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番外編
珍しい組み合わせ <前編>
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こんな日もあるかもしれないと思いついてしまったお話。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side真琴>
ーえっ? 大丈夫ですか? ええ、はい。いえ、こちらのことは心配なさらず。ええ。いえ、それは……はい。分かりました。はい。ありがとうございます。はい、失礼します。
もうすぐ優一さんがもう一つのお仕事のために出かけるという時間に、宗一郎さんから電話がかかってきた。
今日は夜中までかかるかもしれないということで、僕を一人にしたくない優一さんが、僕のことを宗一郎さんと皐月さんに頼んでくれたんだ。
宗一郎さんと皐月さんは兄さんの恋人の伊織さんの義両親ということもあって、僕も息子のように扱ってくれる。
今までも何度か、優一さんがお仕事の時に過ごしているけれど、宗一郎さんの食事は優一さんとはまた違ってすごく美味しいし、憧れの鳴宮教授――家では皐月さんと呼ばないと怒られる――とのおしゃべりもすごく楽しくて、優一さんがいない日の密かな楽しみになっていた。
けれど、今の電話の感じだとなんだかあまりいい電話ではなさそうな予感がする。
何かあったのかな?
電話を切ると、優一さんは少し残念そうに僕を見た。
「何かあったんですか?」
「実は、皐月さんが少し熱を出したみたいで真琴を預かるのは難しいと言われたんだ」
「そうなんですね、皐月さんは大丈夫なんですか?」
「ああ、大したことはないけどまことに移しても大変だし、念のためにということだったから心配はいらないと言っていた」
「ああ、良かったです」
皐月さんが苦しむなんて嫌だもんね。
「それで、今日の夜なんだが……」
「あ、大丈夫です。僕、ちゃんと一人でお留守番できますよ」
「いや、皐月さんがそれはどうしても心配だと仰って、安慶名に真琴のことを頼んでくれたそうなんだよ」
「えっ? 安慶名さんに?」
「ああ。安慶名は、その……俺たちがよければ、大丈夫だと言っているそうなんだが、真琴はどうしたい?」
「兄さんはいないんですよね?」
今日は確か、西表にいる日だし東京に来ているなんて話も聞いてない。
「ああ、安慶名だけだ。どうする?」
安慶名さんと二人……今まで会う時は兄さんと優一さんも一緒で、二人だけになったこともほとんどない。
でも皐月さんが一人で僕が寂しいと思って頼んでくれたんだから、その気持ちを無下にするのは良くないかも。
それに……もしかしたら、いい機会かも!
「行きたいです!!」
「えっ?」
「僕、安慶名さんのところで優一さんが帰ってくるのを待ってます!!」
「そう、か?」
「はい。だから、優一さんは僕のことを心配しないで仕事に行ってきてください!」
「わかった。真琴がそういうなら、そうしよう。早く仕事を終わらせて迎えに行くよ」
「はい。待ってま――わっ、んんっ!」
突然強く抱きしめられたかと思ったら、優一さんの顔が近づいてきて、唇が重ねられた。
このまま深いキスをしてくれるのかと思ったら、唇を啄んだだけで離れていってしまった。
「あっ、ゆう、いちさん……っ、なんで……?」
「ふふっ。続きは帰ってきてからだよ」
「いじわるっ……でも、待ってます……」
「――っ、真琴っ! ああ、すぐに帰ってくるからな」
というわけで、僕は優一さんに安慶名さんのお家に送ってもらうことになったのだった。
<side伊織>
「安慶名、じゃあ頼むぞ」
「ああ、わかった。だが、緊急事態とはいえ、お前が了承するとは思わなかったな」
「仕方がないだろう。皐月さんがわざわざ頼んでくれたっていうし、それに真琴がお前のところに行きたいっていうんだからな」
「真琴くんが?」
「ああ。でも信用してるからな」
「わかってる。真琴くんは悠真の可愛い弟だからな。安心して行ってこいよ」
「頼んだよ」
そう言いつつも成瀬はかなり心配そうに出かけて行った。
宗一郎さんから、<私たちの代わりに真琴くんを預かって欲しい>と連絡を受けたのはほんの数時間前。
聞けば、皐月さんが体調を崩したという。
流石にその場に真琴くんを来させるわけにもいかず、緊急事態で私を頼ってくれたようだ。
預かるのは私の悠真の可愛い弟で家族も同然なのだから私は構わないのだが、問題は彼があの成瀬の愛しい恋人だということ。
絶対に手出しはしないと信用されているのはわかっているが、二人きりで過ごすのはまた別問題。
私だって、成瀬の家で悠真が二人っきりで過ごすのは、信用如何に関わらず、あまり嬉しいものではない。
その気持ちがわかるからこそ、成瀬たちがいいのなら預かると言ったのだが、まさか了承してくるとは思わなかった。
成瀬の中では部屋に一人にするリスクと天秤にかけたのかもしれない。
「真琴くん、じゃあ早速だけど夕食にしようか」
「はい。僕、お手伝いします!」
「えっ? いや、ゆっくりしていていいよ。ああ、そうだ。悠真に電話しておいてくれないか? さっき真琴くんが来ることを話しておいたから、無事に到着したか気にしているかもしれない」
「あ、そうですね。わかりました!」
嬉しそうな真琴くんの笑顔に、悠真が見える。
やっぱり兄弟だな。よく似ている。
まるで悠真が大学生の頃を垣間見ているような気にさせられる。
ーあっ、兄さん!
ーあっ、真琴。もう着いたの?
ーうん、安慶名さんのお家に着いたよ。今からご飯を食べさせてもらうんだ。
楽しげな兄弟の会話に癒されながらも、心の中では成瀬に早く帰ってこいと叫んでいた。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side真琴>
ーえっ? 大丈夫ですか? ええ、はい。いえ、こちらのことは心配なさらず。ええ。いえ、それは……はい。分かりました。はい。ありがとうございます。はい、失礼します。
もうすぐ優一さんがもう一つのお仕事のために出かけるという時間に、宗一郎さんから電話がかかってきた。
今日は夜中までかかるかもしれないということで、僕を一人にしたくない優一さんが、僕のことを宗一郎さんと皐月さんに頼んでくれたんだ。
宗一郎さんと皐月さんは兄さんの恋人の伊織さんの義両親ということもあって、僕も息子のように扱ってくれる。
今までも何度か、優一さんがお仕事の時に過ごしているけれど、宗一郎さんの食事は優一さんとはまた違ってすごく美味しいし、憧れの鳴宮教授――家では皐月さんと呼ばないと怒られる――とのおしゃべりもすごく楽しくて、優一さんがいない日の密かな楽しみになっていた。
けれど、今の電話の感じだとなんだかあまりいい電話ではなさそうな予感がする。
何かあったのかな?
電話を切ると、優一さんは少し残念そうに僕を見た。
「何かあったんですか?」
「実は、皐月さんが少し熱を出したみたいで真琴を預かるのは難しいと言われたんだ」
「そうなんですね、皐月さんは大丈夫なんですか?」
「ああ、大したことはないけどまことに移しても大変だし、念のためにということだったから心配はいらないと言っていた」
「ああ、良かったです」
皐月さんが苦しむなんて嫌だもんね。
「それで、今日の夜なんだが……」
「あ、大丈夫です。僕、ちゃんと一人でお留守番できますよ」
「いや、皐月さんがそれはどうしても心配だと仰って、安慶名に真琴のことを頼んでくれたそうなんだよ」
「えっ? 安慶名さんに?」
「ああ。安慶名は、その……俺たちがよければ、大丈夫だと言っているそうなんだが、真琴はどうしたい?」
「兄さんはいないんですよね?」
今日は確か、西表にいる日だし東京に来ているなんて話も聞いてない。
「ああ、安慶名だけだ。どうする?」
安慶名さんと二人……今まで会う時は兄さんと優一さんも一緒で、二人だけになったこともほとんどない。
でも皐月さんが一人で僕が寂しいと思って頼んでくれたんだから、その気持ちを無下にするのは良くないかも。
それに……もしかしたら、いい機会かも!
「行きたいです!!」
「えっ?」
「僕、安慶名さんのところで優一さんが帰ってくるのを待ってます!!」
「そう、か?」
「はい。だから、優一さんは僕のことを心配しないで仕事に行ってきてください!」
「わかった。真琴がそういうなら、そうしよう。早く仕事を終わらせて迎えに行くよ」
「はい。待ってま――わっ、んんっ!」
突然強く抱きしめられたかと思ったら、優一さんの顔が近づいてきて、唇が重ねられた。
このまま深いキスをしてくれるのかと思ったら、唇を啄んだだけで離れていってしまった。
「あっ、ゆう、いちさん……っ、なんで……?」
「ふふっ。続きは帰ってきてからだよ」
「いじわるっ……でも、待ってます……」
「――っ、真琴っ! ああ、すぐに帰ってくるからな」
というわけで、僕は優一さんに安慶名さんのお家に送ってもらうことになったのだった。
<side伊織>
「安慶名、じゃあ頼むぞ」
「ああ、わかった。だが、緊急事態とはいえ、お前が了承するとは思わなかったな」
「仕方がないだろう。皐月さんがわざわざ頼んでくれたっていうし、それに真琴がお前のところに行きたいっていうんだからな」
「真琴くんが?」
「ああ。でも信用してるからな」
「わかってる。真琴くんは悠真の可愛い弟だからな。安心して行ってこいよ」
「頼んだよ」
そう言いつつも成瀬はかなり心配そうに出かけて行った。
宗一郎さんから、<私たちの代わりに真琴くんを預かって欲しい>と連絡を受けたのはほんの数時間前。
聞けば、皐月さんが体調を崩したという。
流石にその場に真琴くんを来させるわけにもいかず、緊急事態で私を頼ってくれたようだ。
預かるのは私の悠真の可愛い弟で家族も同然なのだから私は構わないのだが、問題は彼があの成瀬の愛しい恋人だということ。
絶対に手出しはしないと信用されているのはわかっているが、二人きりで過ごすのはまた別問題。
私だって、成瀬の家で悠真が二人っきりで過ごすのは、信用如何に関わらず、あまり嬉しいものではない。
その気持ちがわかるからこそ、成瀬たちがいいのなら預かると言ったのだが、まさか了承してくるとは思わなかった。
成瀬の中では部屋に一人にするリスクと天秤にかけたのかもしれない。
「真琴くん、じゃあ早速だけど夕食にしようか」
「はい。僕、お手伝いします!」
「えっ? いや、ゆっくりしていていいよ。ああ、そうだ。悠真に電話しておいてくれないか? さっき真琴くんが来ることを話しておいたから、無事に到着したか気にしているかもしれない」
「あ、そうですね。わかりました!」
嬉しそうな真琴くんの笑顔に、悠真が見える。
やっぱり兄弟だな。よく似ている。
まるで悠真が大学生の頃を垣間見ているような気にさせられる。
ーあっ、兄さん!
ーあっ、真琴。もう着いたの?
ーうん、安慶名さんのお家に着いたよ。今からご飯を食べさせてもらうんだ。
楽しげな兄弟の会話に癒されながらも、心の中では成瀬に早く帰ってこいと叫んでいた。
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