溺愛弁護士の裏の顔 〜僕はあなたを信じます

波木真帆

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驚きの連続

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食事も終え、片付けも優一さんがあっという間に終わらせてしまって、僕は優一さんに連れられて、リビングの座り心地の良いソファーに座っていた。
広いソファーなのに、なぜか優一さんがピッタリと隣に座っていてなんとなくドキドキしてしまう。

「食後に何か飲む?」

「あ、僕は大丈夫です……その、優一さん……どうぞ」

「ふふっ。ありがとう。じゃあ、私も後にしよう。それで、さっきの話だけど……」

その問いかけに僕はピクリと身体を震わせた。

「大丈夫、怖がらせたりしないから……」

そう言って、僕を優しく抱きしめる。
優一さんの腕の中に閉じ込められてふわりと柔軟剤の良い香りの中に爽やかな匂いを感じる。
これ……優一さんの匂いなのかな……。
なんだか、すごくドキドキしてきた。

「真琴くん、君がモヤモヤしていた理由だけど……まだ、わからない?」

「ごめんなさい……」

「違う、謝らせたいわけじゃないんだ……真琴くんは、私がこの部屋に誰か入れてると思ってどう思ったんだった?」

「その……なんか、心の中がモヤモヤして……気になるっていうか……不思議な気がしました」

「あのね、結論から言うけど、真琴くんにしたように抱きかかえたり、身体を洗ったり、髪の毛を乾かしてあげたり、食事を振る舞ったり……そんな相手、今まで一人もいないよ」

「え――っ? ひ、ひとりも……って、ほん、とですか……?」

思いがけない言葉に僕は声が上擦ってしまった。

「ふふっ。私は弁護士だよ。いつでも常に正直に正しいことしか言わない」

「あっ、それは……わかってるんですけど、でも……優一さんみたいに素敵な人が、誰もなんて……」

「真琴くんは買い被りすぎだよ。仕事柄、時間も不規則で、守秘義務があるから仕事の話はできないし、恋人をいつも最優先にできない。それに、もしかしたら、依頼者や対象者、それに事件の加害者との繋がりがある人が私から情報を得ようと近づいてきたのかもしれない……なんて妙な勘ぐりを相手にしてしまう。そういうのに疲れてしまったら、ひとりで過ごす時間が楽だってことに気づいたんだ。だから、この家には……真琴くん以外、誰も入れたことはないよ」

「だ、誰もって、それじゃあ……翼、さんも……?」

「ふふっ。そういえば、さっきも翼くんの名前を出していたけど、もちろん翼くんも、氷室もこの自宅には入れたことはないよ」

「えっ? 氷室さんもですか?」

大学の同期だって言ってたのに、びっくりだ……。

「ああ、あの二人とは仕事とプライベートとの関係をしっかりと分けているからね。あ、間違いのないように言っておくけど、仲は良いんだよ。氷室とは特に大学からの付き合いだし、翼くんにはもう5年以上働いてもらってるしね。だから、余計に公私はしっかりと分けておかないと、この仕事は緊張感を持たないといけないからね。なあなあな仕事になると困るんだ。まぁ、このプライベートな空間は私の聖域だな。ここで公私をリセットする」

「聖域……あの、そんな大事な空間に僕なんかを入れてよかったんですか?」

「わからないかな?」

「えっ?」

「真琴くんだから、入れたんだよ」

優一さんの真剣な眼差しにドキドキする。

「僕だから……? それはどういう意味ですか?」

「君に引かれると思って内緒にしておこうと思ったんだけどな……まさか、新品の下着だけでおかしいと思われるとは思わなかったな。真琴くんって、意外と鋭いんだな」

優一さんはにっこりと笑って僕を見つめているけれど、僕には優一さんの話している意味が全くわかっていない。
僕に引かれるってどう言うこと?

「あの下着は……翼くんのじゃない。真琴くんのために用意していたんだ」

「えっ? 僕のため……?」

「そう。こうなったら何もかも全部ぶちまけるけど、私は以前から真琴くんのことを知っていたんだ」

「えっ? 以前から……って? あのコンビニじゃなくて、ですか?」

「ああ。1ヶ月くらい前だったかな。桜城大学の教授に呼ばれて、久しぶりに大学に行った時……真琴くんを見かけたんだ。君は同じ学科の田淵くんと一緒に食事をしてたね。学食で一番安いAランチ。あれをすごく美味しそうに食べているのが印象的で……可愛いなと思ったんだ」

「そんな……可愛いだなんて……」

「本当だよ。初めて、こんな気持ちになったんだ。なんとしてでも声をかけたいと思ったけど……君は20歳やそこらの大学生で……私はもう35。一回り以上も上のこんなおじさんに声かけられても困るだけだって思ったんだ」

優一さんから紡がれる言葉の全てに驚きが隠せない。
まさか、こんな素敵な人に僕なんかが思われていたなんて……。
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