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あまりの美味しさにあっという間に雑炊を食べ終え、僕は大満足だった。
「すごく美味しかったです」
「ふふっ。それなら、よかった」
手際よく、トレイを片付けてくれると優一さんは僕の首筋にそっと手をやった。
「んん……っ」
「ああ、ごめん。冷たかった?」
「い、いえ。大丈夫です」
優一さんの手が触れた瞬間、身体がビクッとしてしまった。
でも怖いとかじゃ全然ない。
心地良いのに身体が震えるなんて……やっぱりまだ熱があるのかも。
「食事もできたし、少し休もうか」
優しい笑顔で僕を寝かしつけてくれる優一さんにホッとしながら、僕は目を瞑った。
それからどれくらい経っただろう?
目を覚ますと優一さんの姿は見えなかった。
そうか。
午後からお仕事だって言ってたし、寝ている間にもうそんな時間になっちゃったのかも……。
優一さん、優しいから寝ている僕を起こさなかったんだろうな。
でも、起きた時優一さんの姿が見えないのはやっぱり寂しい。
ああ、僕っていつからこんなわがままになっちゃったんだろう……。
僕がこんなわがままだなんて優一さんに知られたら嫌われちゃうかもしれないな。
でも……優一さんへの想いはどんどん強くなっていく。
もうどうしたらいんだろう……。
しんと静まり返った部屋の中で一人でぽつんといると余計ないことをいろいろと考えてしまう。
なんだか兄さんに会いたくなってきちゃったな……。
兄さんと話して少し気分を上げたい。
そう思って、手を伸ばしたのは僕のスマホ。
優一さんが何かあった時のためにと置いていてくれたものだ。
画面を見ると、着信やメールがいくつも入っている。
これだけ入っていれば音に気付きそうなものだけど……と思っていると、サイレントモードになっていたことに気づいた。
きっと僕の眠りの邪魔にならないように優一さんが気遣ってくれたのかもしれない。
そんな優しさに胸がキュッと締め付けられるような思いになりながら、メールを開くと1件を残して全て兄さんからのメールだった。
どうやら、僕がマンションに戻ってこなかったからコンシェルジュさんから兄さんに連絡が行ったみたいだ。
そういえば、兄さんに電話した時、優一さん家に泊まるって話すのを忘れていた。
あの時言っておけば、こんなに心配かけることはなかったのに。
ああ、もう僕ってば……ほんとバカだ。
今は仕事中だろうからとメールを送ることにした。
<兄さん、ごめん。サイレントモードになっていてメールも着信も気が付かなかった。実は昨日……>
そう書きながら、優一さんの家って……なんて書いたら良いんだろう?
恋人?
でも、そうしたら兄さんびっくりしちゃうよね……。
でも、友達……ではないよね……。
だって……キス、したんだし……。
兄さんになんて報告したら良いんだろう……。
どうしようかと悩んでいるうちに、手の中のスマホが震え始めた。
画面表示には兄さんの名前。
どうしよう……まだ、何も答えは出ていないのに……。
だけど、着信が来ているのをわかっていながらスルーすることなんてできない。
正直にいうしかないか……。
僕は意を決して、スマホのボタンを押した。
ーも、もしもし。
ー真琴?! もう、本当にどうしちゃったの? マンションに戻ってきてないって坂井さんから連絡きたから心配したんだよ!
ーごめん。昨日の電話で言うの忘れちゃってたんだ。あの、実は……その、お泊まりさせてもらってて……。
ーお泊まり? それって……お友達? じゃないんだよね?
ーえっとぉ……こ、恋人……さん、の家。あの、足を怪我して無理しちゃいけないってお医者さんに言われて、それでお世話してくれるって……それで、その……お泊まり、することに……
ーちょっと待って……。真琴、怪我してるの? それも兄さん、聞いてないよね?
ーえっ? あっ、あの……ごめんなさい。心配かけると思って……。それで……。
そういうと電話口から大きなため息が聞こえた。
ーごめんなさい……。
ー兄さんが遠くにいるから心配かけないようにって思ってくれる気持ちは嬉しいよ。でも、こうやって連絡なくなると、他のいろんな心配もしてしまうから、最初からちゃんと報告してくれた方がいいかな。
ーはい。ごめんなさい……。
もうあまりにも正論すぎて謝ることしかできない。
ーでも、兄さんホッとしているよ。
ーえっ?
ーだって、真琴が怪我をした時にそばについていてくれる人ができたんでしょ? それって嬉しいことだよ。
ーうん。ありがとう。
ー恋人さんは今、一緒にいるの?
ーううん、今お仕事に行っているみたい。
ーそうなんだ。じゃあ、治るまではしばらく恋人さんのところにいるの?
ーうん。そのつもり。
ーわかった。じゃあ、兄さんから坂井さんには連絡しておいてあげるから。
ーごめん、ありがとう。
ー心配だから、メールか電話は取れるようにしておいて。
ーわかった。
そう言って、電話を切った。
もっと怒られると思ったけど、すごく優しくてホッとした。
ちゃんと恋人って言えたし……よかったのかな。
「すごく美味しかったです」
「ふふっ。それなら、よかった」
手際よく、トレイを片付けてくれると優一さんは僕の首筋にそっと手をやった。
「んん……っ」
「ああ、ごめん。冷たかった?」
「い、いえ。大丈夫です」
優一さんの手が触れた瞬間、身体がビクッとしてしまった。
でも怖いとかじゃ全然ない。
心地良いのに身体が震えるなんて……やっぱりまだ熱があるのかも。
「食事もできたし、少し休もうか」
優しい笑顔で僕を寝かしつけてくれる優一さんにホッとしながら、僕は目を瞑った。
それからどれくらい経っただろう?
目を覚ますと優一さんの姿は見えなかった。
そうか。
午後からお仕事だって言ってたし、寝ている間にもうそんな時間になっちゃったのかも……。
優一さん、優しいから寝ている僕を起こさなかったんだろうな。
でも、起きた時優一さんの姿が見えないのはやっぱり寂しい。
ああ、僕っていつからこんなわがままになっちゃったんだろう……。
僕がこんなわがままだなんて優一さんに知られたら嫌われちゃうかもしれないな。
でも……優一さんへの想いはどんどん強くなっていく。
もうどうしたらいんだろう……。
しんと静まり返った部屋の中で一人でぽつんといると余計ないことをいろいろと考えてしまう。
なんだか兄さんに会いたくなってきちゃったな……。
兄さんと話して少し気分を上げたい。
そう思って、手を伸ばしたのは僕のスマホ。
優一さんが何かあった時のためにと置いていてくれたものだ。
画面を見ると、着信やメールがいくつも入っている。
これだけ入っていれば音に気付きそうなものだけど……と思っていると、サイレントモードになっていたことに気づいた。
きっと僕の眠りの邪魔にならないように優一さんが気遣ってくれたのかもしれない。
そんな優しさに胸がキュッと締め付けられるような思いになりながら、メールを開くと1件を残して全て兄さんからのメールだった。
どうやら、僕がマンションに戻ってこなかったからコンシェルジュさんから兄さんに連絡が行ったみたいだ。
そういえば、兄さんに電話した時、優一さん家に泊まるって話すのを忘れていた。
あの時言っておけば、こんなに心配かけることはなかったのに。
ああ、もう僕ってば……ほんとバカだ。
今は仕事中だろうからとメールを送ることにした。
<兄さん、ごめん。サイレントモードになっていてメールも着信も気が付かなかった。実は昨日……>
そう書きながら、優一さんの家って……なんて書いたら良いんだろう?
恋人?
でも、そうしたら兄さんびっくりしちゃうよね……。
でも、友達……ではないよね……。
だって……キス、したんだし……。
兄さんになんて報告したら良いんだろう……。
どうしようかと悩んでいるうちに、手の中のスマホが震え始めた。
画面表示には兄さんの名前。
どうしよう……まだ、何も答えは出ていないのに……。
だけど、着信が来ているのをわかっていながらスルーすることなんてできない。
正直にいうしかないか……。
僕は意を決して、スマホのボタンを押した。
ーも、もしもし。
ー真琴?! もう、本当にどうしちゃったの? マンションに戻ってきてないって坂井さんから連絡きたから心配したんだよ!
ーごめん。昨日の電話で言うの忘れちゃってたんだ。あの、実は……その、お泊まりさせてもらってて……。
ーお泊まり? それって……お友達? じゃないんだよね?
ーえっとぉ……こ、恋人……さん、の家。あの、足を怪我して無理しちゃいけないってお医者さんに言われて、それでお世話してくれるって……それで、その……お泊まり、することに……
ーちょっと待って……。真琴、怪我してるの? それも兄さん、聞いてないよね?
ーえっ? あっ、あの……ごめんなさい。心配かけると思って……。それで……。
そういうと電話口から大きなため息が聞こえた。
ーごめんなさい……。
ー兄さんが遠くにいるから心配かけないようにって思ってくれる気持ちは嬉しいよ。でも、こうやって連絡なくなると、他のいろんな心配もしてしまうから、最初からちゃんと報告してくれた方がいいかな。
ーはい。ごめんなさい……。
もうあまりにも正論すぎて謝ることしかできない。
ーでも、兄さんホッとしているよ。
ーえっ?
ーだって、真琴が怪我をした時にそばについていてくれる人ができたんでしょ? それって嬉しいことだよ。
ーうん。ありがとう。
ー恋人さんは今、一緒にいるの?
ーううん、今お仕事に行っているみたい。
ーそうなんだ。じゃあ、治るまではしばらく恋人さんのところにいるの?
ーうん。そのつもり。
ーわかった。じゃあ、兄さんから坂井さんには連絡しておいてあげるから。
ーごめん、ありがとう。
ー心配だから、メールか電話は取れるようにしておいて。
ーわかった。
そう言って、電話を切った。
もっと怒られると思ったけど、すごく優しくてホッとした。
ちゃんと恋人って言えたし……よかったのかな。
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