41 / 88
兄さんへの告白
しおりを挟む
「そうだ、安慶名。あの話をお兄さんにも話しておこうと思うんだけど……」
「もしかして、その話ももう真琴くんにしているのか?」
「ああ、もちろんだ。真琴には隠し事はしないと決めているからな」
「そうか、お前がそこまで決めてるなら相当のものだな」
「俺にとって真琴はそれくらい大事な存在だからな」
腕の中にいる僕にちゃんと聞こえるように話してくれる。
嬉しくて顔を上げると、愛おしそうな表情で僕を見つめてくれていた。
「優一さん……嬉しい」
優一さんの胸に顔を寄せると、さらにギュッと抱きしめてくれた。
そして、兄さんの方を向いて、真剣な表情で語り始めた。
「お兄さん、私が弁護士だということは以前にもお話しした通りなんですが……実は、もう一つ別の仕事をしているんです」
「別のお仕事、ですか……?」
兄さんは不思議そうに優一さんを見つめる。
「はい。調査員というか、探偵のような仕事をしています」
「探偵、さん……どうして、弁護士である成瀬さんがそんなお仕事を?」
職業に貴賎なしとはいうけれど、人のことを嗅ぎ回るという印象のある仕事だ。
もしかしたら兄さんは優一さんにそのことで悪い印象を持ってしまうんじゃないか……そんな不安がこみあげてきた。
「兄さん! 優一さんのお仕事は困っている人を助けるお仕事なんだ。酷いことをしている人の証拠を掴んで、辛い目に遭っている人を助けるんだよ! 優一さんにしかできないお仕事だから、僕……素晴らしいと思ってるんだ。だから、そんな仕事だなんて言わないで!」
「真琴……」
「優一さん……僕……兄さんには優一さんが素晴らしい人だってちゃんとわかってほしい」
「真琴、ありがとう」
優一さんに優しく頭を撫でられていると、
「ふふっ。成瀬さん、私……あなたが凄腕の調査員さんだってわかってますよ」
と兄さんの穏やかな声が聞こえた。
「えっ? 兄さん、それってどういうこと? 優一さんのこと知ってたの?」
「ううん、違う。それは今初めて聞いたけど、成瀬さん……つい先日、倉橋から調査を依頼されたんじゃないですか?」
「えっ? それは……」
兄さんからの思いがけない質問に優一さんが一瞬言葉に詰まった。
「ああ、隠さなくても大丈夫です。私も知ってる案件ですから。伊織さんから凄腕の調査員さんを紹介されて、早速調査を依頼したと倉橋から報告を受けています。あれは調査員さんの実力を測るための案件だったのですが、想像以上の調査内容に倉橋と一緒に驚いていたところだったんです。私は今まで倉橋の指示でいろんな探偵さんや調査員の方に調査をお願いしてきましたが、あんなにも早く、そして的確にこちらの要望以上のものを調べ上げてきてくださる方はいらっしゃいませんでした。倉橋が喜んでましたよ、こんなに素晴らしい調査内容を持ってきてくれた調査員は初めてだって」
「倉橋さんが、そうですか……。驚きました、お兄さんは本当に倉橋さんに信頼されていらっしゃるのですね」
「それはどういう意味ですか?」
「私は今まで色々な企業の社長の依頼を受けてきましたが、社長秘書の方と情報を共有するような方はほとんどいらっしゃいませんでした。ですから、倉橋さんの依頼もお兄さんはご存知ないと思っていたのです。ですが、全てをご存知でしたので驚いたんですよ」
「成瀬、悠真は倉橋さんが東京に行っている間は社長代理として全ての仕事をこなしているんだ。倉橋さんは悠真がいないと仕事が成り立たないと言っていたぞ」
「それは……すごいな」
「そんな……恥ずかしいです」
「真琴がお兄さんのようになりたいと話していたのがよくわかるな」
優一さん……僕が最初にあった時に話していたのを覚えてくれているんだ……。
「真琴がそんなことを……?」
「うん。だって、倉橋さんが前に言ってたんだ。兄さんがいるから思った通りに仕事ができるんだって。だから僕も兄さんみたいに誰かを支えられるような仕事がしたいなって思ったんだ」
「そっか……兄さん、嬉しいよ」
「それなら、成瀬のところで仕事をするのは真琴くんにはぴったりだな。弁護士なんて、やることがいっぱいでどうにもこうにも大変だからな」
「ああ。だから真琴が私専属のパラリーガルになってくれるって言ってるよ」
「それは羨ましいな」
「伊織さん……羨ましいですか?」
「あ、いえ。そんなつもりじゃ……」
そう言いつつもきっと安慶名さんも兄さんにそばで働いて欲しいんだろうな。
でもきっと倉橋さんが手放さないだろうけど……。
「今すぐは無理ですけど……いつか、伊織さんのそばで働かせてもらえますか?」
「悠真……ええ、喜んで」
安慶名さんがすごく嬉しそうに笑って、兄さんと見つめ合うのが本当に素敵だなと思った。
やっぱりお似合いだな、兄さんと安慶名さん。
「もしかして、その話ももう真琴くんにしているのか?」
「ああ、もちろんだ。真琴には隠し事はしないと決めているからな」
「そうか、お前がそこまで決めてるなら相当のものだな」
「俺にとって真琴はそれくらい大事な存在だからな」
腕の中にいる僕にちゃんと聞こえるように話してくれる。
嬉しくて顔を上げると、愛おしそうな表情で僕を見つめてくれていた。
「優一さん……嬉しい」
優一さんの胸に顔を寄せると、さらにギュッと抱きしめてくれた。
そして、兄さんの方を向いて、真剣な表情で語り始めた。
「お兄さん、私が弁護士だということは以前にもお話しした通りなんですが……実は、もう一つ別の仕事をしているんです」
「別のお仕事、ですか……?」
兄さんは不思議そうに優一さんを見つめる。
「はい。調査員というか、探偵のような仕事をしています」
「探偵、さん……どうして、弁護士である成瀬さんがそんなお仕事を?」
職業に貴賎なしとはいうけれど、人のことを嗅ぎ回るという印象のある仕事だ。
もしかしたら兄さんは優一さんにそのことで悪い印象を持ってしまうんじゃないか……そんな不安がこみあげてきた。
「兄さん! 優一さんのお仕事は困っている人を助けるお仕事なんだ。酷いことをしている人の証拠を掴んで、辛い目に遭っている人を助けるんだよ! 優一さんにしかできないお仕事だから、僕……素晴らしいと思ってるんだ。だから、そんな仕事だなんて言わないで!」
「真琴……」
「優一さん……僕……兄さんには優一さんが素晴らしい人だってちゃんとわかってほしい」
「真琴、ありがとう」
優一さんに優しく頭を撫でられていると、
「ふふっ。成瀬さん、私……あなたが凄腕の調査員さんだってわかってますよ」
と兄さんの穏やかな声が聞こえた。
「えっ? 兄さん、それってどういうこと? 優一さんのこと知ってたの?」
「ううん、違う。それは今初めて聞いたけど、成瀬さん……つい先日、倉橋から調査を依頼されたんじゃないですか?」
「えっ? それは……」
兄さんからの思いがけない質問に優一さんが一瞬言葉に詰まった。
「ああ、隠さなくても大丈夫です。私も知ってる案件ですから。伊織さんから凄腕の調査員さんを紹介されて、早速調査を依頼したと倉橋から報告を受けています。あれは調査員さんの実力を測るための案件だったのですが、想像以上の調査内容に倉橋と一緒に驚いていたところだったんです。私は今まで倉橋の指示でいろんな探偵さんや調査員の方に調査をお願いしてきましたが、あんなにも早く、そして的確にこちらの要望以上のものを調べ上げてきてくださる方はいらっしゃいませんでした。倉橋が喜んでましたよ、こんなに素晴らしい調査内容を持ってきてくれた調査員は初めてだって」
「倉橋さんが、そうですか……。驚きました、お兄さんは本当に倉橋さんに信頼されていらっしゃるのですね」
「それはどういう意味ですか?」
「私は今まで色々な企業の社長の依頼を受けてきましたが、社長秘書の方と情報を共有するような方はほとんどいらっしゃいませんでした。ですから、倉橋さんの依頼もお兄さんはご存知ないと思っていたのです。ですが、全てをご存知でしたので驚いたんですよ」
「成瀬、悠真は倉橋さんが東京に行っている間は社長代理として全ての仕事をこなしているんだ。倉橋さんは悠真がいないと仕事が成り立たないと言っていたぞ」
「それは……すごいな」
「そんな……恥ずかしいです」
「真琴がお兄さんのようになりたいと話していたのがよくわかるな」
優一さん……僕が最初にあった時に話していたのを覚えてくれているんだ……。
「真琴がそんなことを……?」
「うん。だって、倉橋さんが前に言ってたんだ。兄さんがいるから思った通りに仕事ができるんだって。だから僕も兄さんみたいに誰かを支えられるような仕事がしたいなって思ったんだ」
「そっか……兄さん、嬉しいよ」
「それなら、成瀬のところで仕事をするのは真琴くんにはぴったりだな。弁護士なんて、やることがいっぱいでどうにもこうにも大変だからな」
「ああ。だから真琴が私専属のパラリーガルになってくれるって言ってるよ」
「それは羨ましいな」
「伊織さん……羨ましいですか?」
「あ、いえ。そんなつもりじゃ……」
そう言いつつもきっと安慶名さんも兄さんにそばで働いて欲しいんだろうな。
でもきっと倉橋さんが手放さないだろうけど……。
「今すぐは無理ですけど……いつか、伊織さんのそばで働かせてもらえますか?」
「悠真……ええ、喜んで」
安慶名さんがすごく嬉しそうに笑って、兄さんと見つめ合うのが本当に素敵だなと思った。
やっぱりお似合いだな、兄さんと安慶名さん。
342
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる