまっているけど、そう。
僕たちは今、高校生になっているんだ。
水色のリボンが映える半袖の白いセーラー服に紺のスカートを履いた僕と、漆黒の学ラン姿の理玖。
どこからどう見ても爽やかな高校生カップルだ。
「本当の高校の時はブレザーだったから俺も学ランを着るのは初めてなんだ、どう、似合う?」
「ああ、もちろんだよ。リクの初めてをここで一緒に見られるなんて、やっぱり今日は来てよかった」
オーナーは理玖の学ラン姿をかなり気に入ったみたいだ。
僕も初めてみるから変な感じがするけど理玖は学ランがよく似合ってる。
僕はセーラー服だから、似合うと言われても複雑なんだけど……隆之さんが嬉しそうだからまぁいいか。
奥の部屋に連れていかれると、いくつかの衣装が並べておいてあった。
その中から、彼女はランダムにハンガーを手に取り、僕と理玖に手渡した。
「さぁ、これに着替えて」
「えっ? これ……ですか?」
「ええ、そうよ。着方はわかるでしょ?」
「多分……わかると思いますけど……」
「なら、大丈夫ね。あっちに試着室があるから着替えてきて」
そう言って背中を押され、僕はカーテンがひかれた試着室に1人佇んでいた。
これ、本当に着るの?
僕の知っているCMの衣装と全く違うんだけど……。
全く同じではないことはわかっているけど、でもここまで違うとは思っても見なかった。
これ着てCMに出て、僕だってわかったらものすごく恥ずかしいんだけど……。
いくらメイクするって言ってもこの服だとメイクしても薄すぎてすぐにバレそうだけど、本当に大丈夫なのかなぁ……。
理玖が身バレしたら……なんて心配してたけど、僕の方の心配をした方が良かったかも。
どうなるんだろう……大丈夫かな、僕。
そんなことをウダウダと考えながら、このまま着ないわけにもいかないし……と、棚橋さんに手渡された衣装にようやく袖を通した。
着替え終わって、目の前にある鏡に映った自分の姿に目をやると、途端に心配になってきた。
やっぱりこれ、ダメかも……。
「あの……この衣装、僕やっぱり似合わないかも」
試着室のカーテンを開けながら、声をかけると理玖はもう着替えをとっくに済ませていたみたいで棚橋さんとおしゃべりをしているのが見えた。
僕の声に理玖と棚橋さんが振り向いた瞬間……試着室の時が止まった気がした。
僕を見たまま微動だにしない2人が心配になって
「あの、理玖? 棚橋さん? やっぱり似合わないですよね?」
と声をかけると、2人は
「わぁーーーーっ!!!!」
とスタジオまで聞こえてしまいそうなほど大きな声で叫び、僕に近づいてきた。
「お前、本当に香月か? めちゃくちゃ似合うじゃん!!! 似合わないとか何言ってるんだよ!!!」
「本当に想像以上に似合ってて驚いたわ!! やっぱりこれを選んで正解だったわね! 私の目に狂いはなかったわ!」
めちゃくちゃテンションが高い理玖と、満足そうな表情で僕を見る棚橋さんの勢いに飲まれそうになりながらやっとのことで口から漏れたのは
「そ、そうですか? なら、いいんですけど……」
という言葉だった。
本当に似合ってるのかなあ?
僕、もう22なんだけど……。
似合ってないって言われるのもショックなんだけど、似合ってるなんて言われるとそれはそれで複雑というか……だってそもそもこれ女性物だし。
似合っていると言われるのもちょっと違う気がするんだけど……。
理玖はいいよね。
僕と違ってものすごく似合ってるし、こういう爽やかなイケメンっていそうだし。
うん、多分隆之さんはきっとこんな感じだったんだろうなって想像しちゃうな。
「今日の撮影はバッチリうまくいくわよ!!」
棚橋さんにお墨付きをもらって、僕は理玖と2人でメイクルームに向かった。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
と声をかけながらメイクルームの扉を開けると、すこには男女のメイクさんが1人ずつ立っていた。
2人は僕たちを見て、
「わぁーっ、君が香月くんね! 聞いていた通り可愛いっ!」
「君が戸川くんだね! イメージ通り爽やかで良い青年だな!」
とテンション高く近づいてくる。
本当にここのスタッフの人はなんだかとても元気がいい。
それにしてもこの2人……
「あ、あのご兄妹ですか?」
気になって尋ねてみると、
「あれっ? よくわかったね」
と今度は驚いた表情を見せてくれた。
「笑った時の顔がすごく似ていたので、そうかなって思っただけです」
「俺たち、双子なんだ。二卵性だから似ていないってよく言われるんだけど、そっか。似ているところあったんだ。なんか嬉しいな。なぁ」
「うん。香月くん、教えてくれてありがとう」
「さぁ、こっちにきて座って。俺が戸川くんを担当する翔生だよ、よろしく」
「戸川理玖です。よろしくお願いします」
彼の屈託のない笑顔に理玖はホッとしているように見えた。
うん、良い人そうでよかった。
「さぁ、香月くんはこっち。私が香月くんを担当します丘野結衣です。よろしくね」
「はい、香月晴です。よろしくお願いします」
まずは衣装が汚れないように美容院で掛けられるような大きなメイク用のケープを付けられた。
これは前も撮影の時にしたから覚えてた。
そのあと、ウイッグネットをかぶり、自分の髪が見えないようにまとめていった。
よかった、今日もウイッグを被るならバレなさそう。
この衣装だし、身バレしたら恥ずかしすぎるもんね。
とはいえ、今日の衣装とのバランスを考えるとフルメイクは多分無理だ。
それで僕だってバレないようにしてくれるかな?
「あ、あの……ナチュラルメイクでも僕だってわからないようにできますか?」
「ええーっ? どうして? こんなに可愛いのにっ!」
「いや、僕……男だし、こういう格好してるのあまり知られたくないっていうか……」
少し離れた場所で軽くメイクしている理玖に聞かれるのが恥ずかしくてボソボソ話していると、
「ああ、なるほど。でも、バレても大丈夫だと思うよ」
「えっ? それって、どういう――」
「ふふっ。それは完成してからのお楽しみ!、さぁ、続けるよ」
結局、丘野さんが言っていることはよくわからなかったけれど、ここで止めるわけにもいかないし、僕はそのままメイクを続けてもらうことになった。
前の撮影でも使ったファンデーションやらよくわからないけどいろんなものを次々に魔法のように使っていって、最後にショートボブの可愛いウイッグを付けてから
「はい、これで完成。香月くん、どう?」
という声に鏡をみると、目の前には綺麗な女の子がいた。
前のリュウールの時とはまた違う今度はキリッとした綺麗系な女の子。
うわっ、メイクと髪型でこんなにも印象って変わるものなんだな。
ほとんどメイクしているように見えないけど、目の印象と髪型でこんなにも変わるんだ。
これなら僕だってわからないかも。
「すごいです!! 丘野さん、さすがですね!!」
「ふふっ。香月くんの土台がいいからだよ。戸川く~ん! 香月くんの準備終わったよ」
少し前に準備の終わった理玖は翔生さんとお茶を飲んでいたらしい。
「香月、お疲れ~――って、お前、本当に香月??」
「うん、どう似合う?」
「いや、マジで可愛いじゃん。香月だってわかってても惚れそう」
「ふふっ。理玖もそんな冗談言うんだね。でも理玖もその格好よく似合ってるよ。高校時代の理玖そっくり」
「だろ? これ、俺ってすぐバレそうな感じするんだけど……」
「髪型が違うから気付きにくいとは思うけど、どうかな」
僕たちは鏡に並んで自分たちの姿を見ていたけど、見れば見るほど自分が女の子に見えてきて不思議な気持ちになってしまった。
「さぁ、皆さん待ってるからスタジオの方に向かって」
「あ、はい」
翔生さんと丘野さんに言われて、急いでスタジオに戻ると僕たちの姿を見た途端、今まで騒がしかったスタジオがしんと静まり返った。
「えっ? なにっ? どうしちゃったの?」
「わからない。どうしたんだろう……」
僕も理玖も何が起こったのかわからず、その場に立ち尽くしてしまった。
そんな中、いち早く僕たちのもとに駆けつけてきてくれたのは隆之さんとオーナーだった。
「晴っ! 驚いたよ、こんなに可愛い女子高生姿なんて!」
「リク! 高校生の君を見られるなんて、なんて今日は素晴らしい日なんだ!!」
2人ともかなり興奮してしまっているけど、そう。
僕たちは今、高校生になっているんだ。
水色のリボンが映える半袖の白いセーラー服に紺のスカートを履いた僕と、漆黒の学ラン姿の理玖。
どこからどう見ても爽やかな高校生カップルだ。
「本当の高校の時はブレザーだったから俺も学ランを着るのは初めてなんだ、どう、似合う?」
「ああ、もちろんだよ。リクの初めてをここで一緒に見られるなんて、やっぱり今日は来てよかった」
オーナーは理玖の学ラン姿をかなり気に入ったみたいだ。
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