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番外編
帰京の日 <後編>
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「では週明けから顧問弁護士をお願いするということでそちらの契約はその条件でよろしいですか?」
手渡された書類をしっかりと熟読し、私は了承の返事をした。
「いやぁ、本当に引き受けていただいて助かりましたよ。安慶名さんのような優秀な弁護士さんを探すのは本当に骨が折れる作業ですから」
「まぁ、何よりも信頼関係が必要になりますからね。その点倉橋さんとは信頼関係云々よりも言ってみれば大切な家族みたいな関係だと思っていますから」
「家族ですか? それは砂川のことを仰っているのですか?」
「はい。悠真がK.Yリゾートを天職として大切に思っている以上、私も精一杯努めさせていただきますよ」
「それなら、これからは砂川に足を向けて寝られないな」
楽しそうに笑う倉橋さんの隣で、私は悠真とのこれからのことをいろいろと考えていた。
K.Yリゾートの顧問弁護士を正式に引き受けたことで月に幾日かは東京事務所を空けても収入面でも仕事面でも問題は無くなった。
そして、もう一つ打診された石垣イリゼホテルの料理人という仕事。
これも決定権を持っている倉橋さんの推薦だということで十中八九決まるだろう。
今いる料理人さんからの引き継ぎと修行で何度か石垣に行く日程を決めて、効率的に動けばやってやれないことはないだろう。
何よりも悠真と会うための時間を作るためだ。
そのためにはなんの苦労も感じない。
「浅香にはもう話してありますから、羽田に着いたらそのまま銀座に向かっても構いませんか?」
「はい。問題ありません」
「浅香も驚いてましたよ。ずっと顧問弁護士として交流はありましたが、あまり深い話はお互いにしていませんでしたからね。まさか安慶名さんが調理師免許までお持ちとは……」
「好きになると執着してしまうたちでして、お恥ずかしい限りですが、今回に関してはそれが功を奏したようです」
「なるほど。好きになると一途というわけですね。そんな安慶名さんだからこそ砂川をずっと一途に思ってくださるのでしょうね」
「ええ、もちろんです。私は一生手放すつもりなどありませんから。
あの、倉橋さん……一つだけお聞きしても?」
「なんでしょう?」
「今まで一度も、その……悠真には心が動いたことはありませんか?」
「ああ、そのことですか……ご安心ください。私は砂川のことは大切な仕事のパートナーだとは思っていますが、それ以上の感情を持ったことはただの一度もありません。そして、これからも一生あり得ません。それを信じていただけるかは安慶名さん次第ですが……」
倉橋さんがまっすぐ私を見つめてくる。
一点の曇りもなく、ただひたすらに……。
これ以上の清廉さはないな。
「失礼なことを伺って申し訳ありません」
「いえ、安慶名さんのお気持ちはよくわかりますから。お気になさらずに。
西表と東京での遠距離は心も身体もお辛いでしょうが、西表には砂川を見守ってくれる人がたくさんいます。
私が西表にいる場合はもちろん、私がいないときも名嘉村をはじめ複数の者から砂川の状況を把握できます。
何かあれば、いえ、何もなくとも安慶名さんには砂川の状況は報告させるようにしますのでご安心ください。
もちろん、見守ってくれる人は砂川のことを純粋に思っている者たちだけです。邪な考えなど持っている者はおりません」
「何から何までありがとうございます! 私にできることはなんでもさせていただきますので力が必要になりましたらぜひご連絡ください」
「ああ、これは心強いな。早速ご相談があるのですが、どなたか凄腕の調査員にお心当たりはありませんか?」
「何かお困りごとでも?」
「まぁ今すぐというわけではないのですが……仕事柄情報収集が必要なケースが多々ありましてね。
そんな時に、なかなかこれといった調査員に出会えずに困っているんですよ。
金には糸目はつけないので、欲しい情報以上に調査してくださる方の伝手があればと思いまして」
「ああ、そういうことですか。それなら良い人がいますよ」
「本当ですか!!!」
「ええ。この方です」
私は名刺入れから、旧友から預かっている名刺を一枚抜き取り倉橋さんに渡した。
「私の紹介といえば、必ず引き受けてくれますよ」
「ユウさん……ですか」
「はい。一度仕事を頼めば彼の実力はすぐにわかっていただけると思いますよ。
リピートされるかは倉橋さん次第ですが」
「なるほど……ありがとうございます」
倉橋さんは彼の名刺を大事そうに財布にしまった。
きっと彼とは長い付き合いになるだろう。
有意義な空の旅を終え、飛行機は無事羽田へと到着した。
すぐに悠真にそのことをメッセージで送るとすぐに既読がつき、
<無事に到着して安心しました。でも、私はまだ伊織さんのいない西表に慣れないでいます……。
離れたばかりだというのにごめんなさい>
と悲しげなメッセージが届いた。
<ああ、悠真。私も同じ気持ちです。またすぐにでも会いに行きます。
夜に電話しますので、それまでもうしばらく待っていてください>
私は悠真にそうメッセージを送り、飛行機を降りた。
倉橋さんと共にそのまま銀座イリゼに向かい、厨房を借りてオムレツを作り浅香さんに試食してもらった結果、無事に料理人としての採用が決まった。
これから沖縄本島の新しいイリゼホテルができるまでの1年半、何度か石垣イリゼに通って仲井眞さんから引き継ぐべきことを学ぶ日々が始まる。
倉橋さんが私と悠真のことを浅香さんに話すとかなり驚いている様子だったけれど、男同士で恋人だと知っても表情ひとつ変えないでいてくれるのは本当にありがたい。
その上、私が石垣イリゼに通う間は悠真も石垣のあの離れに泊まれるように配慮してくれるようで、かなりの高待遇だ。
倉橋さんと浅香さんにはもう感謝しかない。
これ今夜悠真に報告だな。
私は意気揚々と銀座イリゼを出て、久々の自宅へと帰った。
荷物を置いてまずしたことは、彼らに連絡をすること。
もう大学からは帰ってきているだろうか。
とりあえず一度大きく深呼吸してスマホを取り出した。
ーもしもし。伊織か?
ーはい。宗一郎さん、お久しぶりです。
ーああ、2ヶ月ぶりか。もっと頻繁にかけてきてくれていいんだぞ。
ーすっかりご無沙汰してしまいまして申し訳ありません。
ーそれでどうしたんだ? 伊織が電話してきたんだ。何か大切な話があるんだろう?
ーはい。実は……宗一郎さんと皐月さんに紹介したい方ができまして……
ーなに? 本当かっ!! 皐月っ! 皐月っ! 伊織が私たちに紹介したい人ができたと言っているぞ。
よっぽど驚いたのだろう。
こんなにも焦っている宗一郎さんは初めてだ。
ガタッガタッと音がしたと思ったら、急に声が変わった。
ー伊織! 紹介したい人ができたって本当なの?
ー皐月さん、そうなんです。それで近々食事会でも設けたいと思いまして、そのご都合を伺いたくて……
ー私たちはいつでもいいよ。伊織と彼女に合わせるから。
皐月さんの口から彼女という言葉が出てきて思わずドキッとした。
そうだ、私はまだこのカミングアウトもしてなかったんだ。
ずっと独り身を貫いてきたからもしかしたら知られているかもしれないと思っていたが皐月さんはやはり私がノーマルと思っていたのかもしれない。
ーあ、ありがとうございます。あの、相手の都合を聞いてからまたご連絡するということでよろしいでしょうか?
ーええ、もちろん。会えるのを楽しみにしてる。
ーあの……実は、彼女ではなく、彼なんです。
当日悠真を見て驚かれるのだけは避けたくて、電話でカミングアウトするのもどうかと思ったが、恐る恐る話してみたが、
ーああ、そうなんだ。伊織の彼に会うの楽しみにしてるね。
あっけらかんといつもと同じ声で答えてくれてホッとした。
宗一郎さんと皐月さんに受け入れてもらえないのが一番怖かったから……。
私は喜びのままに電話を切った。
私からの今日の報告を聞けば、寂しがっている悠真もきっと嬉しそうな声を聞かせてくれることだろう。
それを期待して私は愛しい悠真へ電話をかけた。
手渡された書類をしっかりと熟読し、私は了承の返事をした。
「いやぁ、本当に引き受けていただいて助かりましたよ。安慶名さんのような優秀な弁護士さんを探すのは本当に骨が折れる作業ですから」
「まぁ、何よりも信頼関係が必要になりますからね。その点倉橋さんとは信頼関係云々よりも言ってみれば大切な家族みたいな関係だと思っていますから」
「家族ですか? それは砂川のことを仰っているのですか?」
「はい。悠真がK.Yリゾートを天職として大切に思っている以上、私も精一杯努めさせていただきますよ」
「それなら、これからは砂川に足を向けて寝られないな」
楽しそうに笑う倉橋さんの隣で、私は悠真とのこれからのことをいろいろと考えていた。
K.Yリゾートの顧問弁護士を正式に引き受けたことで月に幾日かは東京事務所を空けても収入面でも仕事面でも問題は無くなった。
そして、もう一つ打診された石垣イリゼホテルの料理人という仕事。
これも決定権を持っている倉橋さんの推薦だということで十中八九決まるだろう。
今いる料理人さんからの引き継ぎと修行で何度か石垣に行く日程を決めて、効率的に動けばやってやれないことはないだろう。
何よりも悠真と会うための時間を作るためだ。
そのためにはなんの苦労も感じない。
「浅香にはもう話してありますから、羽田に着いたらそのまま銀座に向かっても構いませんか?」
「はい。問題ありません」
「浅香も驚いてましたよ。ずっと顧問弁護士として交流はありましたが、あまり深い話はお互いにしていませんでしたからね。まさか安慶名さんが調理師免許までお持ちとは……」
「好きになると執着してしまうたちでして、お恥ずかしい限りですが、今回に関してはそれが功を奏したようです」
「なるほど。好きになると一途というわけですね。そんな安慶名さんだからこそ砂川をずっと一途に思ってくださるのでしょうね」
「ええ、もちろんです。私は一生手放すつもりなどありませんから。
あの、倉橋さん……一つだけお聞きしても?」
「なんでしょう?」
「今まで一度も、その……悠真には心が動いたことはありませんか?」
「ああ、そのことですか……ご安心ください。私は砂川のことは大切な仕事のパートナーだとは思っていますが、それ以上の感情を持ったことはただの一度もありません。そして、これからも一生あり得ません。それを信じていただけるかは安慶名さん次第ですが……」
倉橋さんがまっすぐ私を見つめてくる。
一点の曇りもなく、ただひたすらに……。
これ以上の清廉さはないな。
「失礼なことを伺って申し訳ありません」
「いえ、安慶名さんのお気持ちはよくわかりますから。お気になさらずに。
西表と東京での遠距離は心も身体もお辛いでしょうが、西表には砂川を見守ってくれる人がたくさんいます。
私が西表にいる場合はもちろん、私がいないときも名嘉村をはじめ複数の者から砂川の状況を把握できます。
何かあれば、いえ、何もなくとも安慶名さんには砂川の状況は報告させるようにしますのでご安心ください。
もちろん、見守ってくれる人は砂川のことを純粋に思っている者たちだけです。邪な考えなど持っている者はおりません」
「何から何までありがとうございます! 私にできることはなんでもさせていただきますので力が必要になりましたらぜひご連絡ください」
「ああ、これは心強いな。早速ご相談があるのですが、どなたか凄腕の調査員にお心当たりはありませんか?」
「何かお困りごとでも?」
「まぁ今すぐというわけではないのですが……仕事柄情報収集が必要なケースが多々ありましてね。
そんな時に、なかなかこれといった調査員に出会えずに困っているんですよ。
金には糸目はつけないので、欲しい情報以上に調査してくださる方の伝手があればと思いまして」
「ああ、そういうことですか。それなら良い人がいますよ」
「本当ですか!!!」
「ええ。この方です」
私は名刺入れから、旧友から預かっている名刺を一枚抜き取り倉橋さんに渡した。
「私の紹介といえば、必ず引き受けてくれますよ」
「ユウさん……ですか」
「はい。一度仕事を頼めば彼の実力はすぐにわかっていただけると思いますよ。
リピートされるかは倉橋さん次第ですが」
「なるほど……ありがとうございます」
倉橋さんは彼の名刺を大事そうに財布にしまった。
きっと彼とは長い付き合いになるだろう。
有意義な空の旅を終え、飛行機は無事羽田へと到着した。
すぐに悠真にそのことをメッセージで送るとすぐに既読がつき、
<無事に到着して安心しました。でも、私はまだ伊織さんのいない西表に慣れないでいます……。
離れたばかりだというのにごめんなさい>
と悲しげなメッセージが届いた。
<ああ、悠真。私も同じ気持ちです。またすぐにでも会いに行きます。
夜に電話しますので、それまでもうしばらく待っていてください>
私は悠真にそうメッセージを送り、飛行機を降りた。
倉橋さんと共にそのまま銀座イリゼに向かい、厨房を借りてオムレツを作り浅香さんに試食してもらった結果、無事に料理人としての採用が決まった。
これから沖縄本島の新しいイリゼホテルができるまでの1年半、何度か石垣イリゼに通って仲井眞さんから引き継ぐべきことを学ぶ日々が始まる。
倉橋さんが私と悠真のことを浅香さんに話すとかなり驚いている様子だったけれど、男同士で恋人だと知っても表情ひとつ変えないでいてくれるのは本当にありがたい。
その上、私が石垣イリゼに通う間は悠真も石垣のあの離れに泊まれるように配慮してくれるようで、かなりの高待遇だ。
倉橋さんと浅香さんにはもう感謝しかない。
これ今夜悠真に報告だな。
私は意気揚々と銀座イリゼを出て、久々の自宅へと帰った。
荷物を置いてまずしたことは、彼らに連絡をすること。
もう大学からは帰ってきているだろうか。
とりあえず一度大きく深呼吸してスマホを取り出した。
ーもしもし。伊織か?
ーはい。宗一郎さん、お久しぶりです。
ーああ、2ヶ月ぶりか。もっと頻繁にかけてきてくれていいんだぞ。
ーすっかりご無沙汰してしまいまして申し訳ありません。
ーそれでどうしたんだ? 伊織が電話してきたんだ。何か大切な話があるんだろう?
ーはい。実は……宗一郎さんと皐月さんに紹介したい方ができまして……
ーなに? 本当かっ!! 皐月っ! 皐月っ! 伊織が私たちに紹介したい人ができたと言っているぞ。
よっぽど驚いたのだろう。
こんなにも焦っている宗一郎さんは初めてだ。
ガタッガタッと音がしたと思ったら、急に声が変わった。
ー伊織! 紹介したい人ができたって本当なの?
ー皐月さん、そうなんです。それで近々食事会でも設けたいと思いまして、そのご都合を伺いたくて……
ー私たちはいつでもいいよ。伊織と彼女に合わせるから。
皐月さんの口から彼女という言葉が出てきて思わずドキッとした。
そうだ、私はまだこのカミングアウトもしてなかったんだ。
ずっと独り身を貫いてきたからもしかしたら知られているかもしれないと思っていたが皐月さんはやはり私がノーマルと思っていたのかもしれない。
ーあ、ありがとうございます。あの、相手の都合を聞いてからまたご連絡するということでよろしいでしょうか?
ーええ、もちろん。会えるのを楽しみにしてる。
ーあの……実は、彼女ではなく、彼なんです。
当日悠真を見て驚かれるのだけは避けたくて、電話でカミングアウトするのもどうかと思ったが、恐る恐る話してみたが、
ーああ、そうなんだ。伊織の彼に会うの楽しみにしてるね。
あっけらかんといつもと同じ声で答えてくれてホッとした。
宗一郎さんと皐月さんに受け入れてもらえないのが一番怖かったから……。
私は喜びのままに電話を切った。
私からの今日の報告を聞けば、寂しがっている悠真もきっと嬉しそうな声を聞かせてくれることだろう。
それを期待して私は愛しい悠真へ電話をかけた。
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