溺愛弁護士の裏の顔 〜僕はあなたを信じます

波木真帆

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ヤキモチ?

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ホテルに着き、安慶名さんと優一さんがチェックインを済ませている間、僕は兄さんとロビーのソファーに座って待っていた。

「あっ、真琴! 忘れてた!」

「どうしたの、兄さん?」

兄さんが何か忘れるなんて珍しいな。
焦る姿もあんまり見たことなかったけど、安慶名さんが優一さんに変わったって言われてたみたいに兄さんも安慶名さんと出会って変わったのかな。

ふふっ。いつものかっこいい兄さんと違って、今の兄さんはなんだか可愛く見える。

兄さんは持っていたカバンの中から小さめの紙袋を取り出した。

「これ、誕生日プレゼント! 来てすぐ渡そうと思ってたけど、違うサプライズがあったから渡すの忘れちゃってたよ」

「わぁっ! ありがとう、兄さん!」

「ふふっ。これ、伊織さんと一緒に選んだんだよ。気に入ってくれたら嬉しい」

「忙しいのにわざわざ探しに行ってくれたの? ありがとう! ねぇ、開けていい?」

「もちろん!」

受け取った紙袋から綺麗に包まれた箱を取り出し、そっと包装をとると

「わぁっ!! 素敵っ!!」

中からかっこいい財布が出てきた。

「あまり探す時間がなかったんだけど、伊織さんがこの財布が一番使い勝手が良くておすすめだって教えてくれたんだよ」

「そうなんだ! ありがとう、大切にするね」

嬉しくて、もらったばかりの財布をギュッと胸に抱いていると

「悠真……真琴くんに渡せたんですね」

と声が聞こえてきた。

「あっ、伊織さん。ごめんなさい、一緒に選んでくださったのにすっかり渡すのを忘れてしまっていて……今、思い出して渡したんです」

「気にしないでいいですよ。私もあまりにも驚きすぎて忘れてしまっていましたから……」

「あ、あの……安慶名さん、選んでくださったみたいでありがとうございます。大切にしますね」

お礼をいうと、安慶名さんはふんわりとした優しい笑顔で

「いえ、真琴くんのおかげで悠真と銀座デートができたので私の方がお礼を言いたいくらいなんですよ」

と言われてしまった。

「ふふっ。それならよかったです――わっ!」

安慶名さんと話をしていると、突然後ろからぎゅっと抱きしめられてびっくりしてしまった。
けれど、この人が優一さんだということはすぐにわかる。
だって、僕の安心する匂いがするし、それに何より嫌じゃないんだもん。
そんな人……優一さんしかいない。

「真琴……安慶名にそんなに可愛い顔を見せないで」

「えっ? 可愛い、顔って……普通の顔ですよ?」

「ああ、もう……。分かってないから困るんだ」

「え、っと……あの、ごめんなさい……?」

優一さんの言ってることがよくわからないけれど、とりあえず謝っておいた方がいいのかなと思って言ってみた。

「ふふっ。真琴くん、気にしないでいいよ。成瀬はただヤキモチ妬いてるだけだから」

「えっ? ヤキモチ、ですか?」

「安慶名っ、余計なことを……っ」

「ふふっ。さっきのお返しだ。じゃあ、悠真。仲睦まじい義弟たちは放っておいて、部屋に行きましょうか」

「ふふっ。そうですね。じゃあ、真琴。また連絡するからね」

「えっ? う、うん。またね」

僕が茫然としながら手を振ると、兄さんと安慶名さんは仲良さそうに手を振ってエレベーターへと向かっていった。

「あ、あの……優一、さん?」

まだ僕に抱きついたままの優一さんに声をかけると、

「わっ!」

急に僕を抱き上げたまま立ち上がって、

「部屋に行こう」

と今さっき兄さんたちが向かったエレベーターホールへと歩き始めた。
もう兄さんたちは乗って行ったみたいだ。

優一さんはすぐにやってきたエレベーターに乗り込むと、僕を抱えたままさっとカードキーを翳し扉を閉めた。
すると、階数表示の下には何もなかったはずなのに、最上階とレストラン、その他施設の階数表示だけが現れた。
えっ、何これ?

「あの、優一さん……これ……」

「ああ、カードキーに部屋の階数が記憶されていて、そこと施設以外は停まらないようになっているんだ。カードキーを持ってない人が違う階に行けないようにするための配慮だよ」

「へぇー、すごいんですね」

「真琴はここに泊まるのは初めてなのか?」

「もちろん、初めてです。入試の前から倉橋さんがあのマンションを貸してくださったので東京に来た時はそこにいましたし、上京してからはホテルに泊まる機会なんてないですからね。修学旅行とか以外ではホテルに泊まったこともないですよ」

「そうなのか……」

「優一さん、なんだか嬉しそう……」

「ああ、もちろんだよ。真琴の初めてをまたもらえたんだからな」

さっきまでの優一さんが嘘のように幸せそうに笑っていて、僕はとても嬉しかった。
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