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兄さんへの告白
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「そうだ、安慶名。あの話をお兄さんにも話しておこうと思うんだけど……」
「もしかして、その話ももう真琴くんにしているのか?」
「ああ、もちろんだ。真琴には隠し事はしないと決めているからな」
「そうか、お前がそこまで決めてるなら相当のものだな」
「俺にとって真琴はそれくらい大事な存在だからな」
腕の中にいる僕にちゃんと聞こえるように話してくれる。
嬉しくて顔を上げると、愛おしそうな表情で僕を見つめてくれていた。
「優一さん……嬉しい」
優一さんの胸に顔を寄せると、さらにギュッと抱きしめてくれた。
そして、兄さんの方を向いて、真剣な表情で語り始めた。
「お兄さん、私が弁護士だということは以前にもお話しした通りなんですが……実は、もう一つ別の仕事をしているんです」
「別のお仕事、ですか……?」
兄さんは不思議そうに優一さんを見つめる。
「はい。調査員というか、探偵のような仕事をしています」
「探偵、さん……どうして、弁護士である成瀬さんがそんなお仕事を?」
職業に貴賎なしとはいうけれど、人のことを嗅ぎ回るという印象のある仕事だ。
もしかしたら兄さんは優一さんにそのことで悪い印象を持ってしまうんじゃないか……そんな不安がこみあげてきた。
「兄さん! 優一さんのお仕事は困っている人を助けるお仕事なんだ。酷いことをしている人の証拠を掴んで、辛い目に遭っている人を助けるんだよ! 優一さんにしかできないお仕事だから、僕……素晴らしいと思ってるんだ。だから、そんな仕事だなんて言わないで!」
「真琴……」
「優一さん……僕……兄さんには優一さんが素晴らしい人だってちゃんとわかってほしい」
「真琴、ありがとう」
優一さんに優しく頭を撫でられていると、
「ふふっ。成瀬さん、私……あなたが凄腕の調査員さんだってわかってますよ」
と兄さんの穏やかな声が聞こえた。
「えっ? 兄さん、それってどういうこと? 優一さんのこと知ってたの?」
「ううん、違う。それは今初めて聞いたけど、成瀬さん……つい先日、倉橋から調査を依頼されたんじゃないですか?」
「えっ? それは……」
兄さんからの思いがけない質問に優一さんが一瞬言葉に詰まった。
「ああ、隠さなくても大丈夫です。私も知ってる案件ですから。伊織さんから凄腕の調査員さんを紹介されて、早速調査を依頼したと倉橋から報告を受けています。あれは調査員さんの実力を測るための案件だったのですが、想像以上の調査内容に倉橋と一緒に驚いていたところだったんです。私は今まで倉橋の指示でいろんな探偵さんや調査員の方に調査をお願いしてきましたが、あんなにも早く、そして的確にこちらの要望以上のものを調べ上げてきてくださる方はいらっしゃいませんでした。倉橋が喜んでましたよ、こんなに素晴らしい調査内容を持ってきてくれた調査員は初めてだって」
「倉橋さんが、そうですか……。驚きました、お兄さんは本当に倉橋さんに信頼されていらっしゃるのですね」
「それはどういう意味ですか?」
「私は今まで色々な企業の社長の依頼を受けてきましたが、社長秘書の方と情報を共有するような方はほとんどいらっしゃいませんでした。ですから、倉橋さんの依頼もお兄さんはご存知ないと思っていたのです。ですが、全てをご存知でしたので驚いたんですよ」
「成瀬、悠真は倉橋さんが東京に行っている間は社長代理として全ての仕事をこなしているんだ。倉橋さんは悠真がいないと仕事が成り立たないと言っていたぞ」
「それは……すごいな」
「そんな……恥ずかしいです」
「真琴がお兄さんのようになりたいと話していたのがよくわかるな」
優一さん……僕が最初にあった時に話していたのを覚えてくれているんだ……。
「真琴がそんなことを……?」
「うん。だって、倉橋さんが前に言ってたんだ。兄さんがいるから思った通りに仕事ができるんだって。だから僕も兄さんみたいに誰かを支えられるような仕事がしたいなって思ったんだ」
「そっか……兄さん、嬉しいよ」
「それなら、成瀬のところで仕事をするのは真琴くんにはぴったりだな。弁護士なんて、やることがいっぱいでどうにもこうにも大変だからな」
「ああ。だから真琴が私専属のパラリーガルになってくれるって言ってるよ」
「それは羨ましいな」
「伊織さん……羨ましいですか?」
「あ、いえ。そんなつもりじゃ……」
そう言いつつもきっと安慶名さんも兄さんにそばで働いて欲しいんだろうな。
でもきっと倉橋さんが手放さないだろうけど……。
「今すぐは無理ですけど……いつか、伊織さんのそばで働かせてもらえますか?」
「悠真……ええ、喜んで」
安慶名さんがすごく嬉しそうに笑って、兄さんと見つめ合うのが本当に素敵だなと思った。
やっぱりお似合いだな、兄さんと安慶名さん。
「もしかして、その話ももう真琴くんにしているのか?」
「ああ、もちろんだ。真琴には隠し事はしないと決めているからな」
「そうか、お前がそこまで決めてるなら相当のものだな」
「俺にとって真琴はそれくらい大事な存在だからな」
腕の中にいる僕にちゃんと聞こえるように話してくれる。
嬉しくて顔を上げると、愛おしそうな表情で僕を見つめてくれていた。
「優一さん……嬉しい」
優一さんの胸に顔を寄せると、さらにギュッと抱きしめてくれた。
そして、兄さんの方を向いて、真剣な表情で語り始めた。
「お兄さん、私が弁護士だということは以前にもお話しした通りなんですが……実は、もう一つ別の仕事をしているんです」
「別のお仕事、ですか……?」
兄さんは不思議そうに優一さんを見つめる。
「はい。調査員というか、探偵のような仕事をしています」
「探偵、さん……どうして、弁護士である成瀬さんがそんなお仕事を?」
職業に貴賎なしとはいうけれど、人のことを嗅ぎ回るという印象のある仕事だ。
もしかしたら兄さんは優一さんにそのことで悪い印象を持ってしまうんじゃないか……そんな不安がこみあげてきた。
「兄さん! 優一さんのお仕事は困っている人を助けるお仕事なんだ。酷いことをしている人の証拠を掴んで、辛い目に遭っている人を助けるんだよ! 優一さんにしかできないお仕事だから、僕……素晴らしいと思ってるんだ。だから、そんな仕事だなんて言わないで!」
「真琴……」
「優一さん……僕……兄さんには優一さんが素晴らしい人だってちゃんとわかってほしい」
「真琴、ありがとう」
優一さんに優しく頭を撫でられていると、
「ふふっ。成瀬さん、私……あなたが凄腕の調査員さんだってわかってますよ」
と兄さんの穏やかな声が聞こえた。
「えっ? 兄さん、それってどういうこと? 優一さんのこと知ってたの?」
「ううん、違う。それは今初めて聞いたけど、成瀬さん……つい先日、倉橋から調査を依頼されたんじゃないですか?」
「えっ? それは……」
兄さんからの思いがけない質問に優一さんが一瞬言葉に詰まった。
「ああ、隠さなくても大丈夫です。私も知ってる案件ですから。伊織さんから凄腕の調査員さんを紹介されて、早速調査を依頼したと倉橋から報告を受けています。あれは調査員さんの実力を測るための案件だったのですが、想像以上の調査内容に倉橋と一緒に驚いていたところだったんです。私は今まで倉橋の指示でいろんな探偵さんや調査員の方に調査をお願いしてきましたが、あんなにも早く、そして的確にこちらの要望以上のものを調べ上げてきてくださる方はいらっしゃいませんでした。倉橋が喜んでましたよ、こんなに素晴らしい調査内容を持ってきてくれた調査員は初めてだって」
「倉橋さんが、そうですか……。驚きました、お兄さんは本当に倉橋さんに信頼されていらっしゃるのですね」
「それはどういう意味ですか?」
「私は今まで色々な企業の社長の依頼を受けてきましたが、社長秘書の方と情報を共有するような方はほとんどいらっしゃいませんでした。ですから、倉橋さんの依頼もお兄さんはご存知ないと思っていたのです。ですが、全てをご存知でしたので驚いたんですよ」
「成瀬、悠真は倉橋さんが東京に行っている間は社長代理として全ての仕事をこなしているんだ。倉橋さんは悠真がいないと仕事が成り立たないと言っていたぞ」
「それは……すごいな」
「そんな……恥ずかしいです」
「真琴がお兄さんのようになりたいと話していたのがよくわかるな」
優一さん……僕が最初にあった時に話していたのを覚えてくれているんだ……。
「真琴がそんなことを……?」
「うん。だって、倉橋さんが前に言ってたんだ。兄さんがいるから思った通りに仕事ができるんだって。だから僕も兄さんみたいに誰かを支えられるような仕事がしたいなって思ったんだ」
「そっか……兄さん、嬉しいよ」
「それなら、成瀬のところで仕事をするのは真琴くんにはぴったりだな。弁護士なんて、やることがいっぱいでどうにもこうにも大変だからな」
「ああ。だから真琴が私専属のパラリーガルになってくれるって言ってるよ」
「それは羨ましいな」
「伊織さん……羨ましいですか?」
「あ、いえ。そんなつもりじゃ……」
そう言いつつもきっと安慶名さんも兄さんにそばで働いて欲しいんだろうな。
でもきっと倉橋さんが手放さないだろうけど……。
「今すぐは無理ですけど……いつか、伊織さんのそばで働かせてもらえますか?」
「悠真……ええ、喜んで」
安慶名さんがすごく嬉しそうに笑って、兄さんと見つめ合うのが本当に素敵だなと思った。
やっぱりお似合いだな、兄さんと安慶名さん。
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