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番外編

サプライズ飲み会  1

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飲み会の様子を見たいと仰っていただけたので、第一話目は真壁視点でお届けします。(タイトルでお分かりでしょうが、もう長くなること確定済み笑)
楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *


<side真壁冬貴>

「よっ、真壁!」

急遽用事ができて裁判所へ足を運んだある日の午後、突然名前を呼びかけられた。こうして気さくに私に声をかけてくれるような知り合いは数えるほどしかいない。しかも、この場所を考えるとあいつしかいない。あの声を考えれば間違い無いだろう。

振り返ってみれば、茶色の封筒を振りながら案の定、私を笑顔で見る氷室の姿があった。

氷室は桜城大学の同期。同じ法学部の仲間だ。氷室は司法試験に合格しそのまま弁護士となって、私は国家公務員試験を受け、警察官僚となった。互いに別の道を歩み始めても大学の同期というものは会えばすぐに学生時代に戻ってしまうから不思議だ。

同期でつるんでいたのは、氷室の他にあと二人。一人は医学部の成瀬。
成瀬とは同じ高校の同級生でもある。成瀬は高校生の時から他を寄せ付けない圧倒的な学力で全国模試では一位以外をとったことがなく、私自身も学力には自信があったが高校時代一度たりとも追い抜くことはできなかった。それを純粋にすごいと思っていたし、成瀬自身もそれを鼻にかけるようなことはなかった。国内最難関の大学である桜城大学に入学してもその異次元の優秀さは変わらず医学部に入学しながらも、独学で司法試験の勉強をし見事合格を果たしたすごいやつだ。

そしてもう一人は同じ法学部の安慶名。
彼は高校一年の途中で沖縄からやってきて、本来なら私と成瀬のいる高校に入学を希望したそうだが、この年は編入試験の受付がなく、私たちの通っていた儁秀しゅんしゅう高校と双璧を成す天稟てんりん高校に入学した。ここの編入試験もうちの高校と同じくかなり高難度で合格率はかなり低いそうだが、それに合格したのだから安慶名もかなり優秀だったのだろう。なんせ安慶名は桜城大学で給付型の奨学金をもらえるほどの学力を持っていたのだから。

そして、目の前にいる氷室は高校時代を海外で育ち、帰国子女枠で桜城大学に入学した。てっきり大学卒業後は海外に戻って国際弁護士として活躍するのかと思っていたが、今は成瀬が開いた法律事務所で一緒に働いている。それはきっと溺愛している恋人の存在が大きいのだろう。

氷室の恋人であるつばさくんとは、とある事件で氷室と成瀬が以前勤めていた法律事務所に相談に行って知り合ったと聞いている。紆余曲折を経て、今では、氷室と同じく成瀬の法律事務所でパラリーガルとして働いている。

氷室は彼をかなり溺愛していることもあって、夜に飲みの誘いをしても断ることが多く、最近では最初から氷室を誘うことはせずに、私と成瀬、そして安慶名の三人で飲むことが多かった。

最近は私も含めて仕事が忙しく、ここ半年ほどは飲みから遠ざかっていたが、氷室の顔を見て、安慶名と成瀬を誘って飲みに行こうかという考えが頭をよぎった。

すると、そんな私の考えを感じ取ったのか、

「なぁ、ここで会えたのも何かの縁だし、久しぶりに安慶名と成瀬を誘って四人で飲みに行かないか?」

と氷室から誘われた。

「私は当分夜の予定はないし、いつでも構わないが、氷室は行けるのか?」

「ああ、まあな。大丈夫だ。都合を合わせられるよ」

「そうなのか? 珍しいな。翼くんは大丈夫なのか?」

「ああ、気にしないでいい」

やけに笑顔なのか気になるが、大丈夫だと言っているのならそうなのだろう。

「じゃあ、安慶名と成瀬に話をして連絡をくれ」

「ああ、わかった。じゃあまたな」

こういう話は割と社交辞令で終わることも多いらしいが、私たちの場合はそれはない。そこから二日も経たないうちに、成瀬から日時と場所の連絡が来た。

そして、仕事に忙殺されてあっという間に約束の日。

指定された店は珍しく完全個室の店。仕事がらみの話でもあるのかと疑ってしまうくらい、かなりセキュリティの厳しい店だ。

成瀬と安慶名と三人で飲む時も流石にその辺の居酒屋に行くことはないが、ここまでセキュリティの厳しい店はそうはない。四人での飲みなのに、何かあるのだろうか?

店に入って成瀬の名前を告げると、かなり広い部屋に案内された。まだ誰も来ておらず、一番乗りだったみたいだ。
部屋に入ってすぐにやってきたのは、氷室と翼くん。驚きはしたが、その点で今日のこの店がセキュリティ万全の店だったことに納得した。きっと氷室が翼くんを連れて行くから完全個室でと注文したのだろう。

やっぱり置いてくるのは難しかったみたいだな。

「久しぶりだね。翼くん」

「はい。ご無沙汰しています」

「氷室、やっぱり翼くんを連れてきたんだな。まぁお前が置いてくるわけがないと思ったよ」

「いや、俺は留守番させようかと思っていたんだが、ちょっと事情があって……」

「誠一さん、ダメですよ!」

「なんだ?」

事情? 氷室の態度といい、翼くんの笑顔といい、かなり気になるが。

「いや、なんでもない。とにかく今日は翼も一緒に頼むよ」

と言われればそれ以上追及はしない。

「ここなら翼くんものんびりできそうだから大丈夫だろう。それより成瀬は一緒に来なかったのか?」

「んっ? ああ、ちょっと寄るところがあるって言ってたから、もうすぐ来るよ」

氷室がそう言ったと同時に、

「お連れさまがお見えになりました」

という店員の声が聞こえた。

そして、襖が開いたと思ったら成瀬と安慶名が一緒に立っているのが見えた。

「なんだ、一緒だったのか?」

「ああ。そうなんだよ。一緒に来たんだ」

成瀬が機嫌良さそうな笑顔を見せたと思ったら、成瀬と安慶名の間から可愛い男の子が出てきた。

「えっ? この子は……?」

一体誰なんだ? 成瀬の弟、じゃないよな? そんな話聞いたこともない。

「真壁に紹介するよ。この子は俺の恋人で、砂川真琴くんだ」

「はっ? えっ? こい、びと? 成瀬に? 恋人? えっ? 本当、なのか?」

「ああ。本当だよ」

「えっ、ちょ――っ、流石に高校生はまずいだろ! 警察としては見逃せないぞ!」

「大丈夫。真琴は今、大学生でもうとっくに成人してる。卒業後は俺の事務所で働いてもらうつもりで、今も手伝ってもらってるんだ」

「えっ? 大学生?」

どう見たって高校生にしか見えないこの可愛い子が大学生で、成瀬の恋人……。

いや、もう情報量が多すぎておかしくなりそうだ。
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