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嬉しい知らせ
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風呂を出ると、悠真が私の身体を拭いてくれるというので、お互いに身体を拭き合うことにした。
頭ひとつ分小さい悠真が一生懸命私の身体を拭いてくれているのを上から見るだけでも幸せを感じる。
あまりの愛おしさにぎゅっと抱きしめたくなるが、せっかく悠真が私の身体を拭いてくれているのを邪魔したくはない。
必死に邪な気持ちを抑えて、悠真の肌についている水滴をバスタオルに吸わせた。
ふと下を見ると、さっきまで私のモノを触って可愛いとまで言っていたのに、なぜか悠真は拭くのを躊躇っている。
「どうしましたか?」
急に心配になって尋ねると真っ赤な顔で見上げられる。
「あの、この伊織さんのが……私をあんなにも気持ち良くしてくれているんだなと思うと、少し照れてしまって……」
ああ、もう悠真は私をどうしたいんだろう。
悠真の言動の全てに私はやられてしまうな。
私はバスタオルで悠真を包み、ヒョイっと抱きかかえて寝室に連れていった。
「あの、伊織さん……」
「大丈夫です。今日はもう何もしません。ただ少しでも長く悠真と寄り添っていたいだけです」
服を着るのさえもどかしくて、寝室のベッドで悠真と自分のバスタオルを剥ぎ取ると、お互い生まれたままの姿でベッドに潜り込んだ。
私の肩口に悠真の頭を置かせ抱きつかせるとトクントクンと心臓の鼓動が悠真の温もりと共に伝わってくる。
「悠真、少し話しますか?」
「……はい。私も……伊織さんと、お話ししたい……です」
そう話す悠真の声は私と抱き合った温もりですでに少し眠そうなぽやぽやとした声をしているが、それも可愛い。
「子守唄がわりに話していますから眠くなったら気にせず寝て良いですからね」
そう声をかけると、悠真は私の腕の中で小さく頷いた。
「何を話しましょうかね……そうだ、私の思い出話でも聞いてもらいましょうか。以前も話しましたが、私の家族は長いこと祖父だけでした。まだ小学生になったばかりの頃は夜遅くまで一人で留守番させるのは危ないということで祖父が仕事に行っている間は近くの家に預けられることもあったんですよ。でも、私が行くことでおやつが減るとその家の子から疎まれることもあって、子ども心に預けられるのが嫌で嫌で……行きたくないと言って祖父を困らせたこともありましたよ。今思えば面倒な子どもだったかもしれませんね。でもあの頃の私には切実な悩みで……祖父に必死に頼み込んで火は絶対に使わないからと約束して一人で留守番できることになったんですよ。でも、誰もいない部屋で待ち続けるのは寂しくて……こっそり涙を流したこともありました。祖父には必死に隠してましたけど……でも気づかれていたかもしれませんね」
もうだいぶ眠そうにしている悠真が私をぎゅっと抱きしめてくれる。
きっと夢現の中で、寂しい子どもだった私を慰めてくれているのだろう。
悠真の温かな手が私の心をじわじわと温めてくれる。
私は悠真の身体をより一層密着させながら、柔らかな髪を撫でながら思い出話を続けた。
「十歳の誕生日を迎えたと同時にようやく火を使うのを許してもらえて、そこから必死に練習して料理が作れるようになりました。祖父を待つのにご飯を作っていれば、時間が経つのが早く感じて……待つのが寂しかった当時の私にとっては一石二鳥だったんでしょう。その時に必死にオムレツを練習したおかげで自分のものにできましたし、そのおかげで石垣のイリゼホテルに引き抜いてもらえることになりました。あの時オムレツを練習しておいてよかったですよ。悠真にも美味しいと言ってもらえましたしね……悠真、もう寝てしまいましたね」
腕の中でスウスウと可愛い寝息を立てている悠真の髪にそっとキスを贈る。
「いつか祖父と家族の眠るお墓に一緒に来てくださいね。家族に愛する悠真を紹介したいので……。一生を添い遂げる相手ができたことをきっと喜んでくれますよ」
耳元で囁くと、悠真は夢で聞こえていたのか、可愛らしい笑みを見せてくれた。
悠真の可愛らしい笑顔に心を鷲掴みにされる。
こんなにも可愛らしく愛おしい人が私の恋人になってくれるなんて……今まで誠実に生きてきて本当によかった。
悠真を腕に抱いたまま、幸せな朝を迎える。
この瞬間は本当に幸せな一日の始まりだが、悠真と離れる時間が来たと思うと途端に寂しさが込み上げる。
ああ、悠真を仕事に行かせたくない!
倉橋さんや他の社員たちのことを考えればそんなこと絶対に思ってはいけないことだ。それに有能な社員である悠真が仕事に行かなければ支障をきたすかもしれない。
それはわかっているのだが……このまま悠真を抱いていたい。
「う、うーん」
葛藤に悶えているうちに悠真の身体を強く抱きしめてしまったらしい。
痛みを感じて起こしてしまったのかもしれないと慌てて腕の力を緩めたのだが、悠真の目がゆっくりと開いていくのが見えた。
「悠真、おはようございます。すみません、起こしてしまいましたね」
「いおり……さぁん……おは、よ……ございま、す」
まだ少し寝ぼけているのかにっこりと笑いながら、私を見上げるその顔が可愛くて我慢できずにそのまま唇を重ね合わせた。
「んんっ、ん……っ?」
キスをしている間にどうやらしっかりと目を覚ましたらしい悠真が可愛らしい声をあげる。
ちゅっと唇を離すと、少し恥ずかしそうに
「あの、おはようございます……ちょっと、その……寝ぼけてて……すみません」
と謝ってくる。
「可愛い悠真が見られて私は嬉しいですよ」
その言葉に照れた悠真がすごく可愛かった。
「悠真、今日は仕事ですよね? そろそろ起きたほうがいいですか?」
悠真を見つめながら尋ねると、悠真は少し考えた様子を見せた。
「あの、私……今日はお休みをもらおうかと……」
「えっ? いいんですか?」
思いがけない言葉に喜びの声が漏れる。
「少しでも長く伊織さんと一緒にいたくて……。そんなことを考えてしまう私ですけど、嫌いにならないですか?」
「嫌いになんて! 私もずっと今日は休んでほしいと思ってましたから」
「えっ……本当ですか?」
「はい。悠真と少しでも長くいたくて……悠真を仕事に行かせたくないって思ってました」
正直に自分の思いを告げると、悠真は嬉しそうに笑ってくれた。
「よかった。じゃあ、私、社長に連絡してきます」
「あ、ちょっと待っててください。私が悠真のスマホを持ってきますから」
悠真を裸でうろうろさせては私の理性が持ちそうにない。
そばにかけておいたバスタオルをとり、腰に巻いてリビングにおいているという悠真のスマホをとって戻ってきた。
「ありがとうございます。あれっ? 社長からメッセージが入ってます。ああ、お肉のお礼を入れておいたのでその返事かもしれませんね」
メッセージを表示させた悠真は、倉橋さんからのメッセージを読んでハッと驚きの表情を見せた。
「どうしたんですか? 何かありましたか?」
私の言葉に悠真はそっとスマホを私に手渡した。
見ると、倉橋さんからのメッセージには
<今日から三日間、夏季休暇とする>
と簡潔な言葉が書かれていた。
私と悠真のために……。
ああ、本当に倉橋さんには頭を向けて寝られないな。
私たちは倉橋さんの心遣いに感謝しながら、夏季休暇を楽しむことにした。
頭ひとつ分小さい悠真が一生懸命私の身体を拭いてくれているのを上から見るだけでも幸せを感じる。
あまりの愛おしさにぎゅっと抱きしめたくなるが、せっかく悠真が私の身体を拭いてくれているのを邪魔したくはない。
必死に邪な気持ちを抑えて、悠真の肌についている水滴をバスタオルに吸わせた。
ふと下を見ると、さっきまで私のモノを触って可愛いとまで言っていたのに、なぜか悠真は拭くのを躊躇っている。
「どうしましたか?」
急に心配になって尋ねると真っ赤な顔で見上げられる。
「あの、この伊織さんのが……私をあんなにも気持ち良くしてくれているんだなと思うと、少し照れてしまって……」
ああ、もう悠真は私をどうしたいんだろう。
悠真の言動の全てに私はやられてしまうな。
私はバスタオルで悠真を包み、ヒョイっと抱きかかえて寝室に連れていった。
「あの、伊織さん……」
「大丈夫です。今日はもう何もしません。ただ少しでも長く悠真と寄り添っていたいだけです」
服を着るのさえもどかしくて、寝室のベッドで悠真と自分のバスタオルを剥ぎ取ると、お互い生まれたままの姿でベッドに潜り込んだ。
私の肩口に悠真の頭を置かせ抱きつかせるとトクントクンと心臓の鼓動が悠真の温もりと共に伝わってくる。
「悠真、少し話しますか?」
「……はい。私も……伊織さんと、お話ししたい……です」
そう話す悠真の声は私と抱き合った温もりですでに少し眠そうなぽやぽやとした声をしているが、それも可愛い。
「子守唄がわりに話していますから眠くなったら気にせず寝て良いですからね」
そう声をかけると、悠真は私の腕の中で小さく頷いた。
「何を話しましょうかね……そうだ、私の思い出話でも聞いてもらいましょうか。以前も話しましたが、私の家族は長いこと祖父だけでした。まだ小学生になったばかりの頃は夜遅くまで一人で留守番させるのは危ないということで祖父が仕事に行っている間は近くの家に預けられることもあったんですよ。でも、私が行くことでおやつが減るとその家の子から疎まれることもあって、子ども心に預けられるのが嫌で嫌で……行きたくないと言って祖父を困らせたこともありましたよ。今思えば面倒な子どもだったかもしれませんね。でもあの頃の私には切実な悩みで……祖父に必死に頼み込んで火は絶対に使わないからと約束して一人で留守番できることになったんですよ。でも、誰もいない部屋で待ち続けるのは寂しくて……こっそり涙を流したこともありました。祖父には必死に隠してましたけど……でも気づかれていたかもしれませんね」
もうだいぶ眠そうにしている悠真が私をぎゅっと抱きしめてくれる。
きっと夢現の中で、寂しい子どもだった私を慰めてくれているのだろう。
悠真の温かな手が私の心をじわじわと温めてくれる。
私は悠真の身体をより一層密着させながら、柔らかな髪を撫でながら思い出話を続けた。
「十歳の誕生日を迎えたと同時にようやく火を使うのを許してもらえて、そこから必死に練習して料理が作れるようになりました。祖父を待つのにご飯を作っていれば、時間が経つのが早く感じて……待つのが寂しかった当時の私にとっては一石二鳥だったんでしょう。その時に必死にオムレツを練習したおかげで自分のものにできましたし、そのおかげで石垣のイリゼホテルに引き抜いてもらえることになりました。あの時オムレツを練習しておいてよかったですよ。悠真にも美味しいと言ってもらえましたしね……悠真、もう寝てしまいましたね」
腕の中でスウスウと可愛い寝息を立てている悠真の髪にそっとキスを贈る。
「いつか祖父と家族の眠るお墓に一緒に来てくださいね。家族に愛する悠真を紹介したいので……。一生を添い遂げる相手ができたことをきっと喜んでくれますよ」
耳元で囁くと、悠真は夢で聞こえていたのか、可愛らしい笑みを見せてくれた。
悠真の可愛らしい笑顔に心を鷲掴みにされる。
こんなにも可愛らしく愛おしい人が私の恋人になってくれるなんて……今まで誠実に生きてきて本当によかった。
悠真を腕に抱いたまま、幸せな朝を迎える。
この瞬間は本当に幸せな一日の始まりだが、悠真と離れる時間が来たと思うと途端に寂しさが込み上げる。
ああ、悠真を仕事に行かせたくない!
倉橋さんや他の社員たちのことを考えればそんなこと絶対に思ってはいけないことだ。それに有能な社員である悠真が仕事に行かなければ支障をきたすかもしれない。
それはわかっているのだが……このまま悠真を抱いていたい。
「う、うーん」
葛藤に悶えているうちに悠真の身体を強く抱きしめてしまったらしい。
痛みを感じて起こしてしまったのかもしれないと慌てて腕の力を緩めたのだが、悠真の目がゆっくりと開いていくのが見えた。
「悠真、おはようございます。すみません、起こしてしまいましたね」
「いおり……さぁん……おは、よ……ございま、す」
まだ少し寝ぼけているのかにっこりと笑いながら、私を見上げるその顔が可愛くて我慢できずにそのまま唇を重ね合わせた。
「んんっ、ん……っ?」
キスをしている間にどうやらしっかりと目を覚ましたらしい悠真が可愛らしい声をあげる。
ちゅっと唇を離すと、少し恥ずかしそうに
「あの、おはようございます……ちょっと、その……寝ぼけてて……すみません」
と謝ってくる。
「可愛い悠真が見られて私は嬉しいですよ」
その言葉に照れた悠真がすごく可愛かった。
「悠真、今日は仕事ですよね? そろそろ起きたほうがいいですか?」
悠真を見つめながら尋ねると、悠真は少し考えた様子を見せた。
「あの、私……今日はお休みをもらおうかと……」
「えっ? いいんですか?」
思いがけない言葉に喜びの声が漏れる。
「少しでも長く伊織さんと一緒にいたくて……。そんなことを考えてしまう私ですけど、嫌いにならないですか?」
「嫌いになんて! 私もずっと今日は休んでほしいと思ってましたから」
「えっ……本当ですか?」
「はい。悠真と少しでも長くいたくて……悠真を仕事に行かせたくないって思ってました」
正直に自分の思いを告げると、悠真は嬉しそうに笑ってくれた。
「よかった。じゃあ、私、社長に連絡してきます」
「あ、ちょっと待っててください。私が悠真のスマホを持ってきますから」
悠真を裸でうろうろさせては私の理性が持ちそうにない。
そばにかけておいたバスタオルをとり、腰に巻いてリビングにおいているという悠真のスマホをとって戻ってきた。
「ありがとうございます。あれっ? 社長からメッセージが入ってます。ああ、お肉のお礼を入れておいたのでその返事かもしれませんね」
メッセージを表示させた悠真は、倉橋さんからのメッセージを読んでハッと驚きの表情を見せた。
「どうしたんですか? 何かありましたか?」
私の言葉に悠真はそっとスマホを私に手渡した。
見ると、倉橋さんからのメッセージには
<今日から三日間、夏季休暇とする>
と簡潔な言葉が書かれていた。
私と悠真のために……。
ああ、本当に倉橋さんには頭を向けて寝られないな。
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