31 / 88
楽しい休憩時間
しおりを挟む
「ただいまー」
優一さんが帰ってきて、その後すぐに氷室さんも帰ってきた。
「成瀬、お前も今か?」
「ああ、ちょうど同じだったみたいだな」
「今日の案件だけど――」
とすぐに二人で話を始めたので、僕と翼さんはキッチンへと行き、それぞれの相手にコーヒーを淹れることにした。
――普段はブラックなんだが、外回りから帰ってきた時はミルク入りを飲みたくなるんだ。
優一さんが買ってきてくれたケーキを食べていた時にそう言っていたのを思い出す。
「あっ、真琴くん。さすがだね! 成瀬さんの好みをよくわかってる!」
温めたミルクを淹れていると翼さんがそう言ってくれた。
「氷室さんはいつも何を飲むんですか?」
「誠一さんは普段と変わらないかな。いつでもミルク入り。僕はミルクも砂糖も入れないと飲めないけど」
「ああっ! 僕も一緒です!」
「だよねー。あっ、そうだ! 昨日、誠一さんが買ってきてくれたデパ地下のスイーツあるんだけど、真琴くんも一緒に食べない?」
「デパ地下スイーツ……わっ、聞くだけで涎が出そう! でも、いいんですか?」
「いいの、いいの。誠一さんも成瀬さんも甘いものはほとんど食べないし、僕一人じゃ食べきれないから。誠一さんも真琴くんと一緒に食べるようにって買ってきてくれてるから」
「じゃあ遠慮なくいただきます」
トレイに優一さんと僕のコーヒー、そして、翼さんがわけてくれた可愛いマカロンを載せ、キッチンを出ると
「真琴!」
僕の姿を見かけた優一さんが駆け寄ってきてくれた。
「私が持つよ。コーヒーを淹れていてくれたんだな。ありがとう」
僕の両手で持っていたトレイを軽々と片手で持ち、僕の背中に手を添えて席へと歩き始める優一さんをすごいなと思いながら、
「いえ、すみません、持っていただいて……」
とお礼を言うと、
「当然のことだよ」
と笑ってくれた。
ふと見ると、翼さんの持っていたトレイも氷室さんが持っているのが見える。
楽しそうに二人で話をしている姿に、そっか、これでいいんだと思えた。
休憩用のソファーに座ると、向かいに翼さんと氷室さんも腰を下ろした。
「こっちが優一さんのです。どうぞ」
「ああ、ミルクが入ってる。前に話したのを覚えていてくれたのか?」
「はい。口に合ったらいいんですけど」
考えてみれば、ずっとお世話されていたから優一さんに何かを作ると言うのは初めてだ。
と言ってもコーヒーを入れるだけだけど。
どうだろう?
美味しいって言ってもらえたらいいけどな。
優一さんはコーヒーを一口飲むと一瞬目を見開いた後でもう一口啜った。
ううーっ。ドキドキするっ。
「これ、美味しいな」
「わぁっ、よかったです!」
嬉しそうな表情で感想を告げてくれる優一さんにホッとしていると、何か目の前から視線を感じる。
そちらに目を向けると、氷室さんと翼さんが驚いた顔でこっちをみている。
「どう、したんですか……?」
「い、いや……」
まだ目を丸くしている氷室さんの横で、
「ふふっ。成瀬さんのそんな笑顔初めて見たから、僕も誠一さんもびっくりしちゃっただけだよ」
と翼さんが笑っていう。
「笑顔、ですか?」
隣の優一さんを見ると、いつもの優しい笑顔を向けてくれる。
「いつもと同じように見えますけど……」
「ふふっ。そこがまず違うんだよ。成瀬さん、滅多に笑顔は見せてくれないし、今までコーヒー淹れても『ありがとう』とお礼を言われることはあっても、美味しいなんて言われたことないし……」
「そう、だったかな? いや、翼くんの淹れてくれたコーヒーも美味しいが、真琴の淹れてくれたものは比べ物にならないんだ。申し訳ない」
そう言って謝る優一さんを見て、さらに
「ふふっ。そんなふうに惚気る姿も初めてですよ。ねぇ、誠一さん」
と同意を求めると、氷室さんはまだ驚いているのか首を縦に振るだけだった。
惚気る? ってどう言う意味だっけ?
「まぁいいじゃないか、私のことは。ほら、真琴。マカロン食べないか?」
そう言って、話題を変えるように優一さんが可愛いピンクのマカロンを僕に差し出した。
これ一番最初に食べようかなと思ってたやつだ。
すごい!
なんでわかったんだろう……と思いながら、
『あ~ん』
と口を開けると、優一さんが口へと運んでくれた。
パクリと半分に齧ると、ふわりとラズベリーの香りが漂ってきた。
「んんっ、美味しいっ!! これ、ラズベリーですね」
僕はお皿にもう一つピンクのマカロンが残っているのを見て、
「優一さんも食べてみてください、美味しいですよっ」
と言うと、
「そうか、なら貰おうかな」
と言って、手に持ったままになっていた僕の食べかけのマカロンをヒョイっと口に入れた。
「ああ、美味しいな」
あっ、僕の食べかけだけど……と一瞬思ったけれど、優一さんの嬉しそうな顔を見ていたらまぁいいかと思えた。
だけど、
「ああっ、もうだめだっ! 我慢できないっ!!」
そんな言葉と共に、氷室さんはケラケラと笑い転げていた。
優一さんが帰ってきて、その後すぐに氷室さんも帰ってきた。
「成瀬、お前も今か?」
「ああ、ちょうど同じだったみたいだな」
「今日の案件だけど――」
とすぐに二人で話を始めたので、僕と翼さんはキッチンへと行き、それぞれの相手にコーヒーを淹れることにした。
――普段はブラックなんだが、外回りから帰ってきた時はミルク入りを飲みたくなるんだ。
優一さんが買ってきてくれたケーキを食べていた時にそう言っていたのを思い出す。
「あっ、真琴くん。さすがだね! 成瀬さんの好みをよくわかってる!」
温めたミルクを淹れていると翼さんがそう言ってくれた。
「氷室さんはいつも何を飲むんですか?」
「誠一さんは普段と変わらないかな。いつでもミルク入り。僕はミルクも砂糖も入れないと飲めないけど」
「ああっ! 僕も一緒です!」
「だよねー。あっ、そうだ! 昨日、誠一さんが買ってきてくれたデパ地下のスイーツあるんだけど、真琴くんも一緒に食べない?」
「デパ地下スイーツ……わっ、聞くだけで涎が出そう! でも、いいんですか?」
「いいの、いいの。誠一さんも成瀬さんも甘いものはほとんど食べないし、僕一人じゃ食べきれないから。誠一さんも真琴くんと一緒に食べるようにって買ってきてくれてるから」
「じゃあ遠慮なくいただきます」
トレイに優一さんと僕のコーヒー、そして、翼さんがわけてくれた可愛いマカロンを載せ、キッチンを出ると
「真琴!」
僕の姿を見かけた優一さんが駆け寄ってきてくれた。
「私が持つよ。コーヒーを淹れていてくれたんだな。ありがとう」
僕の両手で持っていたトレイを軽々と片手で持ち、僕の背中に手を添えて席へと歩き始める優一さんをすごいなと思いながら、
「いえ、すみません、持っていただいて……」
とお礼を言うと、
「当然のことだよ」
と笑ってくれた。
ふと見ると、翼さんの持っていたトレイも氷室さんが持っているのが見える。
楽しそうに二人で話をしている姿に、そっか、これでいいんだと思えた。
休憩用のソファーに座ると、向かいに翼さんと氷室さんも腰を下ろした。
「こっちが優一さんのです。どうぞ」
「ああ、ミルクが入ってる。前に話したのを覚えていてくれたのか?」
「はい。口に合ったらいいんですけど」
考えてみれば、ずっとお世話されていたから優一さんに何かを作ると言うのは初めてだ。
と言ってもコーヒーを入れるだけだけど。
どうだろう?
美味しいって言ってもらえたらいいけどな。
優一さんはコーヒーを一口飲むと一瞬目を見開いた後でもう一口啜った。
ううーっ。ドキドキするっ。
「これ、美味しいな」
「わぁっ、よかったです!」
嬉しそうな表情で感想を告げてくれる優一さんにホッとしていると、何か目の前から視線を感じる。
そちらに目を向けると、氷室さんと翼さんが驚いた顔でこっちをみている。
「どう、したんですか……?」
「い、いや……」
まだ目を丸くしている氷室さんの横で、
「ふふっ。成瀬さんのそんな笑顔初めて見たから、僕も誠一さんもびっくりしちゃっただけだよ」
と翼さんが笑っていう。
「笑顔、ですか?」
隣の優一さんを見ると、いつもの優しい笑顔を向けてくれる。
「いつもと同じように見えますけど……」
「ふふっ。そこがまず違うんだよ。成瀬さん、滅多に笑顔は見せてくれないし、今までコーヒー淹れても『ありがとう』とお礼を言われることはあっても、美味しいなんて言われたことないし……」
「そう、だったかな? いや、翼くんの淹れてくれたコーヒーも美味しいが、真琴の淹れてくれたものは比べ物にならないんだ。申し訳ない」
そう言って謝る優一さんを見て、さらに
「ふふっ。そんなふうに惚気る姿も初めてですよ。ねぇ、誠一さん」
と同意を求めると、氷室さんはまだ驚いているのか首を縦に振るだけだった。
惚気る? ってどう言う意味だっけ?
「まぁいいじゃないか、私のことは。ほら、真琴。マカロン食べないか?」
そう言って、話題を変えるように優一さんが可愛いピンクのマカロンを僕に差し出した。
これ一番最初に食べようかなと思ってたやつだ。
すごい!
なんでわかったんだろう……と思いながら、
『あ~ん』
と口を開けると、優一さんが口へと運んでくれた。
パクリと半分に齧ると、ふわりとラズベリーの香りが漂ってきた。
「んんっ、美味しいっ!! これ、ラズベリーですね」
僕はお皿にもう一つピンクのマカロンが残っているのを見て、
「優一さんも食べてみてください、美味しいですよっ」
と言うと、
「そうか、なら貰おうかな」
と言って、手に持ったままになっていた僕の食べかけのマカロンをヒョイっと口に入れた。
「ああ、美味しいな」
あっ、僕の食べかけだけど……と一瞬思ったけれど、優一さんの嬉しそうな顔を見ていたらまぁいいかと思えた。
だけど、
「ああっ、もうだめだっ! 我慢できないっ!!」
そんな言葉と共に、氷室さんはケラケラと笑い転げていた。
326
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる