溺愛弁護士の裏の顔 〜僕はあなたを信じます

波木真帆

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嫌われたくない

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<ちょっと事件沙汰になっちゃったから、詳しく話していいかわからなくて……でも、特に酷いことされたわけじゃないから心配しないで……

そう打ちながら、これだと田淵くんに心配かけちゃうかな……と何度も消しては書き、消しては書きを繰り返して結局、

<僕は何もされてないから大丈夫。心配しないで>

と送ることにした。

それにしても河北さん……どこで店長が逮捕されたことを知ったんだろう?
あ、でも、もしかしたらこういうのって警察からあのコンビニに知らせが来たりするのかな?

責任者がいなくなるんだから、あのコンビニも休業しないといけないし……うん、そうだね。
知らせが来たのかもしれない。

河北さんは昨日は僕と入れ替わりでシフトに入る予定だったから、河北さんが店に来て店長が出て行ったのかも。店長がいない間の責任者でもある河北さんには警察からも話を聞かれたのかもしれないしな。

じゃあ、河北さんがあの事件のことを知っていても不思議はないか……。

そう納得しつつもちょっとだけ違和感を感じながら、とりあえずメッセージを送ると

<砂川くんがなんともなくて良かった>

と返ってきた。

文章だけでも田淵くんがほっとしているのが伝わってくる。
本当に田淵くんに心配かけちゃったなぁ。僕よりもずっとずっと酷い怪我をしているのにあんまり心配かけすぎると、治りが遅くなっちゃうかもな。

あっ……そういえば、田淵くんを轢いた犯人が店長だったって、優一さんが言ってたよね。それってもう田淵くんも知っているのかな?

でも、こんなのって勝手に聞いちゃいけないよね。そもそも、どこから聞いたんだって田淵くんに聞かれても優一さんのこと話していいのかわかんないし……。

田淵くんから話をしてくれるまで待つしかないか。

<田淵くんの怪我の治りはどう? 順調に治ってきてる?>

話題を変えてメッセージを送ってみると、すぐに返事が返って来た。

<うん、もうリハビリも少しずつ始めてるんだよ。まだあまり無理はできないけど、頑張ってる>

<そっか。良かった。でも本当にくれぐれも無理だけはしないでね>

そう送ると

<ありがとう>

の言葉と共に可愛いウサギが筋トレしているスタンプが送られてきて、ふっと笑ってしまった。

良かった。田淵くんにコンビニ辞めたことちゃんと伝えられて。

怒るどころか僕のこと心配してくれてたなぁ。本当に良かった。


心配していたことがなくなって安心したからか、気づけば僕は眠ってしまっていたようだ。

あったかくて心地良い匂いにホッとしながら目覚めると、

「起きた?」

僕は優一さんの腕の中にいた。

「んっ? ゆーいち、さん?」

「まだ寝ぼけてるみたいだな。ああ、真琴くんの恋人の優一だよ」

チュッとほっぺたにキス、されて一気に目が覚めた。

「――っ!!! な――っ、えっ? あっ」

「ああっ、もうなんでこんなに反応が可愛いんだろうな」

ギュッと抱きしめられてどんどん覚醒していく。

「あの、なんで一緒に?」

「部屋に戻ってきたら、真琴くんが『ゆーいち、さん』って寝言言いながら眠ってたから、嬉しくなって添い寝したら真琴くんの方から擦り寄って来たんだよ。私の胸元に顔を近づけて嬉しそうに笑うからそのまま食べてしまいたいくらいだった」

「た、食べてって……そんなこと」

「いや、本当だよ。あのまま襲わなかった私を褒めて欲しいくらいだ」

にっこりと微笑む優一さんにどう返していいかわからなくなってしまう。

襲う……って、どういうこと?
そういえば、優一さんが何をするつもりなのか、調べておくはずだったのに……。
田淵くんと連絡取り合ったらほっとして寝落ちしちゃってたよ。

「真琴くん? どうした?」

その言葉にハッと気づいて、僕は意を決して伝えることにした。

「あ、あの……優一さんが、戻って来たら……その、つ、づきをって……言ってたから」

「ああ、言ってたな」

「そ、れで……何、するのかなって……わからなくて、兄さんに……聞こうか、と……」

「えっ? お兄さんに? それでなんて言ってたんだ?」

「や――っ、あの、まだ聞けてなくて……それでどうしよう、かと……」

そこまで言ったところでギュッと抱きしめられて、

「ああ……良かった」

と優一さんは安堵のため息を漏らした。

「あの……僕、何かいけないことを……?」

「違うよ。でもね……これからは何かわからないことがあったら、お兄さんじゃなく私を頼ってほしい。私が真琴くんの恋人なんだから、私がなんでも教えるよ」

「僕……何も知らないから、優一さんに……嫌われちゃう、と思って……」

「私のことを考えてくれたんだな。嬉しいよ。でも、覚えていて……私はどんなことがあっても真琴くんを嫌いになることはないよ」

「優一さん……」

「それに……真琴くんに手解きをするのは、全部私がいい。真琴くんには私の言葉だけを信じて欲しいんだ」

真剣な優一さんの眼差しに、僕はコクンと首を縦に動かした。
それを見た時の優一さんの顔がとても嬉しそうだったから、僕はこれで良かったんだなと思った。

でも……本当に、一体何をするんだろう?
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