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番外編
素晴らしい執事
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<side直己>
ロレーヌたちが来日する日は話し合いの結果、俺と佳都の二人で出迎えに行くことになった。
フランスに行った日に出迎えてもらったように、みんなで出迎えたいという意見もあったが、いかんせん注目を浴びすぎる。
ただでさえ、ロレーヌが弓弦くんとのことを大々的に発表したことで、弓弦くんは時の人だ。
ロレーヌが守りやすくなった一方でさらに目立つ存在になったことは否めない。
佳都だけでも可愛くて人目を惹くというのに、弓弦くん、ミシェルさん、リュカさんといった錚々たるメンバーが揃うのだから、さらに観月たちが揃えば空港が大騒ぎになるのは想像できる。
出迎えてもらったことが相当嬉しかったらしい理央くんは残念がっていたが、空港から移動した先が観月の実家だから、そこでサプライズをしようという提案にすっかり機嫌も治ったようでなんとか理解してもらえた。
そんなこんなで、俺の両親や妹たちなど全員が観月の実家に集まり、ロレーヌたちを出迎える準備をしている間に俺と佳都は空港に向かった。
ロレーヌたちを出迎えて、やはり俺たちだけの出迎えに少し寂しそうにしていたが、観月の実家でみんなが集まっていることを告げると喜んでくれた。
そのことにホッとしつつ、俺はみんなを車に乗せて一路観月の実家に向かった。
運転する俺の隣にはロレーヌ家の執事であるジュールさんが座り、残りは全員後部座席に座っていて、俺は運転に集中しつつジュールさんに話しかけた。
『ジュールさん、日本は初めてですか?』
『はい。お恥ずかしながら初めてでございますよ』
『そうなんですね。日本の印象はいかがですか?』
『そうですね。ユヅルさまやアマネさまがお過ごしになった場所だと思うととても感慨深いですね。街並みも美しく、人も礼儀正しく見えます』
ジュールさんは決して否定をしない。必ず良いところを見つけて褒めてくれる。そんな人だ。
だから、ロレーヌが弓弦くんを伴侶に選んでも喜んで受け入れてくれたんだ。
普通なら、長年ロレーヌ一族を支えてきたのだから、ロレーヌには後継を産んでくれる相手と一緒になって欲しいと願うはず。だが、ジュールさんはロレーヌが弓弦くんを選んだことを一番喜んでくれたと言っていた。ロレーヌにとっては一番嬉しいことだったろうな。本当にいい人がロレーヌのそばにいてくれたものだ。
『ジュールさんにお褒めいただいて日本人として嬉しいですよ。今回の日本旅行ではたくさん楽しんでください』
『はい。ありがとうございます。そういえば、アヤシロさまが私を日本旅行にお誘いくださったと伺いましたが……』
『ええ、実は佳都がフランスで飲んだ紅茶が美味しくて忘れられないと母と妹に話したんですよ。それで、いつかジュールさんの淹れた紅茶を飲んでみたいと言いだして、それでご迷惑を承知でロレーヌに無理を言ったんです。すみません、日本に来てまで給仕をさせるようなことを頼んでしまって……』
『いいえ。お気になさらず。ケイトさまが私の紅茶をそこまで好んでくださったことが嬉しいんですよ。今回の日本滞在はもちろん旦那さまやユヅルさまとの観光も楽しみでしたが、私の紅茶を飲んでいただくのも楽しみにしているんですよ。私の腕の見せ所ですね』
ジュールさんの優しい笑顔を見て、ロレーヌ家がどうしてジュールさんを執事にしているかわかる気がした。
と同時にこんな素晴らしい執事がいるロレーヌ一族の凄さを垣間見た気がした。
観月の実家に到着し、弓弦くんたちは理央くんたちからの熱烈な歓迎を受け、楽しい宴会が始まった。
作っておいた料理を盛り付け、テーブルに並べる時もジュールさんは何を言わずともさりげなく手助けをしてくれて、初めて来た家とは思えないほど動いてくれた。
食事が始まっても、ジュールさんは絶えず気を配っているようでそれはもう長年染みついた職業病のようなものなのだろう。だが、決して嫌味がない。誰にも悟られず相手が喜ぶ動きをしてくれる。本当にジュールさんにとって執事は天職なのだろうな。
ロレーヌたちと楽しい会話をしながらもついついジュールさんの動向が気になってしまう。
「直己さん? どうかしたんですか? ずっとパピーを見てますよ」
「あ、いや。食事が口に合うか気になって……」
「ああ。そうですね。でも、さっき僕が作ったお雑煮を食べて笑顔になってくれてましたよ」
「そうか、それならよかった」
その佳都のお雑煮が弓弦くんの母の味に似ているという話になり、佳都のお雑煮を食べたジュールさんが昔、天音さんが作ったものに似ていることに気づき、レシピが残っていることを思い出してくれたきっかけになった。
「佳都のお雑煮が、いいきっかけになったようでよかったな」
「うん。僕もびっくりしました。でも弓弦くんの思い出の味と僕の思い出の味が似ているなんて嬉しいな」
「そうだな。そんな偶然もあるもんだな」
ジュールさんをここに呼んでいなければ、弓弦くんの思い出の味のレシピが存在することに気づくのも遅かっただろう。今回、一緒に来てもらえて早速良いことがあったな。
ロレーヌたちが来日する日は話し合いの結果、俺と佳都の二人で出迎えに行くことになった。
フランスに行った日に出迎えてもらったように、みんなで出迎えたいという意見もあったが、いかんせん注目を浴びすぎる。
ただでさえ、ロレーヌが弓弦くんとのことを大々的に発表したことで、弓弦くんは時の人だ。
ロレーヌが守りやすくなった一方でさらに目立つ存在になったことは否めない。
佳都だけでも可愛くて人目を惹くというのに、弓弦くん、ミシェルさん、リュカさんといった錚々たるメンバーが揃うのだから、さらに観月たちが揃えば空港が大騒ぎになるのは想像できる。
出迎えてもらったことが相当嬉しかったらしい理央くんは残念がっていたが、空港から移動した先が観月の実家だから、そこでサプライズをしようという提案にすっかり機嫌も治ったようでなんとか理解してもらえた。
そんなこんなで、俺の両親や妹たちなど全員が観月の実家に集まり、ロレーヌたちを出迎える準備をしている間に俺と佳都は空港に向かった。
ロレーヌたちを出迎えて、やはり俺たちだけの出迎えに少し寂しそうにしていたが、観月の実家でみんなが集まっていることを告げると喜んでくれた。
そのことにホッとしつつ、俺はみんなを車に乗せて一路観月の実家に向かった。
運転する俺の隣にはロレーヌ家の執事であるジュールさんが座り、残りは全員後部座席に座っていて、俺は運転に集中しつつジュールさんに話しかけた。
『ジュールさん、日本は初めてですか?』
『はい。お恥ずかしながら初めてでございますよ』
『そうなんですね。日本の印象はいかがですか?』
『そうですね。ユヅルさまやアマネさまがお過ごしになった場所だと思うととても感慨深いですね。街並みも美しく、人も礼儀正しく見えます』
ジュールさんは決して否定をしない。必ず良いところを見つけて褒めてくれる。そんな人だ。
だから、ロレーヌが弓弦くんを伴侶に選んでも喜んで受け入れてくれたんだ。
普通なら、長年ロレーヌ一族を支えてきたのだから、ロレーヌには後継を産んでくれる相手と一緒になって欲しいと願うはず。だが、ジュールさんはロレーヌが弓弦くんを選んだことを一番喜んでくれたと言っていた。ロレーヌにとっては一番嬉しいことだったろうな。本当にいい人がロレーヌのそばにいてくれたものだ。
『ジュールさんにお褒めいただいて日本人として嬉しいですよ。今回の日本旅行ではたくさん楽しんでください』
『はい。ありがとうございます。そういえば、アヤシロさまが私を日本旅行にお誘いくださったと伺いましたが……』
『ええ、実は佳都がフランスで飲んだ紅茶が美味しくて忘れられないと母と妹に話したんですよ。それで、いつかジュールさんの淹れた紅茶を飲んでみたいと言いだして、それでご迷惑を承知でロレーヌに無理を言ったんです。すみません、日本に来てまで給仕をさせるようなことを頼んでしまって……』
『いいえ。お気になさらず。ケイトさまが私の紅茶をそこまで好んでくださったことが嬉しいんですよ。今回の日本滞在はもちろん旦那さまやユヅルさまとの観光も楽しみでしたが、私の紅茶を飲んでいただくのも楽しみにしているんですよ。私の腕の見せ所ですね』
ジュールさんの優しい笑顔を見て、ロレーヌ家がどうしてジュールさんを執事にしているかわかる気がした。
と同時にこんな素晴らしい執事がいるロレーヌ一族の凄さを垣間見た気がした。
観月の実家に到着し、弓弦くんたちは理央くんたちからの熱烈な歓迎を受け、楽しい宴会が始まった。
作っておいた料理を盛り付け、テーブルに並べる時もジュールさんは何を言わずともさりげなく手助けをしてくれて、初めて来た家とは思えないほど動いてくれた。
食事が始まっても、ジュールさんは絶えず気を配っているようでそれはもう長年染みついた職業病のようなものなのだろう。だが、決して嫌味がない。誰にも悟られず相手が喜ぶ動きをしてくれる。本当にジュールさんにとって執事は天職なのだろうな。
ロレーヌたちと楽しい会話をしながらもついついジュールさんの動向が気になってしまう。
「直己さん? どうかしたんですか? ずっとパピーを見てますよ」
「あ、いや。食事が口に合うか気になって……」
「ああ。そうですね。でも、さっき僕が作ったお雑煮を食べて笑顔になってくれてましたよ」
「そうか、それならよかった」
その佳都のお雑煮が弓弦くんの母の味に似ているという話になり、佳都のお雑煮を食べたジュールさんが昔、天音さんが作ったものに似ていることに気づき、レシピが残っていることを思い出してくれたきっかけになった。
「佳都のお雑煮が、いいきっかけになったようでよかったな」
「うん。僕もびっくりしました。でも弓弦くんの思い出の味と僕の思い出の味が似ているなんて嬉しいな」
「そうだな。そんな偶然もあるもんだな」
ジュールさんをここに呼んでいなければ、弓弦くんの思い出の味のレシピが存在することに気づくのも遅かっただろう。今回、一緒に来てもらえて早速良いことがあったな。
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