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番外編

同窓会を迎える前に

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悠真から同窓会に行くと連絡をもらった後の伊織のお話です。
助けてくれる人がいるのはいいですね(笑)
楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *


<side伊織>

悠真との電話を切った後、まずは養父ちちにメッセージを送った。

<ご相談があるのでご都合のいい時間に電話をいただけると嬉しいです>

直接電話をかけてもよかったが、もうこんな時間。
皐月さんとの楽しい時間を邪魔するわけにはいかない。
そう思ってメッセージにしたのだが、すぐに既読になり電話がかかってきた。

ーどうした?

電話が繋がったと同時にそう声をかけられる。

ーすみません、こんな時間に。お邪魔ではなかったですか?

ーそんなこと気にしないでいい。それよりも悠真くんがどうかしたか?

ーえっ、なんで悠真のことだとわかったんですか?

ーふっ。伊織が私に相談と言ったら、まずはそれを考えるだろう。

ーやっぱり宗一郎さんには敵いませんね。

ーそれでどうしたんだ?

ー実は、悠真が来月の頭に大学の同窓会に参加ことになったんです。お世話になったゼミの教授が退官するそうで今回だけは参加すると連絡してくれて……

ーああ、なるほどな。悠真くんが心配になったか?

ーはい。それでなんとかしてその同窓会に私も出席できないかと思いまして。

ーははっ。それはいい。確か、悠真くんのゼミの教授は与那嶺くんだったな? 彼は私の高校の後輩でね、何度か一緒に飲んで伊織の話もしたことがあるから与那嶺くんも覚えているはずだよ。私から連絡して、お前の名前を出しておこう。私の代わりに都合が合えば、息子が会いに行くと伝えておくよ。

ーありがとうございます!!!

ーいや、私たちの大事な息子に変な虫でもついたら困るからな。しっかり守ってやれ。

ーあの、もしかして宗一郎さんも同じような経験でも?

ーふふっ。わかるか? 前に皐月の同窓会でな、同じようなことをしたことがあるよ。だから伊織の気持ちはよくわかる。

ーそうだったんですね。今度その時の話をゆっくり聞かせてください。

ーああ、お前の話も楽しみにしているよ。じゃあ、与那嶺くんの方は任せておいてくれ。

そう言って電話が切れた。
ああ、こんなにもわかってくれる味方がいるのは実に心強いものだ。

翌日午前中には宗一郎さんから同窓会に参加OKとの連絡を受けた。
来れるかどうかわからないから、他の参加者には内緒にしておいてくれるということでそれも助かる。

よし。次は倉橋さんだな。

電話をかけようと思ったが、今日は平日。
悠真が隣にいるかもしれないと思い、メッセージを送った。

宗一郎さんと同じように相談したい事柄があるので都合のいい時間に……と送ると、すぐに電話がかかってきた。

ーもしもし。

ー何かありましたか?

ーお忙しいのに、申し訳ありません。完全にプライベートな話で恐縮なのですが……。

ーははっ。プライベートなら尚更構いませんよ。砂川のことでしょう?

ーはい。そうなんです。実は悠真が来月の最初の土曜に那覇で同窓会に参加するんですが、その日倉橋さんに悠真を会場であるリュシオルホテルまで送っていただきたいんです。

ー砂川が同窓会に? 珍しいな。

ーはい。今まで参加したことはなかったそうなんですが、今回はゼミでお世話になった教授が退官されるそうで……。

ーなるほど。それなら納得だな。その日は当日で間に合うんですか?

ーはい。同窓会は午後からですから、午前中に石垣から那覇に向かって、夜はその会場であるホテルに泊まるそうです。

ーわかりました。ならその日程で予定を入れておきますよ。帰りは大丈夫ですか?

ーええ。私も東京から那覇に向かいますから、帰りは私が西表まで送り届けます。

ーそうですか。それなら安心ですね。ああ、週明けの月曜日は砂川に有給を入れておきますから、のんびり帰ってきたらいいですよ。

ーありがとうございます。

ーいえ、本島で会うこともなかなかないでしょうから、楽しんできてください。レンタカーなら、すぐに手配できますから声かけてください。

ー何から何までありがとうございます。

ー安慶名さんには西表でも東京でもかなりお世話になっていますから、こういう時くらい恩返しさせてください。頼っていただいて嬉しかったですよ。何かありましたらいつでも電話なり、メッセージなり、送ってください。


そう言って電話は切れた。
本当に倉橋さんが悠真の近くにいてくれて助かる。
初めは悠真に邪な気持ちでも……と心配したこともあったが、純粋に悠真を守ってくれる存在でありがたい。


リュシオルホテルのスイートも無事に予約できたし、あとは当日悠真を迎えに行くだけだ。
誰も悠真に手を出さないようにしっかり牽制しておかないとな。

なんだか楽しみになってきた。
悠真は私の姿を見て驚いてくれるだろうか。
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