溺愛弁護士の裏の顔 〜僕はあなたを信じます

波木真帆

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番外編

彼の真意を聞いてから

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「真琴、これを味見してくれ」

「あっ! ブルスケッタ! 僕、これ好きです」

明日の食事会のために作ったオードブル。
実母からひどい食生活をさせられていた彼が目で楽しんで食事ができるように配慮し、ほとんどが一口で食べられるものばかりを用意した。
真琴の小さな口なら二口になってしまうものもあるが、それも許容範囲内だ。

「今回は桃と生ハムも作ってみたんだが、味付けはどうだ?」

「ん! すっごく美味しいです! この桃の甘味と生ハムの塩味がちょうどいいですよ」

「そうか、じゃあこれはOKだな。こっちのも食べてみてくれ」

まだ中学生の子だから、俺よりずっと真琴に近い。
真琴が気に入る味付けならきっと彼も喜んでくれるだろう。

「ん! これも美味しい! 優一さんの料理、どれも最高です!」

「真琴は全て美味しいと言ってくれるからな」

「だって本当に美味しいですよ」

「ありがとう。真琴が素直で正直なのはよくわかっているよ。絶対に喜んでもらえるな」

それから二人でタッパーに詰め、明日まで冷蔵庫で保管しておく。
あれもこれも作っていたら想像以上にたくさんの量になってしまったが、高校生の昇くんも来るから残ることはないだろう。

真琴を連れて志良堂教授の家に行った時に、偶然遊びにきていた彼と会ったがあの時はまだ小学生だった。
それでも真琴とは俺よりよっぽど近い年齢で、小学生とわかっていながらも敵意を剥き出さずにはいられなかった。

小学生と言っても彼は、あの磯山先生の甥で志良堂教授や鳴宮教授からも可愛がられていて、あの頃から学力もトップクラス。
将来は弁護士になりたいのではなく、弁護士になります! と宣言していたくらいの強者だった。
自信に漲った将来の希望溢れる子が、真琴をみて好きだと思ったら手に入れるために何かをしてきてもおかしくない。
そう思ってしまった。だから、大人げなく威圧を放ってしまったのだが、賢い彼は俺の真琴への想いにすぐに気づいたのか、必要以上に真琴に近づくことはなかった。

彼の中に真琴への想いが微塵もないことがわかってようやくこちらから声をかけた。
彼も最初こそ急に話しかけてきた俺に怯えていたが、それからは弁護士としての話をよく聞いてくるようになった。

その彼が高校三年生か。月日が経つのは早いものだ。

彼はあのときのまま法学部を受験するつもりで、しかも首席で合格を目指しているんだと磯山先生から伺っているが、気がかりなのはいくつものトラウマを抱えたあの子の存在。

あの子を磯山先生の実子とするために協力した時に幼少期に小児科医から受けた性的なトラウマの話も聞き及んでいる。
今は主治医となった緑川先生のおかげで心の平安を保っているようだが、先生亡き後のことも考えなくてはいけないだろう。彼があの子を守りたいと思っているなら尚更な。

まぁ当日彼と話をしてみて、あの子を守る術が残っていると告げた時、彼がどう答えるか……。
それを見てから協力するかどうか判断してもいいかもしれない。


そうして食事会当日。
約束通り九時に志良堂教授に家に到着すると、同じタイミングで安慶名と悠真さんもやってきた。

家に入ると、いつものようにすぐに真琴と悠真さんは鳴宮教授にさっさと連れ去られてしまった。
もうここでは仕方がないと諦めているし、鳴宮教授の存在はもはや真琴や悠真さんの兄のように思っているから問題ない。

俺は持ってきたタッパーを取り出し、好きに使っていいと言われた大皿に盛り付けた。

「今日はやけに気合が入っているな」

「料理が美味しいものだとわかってもらうのも大事なことだからな」

「なるほど。今日の成瀬は弁護士というよりは医師モードだな」

「そのつもりだよ」

「えっ?」

揶揄うつもりだったのか、俺の答えに驚いていたがすぐに俺の意図に気付いたのか、なるほどなといった表情を向けていた。一から十まで言わずともすぐに理解してくれるのはさすが親友だ。

「安慶名はその子にあったことがあるのか?」

「いや、初めてだよ。磯山先生とその子の様子を見るのを楽しみにしてきた」

「ははっ。同じだな。だが、先生が緑川教授以外に溺愛するとは想像できないけどな」

そんな話をしながら準備を整えた頃、真琴と悠真さんが鳴宮教授と共にリビングに戻ってきた。

「真琴、何をしていたんだ?」

「歓迎のクラッカーを鳴らそうって。準備してた。もうすぐ着くんだって」

「そうか」

驚かせても大丈夫か、様子を見ていた方がいいかもしれない。

駐車場に車が入ってくるのを見守っていると、磯山先生の車がやってきた。
車が止まり、俺が知っているよりさらに身長が伸びた様子の彼が小さな子をエスコートして降りてきた

あの子が直くんか。

あの様子ならクラッカーくらいなら大丈夫だろう。そう判断して止めなかった。

そうして全員で玄関に向かい、扉が開いたタイミングで真琴たちが一斉にクラッカーを鳴らした。
あまりの衝撃に驚いているようだったが大丈夫そうだ。

それどころか、顔を赤くして真琴を見ると、

「天使さん」

と呟いた。

その表情があまりにも素直で可愛らしくて嫉妬をする気にもならなかった。
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