溺愛弁護士の裏の顔 〜僕はあなたを信じます

波木真帆

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楽しい休憩時間

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「ただいまー」

優一さんが帰ってきて、その後すぐに氷室さんも帰ってきた。

「成瀬、お前も今か?」

「ああ、ちょうど同じだったみたいだな」

「今日の案件だけど――」

とすぐに二人で話を始めたので、僕と翼さんはキッチンへと行き、それぞれの相手にコーヒーを淹れることにした。

――普段はブラックなんだが、外回りから帰ってきた時はミルク入りを飲みたくなるんだ。

優一さんが買ってきてくれたケーキを食べていた時にそう言っていたのを思い出す。

「あっ、真琴くん。さすがだね! 成瀬さんの好みをよくわかってる!」

温めたミルクを淹れていると翼さんがそう言ってくれた。

「氷室さんはいつも何を飲むんですか?」

「誠一さんは普段と変わらないかな。いつでもミルク入り。僕はミルクも砂糖も入れないと飲めないけど」

「ああっ! 僕も一緒です!」

「だよねー。あっ、そうだ! 昨日、誠一さんが買ってきてくれたデパ地下のスイーツあるんだけど、真琴くんも一緒に食べない?」

「デパ地下スイーツ……わっ、聞くだけで涎が出そう! でも、いいんですか?」

「いいの、いいの。誠一さんも成瀬さんも甘いものはほとんど食べないし、僕一人じゃ食べきれないから。誠一さんも真琴くんと一緒に食べるようにって買ってきてくれてるから」

「じゃあ遠慮なくいただきます」

トレイに優一さんと僕のコーヒー、そして、翼さんがわけてくれた可愛いマカロンを載せ、キッチンを出ると

「真琴!」

僕の姿を見かけた優一さんが駆け寄ってきてくれた。

「私が持つよ。コーヒーを淹れていてくれたんだな。ありがとう」

僕の両手で持っていたトレイを軽々と片手で持ち、僕の背中に手を添えて席へと歩き始める優一さんをすごいなと思いながら、

「いえ、すみません、持っていただいて……」

とお礼を言うと、

「当然のことだよ」

と笑ってくれた。

ふと見ると、翼さんの持っていたトレイも氷室さんが持っているのが見える。
楽しそうに二人で話をしている姿に、そっか、これでいいんだと思えた。

休憩用のソファーに座ると、向かいに翼さんと氷室さんも腰を下ろした。

「こっちが優一さんのです。どうぞ」

「ああ、ミルクが入ってる。前に話したのを覚えていてくれたのか?」

「はい。口に合ったらいいんですけど」

考えてみれば、ずっとお世話されていたから優一さんに何かを作ると言うのは初めてだ。
と言ってもコーヒーを入れるだけだけど。

どうだろう?
美味しいって言ってもらえたらいいけどな。

優一さんはコーヒーを一口飲むと一瞬目を見開いた後でもう一口啜った。

ううーっ。ドキドキするっ。

「これ、美味しいな」

「わぁっ、よかったです!」

嬉しそうな表情で感想を告げてくれる優一さんにホッとしていると、何か目の前から視線を感じる。
そちらに目を向けると、氷室さんと翼さんが驚いた顔でこっちをみている。

「どう、したんですか……?」

「い、いや……」

まだ目を丸くしている氷室さんの横で、

「ふふっ。成瀬さんのそんな笑顔初めて見たから、僕も誠一さんもびっくりしちゃっただけだよ」

と翼さんが笑っていう。

「笑顔、ですか?」

隣の優一さんを見ると、いつもの優しい笑顔を向けてくれる。

「いつもと同じように見えますけど……」

「ふふっ。そこがまず違うんだよ。成瀬さん、滅多に笑顔は見せてくれないし、今までコーヒー淹れても『ありがとう』とお礼を言われることはあっても、美味しいなんて言われたことないし……」

「そう、だったかな? いや、翼くんの淹れてくれたコーヒーも美味しいが、真琴の淹れてくれたものは比べ物にならないんだ。申し訳ない」

そう言って謝る優一さんを見て、さらに

「ふふっ。そんなふうに惚気る姿も初めてですよ。ねぇ、誠一さん」

と同意を求めると、氷室さんはまだ驚いているのか首を縦に振るだけだった。

惚気る? ってどう言う意味だっけ?

「まぁいいじゃないか、私のことは。ほら、真琴。マカロン食べないか?」

そう言って、話題を変えるように優一さんが可愛いピンクのマカロンを僕に差し出した。
これ一番最初に食べようかなと思ってたやつだ。
すごい!
なんでわかったんだろう……と思いながら、

『あ~ん』

と口を開けると、優一さんが口へと運んでくれた。
パクリと半分に齧ると、ふわりとラズベリーの香りが漂ってきた。

「んんっ、美味しいっ!! これ、ラズベリーですね」

僕はお皿にもう一つピンクのマカロンが残っているのを見て、

「優一さんも食べてみてください、美味しいですよっ」

と言うと、

「そうか、なら貰おうかな」

と言って、手に持ったままになっていた僕の食べかけのマカロンをヒョイっと口に入れた。

「ああ、美味しいな」

あっ、僕の食べかけだけど……と一瞬思ったけれど、優一さんの嬉しそうな顔を見ていたらまぁいいかと思えた。

だけど、

「ああっ、もうだめだっ! 我慢できないっ!!」

そんな言葉と共に、氷室さんはケラケラと笑い転げていた。
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