南国特有のスコールが初恋を連れてきてくれました

波木真帆

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番外編

もう一つの出会い  2

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毎度の如く序章が長すぎて中編になりました(汗)
楽しんでいただけると嬉しいです♡


  *   *   *



<side悠真>

「砂川、今日と来週のゼミの集まりは休みになったよ」

「えっ? そうなの?」

与那嶺よなみね教授が本土に行くんだって」

「あ、もしかして例の学会?」

「そうそう。急遽参加になってその後しばらく交流会があるらしい」

与那嶺先生にとっては夢にまで見た学会に参加できるのなら、ゼミを休みにしても行く価値はあるだろう。
それはとても喜ばしいことだけれど、さて私はどうしよう。

すでにゼミ以外で学校に行く用事もない。

せっかくだから真琴や家族に会いに宮古島に帰ろうか。
なんて頭をよぎった時、

「こんな機会は滅多にないから、俺はシンガポールに行くつもりなんだ」

上間うえまが教えてくれた。

「へぇ、いいね」

「それでさ、よかったら砂川もい――」
「よー、砂川。ゼミの休みの話、聞いたか?」

「ああ、新垣。今、上間に聞いた」

「そうか、じゃあさ。砂川、俺と一緒にアメリカ行かないか?」

「えっ? アメリカ?」

「おいっ! 新垣! 今、俺が砂川を誘ってたんだよ!!」

「はぁ? そんなの関係ないだろう! なぁ、砂川。一緒にいこうぜ!」

その言葉に私が返事をするよりも先に上間が大きな声を出した。

「無理に誘うなって! 砂川は俺と一緒にシンガポールに行くんだよ!」

「そんなの誰が決めたんだよ! 大体経済学部の学生なら、経済の本場に行くもんだろ!」

「何言ってるんだ! シンガポールの今の経済成長率知らないのか? これからはシンガポールだって!」

「ちょ――っ、二人とも落ち着いて!!」

目の前で騒ぎが大きくなっていって、周りからの視線も感じる。

慌てて止めようと声をかけると、

「砂川、どっちにいきたい? 砂川が行きたいところを決めていいよ!」

「ああ、そうだな。砂川に決めてもらうのがいい。どっちが選ばれても恨みごと言うなよ!!」

「お前もな!!」

と勝手に話が進んでいる。

「砂川、どうする? アメリカだろ?」

「シンガポールだろ?」

ジリジリと詰め寄られるけれど、正直どっちも行く気はない。
いや、行ってみたいのは確かだけれど、海外に行くお金は持ち合わせていないし、誰かと旅行なんて考えたこともない。

「お金の心配はいらないぞ! 二人分の旅行代金くらい払うから」

「俺も! 飛行機もホテルもついてるから砂川は一緒に来てくれたらいいから!」

いやいや、そんな大金を払ってもらうわけにはいかない。
でも、行かないだけじゃ断れそうにない……。
どうしよう……。

「わ、悪いけど、その……もう予定考えたから!」

「どこ行くんだよ?」

「まさか宮古島に帰るのか? それならいつだってできるんだから俺と一緒にシンガポールのほうがいいだろ!」

「いや、えっと……せっかくだから宮古島じゃなくて、その石垣と周辺の島にいこうと思ってるんだ!」

「えっ? 他の島? なんで?」

「えっ? あっ……あの、西表にしかいない蛇とか昆虫を見に行きたくて。ずっと長い休みが取れたらいこうと思ってたんだよ。ちょうどいい機会だから行ってくる。ああ、せっかくだから一緒にいこうか?」

「あ、いや……やめ、とくわ」

「お、俺も……」

二人が大の蛇と昆虫嫌いなのを知ってるんだ。
二人は必死に隠しているけどな。

「そっか、残念だな。じゃあシンガポールとアメリカ、楽しんできてよ」

そう言ってなんとか切り抜けたけれど、後で行かなかったとバレて色々言われるのは面倒だ。
実のところ、離島巡りはしてみたいと思っていたから、これも何かの縁かもしれない。

そう思って、私はすぐに石垣までの飛行機チケットを取り、その日から三日後、私は石垣の地に降り立った。

「わぁ、宮古島とは匂いが違う気がする」

周りにも島がたくさんあって、石垣からの便はかなりいい。
宮古島は他にどこにも行けないから不思議な感じだな。

そのまま船着場に向かい、西表島行きの船に乗り込んだ。

飛行機から降りてそのまま西表に行く人は少ないのか、機内で見かけた人の姿はほとんどない。

スーツケースは邪魔になるかもしれないと思って大きめのリュックできたけれど、ちょうどよかったみたいだ。

窓際の席に座りリュックを足元に置いて、昨日予約した観光ツアーサイトをスマホで眺めていると、

「もしかして、その観光に行くの?」

と頭上から声が聞こえた。

「えっ?」

その声に振り向くと、沖縄ではおおよそみたことがないほど顔が整った長身の男性が立っていた。

「ああ、ごめん。君の持っているスマホの画面が見えたものだから」

「あ、いえ。はい。そうです。西表島は初めてなので、一人で出歩くよりはツアーに参加したほうがいいと思って……」

「なるほど。いい考えだ。でも珍しいね、一人旅?」

「ええ、そうですけど……何か?」

彼の詮索に思わず眉を顰めてしまった。

「ははっ。顔に似合わず威勢がいいな。私はこういうものだよ」

そう言って、目の前の彼はポケットから取り出した名刺入れから一枚取り出して私に手渡した。

「えっ?? あ、あなたが……あの、観光ツアー会社の、社長さんですか?」

「倉橋祐悟だ。よろしく」

それが社長との出会いだった。
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