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番外編
宮古島旅行 17
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「ほら、サイズぴったりです!」
「あ、ああ。そうだな。よく似合ってる」
そういうと真琴は嬉しそうに鏡の前でくるくると回ってみせた。
「ふふっ。高校時代に戻ったみたい。優一さんのサイズもあったらお揃いで着られたんですけどね」
「そうだな。でも、真琴のその姿が見られただけで十分だよ」
「優一さんはどうしますか?」
「俺はこのままでいいよ。下だけハーフパンツにしようかな」
部屋着用にと一応持ってきておいてよかった。
さっと黒いハーフパンツに着替えると、
「ふふっ。かっこいいです」
と真琴は嬉しそうに俺を見つめる。
そんなふうに見つめられるとそのままベッドに押し倒したくなるから困るな。
「じゃあ、いこうか」
これ以上昂らないように、さっさと部屋を出た方が良さそうだ。
すぐ近くだと言っていたし、これから海に行くのにスマホを持っていくのも憚られる。
荷物は無しでいいか。
でも、体操服姿の真琴と並んでいると未成年を連れていると間違えられそうだから、とりあえず俺と真琴の身分証だけは忘れないようにしておいた方がいいな。
真琴を連れて外に出ると、ちょうど安慶名たちの部屋の扉が開いた。
「あっ、真琴も一緒だ!」
「ふふっ。きっと兄さんもそうだと思ったんだ」
悠真さんも体操服を着ている。
真琴と悠真さんはお揃いの格好に喜んでいるが、俺と安慶名は可愛い二人の様子に釘付けになるばかり。
いや、もちろんお互い自分のパートナーの方をメインで見ているのだが、同じ格好の可愛い子たちが盛り上がっているのを見るのは楽しい。
しばらくその光景を楽しんでいると、
「あっ、ごめんなさい。つい、楽しくなってしまって……」
と悠真さんが謝っていたが、謝ることなど何もない。
可愛い兄弟の戯れに俺も安慶名も見惚れていただけなのだから。
「じゃあ、行きましょうか」
用意してもらっていた沖縄のサンダル『島ぞうり』を履いて家を出ると、日差しは強いが、爽やかな風が流れていく。
「ああ、風が気持ちいいな」
「海が近いからあまり気温が上がりすぎないんですよ」
「なるほど。東京の湿気が多い暑さとはそこが違うな。安慶名も悠真さんも東京と沖縄をよく往復するから、夏の暑さの違いはよくわかるだろう?」
「ああ、そうだな。日差しはこっちが鋭いが、日陰に入ると涼しく感じるからな。特に今は日本中どこも暑いだろう? 沖縄が一番涼しいなんて日もあるくらいだし、石垣や西表の方が過ごしやすいかもしれないな。ねぇ、悠真」
「ふふっ。そうですね。スーツ着て東京の街を歩いている時は汗がすごいですよ。暑くても汗が気になってジャケットが脱げないです」
「でも兄さんは顔にはあまり汗をかかないよね?」
「あー、そうかも。だから涼しそうに見えるみたいで社長からいつも、『お前はいつも涼しそうだな』って言われますよ。中はたっぷり汗をかいて汗臭いから大変なんですけど」
悠真さんが笑ってそういうと、安慶名はさっと悠真さんを抱き寄せて耳元で何かを囁いていた。
流石に何を言ったかまでは聞き取れなかったが、悠真さんが真っ赤になったところを見ると、
『悠真の汗の匂いなら全然臭くないですよ。むしろずっと嗅いでいたいくらいです』
くらいのことを言ってそうだ。
そんなことがわかるのも、俺も真琴の汗の匂いに興奮するからなんだが。
「あっ、こっちですよ。ここの木のトンネルを越えたらすぐ砂浜です!」
興奮したように俺の手を取って駆け出していく真琴の後を追いかけると、目の前に綺麗なビーチが現れた。
「うわっ、本当に綺麗だな」
「ふふっ。でしょう? ここは観光客の人が来ない穴場なんですよ。あ、そうだ、優一さんっ! こっちこっち!」
昔を思い出したのか、楽しそうな真琴に連れられて海の方に進んでいく。
島ぞうりのまま海に入っていくと、小さな岩の窪みに海水が溜まっているのが見える。
「ほら、可愛いでしょう?」
「本当に熱帯魚だな」
いろとりどりの小さな魚がその窪みの中を泳いでいて、自然の水槽のようだ。
「ここ、なぜかいつも熱帯魚が集まってくるんですよ」
「へぇ、可愛いな」
「でしょう? だから僕と兄さんのお気に入りの場所なんです」
「そこに俺も入れてくれるのか。光栄だな」
「当たり前ですよ。だって……優一さんは僕の大事な人ですよ」
「真琴……」
俺は真琴をそっと抱き寄せ、頬にキスをした。
本当は唇がよかったが外だと流石に恥ずかしがるだろう。
「あー、真琴! 一緒に見ようと思ったのに」
「ふふっ。ごめん、ごめん。兄さん、早くこっちにおいでよ」
少し遅れて安慶名と悠真さんがやってくる。
二人がこっちにくるのを見ていると、本当に高校生と保護者のように見えるな。
真琴も未成年に見える方だが、悠真さんはそれ以上だ。
「本当に可愛い熱帯魚だな。悠真、あの石垣のイリゼの近くのビーチを知ってますか?」
「えっ、伊織さん……あそこ知ってるんですか?」
「ええ。初めて石垣に行った日、悠真と出会う前にそこを訪れたんですよ。倉橋さんに穴場のビーチがあるからと教えてもらったんですが、あそこにもここと同じように岩の窪みに熱帯魚がいましたね」
「はい。だから私もあそこのビーチ好きなんですよ。実家に帰ったような気になって……」
「へぇ、そんなに綺麗な場所が石垣にもあるんですか?」
「ええ。今度ぜひ真琴と行ってみて下さい。きっと感動しますよ」
「じゃあ、真琴。今度は石垣と西表にも行ってみようか」
「わぁー、嬉しいです!! 優一さん、約束ですよ」
差し出してきた真琴の可愛い小指を絡めながら、俺は次の約束を誓った。
「じゃあ、その時は西表を案内しますよ」
「楽しみにしてます」
「あそこに美味しい沖縄料理のお店もあるんですよ。そこの店主さんが社長と仲良しなので、きっと優一さんも話が合うと思いますよ。ねぇ、伊織さん」
「ええ、そうですね。その時は私も西表に一緒に行きますよ」
「わぁ、楽しみです。じゃあ、伊織さんも約束」
「ふふっ。はい。約束ですね」
安慶名と悠真さんが嬉しそうに小指を絡めるのをみながら、俺と真琴は顔を見合わせて笑った。
「あ、ああ。そうだな。よく似合ってる」
そういうと真琴は嬉しそうに鏡の前でくるくると回ってみせた。
「ふふっ。高校時代に戻ったみたい。優一さんのサイズもあったらお揃いで着られたんですけどね」
「そうだな。でも、真琴のその姿が見られただけで十分だよ」
「優一さんはどうしますか?」
「俺はこのままでいいよ。下だけハーフパンツにしようかな」
部屋着用にと一応持ってきておいてよかった。
さっと黒いハーフパンツに着替えると、
「ふふっ。かっこいいです」
と真琴は嬉しそうに俺を見つめる。
そんなふうに見つめられるとそのままベッドに押し倒したくなるから困るな。
「じゃあ、いこうか」
これ以上昂らないように、さっさと部屋を出た方が良さそうだ。
すぐ近くだと言っていたし、これから海に行くのにスマホを持っていくのも憚られる。
荷物は無しでいいか。
でも、体操服姿の真琴と並んでいると未成年を連れていると間違えられそうだから、とりあえず俺と真琴の身分証だけは忘れないようにしておいた方がいいな。
真琴を連れて外に出ると、ちょうど安慶名たちの部屋の扉が開いた。
「あっ、真琴も一緒だ!」
「ふふっ。きっと兄さんもそうだと思ったんだ」
悠真さんも体操服を着ている。
真琴と悠真さんはお揃いの格好に喜んでいるが、俺と安慶名は可愛い二人の様子に釘付けになるばかり。
いや、もちろんお互い自分のパートナーの方をメインで見ているのだが、同じ格好の可愛い子たちが盛り上がっているのを見るのは楽しい。
しばらくその光景を楽しんでいると、
「あっ、ごめんなさい。つい、楽しくなってしまって……」
と悠真さんが謝っていたが、謝ることなど何もない。
可愛い兄弟の戯れに俺も安慶名も見惚れていただけなのだから。
「じゃあ、行きましょうか」
用意してもらっていた沖縄のサンダル『島ぞうり』を履いて家を出ると、日差しは強いが、爽やかな風が流れていく。
「ああ、風が気持ちいいな」
「海が近いからあまり気温が上がりすぎないんですよ」
「なるほど。東京の湿気が多い暑さとはそこが違うな。安慶名も悠真さんも東京と沖縄をよく往復するから、夏の暑さの違いはよくわかるだろう?」
「ああ、そうだな。日差しはこっちが鋭いが、日陰に入ると涼しく感じるからな。特に今は日本中どこも暑いだろう? 沖縄が一番涼しいなんて日もあるくらいだし、石垣や西表の方が過ごしやすいかもしれないな。ねぇ、悠真」
「ふふっ。そうですね。スーツ着て東京の街を歩いている時は汗がすごいですよ。暑くても汗が気になってジャケットが脱げないです」
「でも兄さんは顔にはあまり汗をかかないよね?」
「あー、そうかも。だから涼しそうに見えるみたいで社長からいつも、『お前はいつも涼しそうだな』って言われますよ。中はたっぷり汗をかいて汗臭いから大変なんですけど」
悠真さんが笑ってそういうと、安慶名はさっと悠真さんを抱き寄せて耳元で何かを囁いていた。
流石に何を言ったかまでは聞き取れなかったが、悠真さんが真っ赤になったところを見ると、
『悠真の汗の匂いなら全然臭くないですよ。むしろずっと嗅いでいたいくらいです』
くらいのことを言ってそうだ。
そんなことがわかるのも、俺も真琴の汗の匂いに興奮するからなんだが。
「あっ、こっちですよ。ここの木のトンネルを越えたらすぐ砂浜です!」
興奮したように俺の手を取って駆け出していく真琴の後を追いかけると、目の前に綺麗なビーチが現れた。
「うわっ、本当に綺麗だな」
「ふふっ。でしょう? ここは観光客の人が来ない穴場なんですよ。あ、そうだ、優一さんっ! こっちこっち!」
昔を思い出したのか、楽しそうな真琴に連れられて海の方に進んでいく。
島ぞうりのまま海に入っていくと、小さな岩の窪みに海水が溜まっているのが見える。
「ほら、可愛いでしょう?」
「本当に熱帯魚だな」
いろとりどりの小さな魚がその窪みの中を泳いでいて、自然の水槽のようだ。
「ここ、なぜかいつも熱帯魚が集まってくるんですよ」
「へぇ、可愛いな」
「でしょう? だから僕と兄さんのお気に入りの場所なんです」
「そこに俺も入れてくれるのか。光栄だな」
「当たり前ですよ。だって……優一さんは僕の大事な人ですよ」
「真琴……」
俺は真琴をそっと抱き寄せ、頬にキスをした。
本当は唇がよかったが外だと流石に恥ずかしがるだろう。
「あー、真琴! 一緒に見ようと思ったのに」
「ふふっ。ごめん、ごめん。兄さん、早くこっちにおいでよ」
少し遅れて安慶名と悠真さんがやってくる。
二人がこっちにくるのを見ていると、本当に高校生と保護者のように見えるな。
真琴も未成年に見える方だが、悠真さんはそれ以上だ。
「本当に可愛い熱帯魚だな。悠真、あの石垣のイリゼの近くのビーチを知ってますか?」
「えっ、伊織さん……あそこ知ってるんですか?」
「ええ。初めて石垣に行った日、悠真と出会う前にそこを訪れたんですよ。倉橋さんに穴場のビーチがあるからと教えてもらったんですが、あそこにもここと同じように岩の窪みに熱帯魚がいましたね」
「はい。だから私もあそこのビーチ好きなんですよ。実家に帰ったような気になって……」
「へぇ、そんなに綺麗な場所が石垣にもあるんですか?」
「ええ。今度ぜひ真琴と行ってみて下さい。きっと感動しますよ」
「じゃあ、真琴。今度は石垣と西表にも行ってみようか」
「わぁー、嬉しいです!! 優一さん、約束ですよ」
差し出してきた真琴の可愛い小指を絡めながら、俺は次の約束を誓った。
「じゃあ、その時は西表を案内しますよ」
「楽しみにしてます」
「あそこに美味しい沖縄料理のお店もあるんですよ。そこの店主さんが社長と仲良しなので、きっと優一さんも話が合うと思いますよ。ねぇ、伊織さん」
「ええ、そうですね。その時は私も西表に一緒に行きますよ」
「わぁ、楽しみです。じゃあ、伊織さんも約束」
「ふふっ。はい。約束ですね」
安慶名と悠真さんが嬉しそうに小指を絡めるのをみながら、俺と真琴は顔を見合わせて笑った。
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